ナタリー PowerPush - 山根万理奈
クラウドファンディング初挑戦 みんなで作った「歌ってhappy!」
深読みをしてほしい
──「蛍」という曲も、今までにはなかった雰囲気で。山根さんは日常に寄り添って歌詞を書かれるタイプだと思いますが、ここではちょっと抽象的につづられているのが印象的です。
確かに歌詞自体はけっこう抽象的な感じなので、今までとは違う雰囲気かもしれないですね。でも、曲の中の景色やシチュエーションは実際に自分が経験したものを書いているんですよ。あまり悩むことなく、自然に書けた曲ではあります。
──抽象的な書き方だからこそ、聴き手は想像が膨らみますよね。「手を伸ばし届かぬ距離 / 肩に止まったかと思えば / 暗闇に染まりもう見えぬ」っていうところは、自分が思い描く夢に対しての思いのメタファーなのかなっていう気がしました。
うんうん。そういう深読みをしてほしかったんですよ。いろんなふうにとらえてほしいなっていう思いで書いてたところはあったと思います。私は“人”に対しての思いを“蛍”に託して書いてはいるんですけどね。
──そうか、人としても読み取れますね。なるほど。
まあでも、なんかそういうことは言わないほうがいいのかもなって思ったりもしますけど。
──種明かしをしないほうが。
そうそう。迷うところですけど(笑)。皆さんにはぜひいろいろ想像しながら聴いてほしいですね。
──アルバムの最後には打ち込みのサウンドがこれまた新しい雰囲気を感じさせる1曲「Hahaha! Happy birthday」が収録されています。
山根まーとして出したカバーアルバム(「人のオンガクを笑うな!」)の中で「すすすす、すき、だあいすき」という曲をカバーしたんですけど、その雰囲気にちょっと近い感じがありますね。囁き声をダブルで録ったボーカルが「かわいかったよね」っていう話になり(笑)、じゃこの曲でもそれをやってみようと。当時も思ったけど、こういうスタイルの曲もすごく楽しいですね。ライブではかなり頻繁にやる曲なんですけど、アレンジがまったく違うので、改めて楽しんでもらえると思いますよ。
──ライブだと、その日が誕生日のお客さんがいることもありそうですよね。
そうそう。そういうのが楽しくてやってるんですよ。自分の誕生日のときには、自分の名前を入れてみんなに歌ってもらいましたし(笑)。BGMとしてもいい雰囲気の音だと思うので、誕生日会なんかでどんどん使ってほしいですね。みんな流してくれい!(笑)
「山根万理奈は世界一かわいらしいブルースマン」
──シンガーとしての進化が感じられる本作。今回も山根さんのリアルだけが詰まっていますね。
今回もリアルですね。それでここまで来ましたし。
──これからもそれでいく。
そうですね。ずっとお世話になっている事務所の方に「山根万理奈は世界一かわいらしいブルースマンだと思う」って言っていただけたんですよ。その言葉を聞いたときに、そういう自覚を持ってそろそろ進んでもいいのかもなって思えたんです。シンガーソングライターという面では、私は素直に本当の自分の日常を歌う人として歩んでいくのもいいなって。
──山根さんとっての“ブルースマン”って、どんなイメージなんですか?
やっぱりこう、(アゴの部分で手をヒラヒラさせながら)こんな感じじゃないですか?
──ヒゲ?
そう(笑)。ヒゲが生えてて渋い感じ。“見た目じゃん!”って感じですけど(笑)。やっぱり自分の中のリアルを歌に乗せる人、それがブルースマンなんだと私は思います。そういう意味で言えば、私の曲は別にブルースのリズムに則ったものではないけど、歌詞の世界観に関してはブルースなんじゃないかなと。で、それは意識的にやってきたわけではなく、自然とそうなっていた。だから私のことをブルースマンだとも言ってくれたんだと思うんですよね。それを自分でも自覚できたから、ここからの歩みはより強いものになっていくんじゃないかなっていう気がします。
──思えば、山根さんが“7208133”名義で初めてYouTubeに動画をアップしてからちょうど5年が経ったんですよね。
あ、ほんとだ! 20歳のときでしたもんね。早いなー(笑)。いまだにYouTube経由で私のことを知ってくれてTwitterをフォローしてくださる方もいるんですよ。そう考えると、私の出発点である大切な場所は、今でも大切な場所として生きているなあってすごく思いますね。5年間、アップをやめずに続けてきてほんとによかったです。
──いろんなことがあった5年でしたけど、好きな音楽を続けられている喜びも実感するんじゃないですか?
その気持ちは、応援してくれるたくさんの人たちがいたからこそ作ることができた今回のアルバムの内容がしっかり証明してくれたと思いますね。誰もが知っているような大きな結果はまだ出せていないかもしれないけど、確実に足跡を刻めてきた5年だったなって。なんてったって“歌ってhappy!”ですからね(笑)。
──ここからの活動もがぜん楽しみになってきます。
一歩一歩、みんなと一緒に楽しく歩んでいけたらいいですね。ライブも引き続きたくさんやっていきます。で、また近いうちにパワーアップして戻ってきますので。あ、そういえば前回のインタビューのときに、女優に興味があるって言ってたじゃないですか。
──そうでしたね。話が来ましたか?
いやー、地元の島根銀行のCMには出演したんですけど……女優の話はまだ来てないんです。自分の知らない部分をもっともっと出していきたいと思っているので、引き続きお待ちしております!(笑)
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収録曲
- step by step
- 手紙
- 花ざかり
- P.S.
- wonder
- 蛍
- 雨の行方
- 大阪の女に生まれたかった
- 週末には
- 歌ってhappy!
- Hahaha! Happy birthday
山根万理奈(ヤマネマリナ)
島根県出身のシンガーソングライター。2009年よりYouTubeで、カバー曲やオリジナルの弾き語り映像を公開する。透明感あふれる声やおっとりしたキャラクターが注目を集める。その存在が現在所属する事務所のスタッフの目に留まり、2011年6月に山音まー名義でニコニコ動画で人気を博している楽曲をカバーしたミニアルバム「人のオンガクを笑うな!」をリリースし、同年7月にワーナーミュージック・ジャパンからシングル「ジャンヌダルク」でメジャーデビューした。同年11月にカバーアルバム「ざっくばらん」で、自身のルーツとも言える名曲の数々を弾き語りで披露。2012年1月に「STAR e.p.」、3月に「スタートライン」という2枚のシングルを発表したのち、4月に満を持して1stフルアルバム「空な色」をリリースする。その後、2013年5月にインディーズレーベルより「好きで悩んでるわけじゃない」を、2014年にクラウドファンディングで資金を集め制作したアルバム「歌ってhappy!」を発表。年間100本を超えるライブを通じて着実にファンを獲得している。