Who-ya Extended|「呪術廻戦」OPを歌う謎多きユニット、その正体に迫る

Who-ya Extendedが新作EP「VIVID VICE」を2月17日にリリースした。

2019年11月にテレビアニメ「PSYCHO-PASS サイコパス 3」のオープニングテーマ「Q-vism」でメジャーデビューを果たしたWho-ya Extendedは、ボーカリストのWho-yaを中心としたクリエイターズユニット。作品によって異なるクリエイターが集結するスタイルは、昨年4月にリリースされた1stアルバム「wyxt.」でもしっかりと機能していたが、テレビアニメ「呪術廻戦」第2クールオープニングテーマ「VIVID VICE」を表題曲とする新作では、ヘビーなロックサウンド、疾走感をたたえたトラック、しなやかさと鋭さを共存させたボーカルなど、このユニットの特性がさらに進化した形で表現されている。音楽ナタリーでは、Who-yaへ単独インタビューを行い、音楽的なルーツとこれまでのキャリア、本作「VIVID VICE」の制作などについて語ってもらった。

取材・文 / 森朋之

中学の文化祭で音楽に目覚める

──新作EP「VIVID VICE」に加えて、1stアルバム「wyxt.」など過去にリリースされた作品をじっくり聴かせていただきました。音楽性、サウンドメイク、ボーカルのスタイルなど本当に独創的だし、誰にも似ていないなと。

ありがとうございます。それは一番うれしい言葉かもしれないです。

──Who-ya Extendedの音楽にはいろいろな要素がミックスされていますが、Who-yaさん自身が音楽に興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

両親が音楽好きだったんです。特に母親は海外のロックバンドが好きで、来日公演もしょっちゅう観に行っていて。一番好きなのはLinkin Parkで、僕も小さいときからずっと聴いていました。なので僕も音楽は好きだったんですけど、ピアノを習ったりすることはなく、音楽は聴くものだと思っていて。それが変わったのは、中学3年のとき。文化祭で「バンドやろうぜ」ってノリになって、ボーカルとして誘われたんです。

──Who-yaさん、当時から歌がうまかったんですか?

いや、全然。今言ったように音楽は聴くものだと思っていたから、自分で歌うというイメージがなくて。カラオケにも行ったことなかったし、歌といえば、学校の合唱コンクールくらいで。中学の文化祭バンドも、歌がうまいから誘われたわけではなくて、単に仲がよかったからだと思います。ほかの子たちはその前から楽器の練習をしていて、「ボーカルがいない」ということになったんだと思うんですけど。でも、文化祭のライブでみんなが楽しんでいる姿を見たときに「音楽ってすごいな」って思っちゃったんですよ。で、高校に行ってからもバンドを組んで、ライブをやるようになって。その頃は日本のバンドのカバーが多かったですね。THE ORAL CIGARETTES、BLUE ENCOUNTとか。ちょうどその世代のバンドが台頭してきた頃で、よくライブも観に行っていました。

──「ボーカリストとしてやっていける」という気持ちがあったんですか?

いや、それはなかったです(笑)。今もそうですけど、自分に自信があるほうじゃなくて。でも、だからこそたくさん練習するし、それがいい結果に結びついているのかもしれないです。バンドのボーカリストは目立つし、「ダサくなりたくない」という危機意識みたいなものもあったし。頑固なんですよ、もともと。子供の頃に水泳を習ってたんですけど、それも結局11年くらいがんばったので(笑)。

Who-ya Extended

もう1人の自分を作りたいと思った

──高校生の頃からデビューをイメージして活動していたんですか?

まずDTMで曲を作るとか、そういうことよりもアーティスト活動の発端を自分で作ることを漠然と考えていました。ライブの映像をTwitterに上げていたら、いろいろな事務所からお話をいただくようになったんですけど、「ウチに入ったら、こういうルートがあって、3年後にはこういう場所にいる」みたいな説明をされることが多くて。それは僕がやりたいことではなかったんですよね。道筋が見えるのはありがたいけど、途中で「ほかの角度からやってみたい」と思ったときに、レールから外れることができないかもしれないなと。それよりも自分発信で、“0スタート”のほうがいいなと。今の事務所は「やりたいようにやってみれば? 足りないところは力を貸すから」と言ってくれたんですよね。

──当初はどんなビジョンがあったんですか?

漠然としているんですけど、今、Who-ya Extendedでやっていることに近くて。自分とは違う、もう1人の自分を作りたいと思っていたんですよ。別ベクトルの自分を立ち上げて、それをエンタメにしていくというか。曲に関して言えば、疾走感のある重めのバンドサウンドというイメージですね。

──なるほど。自分とは違うアイコンを立てるほうが表現しやすいだろう、と?

そうですね。“ありのままの自分”は誰もが持っていると思うんですけど、そうじゃなくて、根底から人格を作り上げて、0からスタートしたいなと。自分と乖離した人間を作り上げるほうがそこまで気負いすぎず活動できる気がしたんですよ。もちろん自分発信でやる以上は本気でやれるだろうし、精神衛生上もいいのかなと。

──パフォーマー、シンガーであると同時に、クリエイターとしての側面も持っているんでしょうね、Who-yaさんは。好きな音楽の幅も広がっていますか?

最近はホントにいろいろ聴いています。一昨年まではライブもよく行っていました。印象に残っているのは、さいたまスーパーアリーナで観たサム・スミスと、東京ドームで観たエド・シーラン。特にサム・スミスはすごかったですね。とにかく歌がうまくて、声に力があって。去年の自粛期間中は、今まで聴いてなかったラップをディグってました。自分と近い世代のラッパー、LEXや(sic)boyとか。ヒップホップ以外でも藤井風さんやイギリスのヤングブラッドとか、同世代ですごいアーティストが続々登場しているので、負けてられないなと思って聴いています。まだまだ吸収したいし、やりたこともたくさんあるので、チャレンジを続けたいですね。