音楽ナタリー Power Push - ゆくえしれずつれづれ
激動のアイドル活動のゆくえ
シャウトがあったから殻が破れた
──お二人と同じ事務所にはぜんぶ君のせいだ。が所属しています。皆さんにとって先輩に当たるユニットであり、今作「Antino未deology」では歌唱に参加している曲もあります。
小町 初ライブのときも一緒に出ていただきましたし、「凶葬詩壱鳴り」と「新宿シネマコネクション」では一緒に歌わせていただいています。
──ゆくえしれずつれづれとぜんぶ君のせいだ。の2組を比べて見られることも多いんじゃないですか?
◎屋 パッと見で似てる部分もあるので比べられることは多いですね。ぜんぶ君のせいだ。さんは「病みかわいい」をコンセプトにしていることもあって、歌詞はちょっと病んでるけど明るいポップな楽曲が多いんです。でも私たちはどちらかというと切なさに振り切っているというか。曲調もエモーショナルなものが多いですし。「だつりょく系げきじょう系」と聞いてもピンとこないかもしれませんが、1st配信シングルの表題曲「凶葬詩壱鳴り」を聴いていただければ、私たちの音楽性をわかってもらえるんじゃないかと思っております。
──この曲のMVはちょっと怖いテイストに仕上げられていますよね。病院というか、研究所のような場所が舞台になっていて。
◎屋 MVの設定が少し難解なんですよね。私たちゆくえしれずつれづれがおかしくなっちゃってる設定で。
──感情が欠けている感じですよね? それを最後のほうで取り戻すっていう。
◎屋 そうなんです。よくおわかりになりましたね。初めてわかってくださった方に会いました。
──MVのストーリーは具体的にどういうものなんですか?
◎屋 MVに出てくる男性の方は、私たちを助けようとしてくださっているんです。私たちのトラウマを取り除こうと機械を使って、喜怒哀楽の喜びと楽しみだけを残してくれたんです。だから私たちは最初ヘラヘラしていて、すごく楽しそうにしています。
小町 でも喜びと楽しみしかないと物事を深く考えないですから、私たちは自分で機械のスイッチをいじってしまうんです。それでトラウマや怒りや哀しみの感情が戻ってくる。
──MVに登場するぜんぶ君のせいだ。のメンバーはまた違う立場で登場していますよね?
◎屋 ぜんぶ君のせいだ。さんは私たちより前にその実験を受けていた人たちとして登場しています。なので、彼女たちはこの実験を止めるために、私たちを救いに来てくださったんです。
──楽曲、MV共にものすごく作り込まれていますが、最初にこのレベルの作品を世に出すとその後のハードルが上がってしまいそうですね。
◎屋 ミニアルバムが発表される前に私たちが配信した楽曲は「凶葬詩壱鳴り」と「新宿シネマコネクション」の2曲だけなんですが、けっこう毛色が違う2曲を発表することができたと思っておりまして。「だつりょく系げきじょう系」というコンセプトを軸にいろんな曲が作れるということを知っていただきたいので、ぜひミニアルバムを手に取ってたくさんの曲に触れていただきたいです。
──先ほど「シャウトがあるとは思いませんでした」と言っていましたが、ユニットの「げきじょう系」というコンセプトを表すシャウトを体現するのは大変ではないですか?
◎屋 最初はシャウトの出し方もわからなかったんです。シャウトとデスボイスの違いすらわからない状態からのスタートでしたから、どれが正解なのかわからなくて。最初のレコーディングのときはまだまだ未熟だったと感じていますが、今はすごく練習して自信を持って歌うことができるようになっています。ぜひライブを観に来ていただきたいですね。
小町 MVでもシャウトしてますけど、ライブではもっとすごいシャウトになってますから(笑)。ライブで観ていただくからこそ伝わるものもあるはずなので、ぜひイベントなどに足を運んでいただければと思います。
◎屋 小町はもともと感情をあらわにするのが苦手だった節があったのですが、シャウトをすることで吹っ切れた感じがしますよね。
小町 もともと声が小さかったこともあって、それを変えるきっかけになったかなと思います。シャウトがあったからこそ、少しずつ殻が破れていったのかなって。
倫や乃吉の声も手元に
──今回がユニットにとって初めてのCDリリースとなりますが、お二人はどのようなメッセージを今作に込めたんでしょうか?
◎屋 私は主に覚悟、決意が込められていると思っています。まず1st配信シングルの「凶葬詩壱鳴り」で、今までのゴミみたいな人生を葬り去って前に進もうっていう歌詞を書いていただいたんです。でもこの曲を最初に歌ったときは、覚悟が足りてなかったからか、すごく苦しみながらレコーディングをしました。ただミニアルバムの収録曲「鏡想唱二鳴り」のレコーディングのときにはもう完全に吹っ切れていて。私の覚悟が皆さんに伝わればいいなと思っています。
小町 ミニアルバムの曲を全部聴いていただくと、いろんな感情に出会えて、いろんな風景を見ることができる気がするんです。そういう経験を少しでも多くの方と共有できればいいなと思っています。
──アルバムには想九里さんや潮賽さんの歌声も入っているんですよね?
◎屋 はい。「凶葬詩壱鳴り」と「新宿シネマコネクション」の2曲は、倫と3人で歌っています。
小町 ミニアルバムを制作していた時期には乃吉も在籍していますから、今作には4人の声が入っているんです。
──これまでのゆくえしれずつれづれの歩みがまとまった作品になったわけですね。
◎屋 群青さんも倫や乃吉のことをすごく応援してくださっていましたから、彼女たちの声が入ったCDをずっと手元に置いていただきたい気持ちがありまして。再録はせずにそのままミニアルバムに収めています。
ライブの前に遺書を渡して破られる
──6、7、8月と3カ月連続でワンマンライブを開催するんですよね?
◎屋 はい。私たちの拠点である名古屋での公演です。私たちはすべてのライブを本当に死ぬ気でやっておりまして、毎回ライブ前に遺書を書かせていただいてるんです。
──それは誰に向けた遺書なんですか?
◎屋 群青さんに向けた内容のものですね。小町も同じく遺書を書いてライブに臨むんです。それで2人とも遺書を持ってステージに上がって、群青さんに渡すんです。その遺書を破ってもらってからライブが始まります。
──そういう流れができているんですね。どんなことを書いているんですか?
◎屋 そういえばお互いの遺書を見せあったことはないんです。小町は遺書に何を書いてますの?
小町 私はそのときのリアルな気持ちを遺書に込めるようにしています。遺書を破ってもらうわけですから、そのときの自分を無にしてもらう感覚があるんです。ある意味、スッキリするというか。
◎屋 私は「今までありがとう。私は死んでしまうかもしれないけど、ここで死ぬのは本望なので皆さん悲しまないでください」みたいなことを毎回書いております。
──群青さんはそれを読まずに破ってしまうんですか?
◎屋 読んではもらっていないですね(笑)。いつも開いてすぐに破られていますから。
──ゆくえしれずつれづれをどういうユニットにしていきたいか、ビジョンはありますか?
◎屋 今は1人でも多くの方々と触れ合って、私たちの音楽を届けたいなと思っているんです。新メンバーの選考も進んでおりまして、今後どういう形になるかはわからない部分もありますが、私と小町はもう何があっても動じないと思いますから(笑)。
小町 ゆくえしれずつれづれの音楽って、一般的なアイドルのイメージとは違っていて、この歌を音楽が好きな人たちに届けたいなと思っているんです。フェスみたいな大きいイベントにも出れるようなグループになりたいなって。
◎屋 小町はゆくえしれずつれづれのメンバーになって、すごく前向きになったと思います。最近はこうやって笑うようにもなって(笑)。
小町 MVの私たちと同じで喜怒哀楽がちゃんと戻ってきたんです。
収録曲
- Ideology
- 凶葬詩壱鳴り feat. ぜんぶ君のせいだ。
- 群青
- つれづれ賛歌
- 新宿シネマコネクション feat. ましろ愛海
- 鏡想唱二鳴り
ゆくえしれずつれづれ「3ヶ月連続ワンマンLIVE~剥き出し」
- 2016年6月18日(土)愛知県 CLUB Zion
- 2016年7月31日(日)愛知県 CLUB Zion
- 2016年8月28日(日)愛知県 CLUB Zion
ゆくえしれずつれづれ
「だつりょく系げきじょう系」をコンセプトに活動するアイドルユニット。2015年12月に1st配信シングル「凶葬詩壱鳴り feat. ぜんぶ君のせいだ。」をリリースし、◎屋しだれ、まれ・A・小町、想九里倫の3人で活動をスタートさせる。2016年1月、初ライブを前にして想九里が体調不良のためユニットからの脱退が決定。新メンバーとして潮賽乃吉が加入するが、潮賽も体調不良のためユニットを脱退することが決まっている。2016年5月に1stミニアルバム「Antino未deology」をリリース。またオーディションの結果、英艶奴と子子子の2名が新メンバーとしてユニットに加わることが発表されている。