ナタリー PowerPush - Yun*chi×kz

きっかけは逆ナン!? 肉食系シンガー×草食系クリエイター対談

きゃりーぱみゅぱみゅやRAM RIDERらが所属するASOBISYSTEMから新たなアーティストが誕生する。その名はYun*chi(ゆんち)。これまではモデル活動をメインとしてきた彼女だが、幼い頃から歌うことが大好きで「ボーカリストになりたい!」という夢をずっと抱き続けてきたのだという。その思いはついに結実し、ミニアルバム「Yun*chi」で念願のメジャーデビューを果たすことになった。

ナタリー初登場となる今回は、デビュー作で2曲のサウンドプロデュースを手がけているkz(livetune)との対談が実現した。2人は3年ほど前から親交があり、kzの楽曲にYun*chiがフィーチャリングボーカルとして参加したこともある間柄だけに、対談は終始リラックスしたムードで進行。2人の出会いから本作の制作にまつわるエピソードまで、さまざまな話題について話してもらった。

取材・文 / もりひでゆき インタビュー撮影 / 佐藤類

私が逆ナンしたんです(笑)

──2人はかねてから親交があって、気心の知れた間柄なんですよね。

インタビュー写真

Yun*chi 付き合いももう長くなってきましたね。もうすぐ3年くらい?

kz そうだね。その間、1年に1回くらいはコラボしてますし。

──どういったきっかけで出会ったんですか?

kz きっかけは……。

Yun*chi うふふふふ。私が逆ナンしたんですよ(笑)。

kz なんでそういうめんどくさいウソつくの?(笑) でも一緒にやりたいって声をかけてくれたのは確かにYun*chiだったんですよ。以前僕の「Yellow」とか「Fly Out」のビデオクリップを作ってくれたflapper3の矢向くんと一緒にMOGRAでイベントをやったときに、矢向くんの知り合いだったYun*chiがゲストとして出てたんですね。

Yun*chi 私はそのときが初ライブだったから右も左もわからない状態で。そのときにセッティングを手伝ってくれたのがkzくんだったんです。で、私は元々kzくんの曲が大好きだったんで、お話がしてみたいですっていうことを矢向さんに伝えて、後日改めてお会いしたんですよね。

kz そう。そこで一緒にやりたいっていうことを言ってくれて。それがいわゆる逆ナンだったわけなんですけど(笑)。僕も僕でイベントで観たライブや もらったデモテープで、Yun*chiの声はすごく面白いなって思っていたんですよ。なので「ぜひ一緒になんかやろうよ」って流れになったんです。

Yun*chiの声は特選素材

──Yun*chiさんは元々シンガーを目指していたんですか?

インタビュー写真

Yun*chi はい。デモ作りとかはずっとやってたんですけど、その当時は別にどこかに所属していたわけでもなかったので、なかなか活動につながらなくって。だからkzくんにそうしたように、音楽を作ってる方のところに突撃していってはきっかけを与えてもらっていた感じでした。「いつか恩返しするんで私を使って何かしてください!」って(笑)。

──kzさんが惹かれたというご自身の声についてはどう感じてます?

Yun*chi 私は特別歌がうまいわけではないと思うんですよ。でも、声だけには自信があって。オススメして提供できるなっていう気持ちがありました。

kz 特選素材だと(笑)。

Yun*chi はい! 私の声を楽器として使って面白いことをしてくださる方と一緒に何かできたらいいなってずっと思ってました。そういう意味でkzくんの曲は絶対最高の化学反応が起きるだろうなって思ったんですよね。

kz で、まんまとつかまっちゃいましたね(笑)。でもほんとに自信を持っていい声だと思うんですよ。ストレートに歌がうまい人は世の中にいっぱいいるけど、それだけだとちょっと面白くない。釣り針でいう“かえし”みたいに、声に毒素だったりトゲだったりがないとフックにならないと僕は最近すごく思っていて。で、Yun*chiの声にはそれがある。独特な声ではあるから、ひょっとしたら受け付けない人がいるかもしれないけど、僕はそれをすごくポジティブに捉えてるんですよね。絶対たくさんの人が引っかかってくれるはずだって。そもそも声っていうのは自分で変えようがないものだから、そこは誇るべきところだと思いますね。

──この声を最大限に生かして曲作りをする面白さもありますか?

kz そうですね。僕はボーカルの人の一番いいところを引き出していきたいタイプなので、メロディラインの作り方は相当考えます。例えば今回の「Reverb*」だったら、ちょっと高めの中域くらいの声の伸ばしの感じとか、語尾がくるっと丸まる感じとか、そういう部分が面白いと思ったので、それを生かすメロディラインにしたりとか。

Yun*chi(ゆんち)

幼少期よりボーカリストになることに憧れ、日々の生活の中で音楽に触れて育つ。インディーズシーンでアーティストとして活動する一方で、モデルとしても活躍し、JulieWataiの作品集「はーどうぇあ・がーるず」にはモデルとして登場。そのキュートなルックスで注目を集める。音楽面でも独特の声と人懐っこいキャラクターが買われ、デビュー前からlivetuneをはじめさまざまなアーティストの作品に参加する。2012年11月にミニアルバム「Yun*chi」で日本クラウンよりメジャーデビュー。

livetune(らいぶちゅーん)

音楽プロデューサーのkzによるユニット。2007年9月、ボーカロイド「初音ミク」を使用して制作したオリジナル楽曲「Packaged」を動画サイトに投稿し、注目を浴びる存在となる。2008年8月にアルバム「Re:package」でデビュー。その後、さまざまなジャンルのアーティストの楽曲の作詞、作曲、リミックスなどを手がける人気クリエイターとして活動する。2011年12月に「Google Chrome “あなたのウェブを、はじめよう。”キャンペーン」のCMソングとしてlivetune名義の新曲「Tell Your World」を制作。YouTubeで公開されたCM映像は1週間で100万再生回数を超え、CM楽曲も話題に。2012年1月に同曲を配信リリースし、3月にミニアルバム「Tell Your World EP」を発表。同年8月には八王子Pとのコラボシングル「Weekender Girl / fake doll」を、9月にボーカリストに中島愛、Yun*chiを迎えたシングル「Transfer」をリリースした。