お笑いナタリー Power Push - NSC・YCC・YOEC特集
博多華丸・大吉×YCC出身マネージャー ちゃんとお笑いが好きな人と築く信頼関係
あのアンケートがなければ、僕は今ここにいないかもしれない
──前任のマネージャーさんはどんな仕事ぶりが「優秀」だったのでしょうか。
大吉 本当に簡単なことなんです。今のテレビって事前アンケートが基本になっていて、あらゆる番組からアンケートが届くんですね。で、そのアンケートを「ちゃんと渡す」。これをできない人が実はすごく多い。よしもとのマネージャーは1人で何組も抱えていますから、さばききれないんです。その結果どうなるかというと、番組からしたら、アンケートが返ってこない=やる気がないと理解する。そして次の会議で名前が挙がったとしても、「この前のアンケートに答えてくれなかったから別の人にしよう」という判断でその芸人の出番がなくなる。そういうことが、前任はなかったね。
華丸 うん。
大吉 それでいうと、僕が「焼却炉の魔術師」で「アメトーーク!大賞」を獲った「中学の時イケてないグループに属してた芸人」は、出られなかった可能性もあったんです。クラブ好きのマネージャーがそのままクラブでなくしたと思うんですけど(笑)、アンケートが僕のもとに届かなかった。たまたま番組スタッフと僕らのスタイリストさんが仲良くて、「アンケート届いていませんか? スタッフさんが心配してますよ」って伝えてくれて。ギリギリ間に合うと聞いて、誠意を見せたくて1枚のアンケートでしたが裏までびっしり書きました。「焼却炉の魔術師」とか「捕虜」とか記憶の限り書けるだけ書いて、その結果「アメトーーク!大賞」をいただけた。あのアンケートがなければ、僕は今ここにいないかもしれないんです。
──そんな裏があったとは。
大吉 小さいことのように思えるんですが、当たり前のことをちゃんとこなすのが「優秀」なのかなと。あと、女性のマネージャーって、例えば「月曜4本、火曜2本、水曜4本、木曜4本」っていうスケジュールだと、火曜の「2」が気になってしょうがないんですって。「あと2足せば4になって、数字が揃う!」って思ってガンガン仕事を入れようとするんです。そのために局回りしてくれたり、いろんなところで売り込んでくれて。それをやってくれるマネージャーもいれば、やってくれないマネージャーもいますから。
華丸 みんな最初はするんやけどね。継続するのが難しい。
──黒田さんはアンケートをちゃんと渡していますか?
黒田 ちょうど今、3つくらい来ています(笑)。このあと渡します。
華丸 アンケートを書かない人だったら急かすっていうのも大事。「書きなさい、書きなさい」って売れっ子マンガ家と編集者みたいな。
大吉 あとはスベったら「そんな日もありますよ」、ウケたら「さすがですね」と、おべんちゃらでも声をかけてくれたりとか、ケアしてくれるマネージャーは好かれると思います。
「自分で決めた道だから」っていう覚悟を決めさせてくれた学校
──黒田さんが仕事をするうえで大事にしていることを教えてください。
黒田 華大に関して言うと、楽屋の雰囲気がすごく明るいので、それを損なわないように楽しくいようと心がけています。
華丸 何それ? 芳香剤みたいな? それともフラワーロック的な?
大吉 マネージャーは楽屋に入らないで扉の前に立っているっていうスタイルが多いんですが、僕たちはそれが嫌で。だから極力楽屋に入ってもらって、ご飯を食べたり、ダラダラしたり、一緒にしようという方針で、歴代のマネージャー全員とそうやってお付き合いしてきました。ただ、黒田は最近ちょっと調子に乗っている節がありますけどね。華丸と2人でキャッキャキャッキャ言って“「IPPONグランプリ」ごっこ”とかやっている。
──あはははは(笑)。
黒田 その話はやめてください……。
華丸 「IPPONグランプリ」に憧れてるんですよ、こっちは!
大吉 ダジャレ言い合って、ドゥドゥドゥドゥドゥ……IPPON!とか2人でやっているんです。
華丸 だって僕らは出られないもんねえ?
黒田 僕は出られないですけど、華丸さんはチャンスありますよ。
大吉 まあ、そうやって付き合ってくれているのはうれしいです。
──黒田さんはYCCで学んだことを現在の仕事にどう生かせていますか?
黒田 この業界で働く厳しさは常々教えてもらっていました。僕は自分がやりたくてこの道に進んだので、怒られてヘコんでも「自分で決めた道だから」って思える。そういう覚悟を決めさせてもらったと思っています。
「M-1」の審査員席に並ぶ大吉さんが誇らしかった
──「M-1グランプリ2015」ではジャルジャルの代わりにネタ順の抽選会に出席されていましたね。
黒田 くじ引きはかなりプレッシャーがありました。ただその抽選会にジャルジャルが出られない理由は僕が仕事を入れているせいなので、僕が責任を持つしかない。「どうとでもなれ」と思って引きました。
華丸・大吉 「どうとでもなれ」……?(笑)
──結果は?
黒田 5番手を引き当てて、当日ジャルジャルはトップで最終決戦に進みました。
──担当芸人が「M-1グランプリ」など大きな大会に臨むときに、マネージャーとしてできることは何ですか?
黒田 ジャルジャルと「M-1」の現場に行かせてもらいましたが、現場自体がピリピリしているんです。僕の顔を見て緊張をほぐしてもらうっていうわけじゃないですが、僕があまり緊張しないように振る舞いました。ネタに関しては、神聖なものだと思っているので、「こうしたほうがいい」っていう強い意見は言いません。ですが、当日何をやるのか聞いて、それに対して個人的な思いは伝えます。
──最近だと大吉さんは「M-1グランプリ2016」で審査員を務めましたが、黒田さんの顔を見て緊張は和らぎましたか?
大吉 何にも変わりませんよ!(笑) 僕らは「M-1」には出ていないんですが、自分たちがネタをやって人生変えるのと、若い子が死に物狂いでやってきたものに点数をつけて彼らの人生を変えるのは、意味がまったく違うので。よく生きて帰ってこられたなと思います。気が遠くなりました。
──その様子を黒田さんはどうご覧になっていましたか?
黒田 芸人さんたちも、常に最前線で漫才をやっている大吉さんに点数をつけられたいだろうから、大吉さんに「M-1」の審査員を、というのは妥当なオファーだと思いました。審査員席のセンターに大吉さんがいるっていうのがとても誇らしかったです。
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スクール案内
2017年4月入学生募集中
- よしもとクリエイティブカレッジ(YCC)
- よしもとクリエイティブカレッジは2008年度にNSCの姉妹校として誕生。各種番組やイベント、ライブなどに携わるスタッフや、クリエイター、構成作家の養成を目的としている。芸人や構成作家、放送局のプロデューサーといったプロを講師に迎えた特別講座多数。卒業生は吉本興業グループ関連会社をはじめ、テレビ局や制作会社、芸能プロダクションなど、エンタテインメント業界で活躍している。
- 第3次募集締切:2017年2月末日(必着)
- 第4次募集締切:2017年3月末日(必着)
- 吉本総合芸能学院(NSC)
- 吉本総合芸能学院(NSC)は1982年に大阪校が開校して以降、さまざまなタレントを輩出。2015年には東京校出身のトレンディエンジェルが、2016年には大阪校出身の銀シャリが「M-1グランプリ」王者に。新人オーディションなど芸人としての実力を試すチャンスが豊富で、成績優秀者は在学中から舞台やテレビなどで仕事の現場に立つ。
- 第3次募集締切:2017年2月末日(必着)
- 第4次募集締切:2017年3月末日(必着)
- よしもと沖縄エンターテイメントカレッジ(YOEC)
- よしもと沖縄エンターテイメントカレッジは2011年4月に開校。独自の芸能文化が根付いている沖縄での新たな才能の発掘を目指す。「沖縄から世界に発信するコンテンツを」という志を掲げてタレントやスタッフ志望者によしもと流のノウハウを教えている。沖縄国際映画祭など県内各所で行われるイベントにて実践を積む機会も多数。
- 願書受付締切:2017年4月末日(消印有効)
博多華丸・大吉(ハカタハナマル・ダイキチ)
左 / 博多華丸(ハカタハナマル)
1970年4月8日生まれ。福岡県出身。
右 / 博多大吉(ハカタダイキチ)
1971年3月10日生まれ。福岡県出身。
1990年結成。福岡で活動したのち、2005年に上京した。「THE MANZAI 2014」優勝者。漫才を主としながら、華丸は「R-1ぐらんぷり2006」で、大吉は2015年に「IPPONグランプリ」、2016年に「ダイナマイト関西」で優勝するなど、個々でも活躍する。
2017年3月16日更新