縦読みマンガに特化したサービス「Amazon Fliptoon」を展開しているアマゾンジャパンが、新たなマンガ賞「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」を開催中。この賞は日本在住の人であれば、プロ、アマなどの経験や年齢も問わず応募可能で、ジャンルも自由と非常に広い層からの才能を求めている。賞金総額は1億円というスケールの大きさも話題だ。そこで、4人の審査員の1人であるマンガ家兼VTuberの佃煮のりおにインタビュー。「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」の魅力や審査員として期待していることなどを聞きつつ、佃煮が10代でマンガ家デビューを果たせた経緯など、多才でクリエイティブな活動の秘密を掘り下げた。
取材・文 / 丸本大輔
スケジュール
- 応募期間
- 2024年1月24日(水)~5月6日(月・振休)
※応募期間は終了いたしました。 - 受賞作品発表
- 2024年6月上旬予定
審査員
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梶裕貴声優
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あかせあかりコスプレイヤー
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佃煮のりおVTuber事務所社長/マンガ家
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安田かほるコミックマーケット準備会共同代表
各賞
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グランプリ1人
- 賞金
- 1000万円
- 副賞
- 作品の認知度を高めるための各種サポート6カ月間
※Amazon上での露出、マーケティング補助など。
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準グランプリ4人
- 賞金
- 各750万円
- 副賞
- 作品の認知度を高めるための各種サポート6カ月間
※Amazon上での露出、マーケティング補助など。
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カテゴリー賞最大15人※
- 賞金
- 各400万円
※ファンタジー、バトル・アクション、恋愛、ホラー、日常、オールジャンルの全カテゴリー合計
応募資格
- 年齢、プロ・アマ問わず。
- 日本在住の方による応募で、日本語の作品であること。
注意事項
※ほかのサービスや出版社で掲載・販売され、出版および映像化がすでにされている作品は対象外。出版契約やオプションが結ばれている場合も対象外となる。またいずれの言語でもコンテストの受賞歴がないことが必須。
応募条件
- 縦スクロール形式であること。
- 横幅が500ピクセル以上のjpegファイル。
- 1エピソード(話)あたり、最低20コマ以上。最大コマ数は制限なし。
- 1シリーズ(作品)につき、3エピソード以上が必要。
ただし3エピソードは1度に入稿する必要はなく、応募期間内に揃っていればOK。 - モノクロ・フルカラーどちらでも可だが、フルカラー推奨。
注意事項
※従来の横読みマンガや4コママンガを、そのまま縦につなげてアップロードすることはNG。
※アダルトカテゴリーやアダルト関連タイトルは選考対象外。またAI生成コンテンツによって描かれたものも選考対象外となる。
応募方法
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1 まずはAmazon Kindleストアで誰でも無料で作品を出版できるサービス「Kindleダイレクト・パブリッシング(KDP)」のページへ。
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2 画面中央にある「無料マンガ」のボタンを押し、「シリーズの作成」ページに飛ぶ。
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3 「ページを読む方向」の項目で、「Fliptoon (縦読み)」を選択。
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4 「キーワード」の項目で、「FliptoonAward2024」を入力する。
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5 そのほか「タイトル」や「内容紹介」などの項目は、応募作品に合わせて自由に記入。
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6 すべての項目を埋めたら、画面下の「シリーズを作成」ボタンを押す。
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7 シリーズの作成が完了すると、自動的に別ページへと遷移。画面中央の「新しいエピソードを追加」というボタンを押し、「エピソードを編集」ページに飛ぶ。
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8 原稿をアップロードし、画面下の「保存して出版」を押したら応募完了。
縦読みマンガは、マンガ初心者でも手を出しやすい
──佃煮さんが審査員を務められている「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」という新しいマンガ賞の印象をお聞かせください。この賞のどのようなところに魅力を感じますか?
私はマンガを購入する際に、最近は紙から電子に完全移行をしていて、すべてAmazon Kindleで購入をしています。Amazonさんでマンガを購入されているユーザーさんは本当に多いと思うので、Amazonさん主導のマンガ大賞が開催されるのは、マンガ業界にとってもすごくありがたいことだと思っています。募集するのが、縦読みマンガというのもすごくいいですね。通常のマンガは、やはりコマ割りが難関で、しっかり勉強しないと読みやすいコマ割り表現をするのが難しいんです。ただ、縦読みマンガはほぼコマ割りが必要なく、マンガ初心者でも手を出しやすいのが利点なので、今までマンガを描いたことがない方、イラスト分野で活躍されている方たちにも参加してほしいなと思っています。
──佃煮さんは、10代でマンガ家デビューをされていますが、デビューの経緯などを教えてください。幼い頃から憧れていた職業だったのでしょうか?
私、もともとマンガ家じゃなくて声優になりたかったんです。でも、今の声優さんって、すごくアイドル性があって、ビジュアルも美しくて、歌も上手でダンスもできて、本当に多才じゃないですか。だから、中学生くらいの私は、「到底、無理だな」と諦めてしまっていたんです。そんなときに思いついたのが、「マンガ家になって、自分の作品をアニメ化して、それに声優として少し参加させてもらえたら近道なのでは?」という逆転の発想でした(笑)。
──その道も非常に大変そうですが(笑)。それから、マンガ家になるためには、どのような努力をしたのですか?
マンガ家になろうと思いついたのはいいものの、どうしたらなれるのかがわからなくて。雑誌に応募して賞を取る? 出版社に持ち込みをする? でも、地方に住んでいるから、それも難しいし……などと、いろいろ考えていたのですが、特にいい案が思いつかず。結局、「今は、同人誌を作りながらネットでイラストやマンガを発表して、スカウトを待とう! 高校在学中に声がかからなかったら、地元で公務員になって市役所で働こう!」と思っていました。だから、高校在学中は、同人誌を毎月1冊、発行するようにしていたんです。そうしたら高校3年生のときに出版社から声が掛かって。その後、アニメ化もする「ひめゴト」という作品でマンガ家デビューしました。「ひめゴト」がTVアニメ化した際に、声優も務めさせていただいたので、21歳くらいでマンガ家兼声優の夢は叶ってしまったんです(笑)。
──まるでマンガの主人公のようなサクセスストーリーですね(笑)。
それからマンガ家としては7年くらいずっと途切れず連載を持って現役でやらせてもらっていたのですが、自分が作ったキャラを愛してくれる読者がいるのがすごくうれしくて。自分の作ったキャラって、自分の性格の一部を切り取って膨らませた子ばかりだったので、キャラを通して自分自身も愛してもらえている感覚があって。ファンの皆さんには、幸せをたくさんいただいていました。
──幸せなマンガ家活動の中でも、最もうれしかった瞬間や達成感を感じた瞬間を教えてください。
「ひめゴト」がアニメ化した瞬間は、やっぱり何にも変えられないくらいうれしかったですね。あとは、初めて自分の単行本が本屋さんに置かれているのを見たときはちょっと泣けました。編集さんや、声優さん、ファンの皆さんに「先生」と呼ばれたときもドキドキしましたが、「本当にマンガ家になったんだ!」と達成感を感じた瞬間でしたね。
声優マンガのために、声優事務所に所属していたことも
──佃煮さんは、どのようなアイデアを源泉に、新たなマンガを生み出していたのでしょうか? キャラクターですか? それとも物語のプロットやワンシーンからなのでしょうか?
私は無から有を生み出せるタイプの作家ではないので、だいたい自分の性格の一部分を切り取ってキャラクターを生むことが多かったです。まずは、キャラクターを生み出して、そのキャラクターが遊べる箱庭として世界観や舞台を設定して。キャラクターが勝手に動き出したら、それをネームに書き起こす……という作り方でした。自分が経験した以上のことを想像で描けないので、幼い内容が多かったかもしれません(笑)。
──マンガのネタ集めとして、意識的にしていたことなどはありますか?
デビュー作の「ひめゴト」は高校時代の演劇部のメンバーをモデルに描いています。変わったことだと、「ヒロインボイス」という声優マンガを描いていたこともあるのですが、このマンガのために、一時期、別名義で声優事務所に預かり(試用期間的な契約形態)として所属していたことがあります。有名アニメのオーディションも受けさせてもらったりして、すごくいい経験をさせていただきました。あとは、アニメ、マンガ、映画には人より多く触れるようにしています。今も(YouTubeなどの)生放送でアニメについての雑談などをすると、コメント欄に出される作品はほとんど知っていて。コメントを拾って「このエピソードが好きだった」などと話すと、「忙しそうなのに、いつそんなにたくさんアニメ観てるの?」と視聴者さんに驚かれます(笑)。基本的にはマンガ制作をしながら、アニメを横で流して観ていたので、マンガ制作の時間が長くなればなるほど観ている作品も増えるというメカニズムでした。
──さまざまな情報ツールがさらに発展した今の時代だったら、そのほかにどんなことをしてネタ集めをすると思いますか?
今の時代なら、それこそ(マンガ)制作のための勉強として、YouTuberかVTuberをやっていたでしょうね。だから、今のYouTubeでの活動にも、どの道、たどり着いたのだろうと思っています。
YouTubeを研究しVTuber・犬山たまきをプロデュース
──佃煮さんは、VTuber・犬山たまきさんのプロデュースを大成功させて、2019年11月には、VTuber事務所・のりプロも設立。社長としても活躍されています。マンガ家とは異なる分野に挑戦することになった経緯を教えてください。
18歳でマンガ家デビューして、19歳~25歳くらいまでノンストップで商業活動も、同人活動もがんばっていたのですが、やはり声優やタレント業への憧れが捨てきれなくて。マンガ家として現役のときも、自分でリアルイベントを開催したり、ニコニコ生放送をやったりしていました。そんな中、キズナアイさんの登場でVTuberという文化が生まれて。「これ、私に向いてるんじゃない?」と思って、参入したのがVTuber業界でした。もちろん最初は、うまくいくなんて思ってなかったので、趣味の延長線上で「楽しくできたらいいなー」くらいにしか思っていなかったのですが、YouTube市場も勉強してみるとこれがまたすごく面白くて。基本的に新しい業界に入るときはその業界の歴史や人気な人の研究など座学から入るタイプなのですが、YouTubeの勉強は特に楽しくて毎日夢中でやっていました。そうやって、研究しつつプロデュースしていたのが“犬山たまき”ですね。
──VTuberに関する活動の楽しさ、魅力などを教えてください。
マンガ家って孤独に作品制作をするお仕事なので、ある意味孤独との戦いだと思ってるんです。アナログで原稿制作をされている先生は、仕事場にアシスタントさんが来てくれたり人との交流があると思うのですが、私のようにデジタルで原稿制作をする場合、誰とも会わずにチャットだけで完結してしまいます。だから、VTuber活動には「孤独からの解放」を求めて活動していた節があります。犬山たまきは、コラボが中心の活動をしているのですが、これはそもそもの(活動の)テーマが「孤独からの解放」なので、交流コンテンツが多いという理由もあります。
──確かに、犬山たまきさんは、対談配信などが特に人気ですね。では、マンガ家、VTuberの異なる分野で活躍してきた佃煮さんに伺いたいのですが。エンタテインメントに関わるクリエイターや、それを目指す人たちにとって、一番大事なことはなんだと思いますか?
クリエイティブを続けられるメンタルだと思います。続けることが一番難しいんですよね。9割の人は、どこかで心が折れると思っています。それくらい、クリエイティブ制作って心が折れるタイミングは多いんですよね……。
──そういうときには、どのようにしてメンタルを立て直しているのでしょうか? 佃煮さん、オススメの気分転換法などもありますか?
私は寝ちゃいますね! もしくは、心が折れたときこそ他人のクリエイティブに触れるようにしています。いいクリエイティブに触れると、もちろん嫉妬心があったりはするのですが、何よりもすごくいい刺激になってやる気が出るんです。「いいものを作れる気がしてきた!」と思えるんですよね。私は、ちょっと勘違い力が強いのかもしれないですが(笑)。クリエイティブを救うのは、クリエイティブだと思っています。
令和だからこそ読めるマンガが読んでみたい
──「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」は、ジャンルや応募者の年齢、プロかアマチュアかも問わないとても間口の広い賞となっています。審査員としては、どのような魅力を持った作品が応募されるとうれしいですか?
私は、今時らしいマンガが読みたいですね! 例えば、昨今のSNSをテーマにしているとか、令和だからこそ読めるマンガが読んでみたいです。若い層にも刺さるテーマだと思いますし、縦読みマンガは若い層が読んでくれる文化だとも思っているので、読者層を考えた作品作りをしてみてほしいです。
──審査員としては、どのようなことを心がけて、審査したいと考えていますか?
純粋に、作画力、ストーリー、構成力の総合的な力で審査させていただくと思います。私は自分が描くときはかわいい系の絵柄しか描けないのですが、読者としては、どんな絵柄でもマンガがうまければ読むタイプなので、純粋に自分が面白いと思ったマンガ、よくできていると思ったマンガを選出させていただくかと思います! とはいえ、マンガという形式を取っている以上、どんな作品でも読むこと自体が楽しいので、今からワクワクしています!
「縦読みマンガ大賞」で新たな表現を見られるのが楽しみ!
──「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」は、総額1億円の賞金だけでなく、「グランプリ・準グランプリの受賞者は、作品の認知度を高めるための各種サポートを受賞後6カ月間にわたって受けられます」という副賞もあります。
面白いですよね。どんなサポートが受けられるのか、私も純粋に気になります(笑)。
──佃煮さんは、これまでの活動の中で、「認知度を高める」ことの大事さや難しさを感じたことはありますか?
ゼロから認知度を高めるのってすごく難しいですよね。私もデビュー前、ネットにイラストを発表し始めたときは、もちろん、0フォロワーから始めたのですが……。ただ、私の場合、二次創作のイラストを描くところから始めたので、その作品が好きな方が応援してくれたんです。だから、オリジナルで最初からファンを集めたわけじゃないし、ちょっとズルなのかもしれません(笑)。それでも、数年かけて徐々に認知を得ていったので、一朝一夕でできることではないと思います。だから、気長に向き合っていくのが大事なのかなと思っています。
──では、受賞後に6カ月間もサポートを受けられるのは、かなりのアドバンテージになりそうですね。ちなみに、縦読みマンガに対して、どのような印象を持っていますか?
最初にも少しお話ししたのですが、一般的な通常のマンガ(横読みマンガ)だとコマ割りがかなり難関なのですが、縦読みマンガの場合はコマ割りの難易度がかなり低くなるので、広い層がマンガを描いてみるという体験をできることが素晴らしいと思います。また、すでにやっている作家さんも多いですが、縦読みマンガだからこその演出もいろいろとできると思っていて……。例えば、カメラワークを固定して時間経過を表したりするのは、縦読みマンガの方が表現しやすいと思います。きっと、まだまだ私が見たことのない縦読みマンガ独自の表現方法が存在していると思うので、新たなマンガ表現が見られると思うと楽しみです!
──最初に、横読みマンガのコマ割りの技術は勉強が必要とお話しされていましたが、佃煮さんも勉強をして身につけたのですか?
はい。通常のマンガのコマ割りって本当にルールがたくさんあるんですよ。感覚で描ける方もいると思うのですが、私は編集さんに徹底的に叩き込まれたタイプです。最初は、全然描けなくて、ファミレスで5時間くらい編集さんに指導していただいたこともありました。何度言われてもできないことが悔しくて、編集さんが休憩で席を離れたときに、少し涙が出たこともあるくらいです(笑)。当時は、19歳くらいで若かったし、仕方なかったなと今は思うのですが……。編集さんの貴重な時間を奪っているのも悲しいし申し訳なくもあって。家に帰ってからも習ったことを踏まえて自分で研究していた記憶があります。
──縦読みだと、コマ割りの研究をする時間やエネルギーをほかの要素の研究にも使えそうですね。では、最後に、このインタビューを読んで「Amazon Fliptoon 縦読みマンガ大賞」に興味を持ってくれた皆さんにメッセージをお願いします。
マンガ家としての第一歩を踏み出したいあなた! すでにマンガ家として活躍されている先生方! いろいろな方にチャンスがある素敵なマンガ大賞だと思います。ぜひ自分の未来のためにチャレンジしてみてください。素敵な作品を読めるのを楽しみにしています!
プロフィール
佃煮のりお(ツクダニノリオ)
4月16日生まれ、新潟県長岡市出身。2011年、わぁい!(一迅社)で「ひめゴト」の連載をスタートさせる。同作は2014年にTVアニメ化され、原作者本人が声優として参加した。そのほかの著作に「大図書館の羊飼い ~ひとりぼっちの歌姫~」「ヒロインボイス」「双葉さん家の姉弟」がある。近年はマンガ家業は休業中。VTuber・犬山たまきのプロデュースをきっかけに、VTuber事務所・のりプロの社長として活動している。
Tamaki Ch. 犬山たまき / 佃煮のりお|YouTube
2024年7月5日更新