お笑いナタリー Power Push - NSC・YCC・YOEC特集

“雑草軍団”から「M-1」王者へ! 銀シャリが語るNSCの強み

吉本総合芸能学院(NSC)では2017年4月の入学生を募集している。先日NSC大阪校が「M-1グランプリ2016」王者の銀シャリを講師に迎え、特別授業を開催した。これにあわせてお笑いナタリーでは同校出身の銀シャリにインタビューを実施し、NSC入学から「M-1」優勝に至るまでの道のりを聞いた。

銀シャリは「M-1グランプリ」第1回大会後の募集で900人が集まった、NSC大阪校25期生。数々の解散を経て「これが最後」と2005年にコンビを組んだ。かつての自分たちと同じように、コンビについて、芸について悩む現役NSC生に、特別授業で何を語ったのか。本稿ではその様子もレポートする。

取材・文 / 狩野有理 撮影 / 日吉"JP"純平

NSCとは

NSC大阪校25期生の銀シャリ。

NSCの略称で知られる「ニュー・スター・クリエイション」は、ダウンタウン、ナインティナインなど数多くのスターを生み出してきた芸人養成所。漫才やコントなどで必要な基礎として、発声や演技はもちろんのこと、ネタ見せや大喜利・トークなどのコーナーに対応する授業も設けられている。業界の第一線で活躍する作家・タレントが講師を務めており、プロの視点から実践的なアドバイスがもらえるのが特長。多くの同期と切磋琢磨できるのも魅力の1つで、銀シャリの同期にはジャルジャル、プラス・マイナス、アキナ秋山、ヒューマン中村、もりやすバンバンビガロといった多彩な芸人がいる。

インタビュー

「M-1」決勝、トイレの位置を知っているのは意外とデカい

──「M-1グランプリ」優勝おめでとうございます。あれから1週間過ごされて(インタビューは12月12日に実施)、いかがですか?

橋本直 ありがとうございます。1週間、長かったなあ。

鰻和弘 1日1日が濃いな。

橋本 1日が終わるのは早いんですけど、いろんなお仕事させてもらっているので長く感じます。「まだ1週間か……」っていう。でも大阪に帰ってくると落ち着きますね。

──惜しくも2位だった昨年の「M-1」決勝と、意識して変えたことや気持ちの面で異なったことがあれば教えてください。

橋本 より“2人の感じ”を出す、ということでしょうか。今年は会話のラリーが多かったと思います。ボケてツッコんで、というよりも、グラデーションのように会話を進めてより素の状態に近いまましゃべることを意識したかもしれません。

 要領がよくなりました。バイトでも、初出勤と2回目だと違うじゃないですか。そういう気持ちの余裕はありました。トイレの位置も知ってますし。何がどこにあるか把握してるっていうのは細かいことなんですけど、意外とデカいです。

──決勝のステージでは昨年よりも楽しんでいらっしゃるように見えました。

左から鰻和弘、橋本直。

橋本 それが、前回もそんなに緊張はしてなかったんです。めっちゃ楽しくできたと自分たちでは思っていたんですけど、前日に昨年の映像を観たら「まだ硬いなあ」と思いました。

 当日はほんまに緊張しなかったんですけどね。

橋本 漫才してるときと、終わった直後に見返したときは「楽しそうにやってるな」と思っていたんです。でも1年経って観たら「もっと楽しめるぞ」と。

 今年は本当にリラックスしてやれました。

橋本 お客さんが本当に温かくて、乗せていただいたっていう感じもあります。

正直、戦いへの興味はまだあります

──今年はバトル系のライブで好成績だったり、5月に「上方漫才大賞」で奨励賞を受賞したり、1年を通じてノッている感じがありました。

橋本 優勝したら150の出番をもらえるルミネtheよしもとのバトルがあって、僕ら2回連続で優勝してるんです(参照:銀シャリ、バトル2連覇でルミネ150ステージの追い鰹!とろサーモン久保田は帰る)。そのおかげで舞台数は飛躍的に増えました。単独ライブに向けてネタを作って、やっていて楽しいものをほかの舞台にかけてみて、調整して……という作業だったので、「M-1」だけを意識することはなかったですし、変に力んだりはしていませんでした。

──初めて「M-1」の決勝に進んだのは2010年でしたが、そのときはどんなお気持ちだったのでしょうか。

橋本直

橋本 あのときは“滑り込みセーフ”です。「M-1」に出たくてお笑いを始めたので、最後の大会で決勝に滑り込んだ。もうそれだけで、優勝なんか意識した瞬間はなかったです。

 甲子園で、ベンチから試合を見ている感じ。決勝の余韻に浸っていました。

──ちなみに2012年には「キングオブコント」でファイナリストになりましたね。

橋本 よく覚えてますね!(笑) コントも漫才の延長線上というか、僕たちとしてはやっていることは同じです。両方やっていたら「M-1」まで遠い気がしたので一旦漫才1本に絞ったんですけど。ジャルジャルやさらば青春の光はコントメインですが両方で活躍してますし、ボーダーレスだと思っています。機会があればまた「キングオブコント」に挑戦したい。ただコントやりだしたら、ほんまにライスとどっちかわからなくなりますね(笑)。

 「キングオブコント」もそうですし、「R-1ぐらんぷり」もがんばりたいんですよ。全部がんばりたい。

──ですが「M-1」で優勝して、もう戦わなくていい漫才師生活が待っているはずです。

橋本 正直、戦いへの興味はまだあります。あのヒリつきってたまらんものがあって。「M-1」でいうと準決勝なんですけど、百戦錬磨の芸人さんたちがオエーってえずくことってほかにないんです。9月くらいからネタを改良していくあの作業がなくなるのもちょっとだけ切なくもあって。もちろんせっかくチャンピオンになったので、バラエティでがんばりたいっていう気持ちもあります。まだ賞レースに出ていたら夢がないですから(笑)。並行してできたら一番いいんですけどね。

「お笑いやりたい」って気持ちをあきらめるためにNSCに入った

──デビュー前のお話を聞かせてください。お二人が芸人になろうと思ったきっかけはなんですか?

 僕はめっちゃ簡単な理由でこの世界に入ってしまいまして。チャンネル権を持ってる親父が出張している間だけ自由にテレビを観られたんですが、「ダウンタウンのごっつええ感じ」「風雲!たけし城」などのバラエティや、漫才番組を観ていて、「しゃべっててお金をもらえるって、なんていい職業なんや!」って。入ってから考えの甘さに気付きました。

橋本 鰻はNSCに入った頃の芸風と全然違いますよ。(ダウンタウン)松本さんに憧れてましたから。今はまったくの別物になってます。

鰻和弘

 なれると思ってましたからね(笑)。完全に舐めてました。今となっては、僕芸人さんってめちゃくちゃ尊敬してるんです。だから、「あの芸人面白くない」って言う人、めっちゃ嫌いです。絶対に何かは面白いですもん!

橋本 何の話してんの? 質問はきっかけについてやから!

──(笑)。橋本さんは大学を出てらっしゃいますよね。

橋本 はい。4回生のときにNSCに入りました。

──卒業したらお笑いをやるつもりでいたのでしょうか。

橋本 やりたいとは思っていたんですけど、学校がエスカレーター方式だったので中学、高校、大学と勝手に上がっていくから決断のタイミングがなかったんです。それでずっとなあなあに過ごしてきて、就職活動でエントリーシートを書いてるときに「いよいよやりたいことやらんとヤバいぞ」と思いはじめました。ちょうど「終身雇用の崩壊」とか「就職氷河期」と言われていた時代だったので、どっちにしても保証がないんだったら1回やりたいことやって、無理だったら就職すればいいと考えたんです。どうせ成功するのは無理だから、「お笑いやりたい」って気持ちをあきらめるために1年入ってみた感じ。「面白そうな世界やなー」って思いながら別の仕事に就くのは嫌だったので。「自分には無理やった」とわかったうえでその先お笑いを見たかったんです。

──お笑いの世界に入るにあたって、NSC以外の方法は考えましたか?

 いや、芸人さんのなり方なんてそれ以外に知らなくて。NSCの一択でした。

橋本 好きで観ていた「すんげー!Best10」に出ていた人たちがほとんどNSC出身で。NSCに入らないと始まらないというか、売れている人がみんなNSC出身ってことはNSCに行けば何かあるんじゃないかと思って入りました。

スクール案内

2017年4月入学生募集中

吉本総合芸能学院(NSC)
吉本総合芸能学院(NSC)は1982年に大阪校が開校して以降、さまざまなタレントを輩出。2015年にはトレンディエンジェルがNSC東京校出身者としては初の「M-1グランプリ」王者に。新人オーディションなど芸人としての実力を試すチャンスが豊富で、成績優秀者は在学中から舞台やテレビなどで仕事の現場に立つ。
  • 第3次募集締切:2017年2月末日(必着)
  • 第4次募集締切:2017年3月末日(必着)

詳しくはこちらまで

よしもとクリエイティブカレッジ(YCC)
よしもとクリエイティブカレッジは2008年度にNSCの姉妹校として誕生。各種番組やイベント、ライブなどに携わるスタッフや、クリエイター、構成作家の養成を目的としている。
  • 第3次募集締切:2017年2月末日(必着)
  • 第4次募集締切:2017年3月末日(必着)

詳しくはこちらまで

よしもと沖縄エンターテイメントカレッジ(YOEC)
よしもと沖縄エンターテイメントカレッジは2011年4月に開校。独自の芸能文化が根付いている沖縄での新たな才能の発掘を目指す。「沖縄から世界に発信するコンテンツを」という志を掲げてタレントやスタッフ志望者によしもと流のノウハウを教えている。沖縄国際映画祭など県内各所で行われるイベントにて実践を積む機会も多数。
  • 願書受付締切:2017年4月末日(消印有効)

詳しくはこちらまで

銀シャリ(ギンシャリ)

銀シャリ

左 / 鰻和弘(ウナギカズヒロ)

1983年8月31日生まれ。大阪府出身。NSC大阪校25期生。

右 / 橋本直(ハシモトナオ)

1980年9月27日生まれ。兵庫県出身。NSC大阪校25期生。

2005年8月にコンビ結成。「第28回ABCお笑い新人グランプリ」新人賞、「第40回NHK上方漫才コンテスト」優勝、「第2回ytv漫才新人賞」優勝など受賞歴多数。関西では多数のレギュラー番組を持つ。2015年7月、結成10周年を記念する単独ライブをなんばグランド花月にて開催し、エンディングで鰻が結婚を発表。今年2016年は5月に「上方漫才大賞」で奨励賞を受賞、12月に「M-1グランプリ2016」で優勝を果たした。


2017年3月16日更新