ナタリー PowerPush - やなぎなぎ
裏と表の気持ちをつなぐ 1stアルバム「エウアル」完成
ハッキリものを言える日がやってくるのかも
──「創作物を通じて受け手とコミュニケートしたい」っていう欲求自体は、ほかの表現者と同じなんだけど、自分の興味関心のある領域を聴き手と共有することでその本質に迫りたいって人はけっこう珍しいと思います(笑)。
そうかもしれませんね(笑)。
──逆に「私はこう思う!」「私はこれに怒ってる!」みたいなメッセージを発信したくはない?
思うところや腹の立つことももちろんあるんですけど、それをハッキリ言える自信がないんですよ(笑)。その自信を持つためにも、ほかの人がどんなことを考えてるのか知りたいのかも。
──じゃあ、むしろほかの人の答えが集約された頃、つまりベテランの域に入ってから突然「世の中は腐ってる!」みたいな青臭いメッセージを発信しだすことが……。
あるのかもしれない(笑)。
まだ見せたことのないやなぎなぎを集めるカバーCD
──このアルバムにはもう1つ目玉がありますよね。なんで初回限定盤にカバー曲集を付けようと?
これもアルバムのテーマの一環というか、オリジナル曲を集めた「エウアル」に、カバー曲を集めたCDがついてきたら裏表の関係になるかもな、と思ったので。
──ただある意味「エウアル」本編と同じというか、こちらも曲の並びにビックリしました。てっきり、ファンだと公言している新居昭乃さんの楽曲や北欧系エレクトロニカなんかをカバーするものだと思っていたので。
でも昭乃さんの曲や北欧系の曲はカバーしちゃうとあまりに似すぎるというか……。
──そうか。「自分で曲を書いて歌う気持ちよさ」を求めるやなぎなぎが大きな影響を受けている人たちだけに……。
原曲にも、私の作る曲にも似すぎちゃうのかも、っていう気持ちがあって。それなら「私には書けない、ほかの人の曲を歌う気持ちよさ」のほうを出してみよう、と。特に「恋愛サーキュレーション」なんかがそうなんですけど。
──あの曲が一番ビックリしました。花澤香菜さんに負けず劣らずラブリーで(笑)。
ありがとうございます(笑)。「アンインストール」もそうなんですけど、メジャーで出したシングルや、同人、インディーズのCDでもまだ見せたことのないやなぎなぎみたいなものを集めてみたら楽しいかなって思って。しかも皆さんにしてみたら意外かもしれないけど、実は自分がよく聴いていて、好きな曲を集めてみようと思ったら、こんな感じになってました。
「私、耳がよかったりするのかな?」
──原曲の主だった作家陣を並べてみると「Agape」が岡崎律子さんで、「恋愛サーキュレーション」が神前暁さんで、「アンインストール」が石川智晶さんと西田マサラさん。「light prayer」のプロデューサーで、la la larksの江口亮さんは生バンドで打ち込みみたいなことを平気でやっちゃう人。やなぎさん、意外とド派手な曲が好きですよね?
実は(笑)。やっぱり自分が作る曲と普段聴く曲は違ってきますね。
──とはいえ「異ジャンルに無理くり挑戦しました」みたいな感じはなくて、どの曲もきちんとやなぎなぎの歌になっている。なんでちゃんと歌えるんだと思います?
やっぱり原曲が好きだからちゃんと歌いたかったっていうのがひとつあると思うし。もうひとつは……なんて言うんですかね? 私、耳がよかったりするのかな?って思うことはあって。実はモノマネや英語の発音がうまかったりするんですよ。聴いたものを素直に声にできるっていうとよく言いすぎなんですけど、聴いたまんまの音を何も考えずに声に出せちゃうのが、ある意味特技なんです(笑)。音楽についても、1回曲を聴いて「こういう曲にはこういう歌い方が似合うのか」っていうことが理解できれば、それを自分の音に変換することはけっこう素直にできるのかなとは思ってます。
──カバー曲のアレンジはどなたが?
全部、JUJUさんや徳永英明さんをプロデュースしている松浦晃久さんが。ただ、完全にお任せにはしてなくて。ご自宅に伺って、松浦さんがコードとか簡単なリズムだけを打ち込んだデモをバックに私が歌いながら「この曲はどんなふうにしたい?」「テンポ感やキーはどうする?」みたいな話をして曲のテイストを決めているので、それもちゃんと私らしい曲に聞こえる理由なのかもしれませんね。
「1人音楽隊を組んでみたい」
──少し気の早い話なんですけど、10月には東名阪ワンマンライブツアーもあります。しかも東京公演は大バコ、SHIBUYA-AXです。
でもこのあいだようやくアルバムができたばかりなので……。
──ちょっと休ませろよ、と。
ちょっと思考する時間は欲しいって感じですね(笑)。
──思い付きレベルでもいいんですけど、やってみたいことってあります?
これはずっとやりたいと思ってることなんですけど、ルーパー(入力した音声をリアルタイムでサンプリングし、ループさせられるエフェクター)を何台か使って1人音楽隊を組んでみたいですね。
──いいですね! カナダのGRIMESとか、最近のエレクトロニカ系アーティストのライブでもルーパーはよく使われているし、きっとウケると思いますよ。というか、そのライブすごく観たいです。
ありがとうございます。ちょっといろいろがんばってみます(笑)。
- ニューアルバム「エウアル」 / 2013年7月3日発売 / ジェネオン・ユニバーサル
- 初回限定盤 [CD2枚組+Blu-ray] 4410円 GNCA-1376
- 初回限定盤 [CD2枚組+DVD] 4200円 / GNCA-1377
- 通常盤 [CD] 3150円 / GNCA-1378
CD収録曲
- 本当
- ユキトキ
- 青のパレード
- concent
- helvetica
- Ambivalentidea
- euaru
- Zoetrope
- ラテラリティ
- ストレンジアトラクター
- クオリア
- トランスルーセント
- ビードロ模様
- 嘘
初回限定盤ボーナスCD収録内容
- Agape(メロキュア)
- 1/2(川本真琴)
- 恋愛サーキュレーション(千石撫子[花澤香菜])
- light prayer(School Food Punishment)
- アンインストール(石川智晶)
- Swallowtail Butterfly ~あいのうた~(YEN TOWN BAND)
- カゼノトオリミチ(堀下さゆり)
※カッコ内はオリジナルアーティスト
初回限定盤Blu-ray / DVD収録内容
- これまでのシングル表題曲の為に制作したグラフィックによるプロモーション映像
やなぎなぎ
関西出身の女性シンガーソングライター。2006年からライブハウスやインターネット上で音楽活動を開始する。動画投稿サイトに数多くのカバー楽曲を公開して注目を集め、「君の知らない物語」をはじめとするsupercellの楽曲にnagi名義でゲスト参加したことでも話題となった。繊細かつ透明感あふれる歌声と、印象的な楽曲の世界観が幅広い層から支持される。2012年2月、テレビアニメ「あの夏で待ってる」のエンディングテーマ「ビードロ模様」でメジャーソロデビュー。同曲はオリコンCDシングル週間ランキング11位にランクインした。以来、アニメ「ヨルムンガンド」のエンディングテーマ「Ambivalentidea」、「ヨルムンガンド PERFECT ORDER」のエンディング曲「ラテラリティ」、「AMNESIA」のオープニングテーマ「Zoetrope」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」のオープニングテーマ「ユキトキ」を立て続けに発表。そして2013年7月、1stアルバム「エウアル」をリリースする。