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劇場版セーラームーンR、幾原監督「花は愛。子供に大人の本気を見せたかった」

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三石琴乃と幾原邦彦監督。

三石琴乃と幾原邦彦監督。

武内直子「美少女戦士セーラームーン」の月野うさぎとちびうさの誕生日を祝う「25th Anniversary うさぎ BIRTHDAYイベント」の第2夜イベントが、本日7月1日に東京・丸の内TOEIにて開催された。

昨日6月30日に誕生日を迎えた月野うさぎとちびうさ。バースデー当日に行われた第1夜イベントでは、アニメ「美少女戦士セーラームーン」よりセーラームーン/月野うさぎ役を務める三石琴乃、「美少女戦士セーラームーンCrystal」のセーラーヴィーナス/愛野美奈子役の伊藤静、セーラージュピター/木野まこと役の小清水亜美、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」にてセーラームーン/月野うさぎ役を演じる野本ほたるがゲストとして登場し、記念すべき日を祝った。

本日ステージに登場したのは、三石と「劇場版 美少女戦士セーラームーンR」の監督を務めた幾原邦彦の2名。最初の挨拶で幾原監督は「今日は20数年ぶりにセーラームーンに帰ってきました」と話し、観客を沸かせる。司会の喜屋武ちあきからお互いの印象を尋ねられた2人は、顔を見合わせて戸惑いの笑み。それからアニメ「セーラームーン」の収録で初めて出会ったと話した幾原監督が「キレイな人だと思った」と口火を切ると、三石も「スタッフさんは普通な人が多いんですけど、幾ちゃんはファッションがこ洒落てたの」と褒め合いに発展した。続けて「幾ちゃんは作品が忙しくなってくると、どんどん痩せて。横から見ると薄くて見えないの」と語ると、幾原監督も「1992年から93年頃は、自分の人生の中で一番忙しかった。週のうち、寝られるのは半分くらい」と放送当時の過酷さを物語った。

このイベント後に上映される「劇場版 美少女戦士セーラームーンR」は、花が重要なテーマを担う作品だ。花をモチーフにした理由を問われた幾原監督は「テレビシリーズのときから、花が非常に印象的に画面にちりばめられてた。その意味をずっと考えてて、『映画を作れる』という話になったときに、それを作品のテーマにできないかって思ったの。花はなんなのかって考えたとき、結論から言うと、花は“愛”だと思った」と意図を口にする。子供の頃の衛と友情を育んだ異星人フィオレについて「フィオレはかつて、衛から花を貰った」「フィオレは愛がなんだかわからない人。フィオレは衛に愛を貰って、衛は自分のことを愛していると思ったけど、実はそうじゃなくて、別の人を愛していると知って動揺したんだよね。フィオレは、愛は自分の熱量が返ってくると思ってる。けど、それは愛ではなく恋。愛は与えるもので、フィオレは愛は奪うものか求めるものかと思ってる。物語のベースは、彼が愛とは何かを知ること」と紐解いた。

それを聞いた三石が思わず「ターゲットはちびっこ向けの映画でしたよね?」と疑問を呈すと、幾原監督は「ちびっこ向けです!」と即答。アニメ好きで知られる喜屋武も「当時も大人向けと言うか……」と口を挟むと、幾原監督は「マジで!?」と驚愕したふりをして冗談めかした後、「真面目な話、子供に向けてる。なんでかって言うと、子供向けの映画って、子供は『これはジャリ向けてるな』ってわかるんですよ。僕は子供の頃、作り手の本気さや情熱がぶつかっているものを観て『すごい!』って思った。だから小学生の女の子が『いつものセーラームーンかな』って観に行ったときに『えー!?』ってびっくりする体験をさせたいと思ったんです」と真意を明かし、観客を感嘆させた。

また幾原監督は「当時、東映の偉いおじさんたちは『セーラームーン』を理解してくれなかった」を回想。映画の実現のため、何度も「セーラームーン」の面白さについて説明させられたと言う。喜屋武が劇場版の変身シーンの素晴らしさについて言及すると、幾原監督は「おじさんたちも『セーラームーン』を観てるんだけど、観ても面白さがどこにあるのかわからない。わかりやすく説明するために、『男の子が仮面ライダーの変身シーンに憧れるようなもの』と言って。そういう人のオーダーに応えたいという気持ちが、変身シーンにあるのかもしれない」と分析。しかし、「劇場版 美少女戦士セーラームーンR」は客観視できないため20数年間鑑賞していないと告白するひと幕も。すかさず三石が「観たらいいのに。早く観ないと死んじゃうよ」とジョークを飛ばした。

そして「正直、『セーラームーン』のことを語ることはないと思ってた」と幾原監督は思いを口にする。「今、新作もやってるし。でも今日このイベントに行こうかなと思ったのは、当時『セーラームーン』に携わってたスタッフの熱気を皆さんにお伝えしたかったの。この作品のハイライトは(主題歌の)『Moon Revenge』。錚々たるアニメーターが集まっていて、今見てもすごいスタッフなのよ。そのスタッフみんなが、当時東映のおじさんたちが理解してくれなくて、褒めてくれなくてGOを出してくれなかった『セーラームーン』をなんとかしたいって思ってたんだよね。つらかったけど、やり切れたのはスタッフががんばってくれたから」と、共に劇場版を作り上げたスタッフに感謝を述べた。

イベントの終盤には幾原監督から三石へのサプライズプレゼントも。タキシード仮面とセーラームーンがキスをするシーンのセル画がステージに運び込まれ、「倉庫もとい押入れに眠ってた大判セル。このまま僕が死んだら焼かれるかなと思って。あなたに持っていてもらうのが一番喜ぶかなあと」と語ると、三石は涙ぐんだ。そして小声で「ありがとうございます」と囁いた後、「素敵なチューなので」と笑顔を見せた。最後の挨拶で三石は「いままでの私の人生で観てきた映画の中で、この『R』が一番好きな作品なんです」と思いを込め、これから応援上映に臨む観客の気分を盛り上げた。

なお1993年から95年に公開された「劇場版 美少女戦士セーラームーンR」「メイクアップ! セーラー戦士」「劇場版 美少女戦士セーラームーンS」「劇場版 美少女戦士セーラームーンSuperS セーラー9戦士集結! ブラック・ドリーム・ホールの奇跡」「スペシャルプレゼント 美少女戦士セーラームーンSuperS外伝 亜美ちゃんの初恋」の劇場版5作品を収録したBlu-rayボックスがリリースされることが明らかに。「美少女戦士セーラームーン THE MOVIE Blu-ray 1993-1995」のタイトルで、2018年2月に発売される。

※記事初出時、キャラクター名に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。

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