「大脱出」藤井健太郎×「インシデンツ」佐久間宣行|DMM TV配信コンテンツを2人は互いにどう見たのか (2/2)

ルールやシステムが美しくて整合性が取れている

──それぞれ全6話の続きもので、尺も自由で、というのは制作する上で難しさはありましたか?

佐久間 地上波の全12話だと持て余すことがあるので、全6話だとタイトにやりたいことができるかなとは思いました。これまでも配信の番組をいろんな場所で作ってみて、1話から2話の“離脱率”を見て「離れられることが多いな」と。今回は「1話の終わりにビックリさせる」というルールを1個だけ決めて、ああいう形式にしました。うまくいったんじゃないかなと思います。

藤井 僕は「クロちゃんので1話」「誰々ので2話」みたいに1話完結のスタイルで進みながら展開していく形を考えていました。ただ撮ってみて編集してたら違うなと思って、カットバック(複数の場面を交互に入れていく形式)にしました。全6話を見終わってカタルシスというか、“見終わり感”がいいものにしたいなとは思って作りました。

佐久間 編集してみて「こっちのほうが面白いな」と当初の予定をひっくり返すことはよくありますよ。

左から藤井健太郎、佐久間宣行。

左から藤井健太郎、佐久間宣行。

──互いの番組について、具体的に面白いシーンなどがあれば教えてください。

藤井 僕は「インシデンツ」の森田くんの、“あのシーン”が面白かったです。

佐久間 “あのシーン”が満場一致で通る会議だったのでよかったです(笑)。

藤井 あれは思いついたら絶対やりたいですもんね。

佐久間 僕は本当に藤井さんのルール作り、ですね。「水ダウ」のいろんな企画とかも、とにかくルールが破綻してないんですよ。ルールやシステムが美しくて整合性が取れている。僕は面白さのためにルールを破綻させることをやっちゃうんですけど。

──お二人は企画をどういうときに考えられるでしょうか?

藤井 僕は考えようと思って考える瞬間は少ないです。「水曜日のダウンタウン」は毎週違うことをやっているので、その中身に関して日々回していきながら、その中で思いついた「これは番組の中に収まらないやつだから」というのはあるんですけど、「この枠に当てはめよう」と思って何かを考えるという作業はあんまりしていないです。“ゼロイチ”のものは会議中より、ふとした瞬間に思いつくことが多いです。

佐久間 全然関係ない映画とかを観ているときのほうが思いつく感じです。「SICKS」の構造は「キャビン」を観ていたときに思いついたのかな。「まどマギ」(「魔法少女まどか☆マギカ」)の映画から「これをお笑いでできないかな」と思いついたこともあります。全然関係ないものがお笑いに結びつくことは多いです。

佐久間宣行

佐久間宣行

過酷な環境に置かれて人間性が面白く出そうな芸人

──取材の時点で「インシデンツ」はすでに配信中です。佐久間さんは視聴者からの反応にどんな感想を抱いていますか?

佐久間 面白いなと思って反応を見ていますよ。喜んでもらった人が多いなと思いながら、自分が思った受け取り方をしてもらえないこともたくさんある(笑)。それは「ああ、なるほどな」と思うし、「次にやるときはここをもうちょっと強調したほうがいいのかな」と。そういうのは毎回出てきますね。

──藤井さんはご自身の番組に対する反響は気にされますか?

藤井 最低限はチェックしますけど、気にしないほうだとは思います。リアクションを受けて中身にそれを反映する、ということは基本ないと思います。

──今回それぞれ番組を制作して、「この芸人のこんなすごいところがあった」などの発見があれば教えてください。

佐久間 「(オードリー)春日ってコントうまいな」って思いました。若林くんが当て書きしたネタをずっとやってきた人なので、役を与えられると“やる”んですよ。あんまりコントをやっていなかったと思うので「春日をコントに使いたいな」と思っていて。あとは(アルコ&ピース)平子の芝居がうまくて面白い(笑)。ちょっと古いところもあるのが「コントとドラマの間で面白い」とずっと思っていました。笑っちゃうのとカッコいいのと、というところに平子がピッタリだなと。あと、芸人じゃないけど伊藤健太郎くん。舞台でけっこう見ていて、たぶん世間の受け取り方より何倍も芝居がうまいなと思っていたので、出てほしいなと思っていました。

藤井 僕のほうは「過酷な環境に置かれて人間性が面白く出そう」みたいなものが念頭にあって。トム・ブラウンみちおさんとか、ちょっと変な人だから、実験としてどうなのかなというのは興味がありました。あと高野さんでもっといろんなパターンを見てみたいとは思っています。

──その高野さんと岡野陽一さんが組んでラジオに投稿する脱出企画もあります。ラジオと言えば、佐久間さんもプロデューサーだけでなく「オールナイトニッポン」などのパーソナリティとしての印象も強いです。

藤井 配信には入っていないんですけど、実は佐久間さんのラジオも2人はこの撮影中に聴いていて、「リアクションメール募集してるわりに全然読まないじゃないか」って文句を垂れているんです(笑)。

佐久間 そうなんだ(笑)。たしかにネタメールはよく読むけど、リアクションメールはそこまで読んでいないんだよな。高野、送ってくれていたのかな。

藤井 読まれやすいようにタレコミみたいなのも添えて送ってましたね(笑)。

佐久間 ラジオのリアクションメールは3つくらい“フィルター”を通して僕のところに来るんですよ。作家、ディレクター、チーフ作家のフィルター。なので僕自身は選んでいなくて、自分のところに来たものを読む流れなんです。

──「クロちゃんを首まで埋める」という状況を拝見して、「大丈夫かな?」と心配になる部分もありました。クロちゃんに対する最低限のケアみたいなものはあるでしょうか?

藤井 まあ、そのへんは……結果的に大丈夫だったんで大丈夫です(笑)。ただ、収録の季節がずれ込んで「寒い」というのがけっこう強く出てきたという状況は予想外でした。もともと、そんなに寒い時期にやってやろうと思ったわけではなかったんですけど、なんにしても「クロちゃんを首まで埋める」という念願をDMM TVで叶えることができてよかったです(笑)。

左から藤井健太郎、佐久間宣行。

左から藤井健太郎、佐久間宣行。

プロフィール

佐久間宣行(サクマノブユキ)

1975年生まれ、福島県出身。テレビプロデューサー、演出家。1999年にテレビ東京に入社し、「ゴッドタン」「SICKS」「青春高校3年C組」、「ウレロ☆」シリーズなどさまざまな番組を手がける。2021年に同局退社後は、自身のYouTubeチャンネル「nobrockTV」を開設。2019年から「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」(ニッポン放送)のパーソナリティを務めている。


藤井健太郎(フジイケンタロウ)

1980年生まれ、東京都出身。テレビプロデューサー、演出家。立教大学卒業後、2003年にTBS入社。「リンカーン」「ひみつの嵐ちゃん!」などのディレクターを経て、「クイズ☆タレント名鑑」「テベ・コンヒーロ」などを演出・プロデュース。現在「水曜日のダウンタウン」「クイズ☆正解は一年後」「オールスター後夜祭」などの演出を手がけている。