シソンヌと、今井太郎さん(右)。

2020年、いつもと違う年 その5 [バックナンバー]

シソンヌ×構成作家・今井太郎氏×制作・牛山晃一氏

シソンヌライブの定点観測、“コロナの年”にできた骨太コント

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新型コロナウイルスの流行で図らずも特別な年になった2020年を、お笑いに携わる人たちと気のおもむくままに振り返るインタビュー連載。今回は10月から11月にかけて「シソンヌライブ[neuf]」を東京・本多劇場で行ったシソンヌと、座付き作家の今井太郎さん、制作を担当する牛山晃一さんに話を聞きました。感染防止対策をとりながら全公演配信という試みも成功したライブの手応えのほか、「有吉の壁」(日本テレビ)の収録が数少ない楽しみだったという制限された中での活動、外出自粛で再確認したそれぞれの性格など、和やかに語ってくれた様子をお届けします。

取材・文・撮影 / 狩野有理

※取材は11月中旬に実施。

シソンヌ×今井太郎氏×牛山晃一氏 インタビュー

「シソンヌライブ」スタッフはどうぶつの森の住人のよう

──よろしくお願いします。じろうさんがお好きだと聞いてヨックモックご用意しましたので召し上がってください。

じろう あー、惜しいなあ。あれが好きなんです、四角いやつが。

──ええっ! そんな人います!? ヨックモックと言えばこの棒のやつ(=シガール)だろうと思って詰め合わせにしなかったんです。

長谷川忍 特殊なんです(笑)。

じろう シガールはあってもあんまり手を出さないんですよ。ラングドシャが好きなんです。

シソンヌ。左からじろうさん、長谷川さん。

シソンヌ。左からじろうさん、長谷川さん。

──なんと……。覚えておきます。では気を取り直して、このインタビューではちょっと変わった1年になった2020年をざっくばらんに振り返るもので、みなさんには10月から11月にかけて開催した「シソンヌライブ[neuf]」のお話を中心にお聞きしたいと思います。最初に牛山さん、今井さんの「シソンヌライブ」における役割を教えていただけますか?

じろう 牛山さんは軍師みたいな人ですね。僕らが武将で。「次は何をどうやるか」っていうのを牛山さんが決めてくださってます。金額とか期間とか。

今井太郎 飲食店で言うと、牛山さんがお店を建ててくれているイメージです。で、メニューを考えているのがじろうさん。

じろう ネタを書く以外のことを全部やっていると思ってください。僕だったら「こんなことまでやらなきゃいけないのか……」ってなるようなことをすべてやってくれているので、本当にありがたい。

──ということで合っていますか?

牛山晃一 はい(笑)。僕は戦略練るのが好きなんですよ。好きだからやっているだけです。あとこの「シソンヌライブ」が始まるときに、2人に「スタッフはどういう人がいい?」って聞いたら「優しい人」っていうふうに答えたので、僕なりに解釈して集めたスタッフとやっているんですけど、そうしたら“締める”人がいなくなっちゃったので、今はそれを僕が一身に引き受けていますね。

──「シソンヌライブ」は優しい人たちの集まりなんですね。

じろう そうですね。シルバニアファミリーとかどうぶつの森の住人みたいな。でも仕事に関してはすごい。

長谷川 本当にお世話になってます。

今井 全員マジでエグいですよ。腕、感覚、対応、全部すごいです。

牛山 そこは間違いなくプロフェッショナルですね。

──今井さんはどんなポジションなのでしょうか。

今井 僕はじろうさんのサポートですかね。

じろう 一番いい相談相手です。うまいんですよ、僕の扱いが。

今井 (笑)。

じろう 僕が心配していることをサラッとした一言で解消してくれるんです。あと、急なお願いをしても絶対「嫌だ」とか「できない」って言わない。必ずなんとかしてくれようとするからすごく助かっています。

──「必ずなんとかしたい」と思わせるじろうさんの人柄もありそうです。

シソンヌと、今井太郎さん(右)。

シソンヌと、今井太郎さん(右)。

今井 以前、長谷川さんのZINE「混沌」でも書いたんですけど、わりと作家にベットしない芸人さんも多い中でじろうさんはすごく頼りにしてくれるんですよ。「いてくれないと困る」ってちょっと怒られるくらいで。こんなふうに言ってくれる人はなかなかいないので、僕もそれに応えたいなと。

──ゲネを拝見する限りだと今井さんが客席からご覧になって、調整してという感じですよね。

今井 そうですね。じろうさん、演出にあんまり興味ないんですもんね。

じろう うん。

今井 小屋入りするまでも演出面は任せてもらっていますけど、シソンヌの単独ライブなので僕が決定することはしたくなくて。意見を言って、2人がOKしたことをゴーするという流れですね。だから役割としては“演出”なんですけど肩書きは“演出補”でいいと思います。

「タイタンシネマライブ」を参考に

──今年の「シソンヌライブ」を開催するかどうか判断するまではやはり悩みましたか?

牛山 人数制限はありそうだけど、感染防止対策をしながらやれそうという気配を7月の中旬くらいから感じていました。「シソンヌライブ」を年に1回やっていくうえで、“コロナの年”という定点観測も絶対大事だなと僕は思っていて。その年に何ができたのか、例えばDVDにしたときにこの09(neuf)は間違いなく印象的な回として残るから、どういう形であれやりたかった。

長谷川 僕は最悪、無観客かなって勝手に思っていましたけど、やるという前提ではいましたね。

──結果としては座席数は減らし、配信カメラも入れる形で無事に2週間上演できました。全公演配信(1台のカメラによる配信を1000円で12公演、6台のカメラによるスイッチングありの配信を3000円で2公演)というのは新しい試みでしたね。

牛山 ワンカメでの配信は「爆笑問題withタイタンシネマライブ」を参考にしました。「タイタンシネマライブ」ってワンカメの寄り引きだけなんですけど、十分楽しめるんですよ。これだったらお金もかからないだろうということで企画を出しました。

──牛山さんはほかのお笑いライブもチェックしているんですか?

牛山 調査のためにもけっこう観ていますね。特に外出自粛期間中はオンラインライブを観まくっていました。

──ネタの内容についてはコロナがある世界を舞台にするのか、それともコロナとはまったく切り離したものにするのか、じろうさんはどうお考えでしたか?

「シソンヌライブ[neuf]」より、コント「隣人」のワンシーン。(写真提供:吉本興業)

「シソンヌライブ[neuf]」より、コント「隣人」のワンシーン。(写真提供:吉本興業)

じろう 触れないわけにはいかないかなと思っていましたし、牛山さんにも「この年にやった意味みたいなものをのちのち振り返れたらいいね」と言われていたので、やっぱり今の状況を取り入れたネタはやろうとは思っていました。

牛山 今回はけっこう早めにじろうくんから案が来て驚いたんですよ。こんな早いこと今までにあったかなって思うくらい(笑)。それに僕が目を通して、もう1回揉んでもらいました。

──それは1つのコントの案についてですか?

牛山 いや、全体ですね。「このネタの意味はこういう感じです」というのがまずざっくり届くんです。

今井 やろうと思っているネタのリストというか、1年間で書き溜めた設定をじろうさんが全部わーっと僕に伝えてくれて、「気になったやつある?」「これとかですかね」っていう話をしながら書き進められそうだったら残す。そのやり取りで決まったベスト6、7本をスタッフさんに提案するって感じです。

──いつもは面白さ優先でセレクトしているんでしょうか?

今井 「書けそう」ってことですかね?

じろう そうだね。でもまあ、「これは今のうちにイジっておかないと」みたいなものも1本くらいは毎回入ってきます。今回は牛山さんも早かったっておっしゃっていましたけど、滑り出しはよかったんですよ。

──「滑り出しは」ということは途中でスピードダウンした?

じろう 自分の感覚的にはすごく渋いときがあったんです。全然書けねえなっていう。でもそういうときに太郎が「いや、全然いつもより早いですよ」という一言をくれて、「あ、そっか。今年はいつもより早いのか」「順調なのか」って思わせてくれる(笑)。こういう部分でもやっぱり僕の扱いがうまい。

ネタ数減らして骨太に、本音は「逃げ」?

──今回はネタの本数が全部で5本と例年より少なかったですよね。ですが個人的にはいつも以上に充実した内容だったと感じました。一つひとつのコントに見応えがあって。

牛山 僕がよかったと思っているのは、各ネタにすごく奥行きが感じられたところです。リライトしながら練っている時間が長かったことが、この骨太なコントに表れているのかなと。もう賞レースに出る必要のないコンビだと思うので、長いコントのほうがお客さんも楽しんでくれるだろうし、ネタ数を増やすよりも深みが出せるんじゃないかというのは今回改めて気づいたところでもあるので、「シソンヌライブ」はこんな感じでいいのかなと一つの形が見えた気がしましたね。

──シソンヌのお二人としてはそこは意識していたところですか?

「シソンヌライブ[neuf]」より、コント「お店」のワンシーン。(写真提供:吉本興業)

「シソンヌライブ[neuf]」より、コント「お店」のワンシーン。(写真提供:吉本興業)

じろう 最近は6本やることが多いんですが、単純に、本数が少なければ出す設定案が少なくて済むじゃないですか。それに、覚えるのも演じるのも着替えるのも大変なんです(笑)。毎年やっている「モノクロ」(地明かりのみ、衣装の着替えなし、セットなしのシンプルなステージを展開するシソンヌの全国行脚ライブ)での修行のおかげで、なんてことない題材もいくらでもコントにできるっていうスキルが多少身についたので、1つのコントを膨らませたほうが楽だなっていう。だから、自分としては「本数減らして骨太に行こう!」っていうポジティブな感じではなくて、「もう本数覚えられません」っていう逃げの5本だったような……(笑)。

──そうなんですね(笑)。

長谷川 僕もこれが主流になっていってほしいです。1本1本のコントに余裕がありましたもん。「次のネタはあれだから……」とか考えなくていいので、完全に体に染み付いた状態でやれました。6本目をナシの方向に持っていきたい空気を俺とじろうが出したときに、いち早く察してくれたのは今井くんでしたね。忙しいのもあって、1本減ったっていうのはだいぶ気持ちが楽になりました。

今井 1本1本が長くて公演時間が収まるか怖いところもあって。でもそんなに違うんですね。1本の差が。

長谷川 違うよ。精神衛生的にも全然違う。

──いつもはコントの最中に次のコントのことを考えている?

長谷川 普段は集中できていないみたいで申し訳ないですけど、「次のあそこ間違えないようにしないとな」って考えちゃって。

今井 へえー。着替えがしんどいっていうより、キャラの切り替えが難しい?

長谷川 なんだろうな、「不安だな、次」って思っちゃう。でも今回は次のコントのこと考えなかったもん、1回も。それだけ今のコントに集中できてた。

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「有吉の壁」に助けられた、1万円のチケット代「生」の価値

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