東西の若手筆頭コンビが語る現在地、エバースとカベポスターとよしもと漫才劇場 (2/2)

先輩に見てもらえる、若手が台頭できる

──お二組が所属するよしもと漫才劇場についても聞かせてください。以前の劇場から漫才劇場になって変わったことはありますか?

永見 僕らは1年目くらいのときに漫才劇場ができて、3、4年目くらいで所属できました。マンゲキになってからはけっこうな先輩方も所属されているので、僕としては先輩にネタを見てもらえる機会が多くなったのはすごくうれしいです。芸歴が近い人たちばっかりでライブしてたら気持ち的にダレちゃうときもあったりするんですけど、先輩と一緒のライブに出ると「ここは負けんとこう」とか「ここはまだ負けてるなあ」ということがはっきりわかるので。

浜田 所属前は僕けっこうお金がなくて、頬コケながら節約生活してたんです。でも所属したら、1回ライブに出るごとに(当時は)タダでオロナミンCを1本飲めたんですよ。それで1日は生き延びられるし、慣れてきてスタッフさんと仲良くなったら事務所にある山盛りのお菓子を食べられる。お菓子の補充を担当している方と仲良くなると、「これ浜田のために取っといてん」ってチョコパイをもらえるようになりました。

永見 変な成り上がりしてるやん。

浜田 さっき永見が言ったように、漫才劇場になってからはけっこう上の先輩もいらっしゃるので、営業先から持って帰ってきてくれたお弁当をもらえたりもするんですよ。最悪衣装も借りられますし、楽屋で寝られますし、衣食住すべてを助けてもらいました。

佐々木 劇場がなかったら暮らせてないじゃないですか(笑)。

浜田 ほんまに。そのおかげでバイトを減らしてお笑いに専念できましたし。今や弁当を持って帰ってくる立場になれてうれしいです。

カベポスター

カベポスター

──エバースのお二人は、最初はヨシモト∞ホールを拠点に活動していましたよね。神保町よしもと漫才劇場へ移ることになって戸惑いもあったのでは?

佐々木 そのとき僕らは5年目くらいだったんですけど、ムゲンダイの4年間は1回も上のクラスに行けたことがなかったんですよ。ずっと一番下のクラスであがいてました。でも神保町ができたら、カベポスターさんとは逆で僕らの2個上がトップっていう若手の劇場になり、先輩たちの中に埋もれていた若手が出てきやすくなったと思います。そこで頭角を現して、ムゲンダイの先輩のライブにも呼んでもらえるようになって……と、いい循環になりました。だからマンゲキになってマイナスなことは1個もないと思いますね。

町田 2カ月に1回みんなでちゃんと戦うのもいいですよね。2カ月間どれだけがんばってきたか試されるので。それを積み重ねていれば年6本はいいネタができますし。かつ寄席もあるのがありがたいです。前はバトルだけしかなかったので。

佐々木 一番下のクラスだと寄席には出られなかったんですよ。

町田 寄席とバトルがあることによっていいネタが生まれたり、磨いていけたりする。いい環境ですね。

永見 ちょっとここまで褒めすぎてるから、強いてよくないところを言うなら?

町田 よくないところですか? 東京で言うと、若手だけで集まって空気が生ぬるいときはあります。

一同 あはははは!(笑)

町田 大阪のほうがけっこう上の先輩もいるからキュッとしている感じありません?

佐々木 確かに。町田、リハとか平気で遅れてくるもんな。

永見 自分がその生ぬるさに浸かってるんや(笑)。

町田 まあまあまあ……。でも渋谷の漫才劇場ができてからは先輩と一緒になることも増えてだんだんよくなっていると思いますけどね!

エバース

エバース

優しい環境でも“ピリッ”は残したい

──ちなみに東西のマンゲキで違いは感じますか?

佐々木 大阪はオープニングでけん玉とかやっていた(※)のはびっくりしました。

※編集部注:大阪の漫才劇場ではけん玉芸人、ラップ芸人、サッカー芸人など、土日の寄席でスペシャルアクトが展開されている。

永見 言われてみれば、確かに最初はびっくりしてた。けん玉芸人でびっくりする神経をもうなくしちゃったわ。

町田 土日寄席が毎回埋まってるのはすごいですよね。

浜田 え、埋まってない日ある?

町田 神保町は120くらいのキャパですけど、埋まってない日もありますね。僕らが大阪に来させてもうらうときは毎回埋まっていて、若手であの環境を経験できるのはいいなと思います。東京だと300キャパの劇場に3、4年目の若手が出ることってあんまりないので。

浜田 逆に言うと、神保町はお客さんの顔を見ようと思ったら全員の表情が見えるんですよ。それがいいなあと思いますね。自分たちのボケが1文字1文字、端っこまで伝わるので。あとちっちゃいことで言うと、僕はお笑いライブのときって気合い入れてステージ袖までの階段を降りていくんですね。大阪のマンゲキやとクッと曲がって行けるんですけど、神保町はらせん階段を降りないといけなくて。ちょっと気合いが柔らかくなっちゃいますね。

──直線のほうが気合いが入る?

浜田 夏休み、おじいちゃん家に行くときの歩道橋でしからせん階段って使わないので。

永見 お前の思い出の中すぎるなあ(笑)。

カベポスター

カベポスター

──今回のMCもそうですが、劇場を引っ張っていく立場を任される機会が増えていますよね。「こういう劇場にしたい」という意気込みや、「こうなったらいいな」という理想像はありますか?

浜田 ほんまに自分たちが引っ張る立場なんか?というのは正直思っていて。入りたてのときに見ていたアインシュタインさんや見取り図さんみたいになれている気がしていないんですよね。ちゃんと集客もあって、面白い芸人さんやネタがたくさんあって、賞レースの結果が出るような、スターを輩出するような劇場にしたいという思いはありますけど、自分にできることは、廃れさせないで次の世代にパスすることくらいかなと。自分で何かどんどん仕掛けるぞ、というのとは違うんですが、そんな感覚ではいます。

永見 昔より縦社会みたいな雰囲気が薄くなって、先輩後輩も仲良く、理不尽なことがないのはいいなと思うんですが、そういう優しい環境やからこそ僕はどこかピリッとさせたいです。

──ピリッとさせたい?

永見 先輩に挨拶したときに「おいっすー」と返してくれて、すごく優しい笑顔なんですけど僕はどこか“ピリッ”を感じるんですよ。何回も挨拶して、慣れてきたら優しい人だとわかって“ピリッ”は感じなくなるんですけど、あまり関係性がないと同じ笑顔でも“ピリッ”を感じるじゃないですか。そういうふうな挨拶をしたいです。ちょっとした“ピリッ”を残すような。それを目標にしたいです。

浜田 それどうやって文字にすんねん。

──笑顔ではあるんですよね?

永見 笑顔です。でもどっかで“ピリッ”を残したい。

町田 ぜひそれは永見さんにやってほしいです。

永見 ありがとう。町田もやってみれば?

町田 僕がやると変な感じになるので。永見さんとか佐々木にやってほしいです。

──お二人が“ピリッ”担当。

永見 じゃあ町田は“ピリッ”じゃない担当なんや。

町田 僕はそうですね。

──では何を担当されるんですか?

町田 はい? いや、僕は遠くから見てます。各々でがんばろうって感じです。

浜田 でも今はもう「町田さん、町田さん」になってるんじゃないん? 後輩から「飯連れてってください」とか言われるやろ。

町田 ないです、ないです。

永見 お前はじゃあ劇場の誰でもないん?

佐々木 あはははは!(笑)

町田 すいません、いったん佐々木に聞いてもらえますか?

──佐々木さんは劇場でどんな存在になっていきたいですか?

佐々木 「M-1」とかで結果を出したり、テレビに出て人気者になったりして劇場を卒業していくと思うんですけど、劇場への恩返し期間はちゃんと設けて、今までお世話になった分、貢献してから後輩たちにその座を譲りたいですね。売れてすぐ卒業するとか、逆にずっといる老害みたいにはなりたくないです。恩返しして、ほどよい時期が来たら卒業する。それが一番劇場を活性化させることに繋がるんじゃないでしょうか。

──素敵な考えです。では町田さん。

町田 先輩のことを怖がらせつつ、逆に下からの「勝つっしょ、エバースに」みたいな勢いに俺らもちょっと怖がりながらも、「まだまだ負けねえぞ」というところを見せたいです。

──お互い刺激しあって高めあっていくということですね。

エバース

エバース

カベポスター

カベポスター

完全に等身大の僕をお送りできると思います

──せっかくこういう場ですので、お互いに聞きたいこと、伝えておきたいことがあればぜひ。

浜田 今年、「M-1」のネタどんな感じですか?

町田 あります。

浜田 ある? 2本?

町田 3本です。

浜田 ほんまに? 「ABC」も優勝して勢いもあって、怖いコンビです。

参考記事:エバース町田が宣言「ネタはあります」作ってる作ってないとかの話じゃない

──決勝で戦う可能性もありますね。

永見 戦いたいね。

町田 そうですね。それを言ってもらえたのがうれしいです。カベポスターさんにそんなことを言われるようになったんだなっていう感慨深さはありますよ。2年くらい前から考えると。

佐々木 僕からも質問いいですか? 東京に来ることは考えているんですか?

町田 ここでは答えづらいだろ(笑)。

浜田 それは答えられないんですけど、僕がエバースに聞きたいのは、1LDKで18万円くらいで住める駅ってある?

佐々木 東京来ようとしてるじゃないですか(笑)。

エバースとカベポスター。

エバースとカベポスター。

──込み入った話は取材のあとにしていただければと(笑)。「オールマンゲキTOKYO」の前日にはカベポスターのお二人が出演している「ワチャラチャ忍忍」初の東京での公開収録がありますよね。最後にその意気込みも聞かせてください。

浜田 「一人前のおもしろ忍者になるための修行」という設定でいろんな企画に挑戦する番組なんですけど、ほんまの僕ではないと思って観てほしいです。いい意味でも悪い意味でも1ギア入れているので、東京の人に伝わったらいいなと思います。

──珍しい浜田さんが見られるわけですね。

永見 目立ってなんぼの“お調子者忍者”というテーマなんですけど、完全に等身大の僕をお送りできると思います。

浜田 お前そうなん!?

永見 そのままの僕です。

佐々木 ギア入れてないんですか?

永見 ギア入れてない。

浜田 素でいけてんねや。

永見 ナチュラルで忍者してます。

──ありがとうございます(笑)。どちらのイベントも楽しみにしています。

※アイロンヘッド×ツートライブのインタビューはQJWeb、金魚番長×例えば炎のインタビューは「Quick Japan vol.179」で公開! 併せてチェックを。

エバースとカベポスター。

エバースとカベポスター。

イベント情報

夏のマンゲキ2DAYSジャック in IMM THEATER

マンゲキネタ祭りTOKYO

日時:2025年8月12日(火)14:30開場 15:00開演 16:00終演

<出演者>
アインシュタイン / 見取り図 / カベポスター / ダブルヒガシ / フースーヤ / 天才ピアニスト / 蛙亭 / 滝音 ほか


カベポスター・ダブルヒガシ・天才ピアニスト・フースーヤの推してまえ!ワチャラチャ忍忍 TOKYO

日程:2025年8月12日(火)
第一部:16:30開場 17:00開演 19:00終演
第二部:19:30開場 20:00開演 22:00終演

<第一部出演者>
カベポスター / ダブルヒガシ / 天才ピアニスト / フースーヤ
ゲスト:アインシュタイン / ダンビラムーチョ / EXIT兼近 / オダウエダ / 世間知らズ / エバース / 家族チャーハン

<第二部出演者>
カベポスター / ダブルヒガシ / 天才ピアニスト / フースーヤ
ゲスト:見取り図 / からし蓮根・青空 / エルフ / 9番街レトロ


オールマンゲキTOKYO~漫才劇場×渋谷×森ノ宮×神保町の4劇場から大集結!巻き起こせマンゲキ旋風~

日程:2025年8月13日(水)
第一部:11:30開場 12:00開演 14:00終演
第二部:14:30開場 15:00開演 17:00終演
第三部:17:30開場 18:00開演 20:00終演

<出演者>
東京:ダイタク / デニス / カラタチ / kento fukaya / ダンビラムーチョ / ニッポンの社長 / さや香 / ケビンス / 紅しょうが / 素敵じゃないか / エルフ / 9番街レトロ / シンクロニシティ / ナイチンゲールダンス / めぞん / ヨネダ2000 / 家族チャーハン
大阪:黒帯 / ダブルヒガシ / ドーナツ・ピーナツ / 天才ピアニスト / フースーヤ / cacao / ジョックロック


プロフィール

エバース

佐々木隆史(ササキタカフミ)
1992年11月6日生まれ、宮城県出身。

町田和樹(マチダカズキ)
1992年4月24日生まれ、神奈川県出身。

NSC東京校21期生として出会った2人で結成。2016年4月にデビュー。リアルな会話に重きを置いた標準語のしゃべくり漫才が武器で、2023年に「M-1グランプリ」準決勝に初進出し注目を集める。2024年は「ツギクル芸人グランプリ」「第45回ABCお笑いグランプリ」「マイナビLaughter Night」「M-1グランプリ2024」で決勝進出するなど躍進。「NHK新人お笑い大賞」では自身初タイトルを獲得した。2025年6月に「第46回ABCお笑いグランプリ2025」で優勝。「OH!バンデス」(ミヤギテレビ)の火曜コーナー「エバースの卵 ~宮城のガチでエッグいものを探せ~」、「GURU GURU!」(J-WAVE)木曜ナビゲーターを担当。「夜明け前バラエティ トワライト」(テレビ朝日)に出演中。

カベポスター

永見大吾(ナガミダイゴ)
1989年12月19日生まれ、三重県出身。

浜田順平(ハマダジュンペイ)
1987年4月28日生まれ、大阪府出身。

共にNSC大阪校36期出身。2014年5月に結成。緻密な構成と大喜利的な発想が細部まで冴えわたるネタが魅力で、「上方漫才協会大賞」の文芸部門賞をこれまでに3度獲得している。2022年は3月に「ytv漫才新人賞決定戦」、7月に「第43回ABCお笑いグランプリ」で優勝。また「M-1グランプリ」では2022年、2023年の2年連続決勝進出している。「キングオブコント」にも挑戦しており、2024年には準決勝進出した。また永見は「R-1グランプリ2023」ファイナリストでもある。「おはよう朝日です」(ABCテレビ)木曜隔週レギュラー。「ワチャラチャ忍忍」(サンテレビ)、「カベポスターのMBSヤングタウン」(MBSラジオ)に出演中。