コミックナタリー PowerPush - 九井諒子作品集「竜のかわいい七つの子」
「地に足着いた系ファンタジー」の若き旗手 待望の短編集のカバー制作を密着レポート
短編集「竜の学校は山の上」で注目を集めた九井諒子が、10月15日、前作から2年ぶりとなる待望の新刊「竜のかわいい七つの子」を刊行する。この短編集には、竜と人、人魚と野球少年、神様と小学生など、住む世界を異にする者の間に結ばれた「絆」を題材とした6作に加え、独自の世界観で親と子の絆を紡いだ描き下ろし「子がかわいいと竜は鳴く」の全7編が収められている。
コミックナタリーでは新刊の発売を祝し、「九井諒子作品集 竜のかわいい七つの子」のカバーイラスト制作過程に密着。加えて描き下ろしの短編「子がかわいいと竜は鳴く」をまるごと、発売よりひと足早く、無料でお届けする。
文・構成/坂本恵 編集/唐木元
「竜のかわいい七つの子」のカバーイラストができるまで~前編~
[1]表紙ラフ作成~ビジュアルの主軸を決める~
竜をモチーフにした作品を多く描き、新刊のタイトルも「竜のかわいい七つの子」と、竜と縁深い九井。それだけにビジュアルの主軸は、やはり竜にすることに。問題はどのキャラクターを絡ませるかだが、打ち合わせを重ねるうち、収録作の中でも竜が登場しない「わたしのかみさま」の主人公・雪枝が浮上した。「あえて竜と雪枝が一緒にいる違和感が面白いのでは」と九井。4パターンのラフに簡単な彩色を施すうち、竜にまたがるイメージに絞られていった。
[2]カバー配置案~担当編集がイメージを作成~
表紙ラフを受け取った担当編集は、裏表紙や背表紙まで含めたカバー全体のラフを起案。収録作品の登場人物からピックアップしたキャラクターを、全体に配置していく。横に長いカバーを竜の胴体が横切るアイデアも提示された。
[3]カバーラフ作成~全体像をざっくりと描く~
[2]の配置案を受け取った九井が、カバー全体のラフを描く。キャラクターたちが落下している案と、着地している案の2パターンから、落下しているパターンが採用された。
あらすじ
見たこともない物語のはじまり、はじまり。
前代未聞の漫画ここにあり! 2年の沈黙を破って、九井諒子ワールドの幕がふたたび開く。
竜と人、人魚と野球少年、神様と小学生──それぞれの絆を題材とした過去の6作品に加え、全38ページの新作描き下ろし作品を収録。笑いあり、涙あり、きっとあなたが忘れていた、親と子の絆を思い出す7つ物語。
収録作品
- 「竜の小塔」……Fellows! 2011-AUGUST volume 18
- 「人魚禁漁区」……2011年5月 個人誌にて発行
- 「わたしのかみさま」……Fellows!(Q) 2011 AUTUMN “Quiet”
- 「狼は嘘をつかない」……Fellows! 2012-JUNE volume 23
- 「金なし白祿」……2011年10月 個人誌にて発行
- 「子がかわいいと竜は鳴く」……描き下ろし
- 「犬谷家の人々」……Fellows!(Q) 2012-AUTUMN “Q.E.D.”
九井諒子(くいりょうこ)
2011年3月、イースト・プレスより発売された短編集「竜の学校は山の上 九井諒子作品集」でデビュー。孤独な勇者や進学に悩む女子中学生の天使、労働規制されるケンタウロスなど、現実(リアル)と幻想(ファンタジー)を独自の感覚で交えて描き話題となる。同年8月より、WEB文芸誌MATOGROSSO(イースト・プレス)にて、「ひきだしにテラリウム」を連載。現在、Fellows!(エンターブレイン)での長編連載を準備中。