コミックナタリー Power Push - ARIA

少女マンガ界に風穴をあける非日常的コミック誌 槙ようこ×持田あき 姉妹共作の舞台裏を実家で語る

論理的な姉と直感的な妹によって起こる化学反応

──自由なのびのびとした表現ができるということですね。それでは、共作での役割分担など、具体的な制作プロセスを教えてください。

持田 ストーリーやキャラクター設定は私が考えます。ストーリーの案を大まかにお姉ちゃんに伝えて2人で打ち合わせて、だいたい固まったら担当さんも交えて打ち合わせをして、流れを決定。そのあと私はネームを起こすところまで。

 そのネームをもとに下絵からペン入れ、仕上げまでの作画はすべて私が担当してます。

──1人で描いているときと比べて、何が違いますか?

インタビュー写真

持田 タイプの違う2人だからこその化学反応が起こるのがすごく楽しいです。自分がネームに描いたキャラの笑い方が、お姉ちゃんが描いた絵では違う笑い方で深みが出ていたり。逆に「ここはこんなにあっさり描くんだ」とか、発見することが多くて。自分のアイデアから生まれたのに自分のマンガじゃないように思えて、不思議な感覚なんです。

 私も普段とはまったく違う、これまで描いたことないようなやり方で描くのが新鮮ですね。モッチのネームは細かい。コマ割りも細かいし、モブ(背景の人物)多っ! ってびっくりすることもしばしばで(笑)。その反面、モッチはいいかげんなところもありまして……。主人公の太郎と花子がヘルメットをかぶるシーンがあるんですが、ページを追っていくうちにいつの間にか途中で無くなってるんですよ。「どこで脱がしたんだよ!」って憤りました(笑)。

持田 私はすっごい文系で直感的なので、そういうのも「あー取れちゃったんだ」ってくらいで大して気にしないんですけど、お姉ちゃんは理数系というか考え方が論理的なのでつじつまがしっかり合ってないとダメなんですよね。だから私も数式を作るみたいな感じで話を組み立てるようになったし、自分の意図をしっかり伝えるためにネームをていねいに描くようになってきた気がします。

自分の作品ではできないことが、姉妹共作だから遠慮なくできる

──対照的な2人の才能がぶつかり合うことで、足りない部分を補いあえるんですね。でも逆に、1人ですべてを進めるときには感じなくてもいい、共作だからこそ好き勝手にできないというストレスを感じることもあるのでは。

 それはあまりないですね。表現を変えたくなったら、変えちゃってるので(笑)。これは姉妹共作ならではかもしれない。

持田 まったくの他人とタッグを組むのとは、全然違うと思います。姉妹だからこそ、気を使わず進められる。私もお姉ちゃんには、どんどんいい具合に横やりを入れてほしくて。自分のマンガに脱力の部分を加えていってくれればいいなと。

 ネームを見てると、モッチの気が抜けてるところと力んでるところの差がよくわかるんですよ。そこを見極めて、力んでるところを私がうまくほぐしつつ仕上げていく作業が面白いです。

持田 自分1人じゃできないことにも、2人だから気負わずチャレンジできるっていう良い点もありますね。例えば作中で暴力シーンが出てくるんですけど、私はどうも苦手で……でも担当さんには「もっと派手にやっちゃいましょう」って言われて。私こんな経験ないのにと思いましたけど、ま、いいか自分が原稿を描くわけじゃないからやっちゃえって。

 私もネーム見て「私はこんな残酷なシーン思い浮かばない、モッチひどいよ!」と思ったけど、自分の作ったネームじゃないから遠慮なく描けちゃうなって。

持田 何言ってんの。原稿見たら私のネームの5倍増しくらい過激になってたよ。ノリノリじゃんお姉ちゃん!

 え、そうだった?(笑)

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「ARIA 9月号」2010年7月28日発売 / 定価:650円(税込) / 講談社

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「恋愛マンガだけじゃ物足りない!」そんな思いを抱えているちょっとコアな少女漫画ファンに向け創刊されたオールジャンル月刊少女マンガ誌。豪華作家陣が一堂に会し、新鮮な驚きと完成度の高さを両立させる作品が目白押し。マンガ愛に溢れた読者に、魅惑的な非日常を提供していく。

創刊号ラインナップ

槙ようこ×持田あき「ピカ☆イチ」/由貴香織里 「異域之鬼」/naked ape「Magnolia」/硝音あや「純血+彼氏」/アイディアファクトリー原作・監修、櫻井しゅしゅしゅ漫画「二世の契り」/夏目ココロ「黒鉄ガール」/尚月地「廃墟少女」/チカ「これは恋のはなし」/日吉丸晃「王子様降臨」/ネスミチサト「ジャウハラ幻夜」/もち「裸マフラー」/桑原草太「はにらび!」/ミキマキ「摩訶ソサエティ」/遠山えま「GDGD-DOGS」/厘のミキ「骸シャンデリア」/きりがユキ「星座男子」/天城れの「チェリせん!」

槙ようこ×持田あき 「ピカ☆イチ」あらすじ

彼女の名前は鈴木花子。勉強、運動、容姿、何をとっても普通だった。彼の名前は鈴木太郎。クラス、部活、行事、何であれ目立つことはなかった。限りなく空気のような眼鏡ふたりが、学校内のある事件をきっかけに華麗に変身!? 高校1年2学期デビュー物語。

槙ようこ×持田あき

槙ようこ×持田あき
プロフィール

実の姉妹によるユニット。姉の槙ようこが作画を、妹の持田あきがネームを担当する。

槙ようこ(まきようこ)

鹿児島県出身、7月11日生まれのA型。1999年りぼんオリジナル4月号(集英社)掲載の「ラブサービス!」にてデビュー。代表作に「愛してるぜベイベ★★」「勝利の悪魔」など。「愛してるぜベイベ★★」は2004年にTVアニメ化された。

持田あき(もちだあき)

鹿児島県出身、7月2日生まれのA型。2000年りぼん秋のびっくり大増刊号(集英社)掲載の「角砂糖恋愛」にてデビュー。代表作に「君は坂道の途中で」「おもいで金平糖」など。