コミックナタリー Power Push - 電撃大王ジェネシス
電撃大王がオリジナル作品を追求すると? 看板作品「やさしいセカイのつくりかた」の魅力に迫る
あえて変化球を投げた単行本カバー
──なるほど。もともとふたりのヒロインを対照的に見せることを意図していたんでしょうか。
竹葉 実は当初はヒロインは葵ひとりで、ハルカはあくまでサブ的な存在、言ってみればライバルキャラだったんです。
──確かに連載開始時のカットでは葵と悠だけが描かれていたので、そのふたりが主体の話なのかと想像していました。次第にハルカが主役クラスの存在感を発揮しはじめて、驚いた読者も多いと思います。
竹葉 2話目以降で、急にハルカが動き出したんです。私の頭の中で勝手にキャラが動き出すんですよ。昇格させるつもりはなかったんですが、面白いのでいいかなと。たまにスピードについていけなくて、ちょっと待ってよーって言ってますけど(笑)。
高島 勝手にキャラクターが動いていくと作品が盛り上がっていくことが多いので、そこは動くままに進めてますね。
──では当初は意図してなかったけど、いつの間にか主役が3人になっていたと。
高島 はい、これはある意味、男性の悠をヒロインとした三角関係の話だと思っているんです。ひと昔前のギャルゲーの文法と同じで空気のような存在の主人公がいて、女の子たちを落とす、みたいな。
──なるほど。でもコミックスのカバーには当の主人公が不在ですね。
高島 普通に考えたらこの3人のイラストになると思いますし、最初のラフでは悠もいたんです。けど電撃コミックスの読者ではないお客さんにアプローチしていくために、ちょっと変化球を投げようと。この作品にはジェネシスの看板として、特にそういう役割を担ってほしかったんです。
──これもまたひとつの実験ですね。単行本になると掲載誌を知らない人にも手に取ってもらえる可能性が高まるし、書店の展開次第ではジャンルの壁をブレイクスルーできそうです。女性読者にも手に取りやすいと思いますし。
高島 実際書店からの反応もけっこういいんですよ。電撃コミックスだとアニメイトさんとかとらのあなさんとかマンガ専門書店が中心になってくるんですが、普段あまり販促をやらない一般書店からも熱烈なオファーがきて。京都のある書店は1店舗をきっかけに、描き下ろし特典をお受けすることにしたら全店舗での展開をしていただけることになりました。
──広がりを見せてくれそうで、期待感が高まりますね。竹葉さんは新人作家でありながら、雑誌の看板を背負うことについてどう感じていますか。
竹葉 まだ全然自信がないです……。とりあえず目の前にあることで精一杯なので、まずはそれを一生懸命がんばろうと思っています。
高島 またそういうこと言う!(笑) 基本的に自信を持ってくれないというか、謙虚なんです。
──自分に厳しいんですね。では作品の中で「ここはがんばってるので見てほしい」っていうポイントは。
竹葉 うーん……女の子のかわいさですかね。まだまだ精進が必要なんですが、連載開始から1年頑張って、少しは腕が上がったと思うので。女の子はかわいく、女の子はかわいく!! って、毎日呪文のように唱えてます(笑)。
電撃大王ジェネシス2011 Vol.1 ラインナップ
カネコマサル「百花のしるし」 /竹葉久美子「やさしいセカイのつくりかた」/森山大輔「妄想奇行 ~アドレッセンス・アバター~」/原作:流圭、作画:ほた。「夢のクロエ」/こがわみさき「空声」/FLIPFLOPs「スズログ」/鈴見敦、ストーリー監修:田中ロミオ「うるわし怪盗アリス」/前嶋重機「デュランダルー不朽の刃ー」/いわさきまさかず「あしたの今日子さん」/犬上すくね「あかとき星レジデンス」/原作:あかほりさとる、作画:桂遊生丸「ラブアレルゲン」/真田鈴「それが彼女のセイギなら」/MATSUDA98、原作:太田顕喜「キャラメル☆スター」/堤利一郎「ゴッドシーカー」/深山和香「かのこ模様」/茜虎徹「緋色のマリオネッタ」/大月悠祐子「妄想少年観測少女」/椎名優「Monochrome Myst」/水上カオリ「空想画廊」/大沖「わくわくろっこモーション」/原作:築地俊彦、作画:鶯神楽「トカレフの危うい城」/松沢まり「動研。 ~菜ノ花高校動画研究部~」/稲井稲井「スキマノスキマ」/榎宮祐「エアリセ∞」/介錯「ユメキ」/ともぞ「時の消失請負人」
「やさしいセカイのつくりかた」あらすじ
19歳にしてアメリカの大学院で研究している天才学者・朝永悠。ある日、彼の研究は、資金難から打ち切られてしまう。失意のまま帰国した悠を待っていたのは非常勤の「女子高講師」のポスト。悠が担当するクラスには、飛びぬけた数学の才能を持ちながらそれをひた隠しにする少女・武藤葵と、ファッション誌の読者モデルをしていた気が強い問題児・草壁ハルカがいた。突如始まった慣れない講師生活は、そんなふたりをはじめとする生徒たちに振り回される毎日で……。
竹葉久美子(たけばくみこ)
2010年、電撃大王GENESIS 2010 WINTER(アスキー・メディアワークス)掲載の「やさしいセカイのつくりかた」にてデビュー。不定期で月刊コミック電撃大王(アスキー・メディアワークス)にて番外編を発表しながら、電撃大王ジェネシスにて同作を連載中。