音楽ナタリー PowerPush - 安田レイ
“Wish”から“Will”、過去から未来 変化を刻む“初めて”のアルバム
安田レイが大きな感情の波を歌えるワケ
──「Will」って既発曲中心の構成ながら、まさにその構成が面白いなと思っていて。前半は1stから3rdまでシングル曲をリリース順に並べているんだけど、中盤の新曲群を挟んだ後半では4thシングルの表題曲から1stのカップリング曲へとさかのぼっています。
あっ、でも「序盤はリリース順に並べて、後半はその逆にしよう」みたいなことを考えていたわけじゃなくて、アルバムの中に波を作りたかったんです。まずはこれまで私の曲を聴いてきてくれた皆さんなら知っている、しかも気持ちがアガる「Best of my Love」から「パスコード4854」までを並べておいて、でも中盤には新曲、しかも、しっとりとした失恋ソングを並べることで皆さんにもちょっと失恋をしてもらいたいというか(笑)。アガっていた自分のことを一旦見つめ直してもらって、後半「Let It Snow」以降のアガる曲たちで、また気持ちを新たに盛り上がってもらいたかったんです。そうやってアルバムの中に感情の波みたいなものを作れば、もうシングルを持っている方であっても、その曲に対してまた違った印象をもってくれるんじゃないかなって思ったので。
──確かにシングル単体で聴くのと、アルバムの1曲として聴くのとでは明らかに違う印象を受けました。「パスコード4854」や「Mirror」のような直近のシングル曲はギターをフィーチャーした……。
ロックサウンド寄りですよね。
──ええ。でも2ndシングルの「Delight」なんかが象徴的なんですけど、安田さんのディスコグラフィには面白いリズムを刻むダンスミュージックも少なくない。だからアルバムを聴くまではいろんなジャンルを歌う人だなって思ってたんです。
そうかもしれませんね。
──ところがそれらの曲をこのアルバムの構成通りに聴くと、全部「安田レイの楽曲」であることがわかる。だからさっき「集大成的なアルバムになった」っていう話をさせてもらったし、「このアルバムって安田レイはどんな曲でも歌いこなせる人であることを証明した1枚だよな」っていう気がしてるんです。
わーっ! なんか今日の私、すごくホメられてません?(笑)
──いや、事実しか言ってないつもりです(笑)。ただなんで安田さんはすべての楽曲をちゃんと「安田レイの曲」に仕立てることができるんだろう?っていう疑問はあります。
なんでなんだろう?(笑)
──「ダンスミュージックだからこう歌わなきゃ!」「ロックだからこう歌おう!」って意識することは……。
ないですね。「こういうジャンルだからこう歌おう」「あのジャンルだから、ああいうふうに歌わなきゃ」みたいなことはあまり考えてなくて、むしろ曲ごと。その曲のメロディやアレンジのもっている世界観や、歌詞のもっている世界観に入り込んでみて自分が感じ取ったものを声にしていくっていう感じです。逆にどの曲もそういう歌い方をしているから、アルバムを通して聴いたとき、全部安田レイの曲だと思っていただけたのかもしれないですね。
安田レイの曲ってけっこう難しいんですよ
──さっき安田さん自身が言っていた通り、今作の中盤を構成する2つの新曲、「どうして…」と「Regret」はしっとり系のバラードです。バラードを歌うのって……。
実は初めてなんですよ。個人的にバラードソングって聴くのも歌うのも好きだから「私もバラード曲を歌いたい」ってずっと思ってたんですけど、(プロデューサーの)玉井(健二)さんには「バラードは大事なとき、ここ一番のために」っていう思いがあったみたいで、なかなか歌わせてもらえなくて(笑)。
──そしてまさに「1枚目のアルバムをリリースする」というまさに「大事なとき」がやってきた。
そうなんです(笑)。
──初挑戦とはいえ、バラードもちゃんと「安田レイの曲」になってますよね。
バラードが好きだっていうこともあるんだと思うんですけど、確かにレコーディングはスムーズなほうでしたね。逆に「I&U」とか「Inside Out」みたいなダンサブルな曲のほうが歌うのが難しかった記憶がありますし。自分のものにするのに時間がかかったのはその2曲のほうかな?って。カラオケで歌うと皆さんにもわかっていただけると思うんですけど、実は安田レイのシングルの曲ってけっこう難しいんですよ(笑)。
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- ニューアルバム「Will」2014年10月8日発売 / SME Records
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3600円 / SECL-1597~8
- 通常盤 [CD] 3100円 / SECL-1599
CD収録曲
- in the room
- Best of my Love
- Brand New Day
- Inside Out
- パスコード4854
- どうして...
- One More Time feat. Matt Cab
- Regret
- Mirror
- Let It Snow
- I&U
- フォゲミナ
- Delight
- Heavenly Star
初回限定盤DVD収録内容
- Best of my Love(music video)
- Let It Snow(music video)
- Brand New Day(music video)
- パスコード4854(music video)
- Mirror(music video)
- Will ジャケット撮影メイキング
- Will レコーディング映像
安田レイ(ヤスダレイ)
1993年4月15日、アメリカ・ノースカロライナ州で生まれる。3歳で日本へ移住し10歳の頃に母親が聴いていた宇多田ヒカルの楽曲に衝撃を受けてシンガーを志す。モデル活動を始めたことがきっかけとなり、13歳のときに元気ロケッツのオーディションに合格。架空の女性「Lumi」のモデルとなりボーカリストとしてもプロジェクトに参加する。2013年7月に「Best of my Love」でメジャーデビューを果たし、12月には配信限定の「Let It Snow」を発売。2014年2月に「Brand New Day」をリリースし、同年6月にはテレビアニメ「金田一少年の事件簿R」のエンディングテーマ「パスコード4854」を発表。そして同年10月、個人名義としては初めてのアルバム「Will」をリリースした。