ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」。

今月のお笑い 9本目 [バックナンバー]

ウエストランド井口と作家飯塚が語る「2023年1月のお笑い、どうだった?」

M-1王者の1カ月、ベストバウトは? 理想形のザ・マミィ、ちゃんぴおんずフリー素材化、ルシファー吉岡のすごさ

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ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が、毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。2023年一発目の取材では、目まぐるしい日々を送っている「M-1」王者の1カ月をなぞりながら、ザ・マミィ酒井の「七変化」、「おもしろ荘」優勝のちゃんぴおんず、平場のさや香ルシファー吉岡のすごさなど、飯塚の気になったトピックについて語っていく。

構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる

※取材は1月30日に実施。

有吉さんに見られている

──今回はタイタンの事務所にお邪魔しています。貴重なお時間なのでさっそく始めましょう。

井口 いやー、僕が一番知らないですからね、「今月のお笑い」を。

飯塚 忙しくて何も見られていないよね。井口くんがいろいろな番組に出ているのを見ていると、エピソードが仕上がっていく過程がすごいわかる。

井口 それが難しいところでもありますね。どうしても同じ話ばっかりになっちゃうので。やっぱり「優勝したときの爆笑問題さんはどうでしたか?」はめちゃくちゃ聞かれます。

飯塚 僕の体感では、田中さんの3拍手の話と、太田光代社長の「どの布団使ったら寝られるんだよ」という話が最多だった気がする(笑)。

※編集部注:優勝が決まった瞬間、爆笑問題・田中が座ったまま3回手を叩いただけだったというエピソードと、最終決戦の結果が出る前に寝ていたという太田光代社長に対して井口が抱いた疑問。

飯塚 「ジロジロ有吉」(TBS)で有吉さんも言ってたね。「『オールナイトニッポン』でしゃべったエピソードをどの番組でも言ってる」って。

井口 ベタな悩みですけど、エピソードが増えるような時間が本当になくて。マジでなんにもできていないですから。

飯塚 でも、有吉さんが「オールナイトニッポン」やいろんな番組での発言を追いかけてくれているってことだよね。

井口 ありがたいですけど、緊張感もあります。常に気が抜けないというか。有吉さんは僕のそういう部分を見透かしてくると思うので(笑)。よくよく考えたら、有吉さんは「アメトーーク!」(テレビ朝日)の「芸人ドラフト」でも僕を選んでくれていたんですよね。

飯塚 井口くんに対する熱い眼差しというか、ずっと期待してくれているんだろうなと思った。

「バキ童ブルー」をバックに、左からウエストランド井口、飯塚大悟。

「バキ童ブルー」をバックに、左からウエストランド井口、飯塚大悟。

──「ジロジロ有吉」でも言われていましたが、井口さんのお母さんも優勝後たびたび登場しています。

井口 すごい親が出てくるんですよ。

飯塚 真理与(=井口の母)ブームもきてる(笑)。

井口 基本みんな親NGだから、OKにするととめどなく出てきちゃいますね。さすがにどこかで止めないと。

飯塚 「M-1」王者ってわかりやすいし、親子の企画があったら「まずはウエストランドに聞いてみよう」となっているんだろうなと思う。井口くんの場合は自分が撒いた種でもあるけど。漫才であんなふう(※)に言ったらお母さんとのエピソードも当然やりたくなるし、そのお母さんってどんな人なんだろうって興味も湧くし。

井口 まあそうですね。岡山の田舎までスタッフのみなさんが行ってくださっているので、大変なことをさせているなとは思います。

※編集部注:「M-1もうざい! 『アナザーストーリー』がうざい! 泣きながらお母さんに電話するな!」(「M-1グランプリ2022」最終決戦より、井口のセリフ。)

──お母さんはひょうきんな方?

井口 「アナザーストーリー」もそうですし、「イッツ・ア・スモーレストワールド」(テレビ朝日)でもふざけていたんですけど(参考記事:ウエストランド井口、実家の母親から届いた小包にグッと来るのか検証)、親のボケがカットされててなんとも言えない気持ちになりましたよ(笑)。

飯塚 ディレクターズカット版として“真理与ボケ集”みたいなのが作られるといいね。

井口 そういえば、「アナザーストーリー」で「あなたはどういうときに感情が出るんですか」と密着カメラマンに詰められて、芸人仲間といるときだって言ってモグライダーともしげさんと三四郎・小宮さんと飲む機会を設けてもらった話を前回したじゃないですか。そのシーンが1秒も使われていなくて、よく「ともしげさんがカメラ目線だったからカットになった」とエピソードとして話していますけど、あの場ではけっこう熱い話もしていたんですよ。小宮さんが涙の理由とかも語ってくれていて。あれは一体どうなったんでしょうね? 本当に世に出ることなく終わるのかな。

──もったいねえ……。

井口 どこかで見てもらえたらよかったなと思いますけど。

飯塚 「VSウエストランド」(ABCテレビ)でやってもらうしかないね。「VSマムシ」の回で。

井口 “マムシ”の密着ディレクターと対決しますか(笑)。

※「アナザーストーリー」のディレクターは「マムシ」の異名が付いていたと前回の記事で井口が語っている。

やらされるスタンスの冠番組

──冠番組の「VSウエストランド」も見られていないんですか?

井口 最低限目を通す感じで、しっかりは見てないです。もともと自分が出ているものを積極的に見るタイプでもないんですが。今後ファイナリストの人たちも出てくるので盛り上がってくれたらいいんですけど。

飯塚 基本は与えられてものをやっていくスタイルの番組なんだよね? ウエストランド側から「こういうのやりたい」じゃなくて。

井口 そうですね。だから、「あれ? なんかしんどいぞ」とは思いました(笑)。

飯塚 冠番組で“やらされてるスタンス”って難しいよね。能動的にやらなきゃいけないシーンが多いから。

井口 そうなんですよ。昨日収録したのはすごくいい座組で、ゲストが進行してくれて、僕らが挑戦する理由もちゃんと作ってくれたのでめちゃくちゃスムーズでした。それだけで全然違うんだなって思いましたね。次回はヨネダ2000がゲストなんですけど、2人がめちゃくちゃ言ってきて対決する羽目になるのに(参考記事:ヨネダ2000「餅-1グランプリ」でウエストランドに勝ちたい)、その進行は僕がするっていうわけがわかんないことになっていて(笑)。

──井口さんは与えられたことをやるほうが得意なのでは?

井口 それはそうかもしれないですね。いい感じに作ってくれれば、僕としては「ぜひぜひ!」でしかないというか。本当にこだわりがないので。ただ、「VSウエストランド」に関しては若いスタッフさんたちがやっていることもあって、多少「こうしたほうが面白くなるんじゃないですか?」くらいは決められた範囲の中で言ってみたりはしています。

ウエストランドのオールナイトニッポン

──飯塚さんが作家として参加された「ウエストランドのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)のご感想をぜひお聞きしたいです。

「ウエストランドのオールナイトニッポン」のブースにて、飯塚大悟とウエストランド。

「ウエストランドのオールナイトニッポン」のブースにて、飯塚大悟とウエストランド。

ニッポン放送にて、飯塚大悟とウエストランド。

ニッポン放送にて、飯塚大悟とウエストランド。

飯塚 radikoの再生回数めちゃくちゃよかったって聞いた? すごい好評だったみたいで。

井口 聞いてないです! それはうれしいですね。昔からの仲間というか、飯塚さんにも入ってもらって楽しくできたので。

飯塚 「ぶちラジ」の人たちも来てたね(笑)。たまに女優さんやアイドルの方がANNをやるときに取り巻きみたいな感じで人がたくさん来ていることがあるんですけど、ウエストランドもそれくらいいました。

井口 タイタン関係者がこぞって(笑)。

※編集部注:内弁慶な河本が緊張してしまうため、いつもの「ぶちラジ」スタッフがニッポン放送へ応援に駆けつけた。

井口 バタバタしててあんまり噛み締められていなかったですけど、考えてみたら1部でやらせてもらうなんてすごいことですよね。単発とはいえ、芸人みんなが憧れるものですし。もっと噛み締めたいところでしたが、すぐ「めざましテレビ」(フジテレビ)に行かなきゃいけなかったのでそれどころじゃありませんでした(参考記事:ウエストランド「めざましテレビ」1月のエンタメプレゼンター就任)。

飯塚 すごいよね。身一つでやってきて、初めて見るメール読んで、打ち合わせてない企画やって、そのまま帰っていくっていう。

──カッコいいですね。

飯塚 カッコいいっちゃカッコいい。フリートークも、普通は軽くスタッフとしゃべったりするけど、そういうのもなかった。全部アドリブ。

井口 「ぶちラジ」感でやりすぎたのかもしれませんね(笑)。飯塚さんが考えてくれたことだったら大丈夫だっていうのもありますし。

──信頼があるわけですね。

飯塚 ちゃんとメールもたくさん来ましたよ。年末年始のネタ番組でハガキ職人をディスったのに(笑)。

井口 なんだかんだ、今のところはみんな楽しくやってくれてるのはありがたいです。いつかどこかで路上ミュージシャンにぶん殴られたりするかもしれないですけど(笑)。

飯塚 結局みんなプラスになっているんだよね。ウエストランドの漫才が新たな火種になって、仕事や話題が生まれてる。「R-1」も、関西テレビの社長が「夢がある」と言っていたのが記事になっていたけど、ウエストランド効果はすごいなと思った。

井口 ウエストランド効果というか「M-1」効果というか。昨日ちょうど「川島明のねごと」(TBSラジオ)においでやす小田さんがゲストで出ていて、「(R-1は)夢ないとか言われているけど、どうなん?」みたいな話をしていたみたいで。みんなそれぞれの言い回しで面白く盛り上げてますよね。

飯塚 ちゃんと「R-1」に還元してるなと思う。それがなかったら「R-1」の話題の種はお見送り芸人しんいちイジりだけだったかもしれないし。

井口 しんいちさんがせっせとツイートして僕に絡んできて、なんとか話題になろうとしているのはいい加減やめてほしいですけど(笑)。

「M-1」優勝後のベストバウトは

飯塚 「めざましテレビ」のマンスリーエンタメプレゼンターはどうだった?

井口 まったく違う世界という感じで、大変でしたね。とにかくコメントの尺がなくて、「回転寿司店が何割引きです」のニュースのあとに「5秒でお寿司の話お願いします!」みたいな。5秒でできる寿司の話ないから!(笑) 「おいしそうですね」「行きたいです」とかでもいいんでしょうけど、芸人としてはそうもいかないから難しいです。最後はやけくそで、「尺がない」ってことばっかり言って乗り切りました。

飯塚 今までは逆をやってきたわけだもんね。ちょっとしたことをなるべく長くする作業。

井口 そうなんですよ。特に初回は、全コメントの確認があって。めざましジャンケンのあとの7秒で何を言うかとか。2回目からはなくなったので、多少楽になりましたけど。

飯塚 「M-1」優勝後に出たテレビで自分の中のベストバウトは? よくできたとか、評判がよかったとか。

井口 「新しいカギ」(フジテレビ)で粗品と「あるなしクイズ」をやったのは、「あるなし」史上一番ちゃんと盛り上がった感じはありました。ああいう形だったらみんなで楽しくできそうです(参考記事:ウエストランドとEXIT「新しいカギ」登場、対決企画にオリラジ中田率いる同期芸人)。

※チョコレートプラネットが「吉本興業にあってタイタンにない」といったお題を出し、井口と霜降り明星・粗品が答えた。

井口 とにかく今は「あるなし」問題がつきまとってきていますね。番組用に作ってきてくださいパターンと、その場でムチャぶりパターンと、いろいろあるんですけど。「作ってきてくれ」は案外やりやすくて、本当のムチャぶりだと振り方次第でおかしなことにもなりかねないんですよ。誰をどう悪く言えばいいんだよっていう。

──お仕事の現場では“M-1王者”として接されることが多いですか?

井口 「(M-1優勝で)崇められて大丈夫か?」(と勝手な心配をしてくる)勢もいましたけど、どこが崇められてるんだよ!という扱いしか受けてないです。この前だってひどかったんだから!(ひどかった話は割愛)

飯塚 逆に、「M-1」で世に出た人は丁寧な扱いだけを受けるんだろうね。

井口 なんか忘れちゃったんですよ。「M-1」前の僕ってどういう感じだったかなって。千鳥ノブさんのインスタに載せてもらっていましたけど、その仕事も「あれ、僕ってこのメンバー(千鳥ノブ、霜降り明星・粗品、シソンヌ長谷川、オズワルド伊藤)の中にいる感じだったっけ?」と思って。でも、以前から「さんまのお笑い向上委員会」(フジテレビ)とかにも出させてもらってはいたんですよね。その流れで今もいい感じにイジられて、それは助かってます。

飯塚 チャンピオン扱いしないほうがいいっていうのを芸人さんたちもわかってくれてるだろうしね。いきなり無名で世に出てきて、今から関係性を築くのは相当大変だと思う。

井口 そんな中、「モニタリング」(TBS)はテイストの違う出方でした。いいものとして扱われるむずがゆさもあって、優勝したからこその景色だなあと思いましたね。

※編集部注:成人の日の記念撮影をする人たちのためにうれしいサプライズとして登場。カメラに緊張する母娘の喜ぶ顔を引き出すという役割だった。

飯塚 でももうどの番組でもホームのような感じだよね。「行列のできる相談所」(日本テレビ)では東野幸治さんや(フットボールアワー)後藤さんがいるから雰囲気もよかったし、「ダウンタウンDX」もダウンタウンさんがだいぶ知ってくれているし。「向上委員会」で明石家さんまさんが「知り合いやよくしゃべる仲で決勝に残ったのがウエストランドだけだった」と言っていて、ウエストランドに対してそういう認識だったんだなと思った。

井口 去年1年でいろいろ出させてもらっていたのがかなり下地になっていますよね。

飯塚 だから、早く「徹子の部屋」(テレビ朝日)に出てほしいんだよ。本当の「はじめまして」のところから、徹子さんのあるなしクイズをやっているところを見たい(笑)。

井口 どうなるかなあ(笑)。

理想形のザ・マミィ、さや香の平場、ちゃんぴおんずのフリー素材化

飯塚 ザ・マミィ酒井さんの「七変化」(日本テレビ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」)が面白かった。歴代1位の記録も叩き出して。

井口 とんでもないことになりましたね。ずっと変わってなかった歴代1位が。

※編集部注:次長課長・河本から18年ぶりの記録更新。

飯塚 ただ面白かったというだけで特にしゃべることはないんですけど(笑)。

井口 ザ・マミィは2回目の波に乗っている感じがありますね。林田が「座王」(関西テレビ)を獲ったりもしていますし。

飯塚 まず酒井さんがすぐ泣くとか、ダマされたときのリアクションとかで活躍して、そのあと林田さんの大喜利的な強さも注目されて、実はタレントとしてすごくバランスがいい。

井口 理想形ですよね。

飯塚 「ニューヨークジャック」(Twitterライブ配信番組)に出ていたさや香もめちゃくちゃ面白かったです。さや香の平場というか関係性をあまり知らなかったんですけど、漫才の掛け合いとほぼ同じテンションでフリートークしていて。漫才のキャラと普段は逆、とかだと難しかったりもするから、トークも漫才みたいに見られるさや香は強いなと思いました。あとは、「おもしろ荘」ではちゃんぴおんずが優勝してうれし涙を流していたんだけど、「M-1」の予選のときも、最後に「僕らおもしろ荘で優勝したいだけなんで!」と言ってはけていたんだよ。

井口 それでちゃんと優勝したのはすごいですね。

飯塚 「おもしろ荘」で優勝するためのネタを作って、ちゃんと「おもしろ荘」で優勝した。今って賞レース至上主義というか、ネタの作品性とか完成度の高さが求められているけど、ああいう真似したくなるタイプのネタでも売れるんだっていうのをちゃんぴおんずに証明してほしいなと思いましたね。年始にあった「ダイヤモンドno寄席」ではずっとちゃんぴおんずのネタをイジっていたし、「NEWニューヨーク」(テレビ朝日)でもちゃんぴおんずのネタを真似する企画をやっていて、芸人さんたちの間でちゃんぴおんずのフリー素材化が始まってた。千鳥さんも、「どこに隠れてた?」って言っていたりもしたし、TikTokとかでバズってめちゃくちゃ売れてほしいです。

YouTube誰と組むか問題

飯塚 きしたかのの岸さんなんだけど、「千鳥の鬼レンチャン」に“水泳やってた芸人”として出ていて、いよいよ本当に売れているなと思った。高野さんをイジる要員で呼ばれているうちは一過性な感じもあるけど、普通に水泳をやっていたタレントとして呼ばれているんだなと。高野さんは今年、ドッキリが大変な1年になりそうですけどね。

井口 謎の収録がいっぱい入ってて、疑心暗鬼になりつつあるって言ってました(笑)。ちゃんと時間と労力をかけて面白いことをやってきたからこそ、YouTubeが人気になったとは思うんですけど、140日も密着して10数秒の動画にするっていうボケにしないといけないんだと思ったら、やってらんないですよ。

飯塚 スタッフとの信頼関係がないとできないことだよね。YouTubeって、あんまり親しくないテレビマンに声をかけられてなんとなく始めたりすることもあると思うんだよ。さらば青春の光はすごくいいチーム感でやっているからあんなに面白いけど、本人は面白いのにYouTubeであまり生かせてないなと思うチャンネルは気を使い合ってるチームなのかなっていう気がする。

井口 「YouTube誰と組むか問題」はありますよね。僕らがやってる「ぶちラジ」は配信が流行るだいぶ前に、世の中のみんながよくわかってない中で始まったからよかったですけど。

──「ぶちラジ」もチームの信頼感があるからこそ移動の車の中でも収録(※)できたんじゃないですか?

井口 そこまでしてやるもんじゃないんですよ(笑)。

飯塚 「ぶちラジ」はウエストランドが「やりたくねえよ!」と言えるのがいいよね。気を使う人たちだったら言えないから。

井口 でもそう考えると、僕らも今からやるとなったら怖かったと思います。

飯塚 「M-1」優勝してから近づいてくる人ってちょっと怪しいもんね(笑)。

井口 優勝直後の「YouTubeやろうよ」は怖いですよ。

※「ぶちラジ」1月12日配信回(#558 夜の車内にすし詰め)をチェック。

ルシファー吉岡のすごさ、伝わり始めている

飯塚 ルシファー吉岡さんが松竹芸能の公式YouTubeチャンネルで「R-1」の講師をしている動画が、佐久間さんが紹介したことによってめちゃくちゃハネてる。

井口 本人はすごい嫌がってましたよ(笑)。講師のオファーがきたときに、口説き文句として「誰も見てないんで!」「再生回数何百回とかなんで!」と言われたから出たのに、10万回再生されちゃったって。かが屋が年末に佐久間さんのラジオでルシファーメソッドの話をしていて、たまたま僕も佐久間さんのYouTubeでルシファーさんがすごいという話をして、そのあと直で佐久間さん本人が松竹芸能の動画を紹介したからどんどん再生回数が増えているんですよ。

飯塚 ルシファーさんのネタがめちゃくちゃ緻密で、よく練られてるってことは芸人さんたちはわかっているけど、ある程度すごさを噛み砕いて解説してあげないと見ている人には伝わらないのかも。井口くんの「佐久間さ~ん!」じゃないけど、あの動画によって「ルシファーさんってこんなに考えてたんだ」みたいになってる人もいると思う。本人は“下ネタピン芸人”だと思われていたほうが気楽なのかもしれないけど。

井口 すごさが知られていないと軽んじられちゃう。

飯塚 そうそうそう。本人は嫌かもしれないけど、ちょっとずつ見せていったほうがいいかなと思った。

井口 かもめんたる・う大さんも、そういう部分を見せたことで改めてちゃんと評価されたというのもありますもんね。

飯塚 井口くん、佐久間さんのYouTubeで「ルシファーさんはう大さんになれる」って言ってたね。千鳥さんも「チャンスの時間」(ABEMA)とかでずっと面白いと言っているし、オードリーの2人もルシファーさんが好きで「オードリーのネタライブ」にいつも呼んでいて。

井口 三四郎・小宮さん含め、芸人みんなルシファーさん面白いって言っていますからね。

飯塚 いよいよ今年ルシファーさんが売れるんじゃないかというムードにはなってる。ネタじゃない何かなのかもしれないし、ドラマ出演なのかもしれないし、どういうきっかけかはわからないけど。

わちゃわちゃ楽しい楽屋がオアシス

──飯塚さんプロデュースのライブ「つぶぞろい2023」のお話もお聞きしたいです。

井口 やっててみんな思ったと思いますけど、オープニングのコントが楽しかったですね。何言ってもいいし、いくらでもできるというか。

「つぶぞろい2023」より、予定の3倍の尺になったオープニングコントの様子。

「つぶぞろい2023」より、予定の3倍の尺になったオープニングコントの様子。

──ラブレターズと、三四郎・小宮さん、マヂカルラブリー村上さん、井口さんの5人でこの10年のお笑い界を振り返るようなコントを披露しました。7分の予定が21分になった、アドリブ満載の掛け合いで(参考記事:三四郎もウエストランドもみんな10年がんばってきた「つぶぞろい」同窓会、高野はタップ踊る)。

飯塚 小宮くんも井口くんも本人役のほうがいいだろうからああいう形になったんだけど、ラブレターズにはすごい負担をかけた(笑)。まず2人に「こういうことやりたいんだけど」と相談して。

井口 ツッコミ役のためちゃんは一番大変でしたね(笑)。ためちゃんが10年前からタイムスリップしてきた設定で将来の僕たちがどうなるか教えてくれるんですけど、「マヂカルラブリーがM-1で優勝します、つり革に掴まらない漫才です」というのに対して僕が「それ漫才じゃないだろ!」って言ったのが、「M-1」以降、一番会心の出来でした。

飯塚 めちゃくちゃウケてたね。アドリブで言っているのも伝わってたし、5人で漫才をやってる感じがあってよかった。ウエストランドのネタもすごいウケてて、チャンピオンって感じがした。

井口 気持ちよかったですね。

飯塚 あと、小宮くんと井口くんが絡んでいるのが、昔のK-PROライブみたいでもあって。

井口 「小宮さんの見たことない表情が見られた」という感想を見かけましたけど、確かにテレビでは小宮さんのああいう姿って意外とまだ出てないのかもしれないですね。そういう絡みもまたやっていきたいです。まあ、僕らが楽しいだけかもしれないですけど。

──ニューヨークのYouTubeに「ロケットライブ」を担当していたフジテレビの日置祐貴さんが出られていて、ちょうどお二人のお話をしていました。「わけわかんないノリをやっていた」と。

井口 当時はよくなかったんでしょうけど、貫き通しててよかったというか。2人だったから高円寺で愚痴りながらも「これでいいんだ」と続けられたと思いますね。

飯塚 あと、なにより井口くんが楽屋で楽しそうだったのがよかったなと思って。

井口 ああいう楽屋、久しぶりで楽しかったです。コンビでばっかりいると、別に仲が悪くなくたってどうしても息詰まるんですよ。みんなに会えるのがとにかくうれしいし、芸人仲間とわちゃわちゃする時間が本当に今必要だなと思いましたね。

飯塚 井口くんにゆったりした楽屋の時間を過ごさせるための何かを企画しようかな。その日が楽しみになるような。

井口 ぜひやってください! あのあと飲みに行けなかったことだけがつらかったんですから。

飯塚 行ける人だけでちょっとした打ち上げをしたんだけど、ちょうど居酒屋のテレビで流れていた「行列」でウエストランドがリポートしていて。“ザ・テレビ”みたいな番組にさっき飛び出しで会場を去っていった2人の姿があって、なんかエモかったよ(笑)。みんなで写真撮ったりした。

※編集部注:「つぶぞろい2023 ~みんな売れて大復活ライブ~」は2月12日(日)23:59までPIA LIVE STREAMにてアーカイブ配信中。購入は同日21:00まで。

みなみかわの嫁からDM

井口 そういえば、飯塚さんが言っていた「後輩からイジられる関係を作っておくべき」という話をパクって「あちこちオードリー」(テレビ東京)で言っちゃいました。すみません! 若林さんにものすごい共感されたけど、これ完全に飯塚さんのやつだったと思って。

飯塚 あはははは(笑)。ちゃんと証拠は残ってるからね。この連載(※)で言ってた話だから。

井口 飯塚さんから聞き授かった意見ということで発表させてもらっちゃいました。

※編集部注:「今月のお笑い」4本目より、「先輩が後輩にイジられるのがいいという風潮になっている」という話。

──「あちこちオードリー」と言えば、年始の放送でみなみかわさんから飯塚さんのお名前が出ていましたね。

飯塚 みなみかわさんの奥さんからDMが来て、みなみかわさんの単独ライブをお手伝いすることになりました。

井口 本当にやるんですか?

飯塚 やらせてもらうことになっているんだけど、みなみかわさんとも奥さんとも一度も話したことなくて、まだDMだけの関係。ライブの進行状況を知るために必死で奥さんのYouTubeを見て状況を確認してる(笑)。「この日にやるんだ」とか、「劇場ここなんだ」とか。

──進捗があったらぜひこの連載で教えてください。井口さんは優勝後最初の「タイタンライブ」が2月10日(金)にあります。新ネタなんですか?

井口 そうですよ。やったネタはダメですもん。新ネタというか、「漫才工房」(※)で2本ずつ作っていたので、そのやっていないやつをやると思います。2月くらいから「漫才工房」もやって、1ネタでも作っていかないとまずいですね。

──大歓迎のムードになりそうですね。

飯塚 「つぶぞろい」の感想とかを見てるけど、「ウエストランドが一番好き」「ソルジャー(※)です」という人が増えていると思う。

井口 いなくならないように末永く応援してほしいですけど。

※編集部注:「漫才工房」はストレッチーズ、ママタルト、さすらいラビー、ひつじねいりと共に新ネタを2本おろすライブ。「ソルジャー」は「ウエストランドのぶちラジ!」リスナーのこと。

きしたかの高野の結婚で牧野ステテコに思わぬ余波

飯塚 アンガールズ田中さんが結婚を発表して、クロちゃんに彼女ができて、いよいよ「モテない」が井口くんの独壇場になってきた(笑)。2人が最後の砦だったから、あとは本当にもうカカロニ栗谷さんくらい。

井口 嫌ですよ、あいつと2人でやるの(笑)。今こういう企画の盛り上げ方も難しくなってきているんですよ。「どういう人が好きですか?」という質問に、例えば「何もできないんで家事が得意な人がいいです」とかは言えないですし。

──なるほど、確かに。ちなみにウエストランドがずっとやっている「モテたい」みたいなテーマの漫才も最近ほとんどない?

飯塚 あんまりないんじゃないですか? 今年は「マッチングアプリ」のネタがめちゃくちゃ多かったって言いますよね。

井口 「マッチングアプリ」だと、「そんな奴と出会うことないだろ!」にならないからやりやすいんだと思います。

飯塚 きしたかの高野さんも「マルコポロリ!」(関西テレビ)でプロポーズ成功していたけど、それによって牧野ステテコさんが危機に陥っている。

井口 相手の方とステテコさん、ルームシェアしていたんですよね。

飯塚 (高野のお相手の)まるゆかさんが結婚するから家を出ていくことになって、「このままじゃ1人で家賃払えないっすー」って嘆いてた。

井口 この間会ったら、「猫も連れてかれちゃうし最悪っすー」とも言ってました(笑)。

飯塚 あ、ステテコさんとのツーマンライブ、明日か。

井口 明日ですよ。もー。

──2組の芸人がコラボするライブ「Paravi prsents GEININ HYBRID LIVE」が1月31日に開催され、牧野ステテコさんにウエストランドが指名されて45分のステージを展開することが決まっています。

飯塚 ツーマンの相手として、牧野ステテコさんって一番面白いと思う。逆にアルコ&ピースとツーマンとかのほうがプレッシャーじゃない? 本気すぎるというか。

井口 アルコ&ピースまでいっちゃうとハードル上がってキツそうですけど、トンツカタンとか、行けばなんとかしてくれる人がよかったです。打ち合わせの段階から不安しかなかったですから。台本が送られてきても怖くてしばらく放置していたんですけど、どうやら(元ジャイアントジャイアンの)かーしゃに手伝ってもらったみたいでだいぶ見やすくはなっていましたね。

──ステテコさんは「M-1」優勝者と組みたいと言った上でウエストランドを指名していましたが。

井口 それも腹立つんですよ、コメント欄が「ステテコさん見る目ある!」みたいになってるのが。ただの登山仲間で選んだだけなのに。

※編集部注:ウエストランド河本と牧野ステテコは登山友達。

井口 配信もあるので、「ぜひ見てほしい」と言えるものになるのか、「絶対に見ないでください」となるのか、やってみないとわかりませんね(参考記事:ウエストランドの漫才に牧野ステテコが猫になって混ざる)。

左からウエストランド井口、飯塚大悟。

左からウエストランド井口、飯塚大悟。

井口浩之(イグチヒロユキ)

1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年、2013年に「THE MANZAI」認定漫才師、2020年に「M-1グランプリ」ファイナリストとなる。そして2022年、「M-1グランプリ2022」優勝! チャンピオンとして大忙しの日々を送っている。ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。タイタン所属。

飯塚大悟(イイヅカダイゴ)

1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「トークィーンズ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。

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読者の反応

ウエストランド井口 @westiguchi

更新されました!!!!!
読んでねー!!!反響もー!!!
#今月のお笑い https://t.co/YtUTacvhF9

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