コミックナタリー Power Push - ARIA
少女マンガ界に風穴をあける非日常的コミック誌 槙ようこ×持田あき 姉妹共作の舞台裏を実家で語る
お姉ちゃんのために、大通りをドラマばりの勢いで走った
──一緒に絵を描くなど小さい頃から仲が良いお2人ですが、ケンカをすることもあるんでしょうか。
持田 ぼちぼちしますよ。 なかでも我が家で「最後のジェニー」っていうタイトルで語り継がれる名エピソードがありまして……。小さい頃ジェニーちゃん人形で2人でよく遊んでいたんですけど、私が小学校低学年のときにお姉ちゃんがぱたりと遊んでくれなくなってしまったんです。
槙 それまでは姉妹間で息をぴったり合わせて遊んでてすごく楽しかったのに、大人の階段を上ったのかぜんぜん興味がなくなっちゃったんですよね。
持田 私にとっては悪夢のようでしたよ……! それでも諦め切れなくて、何度も何度も「お姉ちゃん遊ぼうよー」って懇願したら「じゃあ、最後に1回だけやってあげる」って言ってくれて。喜び勇んで「こんにちはっ!」ってジェニーで話しかけたらお姉ちゃんは、「はいこんにちはっ。はいおしまいっ」って冷たく言い残して部屋を出てっちゃって。あまりに悲しくて、その後は1人で泣いてました……。
槙 大人になってモッチからその話を聞くまで、私はずっと忘れてたんですよ。だから申し訳なくなって2~3年前にモッチに「ジェニー買ってあげるよ」って言ったんですけど、「もう気にしてないからいいよ」って言われて。
持田 さすがにもう大人ですから(笑)。でも後日いきなり「今から来れない?」って電話がかかってきて、夜中だしバタバタしてるから無理だよ、って言ったら「ジェニー買ってきたんだけど……」って言うんですよ。そんなに気にしてくれてたんだ、って思ってうれしくなって走っていったんです。なのに鍵が閉まってて、合鍵で開けてもチェーンが掛かってて入れなくて。「おねえちゃーん!」って大声で呼んでも出てくれないので、せっかくの好意をフイにしたから怒ってるんだって思って、すごすご帰ったんです。
──槙さんはほんとうに怒ってたんですか?
槙 それが、爆睡してたんですよね。そもそもジェニーは、飲み会の帰りに酔っぱらって買ったみたいで……(笑)。
持田 酔ってたんだ! ぜんぜん起きてくれないんだもんね。私、大通りをドラマばりの勢いで走っていったのに(笑)!
──槙さんはマイペース、持田さんは繊細で槙さんに振り回されがち、という姉妹の図式がなんとなく見えてきたような気がします(笑)。
持田 お姉ちゃんのマイペースさには本当にびっくりさせられます。今回の共作のストーリーを考えるために担当さんと3人で打ち合わせしたときも、私が「こんな内容はどうかな?」って提案したらお姉ちゃんが「うーん、違うなあ。そういうのじゃなくて、もっとポップでバーンときてキュンとくる話を描きなよ。じゃ、あとはよろしく頼んだ!」って私の肩を叩いて。
槙 あはは、そうだったっけ?(笑)
持田 その後担当さんが帰ったあとに姉妹で話し合いました。そうしたらお姉ちゃんが私の作品をいくつか例に挙げて「こういうのが好きだから、こういうポップなのを描いてほしい」って、すごく丁寧に説明してくれて。うれしかったんですけど、「オイオイ、そんな明確なイメージがあるなら先にそれを言ってよっ」ってズコーッてなりました(笑)。でもそこから私の中で作品のビジョンがスパっと見えてきて、すぐにキャラを作って。そうして生まれたのが「ピカ☆イチ」です。
ARIAではいろんなことができると思った
──「ピカ☆イチ」が生まれるまでにはそんなドラマがあったんですね。では、今回ARIAで共作に挑もうと思ったそもそもの経緯を教えてください。
持田 お姉ちゃんは「作画を中心にできればいいのに」って言っていたことがあって、一方私は私でストーリーを中心に考えてみたいなって思っていたんです。だったら2人で共作したら、半分の時間でもっとたくさん作品が生み出せるんじゃないかと思ったのが始まりですね。でもまだお互いりぼんでの作品を抱えていたので、それは老後の夢でいいかなと思っていました。
槙 そう、だけどARIAの担当さんからお誘いをいただいたときに、いい機会だからと「妹と共作してもいいですか?」って思い切って申し出てみたら「いいですね、やりましょうよ!!」って即OKしていただいて。とにかくタイミングが良かったんですよね。
──なるほど。それではお2人とも初めてりぼん以外での執筆になりますが、踏み切るのにあまり迷いはなかったんですね。掲載誌が変わっての心境はいかがですか?
持田 ARIAのキャッチコピー「非日常的ガールズコミック」っていうのを初めて見たとき、すごくいいなと思って安心しました。非日常だったらできないことはないんだから、縮こまらずにいろいろできるんじゃないかなって期待感が高まって。
「恋愛マンガだけじゃ物足りない!」そんな思いを抱えているちょっとコアな少女漫画ファンに向け創刊されたオールジャンル月刊少女マンガ誌。豪華作家陣が一堂に会し、新鮮な驚きと完成度の高さを両立させる作品が目白押し。マンガ愛に溢れた読者に、魅惑的な非日常を提供していく。
創刊号ラインナップ
槙ようこ×持田あき「ピカ☆イチ」/由貴香織里 「異域之鬼」/naked ape「Magnolia」/硝音あや「純血+彼氏」/アイディアファクトリー原作・監修、櫻井しゅしゅしゅ漫画「二世の契り」/夏目ココロ「黒鉄ガール」/尚月地「廃墟少女」/チカ「これは恋のはなし」/日吉丸晃「王子様降臨」/ネスミチサト「ジャウハラ幻夜」/もち「裸マフラー」/桑原草太「はにらび!」/ミキマキ「摩訶ソサエティ」/遠山えま「GDGD-DOGS」/厘のミキ「骸シャンデリア」/きりがユキ「星座男子」/天城れの「チェリせん!」
槙ようこ×持田あき 「ピカ☆イチ」あらすじ
彼女の名前は鈴木花子。勉強、運動、容姿、何をとっても普通だった。彼の名前は鈴木太郎。クラス、部活、行事、何であれ目立つことはなかった。限りなく空気のような眼鏡ふたりが、学校内のある事件をきっかけに華麗に変身!? 高校1年2学期デビュー物語。
槙ようこ×持田あき
プロフィール
実の姉妹によるユニット。姉の槙ようこが作画を、妹の持田あきがネームを担当する。
槙ようこ(まきようこ)
鹿児島県出身、7月11日生まれのA型。1999年りぼんオリジナル4月号(集英社)掲載の「ラブサービス!」にてデビュー。代表作に「愛してるぜベイベ★★」「勝利の悪魔」など。「愛してるぜベイベ★★」は2004年にTVアニメ化された。
持田あき(もちだあき)
鹿児島県出身、7月2日生まれのA型。2000年りぼん秋のびっくり大増刊号(集英社)掲載の「角砂糖恋愛」にてデビュー。代表作に「君は坂道の途中で」「おもいで金平糖」など。