音楽ナタリー Power Push - 妖精帝國

人間界に降臨した妖精たちの現在進行形

人を襲うゾンビって、意外に楽しくやっているんじゃないかな

──そして「Infection」。これは感染という意味ですね。急に“Hey! Hey! Hey!”と掛け声が入り、明るい雰囲気が漂いだします。

Nanami 人を襲うゾンビって、意外に楽しくやっているんじゃないかなと思ったのがこの曲を作ったきっかけですね。生物としての思考は意外と引き継がれていて、ノリノリで人を喰らっているんじゃないかと。

 人間の側からすると怖いですけど、ゾンビにとっては食事の時間なので楽しいだろうと。

ゆい (海外ドラマの)「ウォーキング・デッド」を一気に観たときにゾンビは実は楽しいのかもしれんと思い、詞を書いてみようと思ったのだ。そういえば「Infection」と名付ける前の仮タイトルも「楽しい曲」であったな(笑)。

Nanami “Hey! Hey! Hey!”のところは式典(妖精帝國におけるライブのこと)でぜひ臣民の皆さんにもコールしてもらいたいですね。

 明るすぎるがゆえの恐怖感ということで。

ゆい みんなの頭がおかしくなるのが楽しみだ。ちなみに“Hey! Hey! Hey!”の声は、現場にいた男性みんなで録ったものだったな。

 メンバーだけでなくレコーディングエンジニアも巻き込みました。彼らには何も説明しなかったので、自分が何をやらされているかもわからずヘイヘイ叫んでいたと思います。そういう狂気がこの曲には含まれているんです。

──そもそも今回のアルバムのテーマをゾンビにした理由はあるのでしょうか?

 前からずっとやりたかったテーマだったんですよ。

ゆい ミュージックビデオでゾンビをやってみたかったというのもあるな。

バンド化した妖精帝國

──そして次の「檄」。この曲にも“-Das Feenreich-(妖精帝國)”というコールが入っていて、バンド感があふれていますね。

紫煉 この曲もこれまでとは違う作り方をしていて。妖精帝國って、曲の制作担当が一度決まるとその人がまず最後までデモを作りこんで、そこからアレンジに入るのが通常だったんですよ。けれども「檄」は、まず橘大尉がリフを作って、自分が曲の枠組みを作り、Gight軍曹がメロディを乗せるといった具合にみんなでアイデアを出し合って作ったもので。普通のバンドだと当たり前のことかもしれないけど、我々にとっては新しい手法だったなと思います。

──非常に覚えやすいサビですよね。その直前のキメもカッコよくて。

2013年1月より正規メンバーとして加わったGight(Dr)。

Gight 「Infection」の“Hey! Hey! Hey!”みたいに、この曲にも式典のときに臣民がコールしやすい場所を作りたいと思ったんですね。だから紫煉曹長に「こういうフレーズも入れてみたい」という提案はたくさんしました。

ゆい 歌詞においても、我々が過去に出してきた楽曲のタイトルをAメロBメロに刻んでおるから、そういう意味でも臣民には楽しんでもらえると思うのだがな。

 「檄」は臣民とつながるための象徴になるような、式典をかなり意識した曲になっていますね。

──続いてここでインスト曲「ancient moonlit battleground」が入ってきます。

紫煉 アルバム全体に「戦い」とか「軍隊」というワードがあるので、その合間の静寂というか、束の間の休息を表現した曲です。

 静かな夜、戦士が過去の戦いに思いを巡らすイメージですね。この曲も「檄」と同じく、メンバー同士でアイデアを出し合いながら作っていった曲です。妖精帝國は当然ゆい様あってのものですけど、先ほどから繰り返している通り、サウンド面にもっとバンド感を出していきたいと思っていて。

──個性的なフレーズの集まりになっていますが、例えば中盤のロマンチックな哀愁あふれるパートから超絶ギターが急に始まるなど、展開がいかにもプログレ的で。

紫煉 そのパートは自分のアイデアですね。月夜をイメージした哀愁は両手タッピングを使って表現したり、リフは超絶系のテクニックを選んだりと、「ancient moonlit battleground」は奏法に特にこだわった曲でもあるんです。

ニューアルバム「SHADOW CORPS[e]」
[CD+DVD] 2015年8月5日発売 / 3780円 / Lantis / LACA-15496
収録曲
  1. Attack!!
  2. "D" chronicle
  3. 闇色corsage
  4. 白銀薔薇奇譚
  5. 残夜の獣
  6. calvariae
  7. Infection
  8. ancient moonlit battleground
  9. Shadow Corps
ボーナストラック
  1. 体内時計都市オルロイ(テレビアニメ「少女革命ウテナ」劇中曲カバー)
DVD収録内容
  • Shadow Corps(Music Video)
妖精帝國(ヨウセイテイコク)
妖精帝國

1997年、妖精帝國終身独裁官・ゆい(Vo)と橘尭葉(G)を中心に結成された音楽ユニットで、正式名称は妖精帝國第三軍楽隊。妖精を信じる人間が少なくなってしまった現代において、音楽活動を通じて荒廃した妖精帝國の復興を目指す。2006年3月にシングル「あしたを許して」でランティスよりメジャーデビュー。ヘヴィメタルを軸に、テクノ、トランス、ゴシック、クラシックなどさまざまな要素を盛り込んだサウンドで唯一無二の世界観を作り上げている。2013年1月のメンバー脱退・加入を経て、ゆい(Vo)、橘尭葉(G)、Nanami(B)、紫煉(G)、Gight(Dr)の5人編成となった。2015年8月に通算6枚目のオリジナルアルバム「SHADOW CORPS[e]」をリリース。