遊助「僕らの時代」インタビュー|音楽の楽しさを感じながら“今の思い”と“新たな挑戦”詰め込んだ新作完成 (2/2)

全曲意味のあるものになった

──今年3月にリリースされたオリジナルアルバム「Are 遊 Ready?」のリードトラック「この船のテーマ」も、「どうしてこの航路を僕は選んだんだろう どうしたらこの航路どんどん良くなるんだろう」と、未来が見えない中、どう生きていけばいいのかを提示する歌でした。今回の作品にも、アルバムからの流れがしっかりつながっているように感じます。

それも縁というか、偶然なんですよ。実は、当初今回のシングルのタイトル曲にしようと思っていたのは全然違う曲で。

──そうなんですか?

はい。もともとはラブソングを用意してたんですけど、スタッフさんに僕の愛が全然伝わらなくて(笑)。じゃあ、そっちはちょっと置いといて、気分一新で詞も曲も別のものを作ろうと。今パッと思い浮かぶこと、思いの丈をぶち込んでみようってことで書いたのが「僕らの時代」なんです。大人たちがいろんな意見を出したからこそ「僕らの時代」が生まれたわけなんですが、結果的に全曲……通常盤の「ライオン-Re-」も含めて、意味のあるものになったなと思います。

遊助

──2010年リリースのシングル「ライオン」が、今回通常盤に「ライオン-Re-」として新たにアレンジで収録されています。再びこの曲に向き合おうと思ったのは何かきっかけがあったんですか?

この曲をカラオケで歌ったんですよ。僕、普段はカラオケにまったく行かないんですけど、たまたま時間が空いたとき、知人に「暑いし喉も渇いたしドリンクサービスあるから行こうよ」みたいな感じで誘われて、「じゃあ30分だけね」と行くことになって。そこで「ライオン」をリクエストされて、ワンフレーズだけ歌ったんですけど、そのときに改めて「歌うっていいな。やっぱりいい曲だな」と思えたんです。みんなの反応もよくて、短い動画をインスタに上げたらそれも400万回ぐらい再生されて。なので、この曲をまた違うアレンジで知っていただけたらうれしいなという思いもあって、新たにレコーディングしました。リリースから12年というひと回りの節目は、偶然なんです。

勝手な思い込みかもしれないけど、こういう時代だからこそ俺がやんなきゃ

──節目という意味では、デビュー10周年を機にアルバムタイトルも付け方も変化しました。これまでの「あの・・◯◯ケド。」に代わって、2020年3月リリースの「遊言実行」からは「遊」が付くシリーズが発表されていますね。

「遊言実行」を出したぐらいの時期にコロナ禍が始まったんですよね。3年が経とうとしてますけど、情報番組(TBS系「ひるおび!」金曜コメンテーター)を始めたこともあって、世の中の流れをダイレクトに感じるようになったことは大きかったです。勝手な思い込みかもしれないけど、こういう時代だからこそ俺も誰かのために動かなきゃいけないんじゃないかとも思うし、そう思わないとがんばれないし。ライブに来てくれたみんなの表情を見ても、改めて「がんばんなきゃダメだ」と思います。自分のためじゃなくね。

遊助

──なるほど。

人と人との距離が広がって、周りの目を気にしなければいけないことがよくも悪くも増えて。テレビの再放送なんかで人と人がくっついて話しているのを観ると違和感を覚えるし、マスクをしていない人がいるとやっぱり目につくし。大人たちはみんな「あの頃はよかった。今じゃ考えらんないよな」って言うし、学生さんも「コロナ前に青春時代を過ごせた人たち、いいな」と感じる人は多いと思う。いいことももちろんあるかもしれないけど、どうしても昔を振り返って、「でもまあ、しょうがないよな」ってあきらめてしまうことが増えた気がするんです。だからこそ僕自身も“遊助・第2章”として、ここでもう1回立ち上がんなきゃいけないなと思って。今は目に見えないものに立ち向かってる感じがしますけど、そういうときのほうが気合いが入る感覚がありますね。

──また、遊助さんの楽曲にはルーツである宮古島の島唄……生活と密接に根ざした歌とか、祭り歌的な要素を感じられますよね。だから1日の終わりにみんなで集まって、歌でねぎらって楽しもうという思いにつながるという。

そうかもしれないです。ちっちゃい頃から家でおじいちゃんが弾く三線の音をずっと聴いていたので、自然に出ちゃうんでしょうね。

──少しずつ日常を取り戻していこうという動きの中、今年の夏に開催された全国ツアー「遊助 LIVE TOUR『Are 遊 Ready Go! 2022!!』」はいかがでしたか?

間違いなく、今年が一番楽しかったです。もちろんこれまでも楽しんではいましたけど、「あっ、歌って楽しいかも」ということに改めて気付かされたというか、今回のツアーが気付かせてくれたというか。昔は「楽しまなきゃ、楽しませなきゃ」という気持ちが強かったんです。でも、今はそれよりも「届けよう、伝えよう」という思いが先にある感覚で。

──デビュー以降、初めて感じる手応えが今年のツアーにあったと。

手応えなんて偉そうなことは言えないですけど、自分の中では間違いなく今が一番ライブをしてる感じがあります。もちろんコロナ禍で会場に来られなくなった方もいて「やっぱり今日は断念します」というコメントもたくさんいただきました。だからこそ、今までで一番汗かこうと思っていたんですけど、いざ始まったら汗と同時にいろんな感情が自分の中から出てきて……。これから先のライブは、自分でもどうなっちゃうのかわかんないです(笑)。

──あはは。そして、これまで「遊turing」(ユーチャリング)で多彩なアーティストとコラボレーションしてきたことも、今後の遊助さんの音楽活動にうまくつながっていきそうですね。

そうなるといいなと思います。世の中にはこんなに面白いことがあるんだ、こんな感性の人がいるんだ!っていう興味は尽きないですね。音楽に限らず、芝居もバラエティも、いろんなことをやらせていただいてますけど、今が一番楽しめている気がします。これから発表できることもいっぱいあると思うし、来たる15周年に向けて遊助は邁進していくだけです。

遊助

──このシングルが遊助さんの新たな一歩となることを楽しみにしています。

2017年に「あの・・いま脂のってるんですケド。」というアルバムを出しましたけど、たぶん今が一番脂乗ってる気がするんですよね(笑)。生きてるなって感じがするし。どんなに大変な時代が来ても、どんなに悲しいことがあっても、小さい子からおじいちゃんおばあちゃんまで、生きてる限りは「僕らの時代」なので。同じ時代を共有しながら、皆さんの人生を少しでも彩れる作品をこれからも作っていきたいと思います。

──ありがとうございます。ちなみに、「僕らの時代」初回生産限定盤には撮り下ろしのスタジオライブが収録されています。ティザー映像を見せていただきましたが、とてもリラックスしたパフォーマンスでしたね。

あのスタジオライブもめちゃくちゃ楽しかった! 何度も言いますけど僕、今まであんまり歌ってて楽しいと思ったことがなかったんです。うちの家族はおじいちゃんが三線やってたり、親父がバンドやってたり、叔父さんがピアニストだったり、音楽好きが多いんです。小さい頃から野球をやってた俺は“上地家で唯一、スポーツで生きていく人”みたいな感じで音楽とは無縁だと思ってたから、みんながカラオケに行くときも僕だけ行かなかった。それが今じゃ音楽やってるのが僕だけになっちゃって。「なんだ、音楽って楽しいじゃん! 早く言ってよ」って感じですね(笑)。

プロフィール

遊助(ユウスケ)

1979年4月18日生まれ、神奈川県出身の俳優、タレント、アーティスト。2009年3月にソロデビューシングル「ひまわり」をリリースし、同年12月に初のアルバム「あの・・こんなんできましたケド。」を発表した。2010年2月より自身初となる全国ツアー「あの・・こんなんやりますケド。」を開催。その後も精力的に作品をリリースし、2016年2月に初のベストアルバム「遊情BEST」を発表した。2019年にソロデビュー10周年を迎え、2月に2枚目のベストアルバム「遊助 BEST 2009-2019 ~あの・・あっとゆー間だったんですケド。~」をリリース。さらに日本武道館と大阪城ホールでアニバーサリーライブを開催した。2022年9月に、ニューシングル「僕らの時代」を発表。