「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」上田誠×真鍋大度|リモートで結ばれた縁、非同期テック部が語るエンタテインメントのあり方

“ウィズコロナ”の新しい生活様式が広まりつつある今、エンタテインメントにも新たな形が求められている。そこでスカパー!では、エンタテインメント業界を支援する取り組み「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」の提供を開始。同プランでは、コンテンツの配信手数料や回線費用などをスカパー!が負担し、クレジットカード決済手数料を除く、各コンテンツの売り上げをイベント主催者に還元する。

このたびステージナタリーでは、「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」の開始を記念し、コロナ禍で積極的に映像配信を行ってきたクリエイターにインタビューを実施。第1回には、2020年春にムロツヨシの呼びかけにより結成された非同期テック部から、ヨーロッパ企画の代表・上田誠と、アーティスト・インタラクションデザイナー・プログラマー・DJとさまざまな肩書きを持つライゾマティクスの真鍋大度が登場する。並行世界のムロたちが画面上で共演する「ムロツヨシショー」を生配信し、視聴者に数々の“驚き”を提供してきた上田と真鍋は、“ウィズコロナ”“アフターコロナ”のエンタテインメントのあり方についてどのように考えているのか。「ムロツヨシショー」の配信から約5カ月が経った今、非同期テック部の新たな活動に向けて再始動した2人に話を聞いた。

取材・文 / 興野汐里 撮影 / 草場雄介

「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」とは?

「スカパー!オンデマンド エンタメ応援プラン」の仕組み。

演劇や音楽、伝統芸能など、さまざまなステージイベントの主催者を対象としたエンタテインメント業界向けの支援施策。コンテンツの配信手数料や回線費用などをスカパー!が負担し、クレジットカード決済手数料を除く各コンテンツの売り上げをイベント主催者に還元する。

生配信・収録配信どちらも対応可能で、販売価格はコンテンツ提供者が決定できる。スカパー!での放送がないコンテンツも販売可能。視聴者は無料の会員登録をするとコンテンツの購入が可能になり、決済方法はクレジットカードのみとなっている。

対象期間:2020年8月から12月31日受付分まで(配信・放送は2021年3月頃まで)

利用対象:ステージ主催者(音楽、演劇、伝統芸能などのコンテンツ)

配信手数料:0%(別途、クレジットカード決済手数料2%)

回線費用(ネット回線):スカパー!負担

ジャンルの境界線にいる3人が集まった非同期テック部

──コロナ禍において、さまざまなアーティストが映像配信に取り組んでいましたが、非同期テック部では緊急事態宣言発出中の5月5日、ムロツヨシさんのInstagramで非同期テック部第1回作品「ムロツヨシショー、そこへ、着信、からの」を配信し、大きな話題を呼びました(参照:ムロツヨシ×真鍋大度×上田誠の非同期テック部、第1回作品をYouTubeで公開)。脚本・演出を上田さん、クリエイティブ・テクニカルディレクター・エンジニアを真鍋さんが担当した「ムロツヨシショー」では、上田さんが作り出すSFの世界観を、真鍋さんがテクノロジーを駆使して見事に具現化しています。配信から約5カ月が経ちましたが、改めて当時の様子についてお聞かせいただけますか?

上田誠 真鍋さんの作品を拝見していたので、「ご一緒できるんだ」といううれしさがありました。3人で作品を作るのは初めてだったんですが、最初の段階からお互いの理解度が高くて、初めてかつリモートにしてはかなり良い感じで作品が作れた気がします。

真鍋大度 そうですね。Zoom飲みしながら打ち合わせをして(笑)、すごく豊かな時間だったなと思います。ムロさんとは古くからの友人ということもあり、けっこう前から「何か作品を作ろう」と話をしていたのですが、“物語を作る人”のパーツが足りないと感じていました。ムロさんから勧められてヨーロッパ企画さんの「ドロステのはてで僕ら」を観たときに、「ああ、上田さんならやってくれそうだな」と思ったんです。非同期テック部に上田さんが入って、ようやくピースがそろった感じがしました。

左から上田誠、真鍋大度。

上田 僕も以前から、最新のテクノロジーを使った映像にしっかりとストーリーを乗せた作品を作ることに興味があったんです。ムロさんも真鍋さんもやりたいことの方向性が同じだったので、「さて、じゃあ、どのプラットフォームを使って配信しましょうか」という話になって。

真鍋 ムロさんが当時、毎朝インスタライブ(Instagram Live)をやっていたこともあり、“生”であることにこだわってインスタライブを選んだんですよね。

──生配信にこだわったのにはどのような思いがあったのでしょうか?

上田 予算と時間をかけたらどんなことでもできてしまうと思うんですけど、生って良くも悪くもできることが限られているので、最初に手をつけるのにはちょうどいいお題だったんですよね。あとムロさんも自粛期間に入ってから「今、何かアクションを起こしたい」という思いでインスタライブをやっていらっしゃったので、生配信だとより気持ちが乗りやすかったということもあると思います。

真鍋大度

真鍋 「生でしかできないことは何か?」ということは、僕も普段から考えていて。自分が担当させてもらった「リオ2016大会閉会式東京2020フラッグハンドオーバーセレモニー」や「NHK紅白歌合戦」は、“生”というコンテクストの中で見てもらうからこその面白さがあるので、「ムロツヨシショー」では生でしかやれないこと、収録ではできない表現がどういうことかを探っていました。

──お二人のユーモアあふれるアイデアはもちろん、それを実現するムロさんの俳優力が光る生配信劇でした。

上田 ムロさんとは映画「サマータイムマシン・ブルース」の頃からご一緒させていただいているんですが、いまだにまったく読めない部分があって(笑)。ムロさんって、コロナ禍のように制約が多い状況でも、自分の伝えたいメッセージをしっかり体現しつつ、エンタテインメントとして昇華されているじゃないですか。あの情熱はどこから来るのかなって……。

──真鍋さんは、ムロさんと大学時代からのご友人ですが、当時から情熱的な方だったのでしょうか?

真鍋 確かに昔から熱い男でした(笑)。「ムロツヨシショー」でも「こういう大変な状況のときに何も言わずにいるんじゃなくて、ちゃんとメッセージを伝えたい」という思いを、説教臭くならないように喜劇として立ち上げていて。なので自分のテックに関しても、ムロさんの思想につながるものじゃないといけないなと思いながら作っていました。

上田 ムロさんのお芝居、真鍋さんのテック、僕の物語をミックスして、この時期にしかできないハイブリッドなものを作り上げて……ムロさんの実行力って本当にすごいですよね。ムロさんも元々理系のご出身だし、ご自身が手がける「muro式.」にも数学的なトーンが入っているので、僕ら3人共考えていることが近かったのが意気投合したきっかけの1つかもしれません。

──理系であることのほかにも、お三方に通底しているものはあったのでしょうか?

真鍋 上田さんもムロさんも、新しいネタをすごく面白がってくれるんですよ。例えば、試験中のデモ映像とかプロトタイプにも興味を持ってくれるので、そこから可能性が広がっていくことが多かったなと思います。

上田誠

上田 そうかもしれないですね。あとは3人共、いろいろなジャンルの境界で活動している人たちだったというのが大きいかもしれません。真鍋さんもムロさんも発想の転換が上手だし、柔軟な思考を持っていて、“この観点では失敗だったかもしれないけど、別の観点で見ればこの失敗も笑えるものになるかもしれない”といったように、多角的に物事を見られる方なんです。僕も僕で、劇団で難しいことにチャレンジするときは「技術的にはハードルが高いけど、メンバーのアドリブ力とユーモアを駆使すればやれるかも!」みたいな感じでいろいろなことに挑戦していて。

真鍋 ……上田さん、こうやってどんどんハードルを上げていくんですよねえ(笑)。

上田 いえいえ!(笑) 非同期テック部のメンバーは自分の分野のハードルをどんどん上げていくから、お互いの首を絞めてるところがありましたね。