かもめんたる・う大(左)とかが屋・賀屋(右)。

2020年、いつもと違う年 その2 [バックナンバー]

かもめんたる・岩崎う大×かが屋・賀屋壮也

コロナ禍の世の中で「やる」ということ

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芸人みんな「むずいな~」って一生分くらい言ってる

──このインタビューを行っているのは11月中旬ですが、コロナの終息にはまだ時間がかかりそうです。

賀屋 消毒したりマスクしたり、もちろん個人での対策は続けていますけど、最近はあんまり気にしないようにしています。視界の隅で捉えるくらいにしておくというか。かまってもらえないってわかればスーっとどっか行ってくれるんじゃないかなと思って。

う大 幽霊じゃん、それ。霊の対処法じゃん。

賀屋 ウイルスにはそういうの通用しませんでした。

う大 彼らはとても科学的だからね。

──(笑)。今時点で感じる、お笑い界へのコロナの影響はどんなものでしょう?

かもめんたる・う大(左)とかが屋・賀屋(右)。

かもめんたる・う大(左)とかが屋・賀屋(右)。

賀屋 事務所ライブも対策をして再開していますが、やっぱり飛沫の心配があってかお客さんが思いっきり笑える環境はまだ戻ってきていないなと感じます。ただでさえ席数半分でお客さんが少ないのに、笑うのはあまりよくないみたいな雰囲気もあって、芸人さんみんな楽屋で首かしげてますね。「むずいな~」って一生分くらい言っていると思います(笑)。

──思えば私も声は出さず、目をニコーっとさせてうんうんと頷くような笑い方をしている気がします。お客さん側は声を出して笑うことを無意識に控えているのかもしれませんね。

賀屋 一度お仕事をさせていただいた2.5次元俳優さんの舞台を観に行かせてもらったんですが、このご時世なので歓声ではなく拍手を送っているのは楽しそうでした。大きめのアクションがあるたびにわーっと拍手が起こっていて。ただ、これをお笑いにも持ち込めるかと言ったら……。

う大 さすがに拍手だけは異様かもね。王様にネタ見せしているみたい(笑)。

賀屋 そうですよね。“拍手笑い”はありますけど、拍手だけだと種類の違う演芸になってしまいそうです(笑)。

う大 真面目な話、(フジテレビ「トリビアの泉」の)へぇボタンみたいにさ、笑い声を出せる機械とかが今後導入されるかもしれないよ。

賀屋 いいですね。そのボタンが押された回数を集計してモニターに出せたら、企画として面白そう。

──芸人さんたちにとってもウケ具合の目安になりそうです。

う大 お客さんが自分の声を録音したオリジナルの“笑い袋”をライブに持って行けるとかね。「今日は私、笑い袋1回も押さなかったなー」みたいな。

賀屋 笑い袋ライブ、いいですね(笑)。

「お祭り」をテーマにHOTな作品を

──さて、今日はここ劇団かもめんたるの稽古場にお邪魔したわけですが、間もなく開幕する新作公演「HOT」はどんな内容になりそうですか?

う大 賀屋くんも観に来てくれた前々回の「GOOD PETS FOR THE GOD」と前回の「君とならどんな夕暮れも怖くない」がわりと重いテーマで続いたんですよ。特に「君となら~」はその極みと言ってもいいかもしれない。あれ以上になっていくとコメディ集団でもなくなってくるなと思っていて。

賀屋 でもそれがすごいですよね。真正面から演劇に向き合っているなと感じましたし、なおかつめちゃくちゃ笑えるし。

う大 さっき賀屋くんが言ってくれた、時勢を作品に反映するのが早いという話で、僕は自分の中にどうしても書きたいことがあるっていうわけじゃないんですよ。自分の言いたいことばかりを作品にしていると、続けていくうちに似たような内容になってしまうから、そのときに起こったこととか、季節とか、自分が感じたことを取り入れて変化をつけるようにしていて。それと、意識するのは今までの流れです。今回で言うと前2作がシリアスだったので、もうちょっと笑えるようなものにしたいなと考えています。

──テーマは「お祭り」ということですが。

劇団かもめんたる第10回公演「HOT」チラシ

劇団かもめんたる第10回公演「HOT」チラシ

う大 コロナで経済的にも冷えているし、みんな鬱憤も溜まっているだろうから、「お祭り」で熱く、HOTになればいいなと思って。ただ、いざ書き始めると僕自身が弾ける人間でもないから、みんなを熱くさせるなんてそんな大役は無理だなと(笑)。改めて祭りのことを調べてみると、その成り立ちがおかしかったり、偉い人が聞き間違えたまま代々受け継がれちゃったり、けっこうユニークなエピソードがあるんですよ。昔の人が今の祭りを見たら「何を大事にしてんだよ!」って思うような本来の意味から逸れてしまったこともあると思いますし。

賀屋 なるほど。めちゃくちゃ面白そう(笑)。

う大 例えば、強引すぎるだろうと思うんだけど、せきをして苦しんでいた子供が池に落ちて死んでしまう話があって。それを助けてあげられなかったおばあちゃんが、後悔の念から自分も池に身を投げるんです。それが姥神みたいな感じで崇められるようになるんだけど、その神様にお願いすると、せきを止めてくれるっていう。

賀屋 あ、せきを?

う大 そうそう。死んでからせきを止められる力を得たのかな?とか、こっちで解釈しようとすればできるけど、ちょっと展開が急じゃない。

賀屋 確かに発端はせきでしたけど(笑)。

──子供の健康や安全を守ってくれる、とかではなく「せきを止めてくれる」。

う大 もう1つせきの話だと、せきに苦しめられて死んじゃったおばあちゃんが祀られて、そこに拝むとせきを治してくれると。そのときにおせんべいをお供えするんですよ。なぜかというと、おせんべいってパサパサしているでしょ。食べるとせきが出るものだから、それを見せて、せきのつらさを神様に思い出させるっていう。

──ひどい!(笑)

賀屋 崇めているのか脅迫しているのか……。

う大 そういう話が伝えられたら、「それはおかしいだろ」って誰かが言うべきじゃないですか(笑)。そうやって話がでっち上げられていることを知って、僕も物語をでっち上げるという立場として参考にしたいなと思って。

賀屋 しかも今回はすごいですよね、ラサール石井さんが出られるっていう。

う大 八嶋智人さんが出演してくれたときにラサールさんが観に来てくれて、「ぜひ出たい、特別な役じゃなくて劇団員と同じように扱ってくれていいから」って言ってくださったんです。このラサールさんの使い方がけっこう面白いと思うんですよね。レジェンドにあんな役をさせるか!みたいな。

賀屋 うわー楽しみです。祭りってちょっとエグいところもあるじゃないですか。言ったら、男根崇拝とか。

う大 そうそう。なんで祭りと夜這いとかエロいことが関わってくるかっていうと、それがあるから毎年祭りを開こうっていう原動力になっているんだって。みんなもそうしたいし、祭り側も「どうぞしてください」だし。だからこそ何百年も続いている。これはHOTじゃない?

賀屋 熱いですね。

う大 そういうエッセンスも取り込んで、前回よりもやや下ネタもありつつ、面白い話になっていくと思います。

前歯が欠けたのは何かのシグナル?

──今日は貴重な時間をいただきありがとうございました。最後にお聞きしますが、お二人にとって2020年はどんな年でしたか?

賀屋 僕はあんまり覚えてないです、いろいろありすぎて。コロナで単独ライブが中止になったり、相方が体調崩しちゃって1人で活動することになったり、マクロとミクロで事件が起きている感覚で。あまりくよくよしないタイプなので大丈夫だと思っているんですけど、一昨日、朝起きたら前歯が欠けてて。

う大 え、どういうこと? ストレスで?

賀屋 たぶん歯ぎしりで。

う大 うそでしょ(笑)。

賀屋 前歯なので、メンチ切るようなすごい顔して寝ていたんだと思うんです。なんの痛みもなかったんですが、口の中に違和感があって鏡を見たら歯が欠けてました。

う大 その欠けた歯はどこ行ったの?

賀屋 ソファーに落ちていました。ピーンて飛んだのか、寝ている間にソファーまで体ごと移動していたのか……。

う大 それ、かなりシグナルが出ているんじゃない(笑)。

賀屋 何かのサインなんですかね(笑)。寝られないとかご飯食べられないとかはないので、まあよしとしています。最近、電動歯ブラシに変えた影響かなーとか。だから、2020年はよくわかんなかったですね。とにかくできることをやらせてもらった感じです。わけわかんないながらも2020年にやってきたことが、来年以降、こういう意味があったって理由づけできるような活動につながっていたらいいなって思います。1人の期間があってよかったって思えるように。

う大 そうだね。

──う大さんはどうでしょうか。

う大 僕は今年、めちゃくちゃ忙しかったんですよ。書く仕事が増えたり、さっきも言ったように舞台の出演も何本かあったりして。

──コロナ禍で活動が止まってしまう人が多い一方で、う大さんはいつになく忙しかった。

う大 忙しいのはいいことだし、望んでいたことなので、とにかくもう突っ走ってやろうっていう気持ちではいるんですけど。そういう意味でいつもと違う年ではありましたね。

賀屋 ちなみに、お子さんはどうしていたんですか?

う大 3人いるんだけど、みんな4、5月は家で過ごしていて、ずっとYouTubeを見てたね。そのときに改めて思った。こういうときって「エンタメは必要なのか?」みたいな議論になるけど、必要だよ。もう間近で見ていたから。子供たちがずっとエンタメに触れている姿を。これ、エンタメなかったらえらいことになってたぞって思うもん。

賀屋 エンタメがなかったらもっと暗い世の中になっていましたよね、きっと。

う大 そうだと思う。同時に、我々の仕事も重要なんだなっていうことを再認識しましたね。

かもめんたる・う大(左)とかが屋・賀屋(右)。

かもめんたる・う大(左)とかが屋・賀屋(右)。

岩崎う大(イワサキウダイ)

1978年9月18日生まれ、東京都出身。早稲田大学のお笑いサークルで出会ったメンバーで5人組コントグループWAGEを結成。解散後、槙尾ユウスケ(マキオユウスケ)と共に劇団イワサキマキオ(現・かもめんたる)として活動を開始した。かもめんたるは「キングオブコント2013」で優勝。単独ライブのほか、2015年に旗揚げした劇団かもめんたるの公演も精力的に実施している。今年11月開始のドラマ「監察医 朝顔」(フジテレビ)のスピンオフ「森本刑事のオジさん監察日記」(FOD)に出演し、脚本も担当。またラジオコント番組「東京03の好きにさせるかッ!」(NHKラジオ第1)にコントを提供している。サンミュージックプロダクション所属。

劇団かもめんたる

劇団かもめんたる第10回公演「HOT」チラシ裏面

劇団かもめんたる第10回公演「HOT」チラシ裏面

キングオブコント王者のかもめんたるが2015年に旗揚げ。オーディションを通じて所属となった劇団員やゲスト俳優と共に、1本のロングコントとも言える演劇を展開する。すべての作品で岩崎う大が脚本、演出を担当しており、2019年上演の「GOOD PETS FOR THE GOD」は「第64回岸田國士戯曲賞」候補に。12月2日(水)から7日(月)まで、第10回公演「HOT」を東京・東京芸術劇場 シアターウエストで上演する。う大の得意とするエロ・グロも織り交ぜた笑いを会場で堪能してみては。詳しくは公式サイトで。

劇団かもめんたる第10回公演「HOT」

日程:2020年12月2日(水)~12月7日(月)
会場:東京・東京芸術劇場 シアターウエスト
作・演出:岩崎う大
出演:岩崎う大 / 槙尾ユウスケ / 小椋大輔 / もりももこ / 船越真美子 / 土屋翔 / 長田奈麻 / 寺田真珠 / ラサール石井
最新情報はTwitterをチェック。

賀屋壮也(カヤソウヤ)

1993年2月19日生まれ、広島県出身。加賀翔(カガショウ)と2015年にかが屋を結成。「キングオブコント2019」ファイナリスト。「有吉の壁」(日本テレビ)、「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!」(テレビ朝日系)、「かが屋の鶴の間」(RCCラジオ)などに出演中。今年3月にはYouTubeの配信番組「みんなのかが屋」でいち早く無観客ライブを開催し、話題に。ゾフィー、ハナコ、ザ・マミィとかが屋の4組で2つのコント番組「東京 BABY BOYS 9」「お助け!コントット」(共にテレビ朝日)に参加しており、この冬に新作の放送を控えている。マセキ芸能社所属。

東京 BABY BOYS 9

テレビ朝日 2020年12月29日(火)24:00~25:00

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お笑いナタリー @owarai_natalie

【インタビュー連載】
かもめんたる 岩崎う大 × かが屋 賀屋壮也
コロナ禍の世の中で「やる」ということ

劇団かもめんたるの前回公演や「東京 BABY BOYS 9」ライブを回想、先日前歯が欠けた話も

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