ジョックロック福本とママタルト檜原

よっ!最近どう? [バックナンバー]

ゲッパーランドとミッドナイトクイーン

元ハガキ職人・ママタルト檜原とジョックロック福本が笑いの礎を築いたラジオ投稿生活

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久々に会う友達との近況報告会をお笑いナタリー上で展開する不定期企画「よっ!最近どう?」。今回は、15年以上前にラジオのハガキ職人仲間として知り合ったママタルト檜原とジョックロック福本の再会の場を用意した。芸人ラジオ番組で磨いてきた大喜利の腕と、そこで読まれるという自信を糧に、お笑いの道への第一歩を踏み出したという2人。知っている人には聞き馴染みのあるラジオネームも多数飛び出す、和やかな対談をお届け。

取材・/ 狩野有理 撮影 / しばたみのり

ハガキ職人のオフ会が第2の青春

──まずは、お二人のラジオネームからお聞かせいただけますか?

ママタルト檜原 どうもこんにちは、ゲッパーランドです。

ジョックロック福本 ミッドナイトクイーンです。

ゲッパーランドことママタルト檜原と、ミッドナイトクイーンことジョックロック福本

ゲッパーランドことママタルト檜原と、ミッドナイトクイーンことジョックロック福本

──今日は、もともとハガキ職人同士として交流を持っていた檜原さんと福本さんが芸人になり「M-1」決勝で再会を果たしたという素敵なエピソードをもとに、お話を伺っていきたいと思います。今名乗っていただいたラジオネームの由来は?

檜原 僕はケンコバさんやバッファロー吾郎さんのラジオをよく聴いたんですけど、「キン肉マン」の話をよくされていたので、「これは勉強しなければ」と思って一から読み始めたんです。

福本 わかるわー(笑)。

檜原 そして「キン肉マン」を全巻読んだあと、ケンコバさんもバッファロー吾郎さんもあまり読んでない「キン肉マンII世」という続編にハマりまして。そこにゲッパーランドというキャラクターが出てきて、非常に勢いのある、いい名前だなと思ってラジオネームにしました。

──なるほど。福本さんは?

福本 僕はラジオにメールを送り始めた頃、自分でラジオネームを付けるのが恥ずかしくてほんまに適当な名前ばっかりだったんです。まったく読まれないので、「時計」「土」とかコロコロ変えて送ってました。それはそれで恥ずかしくないことはないんですけど(笑)。ある日、友達としゃべっていて、昔お父さんが暴走族の副リーダーでそのチーム名が「ミッドナイトクイーン」やったという話を聞いたんですよ。「なんやねんそれ、ダサ!」とか言って笑っていたんですけど、帰ってからラジオに送るメールを考えていたときに、「そういえばミッドナイトクイーンって言ってたな」と思い出して、それで送ったら初めてメールが読まれたんです。そこからミッドナイトクイーンになりました。

檜原 暴走族のチーム名やったんですね(笑)。

──お互いのラジオネームは番組を聴いている中で知ったんですか?

檜原 僕は中学生のときにサバンナさんのラジオ(「よしもとエンタテイメントステーションGOYŌDA」木曜)を毎週聴いていたんですけど、白鵬の話をよくされている時期があったんですよ。その時期にミンナイ(ミッドナイトクイーン)さんの名前を耳にしていました。

──白鵬っていうのは相撲の?

檜原 そうです、そうです。

福本 サバンナさん、特に高橋さんが格闘技をお好きなんですよ。K-1とか。だから格闘技のパロディのネタがよく読まれていたんですけど、僕はまったく知らなくて、メールを送るためにめちゃくちゃ勉強しました。ゲッパーくん(ゲッパーランド)の「キン肉マン」と一緒ですね。ゲッパーくんはなんの番組に送ってたっけ?

檜原 僕はジャルジャルさんとか、中山功太さんとかです。

福本 せやせや。(中山功太とネゴシックスが担当していた)「ガンラジ(baseよしもとガンラジ)」でよく名前を聞いてました。僕も「ガンラジ」はちょっと送っていたので。でもそのときはまだ知り合ってはなかったです。

──「よく聞くラジオネーム」という関係性から、リアルで知り合うようになったきっかけは?

福本 サバンナさんの番組はポイント制になっていて、10ポイント貯まったハガキ職人がスタジオに呼ばれて大喜利をするという企画があったんです。それに僕も呼ばれたことがあったんですけど、その中の1人にラジオネーム「チンカス」さんという当時40歳ぐらいの名物おじさんみたいな人がいて。その人が東大阪の近大(近畿大学)の近くで居酒屋をやっていて、大喜利大会に参加していたハガキ職人たちを招いてくれたんですよ。そこでお笑いの話をめっちゃして、そこからmixiでハガキ職人たちがどんどん繋がりはじめ、「GOYŌDA」に出た人以外も含めた関西のハガキ職人たちがその店にどんどん集まるようになり、そのうちの1人がゲッパーくんでした。

──すごいコミュニティがあったんですね。当時の印象は覚えていますか?

福本 シンプルに、「高校生やな」っていう印象です(笑)。

檜原 僕は高校に入って思い切って告白したら彼女ができて、その彼女と出かけた日記とかを、mixiに一生懸命書いていました。

──まさか「全体に公開」にしていたんですか?

檜原 そうです。個人情報を出しすぎて、彼女にチクリと言われてしまいました。

──初々しいお話です。

福本 ほんまにイモ坊主というか、まさか彼女がいるなんて夢にも思わんような子だったんですよ。ハガキ職人の集まりなので、モテてない奴らとか童貞みたいな奴らばっかりだったので、「高校生のこいつに彼女がいるだと!?」という衝撃がありました。

檜原 嘘つき扱いされてました(笑)。「ラジオに大喜利を送っているハガキ職人の高校生に彼女がいるなんて嘘に決まってる!」って。

福本 確かに、信じてはなかったですね。嘘の日記まで書いてかわいそうな奴だと思ってました(笑)。

檜原 福本さんは僕が高校生のときに大学生だったので、かなり大人だと思っていました。1つ上のグループみたいな。

福本 僕らはその集まりのスターティングメンバーでもあったので、かなりでかい顔はしていたと思います(笑)。「おー、君も来たんか?」みたいな感じの扱いをしていましたね。人数はどんどん増えていって、数十人規模にはなっていたと思います。「カプリ」っていう居酒屋です。

檜原 もう今はないんですよ。

福本 あったら絶対行きたかったのになあ。

──そのコミュニティの中で、お二人以外にお笑いに携わる仕事に就いた方もいるんですか?

福本 にんげんていいなのやなぼうさんもカプリに来てました。当時は、夜カプリに集まってみんなでラジオを聴いていたんですよ。「うわ! お前読まれたやん」とか言いながら。ラジオにも“トリ”みたいな文化があって、「今週自信あったのに読まれへん」「いや、トリちゃう!?」と盛り上がっていました。最後に読まれると「よっしゃー!」ってなるんですよ。やなぼうさんはラジオもですけど、「ケータイ大喜利」(NHK総合)でもけっこう上のほうにいる方でした。

檜原 「ゆとり教育世代」さんという名前です。

福本 カプリにはテレビもあって、みんなで「ケータイ大喜利」も観ていました。

──なんだか“青春”ですね。

福本 僕はかなり、“第2の青春”感はありました。

檜原 高校生の女の子と大学生の男の子が付き合ったりとかもありましたし。

福本 あったなあ。しかも、けっこうドロドロしてて(笑)。「誰々と誰々が揉めたらしい」みたいな話はしょっちゅう聞いてましたね。「オタサーの姫」ではないですけど、女慣れしてない奴らの中でかわいい女の子が無双していくみたいな。

檜原 全員の心を鷲掴みにして帰っていってましたね。

ママタルト檜原とジョックロック福本

ママタルト檜原とジョックロック福本

「大阪府和泉市…」で血が沸騰

──ハガキ職人をしていた頃はどういう生活をしていたんですか? 毎日ネタを考えて送って、みたいな?

福本 そうでしたね。高校に入って僕は一切の勉強をやめまして。

──なぜですか?

福本 ネタを書かなきゃいけなかったんで(笑)。木曜日の「GOYŌDA」を軸に、「うわ、もうすぐ木曜や!」みたいな、まったく誰からも求められていない締め切り生活をしていました。

檜原 僕も月曜日は中山功太さんとネゴシックスさん、水曜日はアジアンさんのラジオ、木曜日はフットボールアワーさんの「ナニワ音楽ショウ」という音楽番組の大喜利コーナー、金曜日は麒麟さんのラジオに送らないといけなくて、それとは別に「KANSAI1週間」という隔週の雑誌があってそこにプラン9さんの大喜利コーナーがあってそこにも送らないといけなくて、常に大喜利の締め切りに追われる毎日でした。

──それほどまでにラジオや大喜利にのめり込んだきっかけはなんだったんですか?

福本 成功体験ですよね。テレビに出ている人に自分のネタが読まれるというあの感覚は、1回読まれてみないとわからないと思います。脳が痺れると言いますか。

檜原 痺れますね。スパークします。僕は中学生ときの職業体験で、コンビニとかじゃなくてサバンナさんの1日マネージャーをやりたいと思って、一生懸命がんばって名物リスナーになろうとしていたんです。職業体験って、自分で親とか親戚にあたって協力してくれる職場を見つけてこなきゃいけないんですけど、1学年上にみんなが羨む職場体験をしてきてそれが学級新聞に写真で載った人がいて。それがいいなーと思ったんですね。で、1年間メールを送り続けてサバンナさんの番組の名物リスナーになって、職場体験の週ぐらいで「職場体験に行かせてくれませんか?」とメールしたらオッケーしてくれるかもって。本当、中学生の考えですけど。

福本 すごい野心やん(笑)。

檜原 やっぱり全然読まれない日々が続いたんですけど、1回だけ読まれたことがあって、そのときは本当に脳がスパークして。次の日にはもう有名人になった気分というか、「顔さすんちゃうか!?」みたいに思いましたね。

福本 それくらいの感覚にはなるよな。

檜原 「蚊」っていうラジオネームで読まれました。僕、「大阪府和泉市」だったんですけど……。

福本 わかるわー。これね、ハガキ職人あるあるです。

檜原 まず、(読まれるメールの住所が)「大阪府」の時点でちょっと熱いんですよ。

福本 絞られるよな。「兵庫県」とかもいるので。

檜原 「大阪府」でちょっとグッとなって、「和泉市」ってきた瞬間は血が沸騰するんですよ。「和泉市」でほぼ当確なんですけど、ときどき和泉市にほかのハガキ職人もいるので油断できないです。

福本 マジでそうよな。僕は「大阪府南河内郡」だったんですけど、南河内郡なんて相当少ないんですよ。でも、南河内郡に1人だけ「近代マグロ」という奴がおって、そいつやったときは「うわー!」ってなります(笑)。争ってましたね。懐かしいなあ。

ママタルト檜原とジョックロック福本

ママタルト檜原とジョックロック福本

──檜原さんの職場体験は結局、叶わず?

檜原 全然でした(笑)。チュートリアルさんのラジオでよくメールを読まれる女の子が徳井さんとドライブデートに行く回があったんですよ。よく読まれている人はプライベートというか、その人自身がどういう人かをパーソナリティの方に知られている感じだったので、そういうのもいっぱい送ってみたりもしました。

福本 俺は尖ってたから、ダサいと思って“ふつおた”は1回も送らなかったわ(笑)。

会わない間も入ってくるお互いの情報

──お互い芸人になってからも連絡は取っていたんですか?

福本 いや、一切取ってなかったです。

檜原 mixiがネットの主流じゃなくなってからはなくなりましたね。

──それぞれ芸人になったことも知らないくらい?

福本 僕はめちゃくちゃ知ってました。ゲッパーくんの情報はチンカスさんとかから入ってきていたので。

檜原 ミンナイさんが「なまくらジャック」さん、「トニータラスコ」さんと「3900点」と書いて「ザンク」というトリオで「キングオブコント」に出ているのは聞いていました。僕は年下だったので、大学生のコミュニティみたいな感じのお三方を羨ましく眺めていて。ザンクのメンバーから福本さんだけNCSに入ったっていうのも聞きましたね。

福本 知ってたんや?

檜原 「いなはる」ちゃんから聞きました。

福本 音楽ライターになったいなはるちゃんね。

檜原 福本さんが(よしもと漫才劇場への出演をかけたライブ)「アップトゥーユー」でさがぴん(=佐川ピン芸人)たちと一緒に苦戦されてたのとかも知ってました。

福本 10年苦戦してたな(笑)。あるときXをフォローされたので、「あ、ゲッパーくん俺のこと認識してるんや」みたいなことも感じていましたね。僕はけっこうママタルトを追っていて、めっちゃおもろい奴と組んでるやんと思ってました。

──お互いの情報は直接ではないけれどもハガキ職人仲間からちょこちょこ入ってきていたんですね。久々に直接会えたのは「M-1グランプリ2024」の準決勝ですか?

福本 いや、そのちょっと前に会ったんですよ、十何年ぶりに。バッテリィズ、ジョックロック、からし蓮根、20世紀、空前メテオで「漫荼羅」というユニットライブをやっているんですが、2024年6月の公演にゲストでママタルトに来てもらったんです。これがかなり僕的にはドキドキしていて。というのも、当時はゲッパーくんに対して「彼女おらんやろ?」みたいな高圧的なコミュニケーションを取っていたわけですけど、芸人としては(檜原が)先輩になっていたので、これはどうしたもんかと。さっき言っていたゆとり教育世代さんも、もともと僕が高圧的コミュニケーションを取っていたんですが、芸人になってからは(やなぼうが先輩のため)敬語で接していたんです。今ではもうタメ口の関係になりましたけど。で、これゲッパーくんとはどうなるやろな?と。そしたら、ゲッパーくんのほうから「あっ、久しぶりですね」って来たから、「……そうやなあ」って返しました(笑)。

──檜原さんの出方次第だったわけですね。

福本 そのとき真空ジェシカさんにもゲストで来ていただいていたんですけど、劇場の楽屋口に入り方がわからない感じでゲッパーくんと川北さんがいたんですよ。僕は川北さんと初対面だったので、まず川北さんに「ジョックロックの福本ユウショウと申します」と挨拶したら、ゲッパーくんが「久しぶりですね」と敬語で来てくれて。「そうですね」と僕も敬語で返す道もあったんですけど、頭グルルルルルル!って回転して「そうやな」でいこう!と。そこで決まりました(笑)。

檜原 それが僕はうれしかったです。

──逆に、檜原さんはそのときタメ口でいこうとは思わなかったんですか?

檜原 まったくです。もう“ミンナイさん”なので。

福本 川北さんも芸歴的にはゲッパーくんの後輩だけどタメ口なんですよ。だから僕もそれに寄せさせてもらうことにしました。

ドーナツを食べるママタルト檜原とジョックロック福本

ドーナツを食べるママタルト檜原とジョックロック福本

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「M-1」での邂逅、ハガキ職人から芸人の道へ

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