ナタリー PowerPush - Yun*chi

ワクワクドキドキをシェアする「Asterisk*」

大人のイメージ=骨董通り

──アルバムに入る新曲のお話もいろいろ聞ければと思うんですけど。まずは「Fantasize*」について。

歌を入れたときに「懐かしい日本」っぽい印象を受けました。歌謡曲っぽいというか。飛内(将大)さんの中でも珍しいメロディですよね。田中(秀典)さんの歌詞も私の今までのどの作品よりも乙女チックで。「タメ息 ブレンダー 詰め込んで粉々にしたい」って気持ちには私もなるし、頭の中に好きな彼がニョキニョキ出てきてしまうというのはすごくわかる。そういう気持ちは私にもあったし、女子にはみんなにあるものだと思うんです。曲に勢いもあるので、乙女チックなのにかっちょいい感じになったと思います。

──飛内さんは今回アルバムに参加してるクリエイターの中で唯一、Yun*chiさんと初めてタッグを組んだんですよね。

そうですね。でも飛内さんはkzさんとすごく仲がいいし、曲を作ってもらうのは初めてだけどそれまでもちょこちょこ会ってたんですよ。だから今回参加してることについては「kzさんにはいつまで内緒にしておく?」って話をしてました。

──あはは(笑)。別に内緒にしなくていいじゃないですか。

サプラーイズ!みたいな感じで(笑)。そんなことを2人で言いながら制作してました。

──U-SKEさんがプロデュースした「Vivace*」は大人っぽい雰囲気ですね。

Yun*chi

U-SKEさんに「Yun*chiが歌詞を書く?」って言われたんですけど、なんかこれは私じゃないような気がすると思って。で、「どんな世界観にする?」って聞かれて、クラクションが鳴り響く夜の骨董通りをハイヒールが似合う大人の女性が歩いてる、みたいなイメージを伝えたんです。私の中で「大人のイメージ=骨董通り」だったっていう(笑)。そんな歌詞を誰に書いてもらおうかという話の中で、こだまさおりさんの姿が浮かんだんですよ。長い黒髪ですごく素敵な女性なんですけど。

──ルックスを重要視して作詞家を選んだんですか(笑)。

あはは(笑)。実はこだまさん、一時期行ってた美容室が一緒だったというのもあって、デビュー前からたまにお食事をさせてもらったりしたんです。それでさっき言った世界観をふくらませていただくようにお願いしたんですけど、絶対こだまさん、「は? 骨董通り?」ってなったと思うんですよね(笑)。あとでU-SKEさんから「もっとクラクション入れてもいいんじゃない?」とか言われたり(笑)、そういうやりとりをしながらできました。

──作詞をお願いするとき、まるまる任せるんじゃなくて、自分でイメージを考えて伝えるんですね。

でもkzさんと作るときは、先生が作ったほうが絶対よくなるって思ってるので全部お任せしてます。この曲はたまたまU-SKEさんが「Yun*chiの中身を拾いたいから、面白いことを言って」みたいに言ってくれたので。作り方にもいろんな切り口があるんです。

曲の主人公は「境界の彼方」のヒロインと同じビジュアル

──次の「Muffler*」もこだまさんが歌詞を書かれてるんですよね。個人的に「dual*」がすごく好きなので、同じくAvec Avecが手がけたこの曲もやっぱりよかったです。

私もTakumaくんの作るアーバンなシティポップは大好きです。憧れの作家さんで、こういうポップスもやりたいと思って提案させていただいたので、一緒にやれたことはすごくうれしいですね。この曲を作っていたのはクリスマスちょい前くらいだったんですけど、休憩時間に公園でマネージャーさんと紅茶を飲みながら、イルミネーションとかカップルを眺めながら「私仕事してんのに、みんな幸せでいいな。でもがんばらなきゃな」なんて思ってたら、カップルさんたちに影響されてストーリーが浮かんできて。

──どんなストーリーですか?

「境界の彼方」っていうアニメに、未来ちゃんっていうヒロインの女の子が出てくるんですけど、この歌のヒロインは未来ちゃんのビジュアルをした女性なんです。で、その子を好きになってしまって、仲はいいんだけど好きって言えないまま季節が変わりそう、っていうストーリーを男の子の気持ちになりきって書いたんです。女の子は髪の毛がボブカットで、マフラーから毛がぴょーんって出てて、メガネがちょっと下がってて、ちょっと無邪気なところもあるけど控えめで。男の子は自分に自信がないけれど、がんばればイケる、みたいな設定。そういうのを全部こだまさんに渡して詞を書いてもらいました。そしたら、気持ちが伝えられないもどかしさをショーウィンドウの中の季節の移り変わりで描いてくださったり、言葉の選び方も彼女の無邪気さが伝わるような表現だったりして、完璧でしたね。画も浮かぶし、本当に尊敬のまなざしです。

──Yun*chiさん、ラノベとか書いたら新しい才能を発揮しそうですね。

やめてくださいよ!(笑) でも映画とかアニメ、マンガとかが好きなのが、仕事にうまく生きたなとは思いました(笑)。

──「Realizer*」をプロデュースしたCOR!Sさんとはこれが2度目のタッグですよね。

COR!Sちゃんは私がインディーズの頃から曲を聴いてくださっていたってこともあって、「COR!Sちゃんの中のYun*chi」っていうものがすごく明確にあるんですよ。今回は恋がヘタな女の子の歌なんですけど、やっぱり芯が1本通ってて。ただのダメな女の子として描かずに、希望を持たせられる感じで世界観を作ってて、これはきっと「Yun*chiも絶対そういうところがあるんだろうな」って思いながら制作してくれてるんだろうなって。この曲の歌詞ってまるで男の子の気持ちわかってない、ぎりぎりアウトな内容なんですよ(笑)。そんな痛々しいくらいリアルな女性の気持ちが書かれてるのに、くどくならないようにスイートで乙女チックに表現しているのが理想的で、それってCOR!Sちゃんにしかできないことだなと思います。

Yun*chi 1stアルバム「Asterisk*」 / 2014年2月5日発売 / 3000円 / 日本クラウン / CRCP-40359
Yun*chi 1stアルバム「Asterisk*」 ジャケット
収録曲
  1. Reverb*
  2. Perfect days*
  3. Shake you*
  4. Fantasize*
  5. Waon* with IroKokoro Project
  6. Vivace*
  7. dual*
  8. Muffler*
  9. Realizer*
  10. Believe*
  11. Love you*
  12. Your song*
Yun*chi(ゆんち)
Yun*chi

幼少期よりボーカリストになることに憧れ、日々の生活の中で音楽に触れて育つ。インディーズシーンでアーティストとして活動する一方で、モデルとしても活躍。そのキュートなルックスで注目を集める。音楽面でも独特の声と人懐っこいキャラクターが買われ、デビュー前からlivetuneをはじめさまざまなアーティストの作品に参加する。2012年11月にミニアルバム「Yun*chi」で日本クラウンよりメジャーデビューし、同作は「ミュージック・ジャケット大賞 2013」で大賞を受賞。2013年4月には2ndミニアルバム「Shake you*」を発表した。同年11月に発売された1stシングル「Your song*」はNHK Eテレのアニメ「ログ・ホライズン」のエンディングテーマに採用。2014年2月には初のフルアルバム「Asterisk*」をリリースした。