コミックナタリー Power Push - ARIA

少女マンガ界に風穴をあける非日常的コミック誌 槙ようこ×持田あき 姉妹共作の舞台裏を実家で語る

引っ込み思案の姉、人懐っこい妹

──まずは姉妹の関係性やお2人のパーソナリティに迫っていきたいんですが、小さい頃はどんな姉妹だったんですか?

 モッチ(持田)はとにかく人懐っこい子でした。

 そう、すごくわんぱくだから家の中を見渡してもすぐ姿が見当たらなくなって、探したら近所の人の家の前にこの子の三輪車が止まってるんですよ。帰ってくると両手いっぱいにおやつ(笑)。いただいた方にお礼を言わないといけないから「どこでもらったの?」って聞くと、「大丈夫!! 今から自分でお礼言いに行ってきます!」ってまたササっと出てっちゃって。お礼を言って何食わぬ顔で戻ってくる。

インタビュー写真

持田 そんなお調子者なノリだったので「こいつには何を言ってもだめだ」って思われたのか、小さい頃に怒られた記憶とか全然ないんですよね。思えば結構要領よく生きてきたのかも(笑)。反対に、お姉ちゃんはすごくおとなしかったです。

 とにかく引っ込み思案で、ぜんぜん喋らない子でした。変わったのは中学3年生のときかしら。いろんな人とコミュニケーションを積極的に取るようになったし、服装も活発なものに変わってきて。

──それは中3のときに槙さんの中で、変わるきっかけが何かあったんでしょうか。

 いや、特にないんですけど。「よし決めた、変わろう」って思って、ぱっと。

持田 お姉ちゃんはいつもそうなんです。とにかくマイペースでひょうひょうとしてて、大事なことを突然ささっと決めちゃう(笑)。マンガ家を目指すときも、ある日突然りぼん(集英社)のスクールページを開いて「私ここに送るわ」って投稿しだしたんですよ。すごくびっくりしたことを覚えてます。お姉ちゃんが高校1年で私が中1のときかな。

 絵を描くのはもともと好きだったんですけど、本格的にマンガ描こうとは特に意識してなくて。でも友達が「投稿してみなよ」って原稿用紙とかペンとか執筆に必要な道具をプレゼントしてくれたのがきっかけで、なんとなくやってみようかなと思ったんです。没頭して描いてたら普通の人に比べると執筆ペースがとんでもなく速かったみたいで、担当さんに気持ち悪がられてました。毎日新作の原稿持って、学校帰りに編集部に持ち込みに行ってたんで(笑)。

持田 そのころ同じ部屋で暮らしてたんですけど、横で見てても恐かったです。「まんが道」に出てくるキャラクターみたいに、とにかくマンガばっかり描きつづけて。

──持田さんがマンガを描き始めたのは、お姉さんの姿に影響を受けたからでしょうか?

持田 はい、幼稚園の頃にお姉ちゃんに「今日から一緒にマンガ描こうよ!」って誘われて描きはじめたんですけど、本格的に投稿を始めたのは中1の時です。それからはエアコンの無い6畳一間で、2人してひたすらカリカリやってましたね。

妹がデビューしたときの感想は「へえ~」

──未来の輝かしい人気マンガ家2人が6畳一間で。想像するとすごい画です(笑)。そうして槙さんが見事りぼんでデビューを飾ったのが高校2年生のとき。お姉さんが先にデビューして、持田さんは焦りとかはなかったですか?

持田 うーん、特になかったです。自分のことのようにうれしかったし、マンガ家って特別な人しかなれないわけじゃないんだ、って逆に勇気をもらえたんですよね。「身内でもデビューできたんだから、私もいけるんじゃないか?」って。

インタビュー写真

──なるほど。槙さんは、その約1年後に持田さんがデビューしたときはどう思いましたか?

 ひたすら「へえ~」って思ってました。「ああ、妹もマンガ家になったんだ~」って本当にただ単純に。

持田 ひどいですよね。普通は「よかったね!」とかお祝いの言葉をかけると思いません? (笑)

──クールな反応ですね(笑)。持田さんは、お姉さんがすでに活躍してる雑誌で描くことに抵抗はなかったんでしょうか。

持田 小さい頃からずっとりぼんを愛読していたので、りぼん以外は考えられませんでした。

──姉妹そろってマンガ家、しかも同じ雑誌でというのはなかなか希有ですよね。

 2人ともマンガ家になれるんだろうなっていう直感があったから、姉妹そろって同じ雑誌でデビューが決まっても、不思議と私は違和感はなかったですよ。親から見ても本当に描くのが好きな子たちでした。家の中で飛び交う伝言メモとかにも、常に何かしら可愛らしい絵が描いてあったんです。

「ARIA 9月号」2010年7月28日発売 / 定価:650円(税込) / 講談社

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「恋愛マンガだけじゃ物足りない!」そんな思いを抱えているちょっとコアな少女漫画ファンに向け創刊されたオールジャンル月刊少女マンガ誌。豪華作家陣が一堂に会し、新鮮な驚きと完成度の高さを両立させる作品が目白押し。マンガ愛に溢れた読者に、魅惑的な非日常を提供していく。

創刊号ラインナップ

槙ようこ×持田あき「ピカ☆イチ」/由貴香織里 「異域之鬼」/naked ape「Magnolia」/硝音あや「純血+彼氏」/アイディアファクトリー原作・監修、櫻井しゅしゅしゅ漫画「二世の契り」/夏目ココロ「黒鉄ガール」/尚月地「廃墟少女」/チカ「これは恋のはなし」/日吉丸晃「王子様降臨」/ネスミチサト「ジャウハラ幻夜」/もち「裸マフラー」/桑原草太「はにらび!」/ミキマキ「摩訶ソサエティ」/遠山えま「GDGD-DOGS」/厘のミキ「骸シャンデリア」/きりがユキ「星座男子」/天城れの「チェリせん!」

槙ようこ×持田あき 「ピカ☆イチ」あらすじ

彼女の名前は鈴木花子。勉強、運動、容姿、何をとっても普通だった。彼の名前は鈴木太郎。クラス、部活、行事、何であれ目立つことはなかった。限りなく空気のような眼鏡ふたりが、学校内のある事件をきっかけに華麗に変身!? 高校1年2学期デビュー物語。

槙ようこ×持田あき

槙ようこ×持田あき
プロフィール

実の姉妹によるユニット。姉の槙ようこが作画を、妹の持田あきがネームを担当する。

槙ようこ(まきようこ)

鹿児島県出身、7月11日生まれのA型。1999年りぼんオリジナル4月号(集英社)掲載の「ラブサービス!」にてデビュー。代表作に「愛してるぜベイベ★★」「勝利の悪魔」など。「愛してるぜベイベ★★」は2004年にTVアニメ化された。

持田あき(もちだあき)

鹿児島県出身、7月2日生まれのA型。2000年りぼん秋のびっくり大増刊号(集英社)掲載の「角砂糖恋愛」にてデビュー。代表作に「君は坂道の途中で」「おもいで金平糖」など。