「人生を歌った曲」という芯が通った曲たち

──歌詞に関して言えば、山田さんが作曲を手がけた「Color」「もやし」「貧乏」といった楽曲の歌詞はシンプルに、直感的な言葉が並べられている印象を持ちました。

吉田　前作くらいからすごく割り切って曲作りができるようになってきたからかもしれませんね。まず山田は本当にウンコみたいな曲を作るんですよ。これは悪い意味じゃなくて、食べたから出す、みたいな感覚で。

──生活している中で自然と曲が生まれてくるということですね。

吉田　そう。だから山田って、曲を作ることに対してある種なんの感情もないんです。ただできちゃうから、理由付けとか根拠とかも別にいらない。僕は山田の相方として、まず山田にはとにかく曲を出してもらうことを意識してるんです。ただ「こういう曲を出して」とかは言わない。山田の中から自然と出てくるものを眺めて冷静に考えて、人に届くものをピックアップしていくのが僕の仕事。だから今作の「Color」「もやし」「貧乏」ってどれも個性的でインパクトが強いけど、「人生を歌った曲」という芯が1本通っていて、アルバムの中で変な浮き方をしていないと思うんですよね。

山田　アルバムの制作中、よっちゃんとの話し合いの中で「作為」って言葉が飛び交ってたよね。

吉田　「こう見られたい」「褒められたい」「カッコ付けたい」みたいに感じる言葉をなるべく排除していって、僕らの心そのままが表現できる言葉を使おうって思いが強かったんですよね。だから「この言葉には作為を感じる」とか、「こう思ってほしいからって作為が見える」とか、よく話し合ってました。山田が作る曲は直感的なものが多いから、そこまで作為を感じないんだけど「山田、今言いたいことってこうじゃなくない？」みたいに、山田に改めて考えてもらう機会も多かったんです。考えた結果「確かにそうかも」ってなることもあれば、「よっちゃんにとっては意外かもしれないけど、これが俺の本音なんだよ」って言われることもあって。そうやって曲と言葉のやり取りを重ねていく中で、山田の心とか山田の曲をより深く理解できた気もするんですよね。

吉田が自分をさらけ出した「赤い首輪」

──録曲の中で気になったのが「赤い首輪」です。吉田さんが作詞作曲を手がけた曲ですが、これは実体験をもとに作られたものですか？

吉田　はい。実体験と、あと半分くらいは僕の願望で書いた曲が「赤い首輪」です。僕、本当に動物が大好きで、中でも特に犬が好きなんです。最初、制作の方に「犬をテーマにした曲を作ってみてよ」って言われたときは憤りを感じたくらいなんですよ（笑）。好きすぎて無理だと。なんで本当に好きなものを仕事にしなくちゃいけないんだと。

山田　頑なに犬の曲は作ってこなかったよね。

吉田　うん。だから今回も「納得できない曲になったら出せないんで、そうなったらごめんなさい」と言いながら、作り始めてみたら15分でできたんです。

──メチャクチャ速いですね。

吉田　着手してからは15分だったけど、2週間くらいは頭の片隅でずっと考えてはいたんだと思います。さっきも言った通り、僕の実家にいる犬がこう思ってくれてたらいいなっていう願望と、伝わっているかはわからないけど僕から伝えたいことを歌詞にしたらすぐ書けたんです。ただ大変なのはここからで、仮歌を制作の方と山田に聴いてもらおうと思って家で録ろうとするんだけど、泣いちゃって録れないんですよ。僕、ライブとかでもあまり泣かないから泣き慣れてなくて。だから涙を流しながら歌う、みたいなこともできなくて、結局そのとき仮歌は録れなかったんです。「ごめん、泣いちゃって歌えないから歌詞で見てくれ」って。

──送られてきた歌詞を読んで、山田さんはどう感じましたか？

山田　よっちゃんがここまで自分をさらけ出して歌詞を書いたことってないかもしれないから、すごくいいなと思って。「もうちょっとこうしたほうがいいかも」みたいな思いもなくはなかったんだけど、「赤い首輪」に関しては僕の気持ちとかはどうでもいいやって思えたんです。これはよっちゃんの歌だから。

吉田　レコーディングで一番大変だったのがこの曲ですね。録る直前までずーっとほかのことを考えるようにしてました。

山田　ライブでどうなるかが楽しみだね。

吉田　この曲は1番を歌うのが山田なんですけど、それがけっこうヤバくて。要は自分が歌うまでに山田の歌をしっかり聴かなきゃいけないんです。山田の歌を聴くのって僕にとってのライブでの楽しみでもあるんですけど、この曲に関してはもうどうしたらいいか……。一生ライブでやらないかもしれません。

山田　「欲望」の全曲披露ライブもあるから、絶対やるよ！

吉田　本番までにちゃんと気持ちが切り替えられるようにする訓練を積んでおきます。