音楽ナタリー PowerPush - 安田レイ
“Wish”から“Will”、過去から未来 変化を刻む“初めて”のアルバム
自分とは違うヒロイン像を「自分のもの」にする技術
──ただ「どうして…」や「Regret」の詞の中に登場するヒロインって安田さんとはちょっと違うキャラクターなのかな?っていう気がするんです。安田さんも作詞に参加している「One More Time」は「思い出にしたくない」「すべてを受け止めたい」「二人またやり直せる」と、前向きなメッセージを発信する楽曲なんだけど……。
「どうして…」も「Regret」もけっこう悲しい失恋ソングですよね(笑)。
──ええ。しかも安田さんが作詞に参加していない。その他者が書いた、自分とは違うタイプのヒロインを歌うのがスムーズだった、つまりこの2曲を「自分のもの」にできたのはなぜなんでしょう?
「どうして…」や「Regret」だけじゃなくて、これまでの曲の中にもたまに「おーっ、私だったらこんなことは絶対にしないな」っていうタイプのヒロインが出てくることはあったんですけど、そういうときはもう妄想で(笑)。ちょっとした映画のヒロインを演じるような気持ちで臨むというか、その曲の主人公になりきるようにしてます。私、普段映画を観ていても主人公になりきっちゃうので(笑)。
──映画を観ていて主人公になりきれるから、音楽についてもメロディを聴き込んで、歌詞を読み込んで、その曲の世界にダイブできれば……。
もう自然と主人公になりきれちゃう(笑)。
──だからスムーズに歌えた?
もう1つ、私自身よく「ポジティブすぎるよ」ってツッコまれるタイプではあるんですけど、1回ヘコむとすごいヘコむタイプでもあるから、っていうのもレコーディングがスムーズだった理由なんだと思います。そういう自分もいるから「どうして…」や「Regret」の主人公の気持ちにも心当たりがあるというか。歌っている瞬間、その気持ちにグッと入り込むことができたんだと思ってます。
対照的な声を重ねて生まれるケミストリー
──その2曲のバラードのあいだには、もう1つの新曲にしてMatt Cabさんとのデュエット曲「One More Time feat. Matt Cab」が挟まっています。
せっかくアルバムを作るんだからシングルではできない挑戦をしてみたくて。それはバラードもそうですし、最後のカバー曲(「Heavenly Star」)もそうなんですけど、新しいチャレンジの1つとしてフィーチャリングアーティストを迎えてみようってことになって、Matt Cabさんと歌わせていただきました。
──なぜMatt Cabさんと?
私とは真逆な声をもっている方だからですね。Matt Cabさんはすごく優しくて甘い歌声で、私はどちらかというとちょっと強い声なので、その2つの声を合わせたら面白いものが録れるんじゃないかなって。
──対照的な2つの声を重ねることに不安はなかった?
「いいケミストリーが生まれるんじゃないかな」としか思ってなかったですね。ただ男性のボーカリストの方のレコーディングの現場を観るのは始めてだったので、普段1人で歌っているときとは違う緊張感はありました。
──あっ、緊張なさった?
レコーディングの日はスタジオ全体に緊張感が走ってたし、中でも私が一番緊張してたと思います(笑)。でもそれはいい緊張感だったというか。私もスタッフさんも「安田レイとしての初めてのコラボ曲、しかもMatt Cabさんを迎えての曲なんだから、いいものに仕上げなきゃ」って取り組むことができたし、だからレコーディングは面白かったですね。
──そして実際に面白い曲ができあがった、と。
はいっ! 普段自分の曲ってあまり聴かないんですけど「One More Time」はリピートしまくってます(笑)。しかもMatt Cabさんにもすごく気に入っていただけたみたいで、レコーディングが終わったあと「ホントいい曲ができたよね」「参加させてくれてありがとう」って感謝のメッセージをくださったんですよ。ご一緒できて本当によかったと思ってます。
ボーナストラックは未来への第一歩
──「Will」にはもう1つ目玉がありますよね。14曲目のボーナストラック、元気ロケッツの楽曲「Heavenly Star」のセルフカバーなんですけど、なぜこの曲を?
元気ロケッツのLumiとして歌っていた頃からアコースティックバージョンで歌ってみたかった曲だったんです。
──そしてなぜアコースティックバージョンで?
「Heavenly Star」って原曲は、すごくビートのはっきりしたダンサブルなアレンジで、声もすごい加工してる曲なので、まず元気ロケッツバージョンを知っている人にビックリしてもらいたくて(笑)。あと、実はあの曲のメロディって本当にハッピーだしキレイなんですよ。だからシンプルな編成で歌うことで、あのメロディをもっと輝かせてみたくて。ハッピーな曲のあとに失恋の曲があって、その失恋を経てまたハッピーな曲を通じて未来に向かっていく「Will」っていうアルバムの最後を、本当にハッピーで優しい、ヒーリングミュージックみたいな雰囲気のこの曲で締めくくりたかったんです。それにギター1本とかピアノ1本だけをバックに声の魅力を届けるタイプの曲ってもともとすごく好きでしたから。そういう編成でも歌える安田レイをお見せしたいっていう気持ちもあったので、Matt Cabさんとコラボレーションするときと同じように新しいチャレンジをさせてもらいました。
──じゃあボーナストラックではあるけど、実は安田レイの「Will」、近い将来の姿を見せる1曲でもある?
そうなんですよ! これからはアコースティックな楽曲も歌ってみたい。そういう未来への第一歩となるのが、この「Heavenly Star」なんです。
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- ニューアルバム「Will」2014年10月8日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-1597~8
- 通常盤 [CD] 3100円 / SECL-1599
CD収録曲
- in the room
- Best of my Love
- Brand New Day
- Inside Out
- パスコード4854
- どうして...
- One More Time feat. Matt Cab
- Regret
- Mirror
- Let It Snow
- I&U
- フォゲミナ
- Delight
- Heavenly Star
初回限定盤DVD収録内容
- Best of my Love(music video)
- Let It Snow(music video)
- Brand New Day(music video)
- パスコード4854(music video)
- Mirror(music video)
- Will ジャケット撮影メイキング
- Will レコーディング映像
安田レイ(ヤスダレイ)
1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれる。3歳で日本へ移住し10歳の頃に母親が聴いていた宇多田ヒカルの楽曲に衝撃を受けてシンガーを志す。モデル活動を始めたことがきっかけとなり、13歳のときに元気ロケッツのオーディションに合格。架空の女性「Lumi」のモデルとなりボーカリストとしてもプロジェクトに参加する。2013年7月に「Best of my Love」でメジャーデビューを果たし、12月には配信限定の「Let It Snow」を発売。2014年2月に「Brand New Day」をリリースし、同年6月にはテレビアニメ「金田一少年の事件簿R」のエンディングテーマ「パスコード4854」を発表。そして同年10月、個人名義としては初めてのアルバム「Will」をリリースした。