平原綾香「Walking with A-ya」インタビュー|20周年ツアーを放送、共同演出・松任谷正隆と語る制作舞台裏 (2/3)

今まで一番大変なツアーですけどね

──観客の皆さんの温かい雰囲気も印象的です。20周年を迎えて、ファンの方に対してはどんな思いがありますか?

私のライブはリピーターの方が多くて、何度も足を運んでくださるんですよ。「何回観ても感動します」と言ってくださる方も多くて、本当にありがたいです。お客さんの年齢層も広いので、デビューした頃はMCで「どういう語り口で話せばいいんだろう?」と悩んだこともあったのですが、今はありのままの自分でいられるようになりました。今年のツアーは、若い方がさらに増えているんです。ゲームの主題歌なども歌わせてもらっているので、若い世代にも届いているのかなと。

──なるほど。お客さんと一緒に歌う場面もありますね。

今回のツアーでようやく声出しを解禁したんです。ツアーの最初のほうは“おそるおそる”という感じだったんですが、今は皆さん、大きな声で歌ってくれて。コロナ禍の2021年にライブベストアルバム(「Save Your Life ~AYAKA HIRAHARA All Time Live Best~」)をリリースしたんですが、それを聴くと歓声や皆さんの歌声も入っているんです。そういうライブをひさしく経験していなかったので、今回のツアーで皆さんが歌ってくれていることがすごくうれしくて。奇跡のような体験をしているなと思いますね。

──平原さんはこれまでのキャリアの中で、コンサートに対して葛藤や悩みを抱えながらも、少しずつ前に進んできたと思います。今回の20周年のツアーに関しては、平原さん自身もしっかり楽しめているのでは?

今まで一番大変ですけどね、実は(笑)。最初にも言いましたが、今年はとにかく慌ただしかったんですよ。アルバムの制作をしながらミュージカル(「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」)に出演させていただき、その千秋楽の前にツアーのリハーサルが始まって。そのときは「正隆さん……」(と髪の毛で顔を隠す)という感じだったんですが(笑)、今思うと、あの時期に準備を始めていなかったら、もっと大変なことになったんだろうなと。ツアー自体も曲数が多くて大変ですが(笑)、なんとかがんばっているし、いい20周年を送らせてもらっています。

平原綾香

平原綾香

自分自身の弱い部分も見せるクライマックス

──ツアー終盤の12月16日に行われる東京国際フォーラム ホールA公演の様子は、12月28日にWOWOWプラスで全曲ノーカットで独占放送・配信されます(※取材は公演前に実施)。12月24日に行われるツアーファイナル公演から4日後の放送ですね。

特別な映像にしようとみんなでがんばってます。正隆さんに「小さい頃の写真を探しておいて」と言われたんですよ。日記を読み上げるところで、そのときどきの私の写真も映像に取り入れたいということで。「5歳のあーやへ。あなたはいつも、シャツの裾もセーターの裾もコートの裾も、みんなパンツの中にしまってました」みたいなくだりがあるんですが、それに合わせて、5歳の頃の写真を使ったり(笑)。

──それは貴重ですね(笑)。

写真を探すのも大変だったんですけど(笑)、けっこう残ってるものですね。もちろんコンサートで使われるなんて思ってなかったけど、改めて見返すことで「こういうときもあったな」って思い出しました。それも“正隆マジック”かもしれないですね。

──編集作業には平原さん自身も関わると伺っています。

今回は正隆さんにお任せしているので、私から具体的な提案をすることはないと思いますが、写真提供は平原家なので(笑)、最終的なチェックだけはさせていただこうと思っています。ライブの映像はカメラマンの方、ディレクターの方によってもまったく違ってくるし、私自身もすごく楽しみにしています。国際フォーラムのホールAでのライブもひさしぶりですし、映像だと衣装などもしっかり見ていただけるので。「Jupiter」はこれまでドレスの衣装で歌うことが多かったんですが、今回は戦うようなイメージというのかな。ジャンヌ・ダルクや「ピーター・パン」のタイガー・リリーのような雰囲気もあるので、そこもぜひ見てほしいです。

──ライブのクライマックスですからね、「Jupiter」は。

「Jupiter」のあとに「今、風の中へ」を歌うんですが、その流れも自分では考えられなかったと思います。「Jupiter」で終わったとしたら、強さのほうが印象に残ると思いますが、さらに「今、風の中へ」を歌うことで、自分自身の弱い部分も見えてくる。それは自分の素でもあるんじゃないかな、と。

──平原さんのリアルな人間性が伝わるのも、今回のツアーの醍醐味だと思います。WOWOWプラスでの放送は、実際にライブを観た方はもちろん、平原さんのコンサートを観たことがない人も楽しめるものになりそうですね。

そうなるといいなと思っています。コンサートって、よっぽどそのアーティストが好きじゃないとなかなか行かないと思うんですよ。今回のように映像という形でお届けすることによって、平原綾香のことをあまり知らない人にも届けられるのは私にとってもすごくうれしくて。放送は12月28日ですから、もしかしたら故郷に帰っている方もいるでしょうし、家族団らんで見ていただくのもいいんじゃないかな。今年で20周年を迎えましたが、今もやっぱり「Jupiter」のイメージをお持ちの方も多いと思うんです。そういう方にこそ今年のツアーの映像を観ていただきたい。20周年の現時点での集大成となるライブをぜひ観て、できればライブにも来てもらって、私の音楽を体験していただけたらなと思っています。12月28日の18時半、ぜひ空けておいてください!(笑)

──「平原綾香 20th Anniversary Concert Tour 2023~Walking with A-ya~」、平原さんにとっても大きなツアーになりましたね。

そうですね。ひたむきに音楽と向き合い、届けることが皆さんへの一番の感謝になると私は思っています。「ありがとう」「皆さんのおかげです」と言葉で伝えることも大事だけど、それよりも行動で示す人でありたい。全体で2時間40分くらいあって、曲数も多いし、これまであまりライブで聴けなかった曲も歌っています。それもすべて感謝の気持ちだと捉えてもらえたら本望ですね。

平原綾香

平原綾香

プロフィール

平原綾香(ヒラハラアヤカ)

1984年東京生まれ。音楽大学在学中の2003年12月にシングル「Jupiter」でデビューを果たし、翌2004年には「NHK紅白歌合戦」に初出場した。テレビドラマや映画の主題歌を数多く担当し、「日本レコード大賞」「日本ゴールドディスク大賞」などでも各賞を受賞している。また女優としても活躍しており、「メリー・ポピンズ」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」などのミュージカルで主演を務めた。デビュー20周年イヤーの2023年9月にはアニバーサリーアルバム「A-ya!」をリリース。同月より全国ツアー「平原綾香 20th Anniversary Concert Tour 2023 ~Walking with A-ya~」を開催した。