コミックナタリー Power Push - 電撃大王ジェネシス

電撃大王がオリジナル作品を追求すると? 看板作品「やさしいセカイのつくりかた」の魅力に迫る

根底にあるテーマは「教育って難しい」

──「やさしいセカイのつくりかた」は女子高に講師としてやってきた若き天才学者と、彼を取り巻く女生徒たちの学園ラブコメディです。ジェネシスの看板作品の1つとして推す理由を教えていただけますか。

インタビュー写真

高島 大きく2つあります。1つ目は男性も女性も読める中性的な作品だということ。嫌みがなくて繊細な絵柄で、幅広い層にアピールできる。なるべく読者の裾野を広げていきたいと思っているので、あえて電撃らしくないところを推してみようと思いました。2つ目は新人なのにとてもマンガがこなれていて、完成度が高いことですね。キャラクターもストーリーもしっかり描ける器用さを持っている。

──竹葉さんは商業誌で描かれること自体、これが初めて?

竹葉 はい。それまでは他社で担当が付いていたんですがデビューには至らなくて、こつこつと趣味で描いてました。

──趣味で描きつつ、お仕事をされていたんですか。

竹葉 ゲーム会社でドット絵職人として割と長く働いていました。あとは友人のマンガ家さんのアシスタントをしたり。ひとりで描きながらアシスタントを並行してやってるときに、高島さんに声を掛けていただいたんです。

高島 一緒にやろうという話になったのは2年前の春くらいですね。

──この作品は女子高という華やかな舞台の中に「物理数学」という堅いモチーフが入れられていることが特徴的だと思ったんですが、着想をどこから得られたのか教えていただけますか。竹葉さんも理系の出身なんでしょうか。

竹葉 いえ、それがまったくの文系で(笑)。ただ周りに理系の大学院とか出ている友人が多くて、みんなすごく変わってるんですよ。知識が広いようで意外なことを知らなかったりっていうか。自分にはまったくわからない分野なので、付き合っていく中で抱いた「なんでこの人こうなったんだろう?」っていう素朴な疑問がきっかけでした。

──その疑問をもとに、打ち合わせを重ねて形にしていった?

作中には物理数学の数式がたびたび登場。

高島 いえ、方向性を擦り合わせる打ち合わせは軽くしましたが、根幹となるテーマは竹葉さんのやりたいことを尊重しましたね。最初は僕も不安だったんです。「物理数学」とか「天才学者」とか……読者付いてこれんの? それに内容に責任取れんの!? って(笑)。

竹葉 自分ではさっぱりわからないので友人たちに監修者となってもらい、こまめにチェックしてもらうようにしています(笑)。

──テーマは竹葉さんが作られたということですが、この作品で描きたい、コアになる部分はどこですか。

竹葉 「教育の難しさ」というのがありますね。学校教育しかり、親から子への教育しかり。人が人に何かを教えるというのは、ひとすじ縄ではいかない困難さを伴うんじゃないかと。

──それは自分の体験が元になっている?

竹葉 はい。あと会社で働く中でもう一度勉強し直したいなと思ったことがあったんですけど、日本の大学って一度ドロップアウトしちゃうと戻れないですよね。アメリカとか他国では、中退という形で社会人になってからも復学できるんですよ。そういうシステムが日本にはないから一度レールを外れてしまうと戻りづらい、厳しい世界だなと。そんな思いもこの作品の世界観の根底にあります。

パンチラは「ヒャッホウ!」って、ノリノリで描いてます

──先程の「作家主義」というお話からもつながりますが、ではそうした竹葉さんの思いをかなり大事にして作品ができあがっていったんですね。

高島 基本的に放任です。僕のほうからは、掲載誌に合うように最低限入れてほしい要素をオーダーするくらいで。

──ジェネシス作品として押さえなければならないポイントとはなんでしょう。

高島 メイン読者が10代後半から20代の男の子なので、とにかくその子たちが気に入ってくれるヒロインをきちんと配置する。そしてそのキャラのかわいさをとにかく追求してほしい、というところですね。

──竹葉先生は女性として、いわゆる男性受けするヒロインを描くことに抵抗はないですか?

竹葉 かわいい女の子は大好きです! 女の子を愛でるのが、もともと好きなので。

高島 むしろ本人が率先してやってますね。そもそもプロットができる前、竹葉さんのほうから女の子をいっぱい描きたい! という願望が噴出してたくらいなんで。

竹葉 街中やイベント会場でかわいい女の子を見かけると、凝視してしまいます(笑)。

──じゃあこの仕事は天職ですね(笑)。ちなみにヒロイン葵の髪は、なぜピンク色なんですか?

竹葉 なぜ……それはただかわいいからです。自分がアニメやマンガを観てきて、ピンクっ子がかわいいっていうイメージが自然と定着してたのかな。ヒロインならピンクでしょ、って。

高島 そこは女性作家でありながら、オタク男子の感性と合っているのかなと思います。

パンツの細部までこだわって描かれているパンチラシーン。

──自然に描いたことが、読者の好みとマッチするのは強みですね。そういえば気になってたんですが、作中でパンチラとか、お色気描写がわざとらしく挟みこまれますよね。しかもまったく話の展開と関係なく(笑)。あれも読者サービスというか、編集さんの指示なのかなと思っていたんですが。

高島 最初は僕からリクエストしてたんですけど、途中から何も言わなくても入れてくるようになりましたね。

竹葉 大喜びしてノリノリで描いてます。「ヒャッホウ、パンチラ!」って(笑)。

高島 いまやネームチェックしていて僕のほうが心配になるくらいです。「ここでパンチラ!? 大丈夫?」って(笑)。

──あはは。竹葉さんは、女の子のかわいさってどこに宿ると思いますか?

竹葉 どこでしょう……、ギャップですかね。葵とハルカは真逆なんですよ。葵は小柄で弱そうに見えるけど実は芯が強くて、逆にハルカはギャルっぽくて強そうだけど、本当は弱い。

電撃大王ジェネシス 2011 Vol.1 / 2011年1月19日発売 / 定価:500円(税込) / 発行:アスキー・メディアワークス / 発売:角川グループパブリッシング

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電撃大王ジェネシス2011 Vol.1 ラインナップ

カネコマサル「百花のしるし」 /竹葉久美子「やさしいセカイのつくりかた」/森山大輔「妄想奇行 ~アドレッセンス・アバター~」/原作:流圭、作画:ほた。「夢のクロエ」/こがわみさき「空声」/FLIPFLOPs「スズログ」/鈴見敦、ストーリー監修:田中ロミオ「うるわし怪盗アリス」/前嶋重機「デュランダルー不朽の刃ー」/いわさきまさかず「あしたの今日子さん」/犬上すくね「あかとき星レジデンス」/原作:あかほりさとる、作画:桂遊生丸「ラブアレルゲン」/真田鈴「それが彼女のセイギなら」/MATSUDA98、原作:太田顕喜「キャラメル☆スター」/堤利一郎「ゴッドシーカー」/深山和香「かのこ模様」/茜虎徹「緋色のマリオネッタ」/大月悠祐子「妄想少年観測少女」/椎名優「Monochrome Myst」/水上カオリ「空想画廊」/大沖「わくわくろっこモーション」/原作:築地俊彦、作画:鶯神楽「トカレフの危うい城」/松沢まり「動研。 ~菜ノ花高校動画研究部~」/稲井稲井「スキマノスキマ」/榎宮祐「エアリセ∞」/介錯「ユメキ」/ともぞ「時の消失請負人」

やさしいセカイのつくりかた(1) / 2011年1月27日発売 / 定価:599円(税込) / 電撃コミックス

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「やさしいセカイのつくりかた」あらすじ

19歳にしてアメリカの大学院で研究している天才学者・朝永悠。ある日、彼の研究は、資金難から打ち切られてしまう。失意のまま帰国した悠を待っていたのは非常勤の「女子高講師」のポスト。悠が担当するクラスには、飛びぬけた数学の才能を持ちながらそれをひた隠しにする少女・武藤葵と、ファッション誌の読者モデルをしていた気が強い問題児・草壁ハルカがいた。突如始まった慣れない講師生活は、そんなふたりをはじめとする生徒たちに振り回される毎日で……。

竹葉久美子(たけばくみこ)

竹葉久美子

2010年、電撃大王GENESIS 2010 WINTER(アスキー・メディアワークス)掲載の「やさしいセカイのつくりかた」にてデビュー。不定期で月刊コミック電撃大王(アスキー・メディアワークス)にて番外編を発表しながら、電撃大王ジェネシスにて同作を連載中。