コミックナタリー PowerPush - アニメ「信長協奏曲」

プロジェクト「信長協奏曲」第1弾はTVアニメ!監督が明かす「なぜ今、ロトスコープなのか」

アフレコにも実写ドラマのノウハウが

──現在は第何話ぐらいを作業中なんでしょう。

実はまだ1話の作業中でして(註:インタビューは6月の中旬に行われた)本当にドキドキしています(笑)。トレースの素材として用いる実写映像の撮影・編集や、声優さんのアフレコは全部済んでるんですけど。

──これから作画するにあたって、難易度が高いとわかっているシーンはありますか? 合戦シーンなどは難しそうですが。

確かにそうなんですが、あまり出てこないんです。基本的にこの作品は会話劇なので。ただドラマでもそうなんですが、会話劇は会話劇でとても難しいんですよ。

──それはなぜでしょう。

マンガ「信長協奏曲」より、サブローと恒興の掛け合いシーン。

絵が持たなくなってしまうんですよね。ずーっと人が同じ姿勢でしゃべっていたら、視聴者が辛くなってしまう。仮に、そこでいきなり爆弾が飛び込んできて、逃げながら話したりできれば、まったく飽きさせないで引きつけ続けられるんですが、そうもいかない。そういう意味では普通の会話シーンが難しい。「信長協奏曲」ってそここそ魅力の作品ですから、全体的に難しいんです。

──そうですよね。声優さんの演技も重要になってきますし。

はい。やっぱりキャストのお芝居にかかってる部分がすごく大きかったので。アフレコのときには、声優さんたちがいかに気持ちの入れやすい状況を作るかというのに気を遣いました。

──具体的にはどういうことをされたんでしょう。

アニメ「信長協奏曲」より。(c)石井あゆみ・小学館/フジテレビジョン

えーっと、メインの5人……宮野(真守)くん、梶(裕貴)くん、水樹(奈々)さんと、あと中村(悠一)くんと興津(和幸)くんですね。その5人に、アフレコの前に一度会わせていただいて、作品の説明と、キャラクターのすりあわせをして。それで5人に、周りの人をコントロールして欲しいっていう話をしました。

──主要キャストに、周りを引っ張ってもらったわけですね。

そうです。そしたらその5人は、アフレコのときはもうこっちの意図を汲んで、キャラクターも膨らませてくれたので。周りにもいい影響があって、おかげですごくいいお芝居が録れました。アニメのアフレコは初めてだったので、やり方が違うって各所から言われたんですけどね(笑)。

──やり方が違うと言いますと。

いちばん皆から違うって言われたのは、録る順番ですね。アニメってCMを挟んで前半と後半に分かれているんですが、それぞれの部分を最初から最後まで一気に録って、後から間違えたところだけ抜いて録音していくのが普通ですって言われて。でも、僕はシーンごとに分けて録っていったんですよ。

──それはなぜでしょう。

そのほうが演じるほうもやりやすいんじゃないかなと思いまして。時間帯も場所も違うところを、出てくる順番どおりアフレコするよりも、シーンごとに分けた方が効果的だろうと。例えば、雨の尾張のシーンと晴天の美濃のシーンが連続していたりするときに、それをそのまま録っていくより、まず尾張のシーンをまとめて録り、そのあと美濃のシーンをまとめて録って後から編集で入れ替えた方が自然な流れになるだろうと考えました。

──そういった手法は、やはり実写ドラマでの手法・考え方が多く反映されているんでしょうか。

そうですね。あと事前に、脚本の読み合わせをやったら、それも珍しいと。

──へええ。キャストからすると違和感もあったんでしょうか。

「嫌だったら言ってくださいね」って言うと、みんないい方たちだから「いやいや全然やりやすいです」って言ってくれるんですよ。だから、これからキャスト陣にインタビューすることがあったら、色々と感想を聞いてみてほしいです(笑)。

「信長協奏曲」と名乗っていいものを

──小栗旬さん主演の実写版を意識したところはありますか?

冨士川祐輔監督

そうですね……映像化プロジェクトの1発目なので、ほかに迷惑をかけないようにしようと(笑)。やっぱりなんでも緒戦が大事ですからね。

──そうすると、特に1話目にいちばん力が入っているということなんでしょうか。

いや、もちろんアニメ全体を精一杯作るんですが……今作はロトスコープはじめ、さまざまなチャレンジをしているので、1話目だけ観るという人も相当数いると思いますし。だから1話目は本当に、ちゃんと作らなきゃいけないなとは思います。

──視聴者からの評価もかなり気になるところですね。

本当にね、「普通のアニメで作れよ」って言われたら、切ないけどそれは真摯に受け止めなきゃと思ってます(笑)。ただ普通のアニメじゃできない部分っていうのを表現するのに、非常に向いてる原作だなとも思うんです。

──なるほど。原作のファンからもすごく期待されていると思いますが、それについて意識はされますか。

そうですね。もちろん作品としては、新しい人たちにアピールしたいというのもあるんですけれど。でもやっぱり原作者の石井先生や、そのファンの方っていうのはいちばんに考えなきゃと思っています。そういう人たちが「まあ、これだったら『信長協奏曲』名乗ってもいいよ」って言っていただけるようなものが、ひとつの目標ですね。

アニメ「信長協奏曲」

アニメ「信長協奏曲」

ごくごく普通の今どき高校生サブロー。そんなサブローがひょんなことから飛ばされたのは、なんと戦国時代! そう、彼はタイムスリップしてしまったのである。自分の人生に日本の歴史なんてこれっぽっちも関係ないと思っていたサブロー。そんな彼がこの時代で出会ったのは、あの織田信長であった。歴史上とは似ても似つかないほど病弱な信長に、更に驚くべき頼み事をされる。それは、信長とサブローが入れ替わることであった……。
乱世で生きることとなってしまった平成育ち信長の、奔放奮闘記!!

7月11日より毎週金曜25:50~
フジテレビにて放送スタート
(初回のみ26:10~)
そのほかの放送局・時間については公式サイトへ

キャスト
  • サブロー:宮野真守
  • 織田信長:梶裕貴
  • 帰蝶:水樹奈々
  • 木下藤吉郎:中村悠一
  • お市:悠木碧
  • 池田恒興:興津和幸
  • 柴田勝家:小山力也
  • 前田利家:浅沼晋太郎
  • 佐々成政:三宅健太
  • 丹羽長秀:高橋伸也
  • 沢彦:緒方賢一
  • 徳川家康:福山潤
  • 竹中半兵衛:櫻井孝宏
  • 浅井長政:木村良平
  • 森可成:杉崎亮
  • 森長可:吉野裕行
  • 森蘭丸:村瀬歩
  • 足利義昭:杉田智和
  • 松永久秀:黒田崇矢
  • 織田信行:内山昂輝
  • 平手政秀:清川元夢
  • 斉藤道三:秋元羊介
  • ナレーション:小栗旬
スタッフ
  • 原作:石井あゆみ「信長協奏曲」(小学館「ゲッサン」連載中)
  • 監督:冨士川祐輔
  • 脚本:高橋ナツコ
  • 音楽:横山克
  • プロデュース:尾崎紀子
  • 主題歌:MY FIRST STORY「不可逆リプレイス」
  • 制作著作:フジテレビ
冨士川祐輔(フジカワユウスケ)

1995年フジテレビ入社。コンテンツデザイン部に所属。「オデッサの階段」などドラマ、ドキュメンタリー番組の演出を担当してきたほか、映画「踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望」をはじめとする映画、ドラマなどのタイトルバックを多数手がけた。またVFXディレクターとしても、ドラマ「不毛地帯」などさまざまな作品の本編合成をディレクションしている。

石井あゆみ「信長協奏曲」10巻 / 発売中 / 小学館 / 494円

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