まだ“きぬむすめ旋風”は吹き荒れてはいない
──今回は今まで以上にサウンドのバリエーションが豊かな仕上がりでもあります。
ですね。基本はバンドサウンドなんですけど、去年ひさしぶりにバンドでのライブを経験したことによって、今まで以上にサウンドのイメージが広がったところもあって。しかも私と別府さんとディレクターの3人で作業をしてるからレスポンスも早いし、歌を録ってる段階で急にドラムをカットしたりとか(笑)、その場でブラッシュアップしていくことができたんですよね。ある意味、すごくバンドのノリでレコーディングできたのもよかったんじゃないかなと思います。あと、そういった作業の中で「今回はストリングスを入れてもいいんじゃないの?」という話にもなって。
──今作では多くの曲でストリングスが使われていますよね。
別府さんは弦の使い方もお上手なので、じゃあどんどんやってみようって方向になっていったんです。結果、ストリングスの使い方も含め、すべての曲がいいところに落ち着いたアレンジになったんじゃないかなと思います。私自身も、前作以上にリラックスしてレコーディングに臨めたのもよかったです。
──レコーディングは故郷である島根県の松江で行われたそうですね。リラックスできたのはそういう部分も影響しているのでは?
東京でのレコーディングと比べて、どっちがいいということではないんですけど、島根にいるときは実家に滞在するのでやっぱり安心はしますよね。音楽以外のいろんなことの心配をする必要がないわけなので。
──食事も自動的に用意されるでしょうし。
そうそう。健康面が保障されるっていう(笑)。レコーディングだけに集中できる環境は確かにありがたいですよね。家族に感謝です。
──ご自身が出演もされているお米のCMソング「島根県産きぬむすめの唄」を筆頭に、島根にまつわる曲がいくつか入っているのも本作の特徴のような気がします。
今回は島根色がすごいですよね(笑)。地元では今まで以上にライブをするようになっていますし、今年で3年目になるホールワンマンも決まっているんです。CMのお話も含め、ある意味、デビューの頃とは違った形で地元の方に注目をしていただけている気がします。そういった状況はこれまでの活動の結果だとも思うし、私自身も地元が大好きなのでうれしいことですね。
──CMの反響はどうですか?
地元を歩いていたら「あ、きぬむすめだ!」って声をかけられるんじゃないかなと予想してたんですけど、現状そうでもなくて。“きぬむすめ旋風”は吹き荒れてはいないです(笑)。ただ今年も引き続きCMに使っていただけることになったので、もうちょっと浸透させるべく、アルバムには「島根県産きぬむすめの唄」の未発表バージョンまで入れちゃいました。これを機に、全国に広がっていったらいいなと思ってるんですけどね。
──もう1曲、山根さんの母校愛が詰まった「島根県立大学の唄」も収録されていますね。
大学の学長さんのところにご挨拶に伺ったとき、サプライズで「曲を作ってもらいますからー!」みたいな感じで言われて。「え? え?」と思ってたら、新聞社の方が取材にもいらっしゃってて。
──絶対断れない状況が作り上げられていたわけですね(笑)。
そう、これはもう断れないぞっていう(笑)。いや、もちろん断る気はまったくなかったんですけどね。私はデビューが決まったタイミングで大学の広報大使に任命していただいたんですけど、ようやく広報としてお役に立てるときがきたなと思って。いい曲作ろうって気合いが入りましたね。
──めちゃくちゃいい曲だと思いますよ。途中には校歌然としたパートが挿入される遊び心もあるし。
学長から「歌いやすい曲を」と言われていたので、耳なじみがよく、覚えやすいメロにしようって思いました。実際に通っていたからこそわかるキャンパスのイメージがあったので、詞にはそれをしっかり書いて。今後、入学式とか卒業式に歌われることが想定されているそうなので、ぜひみんなで口ずさんでほしいですね。
すごくいい仕上がりになったぞ
──メロディに関して特に手応えを感じている曲はほかにありますか?
「祭りのあと」ですかね。この曲はド直球なポップスなんですけど、今までは意外とそういう曲を書こうと思ってもうまくイメージがつかめなかったりもしたんです。でも今回はアレンジと相まって、すごくいい仕上がりになったぞと思っていて。泣きの歌メロの感じがすごく好きですね。
──今回のアルバムの中で、切なさを強く感じさせる唯一の曲かもしれませんね。
ああ、確かにそうですね。詞の内容に加え、アレンジも夏の終わり感を漂わせてもらったので、すごく切ないと思います。
──で、次の曲「星降る夜のプレゼント」では季節が一気に冬へ飛びますけどね。
あははは(笑)。秋を飛び越えて冬に。
──この曲は山根さんにとって初のクリスマスソングなんですよね。
そうなんですよ。私はずっと日常的な感情を歌にしてきたので、その日しかないクリスマスのような特定の日を曲にすることはほとんどなかったんです。でも、そこもファンの方にテーマをいただいたことでトライできたっていう。こうやってバリエーションが広がっていくことはいいことだなと思いますね。
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ちょっと悪い山根万理奈