あの頃の自分からお手紙をもらったような

──メジャーデビュー作の「変身少女」（参照：吉澤嘉代子「変身少女」インタビュー）から2ndフルアルバムの「東京絶景」（参照：吉澤嘉代子「東京絶景」インタビュー）まで、吉澤さんはもともとデビュー前から考えていた青写真通りに作品を作っているとおっしゃってましたよね。

はい。

──漢字4文字のタイトルだったり、これまでの作品はすべてどこか共通したムードがありましたけど、今作では大きく変化しました。これも制作開始段階から考えていたことなんですか？

いや、これはまったく考えていませんでした。私はずっとサンボマスターと何かの形でご一緒したいと言い続けてまして（笑）、それをレコード会社のディレクターさんが本人たちに伝えたところ、しばらくしたら曲が届いたんです。アレンジだったりとか、歌で参加してもらうとか、もしくは共作かな？ と思ってたんですけど、曲を作ってもらうというのはまったく想定していなくて。

──打ち合わせをして進めたのではなく、突然サンボマスターから曲が届いたんですか？

そうなんです。それがしかも素晴らしい曲だったので、完全に計画が……（笑）。

──その曲を形にするために、想定外のコラボミニアルバムを作ることになったと。

はい。もともとは次の作品は夏のアルバムだと考えていて、その中の1曲としてまとめてしまうのはもったいない。じゃあこの曲ありきのアルバムにしようと考えて、今までご縁のあった、私の大好きな方々と一緒に作るアルバムにしようということになりました。

──サンボマスターは吉澤さんが音楽を始めるきっかけになったアーティストだとおっしゃってましたよね。

中学生の頃から憧れていて、初めてライブを観たときに「ステージの向こう側でサンボマスターとお話したい」というところから音楽を仕事にするって決めたので、山口（隆）さんが書いてくれた「ものがたりは今日はじまるの」を聴いたときは、あの頃の自分からお手紙をもらったような不思議な気持ちになりました。

参加アーティストごとに異なるコラボ展開

──本作にはそのサンボマスターや今回の特集に参加してもらったエビ中のほか、岡崎体育さん、伊澤一葉（the HIATUS）さん、ザ・プーチンズ、小島英也（ORESAMA）さん、曽我部恵一さんとのコラボ楽曲が収録されています。岡崎体育さんとはよくTwitterでも軽口を叩き合っている仲ですよね。

去年にも一緒に曲を作るという話が挙がってたんですけど、そのときはタイミング的に難しくて。今回は企画にぴったりということでお願いしました。

──2人の関係性から、コラボ曲は吉澤さんの得意な“ひょうきん”路線で来るかなと予想していたので、「ゆりかご feat. 岡崎体育」のちょっとダウナーな雰囲気には意表を突かれました。

岡崎体育の曲というと仕掛け要素の強いイメージがあると思うんですけど、そうでない曲こそ彼の真骨頂だと思っているので、今回はそちら側で。お互いに2パターンぐらい曲を持ち寄ってたんですけど、最終的にこっちかなって。

──伊澤さんはツアーのバンドメンバーとして一緒に各地を回った仲で。

はい。ツアーのバンマスを務めていただいて。お会いするまではクールで怖い人という印象を勝手に持っていて、なんか罵倒されちゃうんじゃないかと思ってたんですけど（笑）、ツアーのリハーサルでお会いしてみたら、ものすごく優しい、気を遣ってくださる方で。すごく褒めてくださる数少ない方（笑）。伊澤さんのピアノはすごく繊細でドラマチックで、泣いちゃいますね。

──「アボカド feat. 伊澤一葉」は作詞が吉澤さんご自身で作曲が伊澤さんとの共作。ポップなんだけどどこか奇妙な、不思議な味わいのある曲ですね。

いくつか書き溜めていた歌詞の中から、この「アボカド」を元にメロディを膨らませてもらいました。自分では絶対に書けないメロディなので楽しかったです。

──そして「じゃじゃじゃ feat. ザ・プーチンズ」では最近たびたびフェイバリットに挙げていたザ・プーチンズとの共演が実現しました。

ついに念願叶って。今回の企画案が挙がったとき、一番に思い浮かんだのがザ・プーチンズでした。

──曲の内容としては、これまでになかった破天荒なものですが。この曲はザ・プーチンズにお任せで？

そうです。最初の打ち合わせで「どういうふうに進めますか？」って聞いたら「共作は難しいと思います」って（笑）。「じゃあお任せします」とお願いして、「マンガのヒーローを彼氏に持った女の子の歌になりました」って言われたときは「あ、こりゃ共作は無理だ」と思いました（笑）。完全に世界ができあがっていて、私が入り込むスペースはもう歌唱しかないぞと。