ぜんぶ君のせいだ。|この1枚が最終形態であることの証明

ぜんぶ君のせいだ。が3月31日に“再新録再定義”アルバム「Q.E.D.mono」をリリースした。

昨年から今年にかけて体制が大きく変わり、現在では7人体制で精力的な活動を繰り広げているぜんぶ君のせいだ。。今作には現体制で新たにレコーディングした既発曲「WORLD END CRISIS」「革鳴前夜」「ぜんぶ僕のせいだ。」の最新バージョンを含む14曲が収録されている。精力的にライブを重ねることで新体制でのパフォーマンスを定着させてきた彼女たちはどのような思いをもって、既発曲たちを“再定義”したのか。音楽ナタリーでは47都道府県ツアー「re:voke tour for 47」を終えたばかりのぜん君。に話を聞いた。

取材・文 / 倉嶌孝彦 撮影 / 前田立

秒速で過ぎ去った5カ月

──まずは3月にファイナルが行われた「re:voke tour for 47」について伺います。新メンバーのお披露目ライブから始まった今回のツアー、どうでしたか?

もとちか襲 5カ月かけて全国を回ってきたんですけど、体感としては本当にあっという間に終わったツアーでした。ツアー初日のZepp DiverCity(TOKYO)公演のことでさえ、昨日のことのように鮮明に思い出せるんですよ。秒速で過ぎていった5カ月でした。

雫ふふ ふふもあっという間に感じたな。それと今までの人生で一番密度が濃い5カ月でした。今までの人生で経験してきたことの倍くらい、いろんなことを思いました。

甘福氐喑 自分はずっと初日のZeppライブのことが頭にあって、そこから絶対に成長するツアーにすると決めていたんです。ステージに立ったことがない自分が本当に0からスタートしたのが今回のツアーだったから、全国を回って圧倒的に成長したと実感しています。悔しいことも楽しいことも、今までの人生で経験したことがないくらい感じた5カ月でした。

征之丞十五時 このツアーでぜんぶ君のせいだ。というグループの体制が一気に変わったので、十五時は今までの自分ができていなかったことを改めて見直すツアーでした。例えばダンスの振りとか。ちょっと慣れてきて自分のやりやすいようにアレンジしちゃっていたところを、新メンバーに教えていく中で直したり。心機一転したタイミングだからこそ、自分のことも冷静に見られた5カ月だったと思います。

如月愛海 それに今回は、ぜんぶ君のせいだ。として初めて47都道府県を制覇したツアーでもあったんです。これまで行きたくても行けてない地域がずっとあったんですが、ようやくすべての都道府県を回れました。こういう情勢の中で47都道府県を回れたのは、患い(ぜんぶ君のせいだ。ファンの呼称)さんはもちろん、全国のライブハウスのスタッフの皆さん、プロモーターの皆さんや関係各社の皆さん、スタッフの皆さん、それと今のメンバーのおかげだと思うので、みんなに感謝してます。

ぜんぶ君のせいだ。

──メイさんと个喆さんは年明けに所属していたグループの解散があり、ツアーの途中からぜんぶ君のせいだ。に加わりましたが、新しいグループでのツアーはどうでしたか?(参照:ぜんぶ君のせいだ。に元ゆくえしれずつれづれのメイユイメイと个喆が加入、新体制初シングル発売

メイユイメイ とにかく付いていくのに必死でした。一生懸命ダンスと歌を覚えて、ステージに上がって……という繰り返しだったんですが、やっぱり自分はライブでしか生きているという実感を得られないんだな、と思って。ステージに立ち続ける決断をしてよかったなと思いました。

个喆 「つれづれっぽい」みたいに言われるかもなと思ってたんですけど、今のところ誰にも言われてなくて(笑)。毎日ぜん君。のメンバーと一緒にいるから、もう馴染んじゃったのかもしれないです。自分で自分のことを“すぎょい”と思ってます。

如月 スーパーポジティブ(笑)。

 7人で一緒に寝泊まりするのは本当に楽しかったな。

ふふ ホテルの部屋が分かれていてもみんなで1つの部屋に集まってね!

个喆 お菓子食べて、パーティしてました(笑)。

 一緒にお風呂入りに行ったり、お布団でゴロゴロしたり。ツアー楽しかったなあ。

──ぜん君。のツアー中に2度目の緊急事態宣言が発出されたこともあり、この時期に47都道府県をここまできめ細かく回ったグループはなかなかいないと思うんです。この情勢の中でツアーを回ったことに対して、皆さんはどう感じましたか?

如月 まず驚いたのが、ライブハウスの人に「今月は君たち1本だよ」と言われたことがけっこう多くて。緊急事態宣言が解除されてからはライブの本数も増えてきたようなんですが、1月とか2月は本当に私たちの前後のスケジュールが全然入っていない、みたいなライブハウスが多かったですね。ライブハウスのスタッフさんたちが総出で私たちを歓迎してくれたところもあって、ライブハウスのスタッフさん、会場に遊びに来てくれる患いさん、みんなに感謝をして回るツアーでした。

十五時 患いさんたちも地元の方がたくさん遊びに来てくれたのでうれしかったですね。ぜん君。の現場に初めて足を運んでくれた人もたくさんいたし、こういう状況なのに私たちのライブを観に来く決断をしてくれた方が多かったみたいで。

如月 それはすごくありがたかったし、私たちも感謝されたところですね。「ぜん君。しか来てくれないんです!」みたいに言われると、私たちもうれしいんですよ。「私たちはどんなときでも来るよ!」って言って回ってました。

──すでに次のツアーが発表されているわけですから、その言葉に嘘偽りがないのがすごいと思います(参照:ぜんぶ君のせいだ。ロングツアーの最終日に再び47都道府県ツアーの開催発表)。

 各会場で「また来るよ!」って必ず伝えていたんですけど、きっと「そうは言ってもしばらく来てくれないだろうな」みたいに思っている子たちもいたみたいで。全国で交わしてきた約束をちゃんと果たすための2週目のツアー、すごく楽しみです。私たちが嘘をつかないってことをちゃんと証明するツアーにしたいですね。

これ以降、違うバージョンは存在しない

──「re:voke tour for 47」のファイナルを終えたタイミングで、グループの既発曲の再録音源を収めたアルバム「Q.E.D.mono」がリリースされました。これまでも再録アルバムは何度かリリースされていますが、「証明終了」の意味を持つ「Q.E.D.」という思い切ったタイトルを付けたことには、特別な意味があるような感じがしています。

如月 ようやくぜん君。が求めてきたものが完成したんだなと思っています。

十五時 ぜん君。の最終形態を証明した、みたいな意味ですから。

ふふ 「Q.E.D.mono」ってタイトルを見たとき、すごくうれしくて泣きそうになっちゃった。これまでグループで歌われてきた大事な曲たちの思いを受け継いで自分たちのものにするというのが、素直にうれしくて。ちゃんとぜん君。の一員になれたんだという実感がより湧きました。

如月 これまでの再録アルバムの収録曲には曲名のあとに(2019Ver.)みたいに付けていたんですけど、今回はそういうカッコ書きを1つも付けていないんです。

──今回レコーディングした音源こそが曲本来の姿、というくらいの気概を持って作られたということですか?

如月 はい。それとこれ以降、同じ曲の違うバージョンは存在しないだろう、くらいに思っています。襲と喑、ふふの3人が入ったときから、この中で誰かが辞めたらぜん君。は本当に終わりだと思って再スタートを切っているんです。もう腹をくくっていますから(笑)。

──これ以降の再録は出さない、という決意の表れなんですね。

如月 2、3年後に超歌がうまくなってもう1回歌う、みたいなベスト盤的なことはあるかもしれませんが、メンバーが変わったから録り直そう、みたいなことはもうないと思っています。

“堕ちていく”中に希望を見出せた

──「Q.E.D.mono」に収録されている14曲は、ライブでもよく披露される「ぜん君。と言えば」という曲がそろっている印象でした。

如月 グループの節目に使われた曲ばっかり並んでいるんですよ。この14曲を見ると、楽しいことも苦しいことも、悔しいことも悲しいことも全部思い出せるんです。それらすべてを背負って、今の私たちの音源を残すことにすごく意義があると思っていて。最初の曲が「WORLD END CRISIS」というだけでもう込み上げてくるんですよ。

メイ メイは最初に「WORLD END CRISIS」が収録されることを知ったとき、この曲のことしか頭に入ってこなくて(笑)。

──「WORLD END CRISIS」はもともと◎屋しだれ(ゆくえしれずつれづれの初期メンバー)さんが参加していた曲なので、元つれづれのメイさんや个喆さんにとっては特別な意味を持つ曲なのかもしれないですね。

メイ 過去にリリースした曲を再録させてもらうというのは、認められた気がしてすごくうれしいんですよね。メイにとってはぜん君。の歌でもあり、しだれの歌でもある「WORLD END CRISIS」を歌えるのはすごく光栄なことだったので、一番気合いが入りました。

个喆 「WORLD END CRISIS」はみんなでシャウトをし合うんですけど、シャウトの歌い方がつれづれのときとは違うんです。つれづれでは群青(ゆくえしれずつれづれのファンの総称)に向けて歌う気持ちだったけど、ぜん君。はメンバー同士でシャウトをぶつけ合うようなイメージがあって。横を見て歌うのが新鮮だったし、シャウトみたいな自分をさらけ出すように歌うのは恥ずかしくもあり、楽しくもあり……。ライブでは私たちの泥仕合のようなシャウトを見てほしいかな。

ふふ シャウトの顔、みんなすごいからね(笑)。

如月 初期の頃の「WORLD END CRISIS」は、自分たちにとってすごく“重い曲”だったんです。だから最初のレコーディングのときは、メンバーそれぞれが自分の中の素の部分を探して歌っていた感覚が強くて。でもライブを重ねて、7人編成になって、その重さが変わってきた感じ。“堕ちていく”中にも希望があるというか、1人で堕ちるのではなくて、誰かと一緒に堕ちていく感覚に変わってきた。

十五時 曲の最後にめぐちゃんの語り(ポエトリー)があるんですけど、これまではすがるように「ひとつだけ言わせてほしいことがあるの」と言ってる感じだったのが、今の「WORLD END CRISIS」ではちょっと優しい感じに変わった気がするんですよね。

メイ 最後のセリフの「たまらないまま…」、今までの中で一番よかったな。

个喆 ここの吐息が好き!

ふふ わかるわかる!