ファミレスで話した夢が現実に

──そしてアルバムはtofubeatsさん提供の「おやすみ世界きゅん。」に続きます。

「魔法少女☆未満」のときに“マルチネ界隈”って言われているtomadとかトーフとか、そこらへんの人たちとわちゃわちゃしてる中で、私は友達も全然いないし、売れないし。今後どうなっていくんだろうみたいなのが不安で、情緒不安定だったんですよね。トーフが「大丈夫？」って心配するくらい。

──当時はtofubeatsさんもまだ10代ですよね。

うん、今は大先生になってるけど、あの頃みんなでファミレスで「不安だね」「売れるかな」とか言ってて、みやあるっていう私の友達もよく一緒にいたんですけど、2人で「いつかトーフに曲書いてもらおう」みたいな話をしてて。それが実現したのがこの「おやすみ世界きゅん。」っていう曲です。

──いい話ですね。

歌詞の「偶然の中に転がる永遠を / いっしょにみつけて くれたのはきみ」っていうところが短歌になってるんですけど、これはみやあるに「短歌を1つプレゼントしてくれ」ってお願いして書いてもらって。

──「おはよう おやすみ また明日ね ともだち」という歌詞も、その頃のイメージですか？

この曲は1番が私目線で、2番が友達から見た私のことを歌ってるんですよね。あの頃、みやあると初めて2人で遊んだときに「友達のしるしにプリクラを撮ってほしい」って私がお願いしたみたいで、大爆笑しながらプリクラを撮って「ともだちのしるし」って書いたの。だからこの「ともだち」にはすごく意味がある。昔遊んでた人たちがまさかの名曲作ったね！みたいな感じですね。

刺さっているのは自分の矢

──「蛍の光（PandaBoY REMIX feat. 夢眠ねむ）2018」はどういう曲でしょうか？

これはもふくちゃんがやってたラジオの中で、「蛍の光」のいろんなバージョンを作って売ればいろんな店でかかるんじゃない？みたいな企画があって作った曲ですね。「ホタヒカ」っていうタイトルだったんですけど、ちょっとセリフとかを変えて新録しました。

──アルバムを通して聴くと1～5曲目までと6～8曲目の振れ幅がすごくて、前半は“夢眠ねむ”というキャラクターを描いた曲で、後半は“中の人”の素が出ている感じがします。この構成は狙ったものですか？

狙いっていうわけでもないんですけど、ずっと夢眠ねむをやってきたけど、やっぱ途中からどうしても自分が出てくるっていう。でも逆に渋谷系が好きだったりとかっていう自分の好みを口に出してきたからこそ共感して応援してくれる人もいたりするので。夢眠ねむとしてやりたい曲と自分が好きな曲ってまたちょっと違うけど、このアルバムには全種類を入れられたなっていう感じはしてます。

──どちらもねむきゅんの大事な一面なんですね。

うん、私をずっと追ってきた人なら6～8曲目の面もすごく知ってくれてると思うし、例えばトーテムロックとやってる「ホリデイ feat. 夢眠ねむ」とか、「Important feat. 夢眠ねむ」「あんかけ炊炒飯 feat. 夢眠ねむ」みたいな、ソロで呼ばれてフィーチャリングでやってるときの声はけっこうこっちなんですよね。

──わりと素に近い、生っぽい声ですよね。

「おやすみ世界きゅん。」が一番生っぽいかな。それはたぶん昔の自分の感覚で歌ってるからかもしれない。“夢眠ねむ”がまだ自分に馴染んでない頃のテンションで、思い出みたいな感覚だから。……あ、そうだ！ このアルバム、ジャケもよくないですか？

──最高です（笑）。「魔法少女☆未満」「コズミックメロンソーダマジックラブ」のジャケと同じく表が変身後、裏が変身前ということで。

あはは、気付いちゃいました？（笑）

──矢が刺さってるほうが初回盤です、っていうコンセプトも斬新です。

これは自分で放った矢が地球を1周回って刺さってて、自分で自分のトドメを刺すっていうイメージ。自分で死ぬ時期を決めたっていう意味です。

──10年間の活動が美しくまとまりましたね。

うん、ちょっとうまくいきすぎてて不安になるくらい、いいアルバムができました。幸せなときって死ぬのが怖くなるじゃないですか。ほんとに矢とか降ってこないかちょっと震えてます（笑）。

たぬきゅんと夢眠書店

──では最後に芸能界引退後、来年4月以降の予定についても教えてください。

とりあえずは旅行行ったり遊んだりすると思うんですけどね（笑）。髪もちょっと伸ばしてみようかなって。

──いいですね。

でもやっぱりお金を稼いでごはんを食べねばならぬ！ということで、たぬきゅんのプロデュースはがんばります。ちびっ子や女の子はもちろん、おじさんに人気あるんで、それがすごくうれしくて。

──たぬきゅんの今後の展開は？

一番の目標はアニメ化ですね、やっぱり。

──アニメ化したら声優はどうします？

TARAKOさんはやってくれないですかね……？

──いや、そこはぜひ自分でやっていただいて、たぬきゅんがアニメ化されたらねむきゅんの声が聞き続けられるということで。

そうなりますかね。じゃあ「CV：たぬきゅん」みたいな感じで（笑）。あとは自分の姉や同世代の子たちがママになっていく中で、赤ちゃん用のたぬきゅんグッズを作ったり、絵本を描いたりしたいっていうのもあって。そこに行けば本もグッズも手に入るような場所を作りたいんです。

──読書家の夢眠さんは以前から書店のオープンを目標とされていましたよね。ご自身の名前を冠した「夢眠書店」を作りたいと（参照：でんぱ組.inc夢眠ねむが本作りに迫る！「夢眠書店開店日記」書籍化、新エピソードも）。

書店の中にたぬきゅんの常設ショップもあって、面白い編集さんたちが集まれるサロンみたいな雰囲気もあって、アイドルのサイン会とかイベントにも力を入れたいし。好きな人たちと好きなことがやれる老後の基地みたいな場所にしたいんですよね。

──じゃあオタクの人が集まる場所と言うより、もっとオープンなスペースになりそうですね。

子供を連れたママだけでお茶会やったりとか、そういうイベントも打ちたいし、店舗は都内だけど、地方の人が「東京行ったら夢眠書店に行くんだ！」って憧れる店になってくれたらすごくいい。私も地元にいる頃「東京行ったら絶対あそこ行くんだ」って思ってる雑貨屋さんとかあったから。「どこー？」って泣きながら原宿を歩くみたいな（笑）。そういう場所が今やっぱり必要だよなって思うんです。あとこのグッズはネットで買えなくてここでしか売ってないとか。

──今、ちょっと商売人の顔になりましたね（笑）。

やっぱり実家が4代続く商売をやってるので。人の顔を見て物を売りたいなっていう感じはあるかも。だから夢眠ねむの売れ残ったグッズとかもそこで売りますよ！

──書店運営に対する本気度が伝わってきます。

やっぱり「本の本：夢眠書店、はじめます」（新潮社）を出したおかげで、出版業界の方にもアイドルがウケ狙いでやってんじゃないっていうのをわかってもらえたみたいで、皆さん企画書とか書いてくれたりアドバイスくれたりして。これは本気でやるしかないなという感じですね。今は普通に書店の講習受けに来なさいって言われてます（笑）。