ASIAN KUNG-FU GENERATION 全国ツアー「Tour 2022 “プラネットフォークス”」インタビュー|7年ぶりの横浜アリーナ単独公演に向けて

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが最新アルバム「プラネットフォークス」を携えて、5月より全国ツアー「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 “プラネットフォークス”」を行っている。ファイナルとなる10月27日の神奈川・横浜アリーナ公演には、アルバムに参加した三船雅也(ROTH BART BARON)、塩塚モエカ(羊文学)、Rachel(chelmico)、OMSB(SIMI LAB)がゲストとして登場予定。ツアーのハイライトとなるこの公演はWOWOWプラスで生中継されることが決定している。

音楽ナタリーではアジカンにインタビューを行い、ここまでのツアーの手応えや横浜アリーナ公演に向けての思いを聞いた。

取材・文 / 森朋之ライブ撮影 / 山川哲矢

「プラネットフォークス」は人々をつなぐエネルギーに満ちた作品

──アルバム「プラネットフォークス」を携えたツアーは5月にスタートし、7月の東京・日比谷公園大音楽堂の公演で前半戦が終了しました。ここまでの手応えはどうでした?

後藤正文(Vo, G) ツアーの前半、非常に充実していたと思います。サポートメンバーのAchico(Ropes)、YeYe、George(MOP of HEAD)、Takuma(MOP of HEAD)とも音楽的な部分をスムーズに共有できていますし、セットリストの組み方を含めて、すごくいい感じでやれていて。こういう時代の中で演奏できることもそうだし、いいツアーになっていると思いますね。

山田貴洋(B, Vo) お客さんたちがアジカンのライブを待ってくれていたことが感じられるし、実際、すごく楽しんでくれているのが伝わってきて。その空気感が自分たちの演奏にもつながっているんですよ。どのライブもとてもいい雰囲気でやれているし、ゴッチが言った通り、いいツアーになってますね。

喜多建介(G, Vo) ツアーをやっていく中で「プラネットフォークス」にはホールで映える楽曲が多いんだなと感じましたね。ギターでいうと空間系のエフェクターが生きるし、気持ちよく演奏できてます。

伊地知潔(Dr) アルバムを作っているときは、ゲストミュージシャンに参加してもらったり、コーラスワークに凝ったり、ドラムも曲中で音を変えたりしてたんですよ。「ライブではどうなるんだろう?」という部分もあったんですけど、実際にやってみたら、音源を再現するというよりもライブならではの演奏になって。

「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 “プラネットフォークス”」の様子。

「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 “プラネットフォークス”」の様子。

──実際に演奏することで、「プラネットフォークス」というアルバムを捉え直しているところもある?

後藤 そうですね。暗い曲も入っているアルバムですけど、最終的には人々をつなぐエネルギーに満ちた作品なんだなと。観客の皆さんだけではなく、演奏している僕たちも解放される瞬間がたくさんあって。そういう作品を作れたことがうれしいですね。ただ単に「やった! 俺たち解放されてるぜ」ということではなくて。お互いに許し合い、認め合うことで、どれだけ自分たちを開いていくのか。そのことを体験できるツアーでもあるのかな、と。

──なるほど。ツアーの後半は、ライブの精度もさらに上がっていきそうですね。

後藤 ツアーの序盤は多少、硬さもありましたからね。少しずつアルバムの楽曲が馴染んできたというのかな。慣れてくると、今度はそこに甘んじてしまう自分も出てきちゃうんですよ。もともとドキドキ感、緊張感をいつも持っていたいタイプだと思うし、予定通りのメニューをこなしていくようなライブは楽しくなくて。毎晩毎晩、自分の中で新しい発見や違いだったり、何かしらのトライアルがあってほしいなと思いながら挑んでますね。

後藤正文(Vo, G)

後藤正文(Vo, G)

山田 今回のツアーはリハーサルもかなりガッツリやっていて。序盤からいいスタートが切れたとは思いますけど、いざステージに立ったときに感じることだったり、「この部分はもっと体に叩き込まないとね」というところもあって。サポートメンバーも客観的な意見を伝えてくれるし、メンバー同士もお互いにいい作用を与え合いながらツアーをやれていると思います。

伊地知 ライブに対する考え方も、時期によって変化しているんですよね。ある時期から「ちゃんと演奏しよう」と思い始めて、そのことによって「エモくなれない」という感じになったり。いろいろな葛藤を経て、今はどっちもやれるようになってきたと思いますね。それは今回のツアーにもつながっているのかなと。

山田 1音1音を大切に鳴らすことを意識すれば、自然と高ぶってくるんですよ。そのときの気持ちよさやエネルギーが増していく感じが、エモさにつながるというか。コロナを経たことで、今まで以上にそれを感じているところもありますね。1本1本、ライブをやれることの喜びを実感しながらツアーを回れているので。

喜多 最初にゴッチも言ってたけど、まずライブをやれることのうれしさがあって。ツアーを回れるのも当たり前ではないし、今まで以上に1本1本が大事になっていますね。

喜多建介(G, Vo)

喜多建介(G, Vo)

──4人で演奏することの尊さを実感している、と。

後藤 そういう思いはあります。4人というか、サポートメンバーやスタッフもそうだし、関わってくれる人を含めてのASIAN KUNG-FU GENERATIONですね。このチームでツアーをやれていることの意義や幸せを噛み締めているので。

山田 前半戦、本当にいい感じでやれたので、このままツアーの後半につなげていきたいです。

「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 “プラネットフォークス”」の様子。
「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 “プラネットフォークス”」の様子。

「ASIAN KUNG-FU GENERATION Tour 2022 “プラネットフォークス”」の様子。

いろんな世代の人と接することで、音楽的な地図を広げ続けている

──10月27日の横浜アリーナ公演には、アルバムに参加した三船雅也(ROTH BART BARON)さん、塩塚モエカ(羊文学)さん、Rachel(chelmico)さん、OMSB(SIMI LAB)さんがゲストとして登場します。そもそも「プラネットフォークス」は“ゲストを招く”というのもコンセプトの1つだったんですか?

後藤 最初からそこまで思っていたわけではないですけど、自然な流れでそうなりました。いろんな人同士のコラボが当たり前に行われている時代でもあるし。アジカンがその流れにスムーズに乗れているのは、10年前には想像できなかったですけどね。ある時期までは“ロックバンド純血主義”みたいなところがあった気がするし……。僕らみたいなロックバンドがいろんなミュージシャンと交流して、つながりを持つことで、より自由になれているのはすごくいいことですよね。それは自分たちの成果というより、音楽シーンのみんなで獲得してきたものだと思いますけど。

喜多 アジカンみたいなそこそこ名前が世に知れているバンドがラッパーとコラボするって、すごくいいことだと思いますね。ただ、今回のアルバムでいきなりこうなったわけではなくて、時間をかけてちょっとずつやってきたことなんですよ。制作もライブもそうですけど、メンバー以外のミュージシャンが関わってくれることで、毎回毎回すごく刺激をもらっているし、そのおかげで僕自身も柔軟性が出てきて。ゴッチが提案してくれる人選も信頼しているし、バンドにも自分にもいい効果があると思ってます。

伊地知 ゲストを迎えて演奏することで、自分のプレイの引き出しが増えるんですよ。もちろん自分でもインプットしているし、いろんな音楽を聴いて、フレーズを頭に入れることは続けていて。そのことの価値もあると思いますけど、ゲストと一緒にやると楽しいし、想像以上の広がりがあるんですよね。

伊地知潔(Dr)

伊地知潔(Dr)

──なるほど。もともと新しいことにトライし続けたいタイプなんですか?

伊地知 僕はそうですね。同じことは二度やりたくないタイプです(笑)。

喜多 やりたくないというより、できない?(笑)

──(笑)。パワーポップ、ギターロックには“型”みたいなものもあると思うし、それを続ける美学もあるような気がしますけどね。

伊地知 確かにそうなんですけど、その中でもまったく同じことはやりたくないんですよね。

山田 長くバンドを続けることを考えると、ずっと同じことだけをやっているとすぐに限界が来る。ゲストに限らず、いろいろなミュージシャンに参加してもらうことで、確実に音楽的に広がっていて。特に自分たちより若い世代のミュージシャンはすごくフラットに接してくれるし、現場もいい雰囲気なんですよ。

山田貴洋(B, Vo)

山田貴洋(B, Vo)

──三船さん、塩塚さん、Rachelさん、OMSBさんもそうですが、下の世代からの刺激によってアジカンを活性化させる狙いもある?

後藤 どうなんでしょうね。僕自身は年齢を問わず、いろんな世代の人と接するようにしているし、そのことで音楽的な地図を広げ続けている感覚があって。ともすればバンドって閉じがちだし、意識的に人と関わって仕事することが必要なのかなと思ってますね。もともとはコミュニケーションがうまくないというか、山ちゃんや潔ほど社交的ではないんだけど、音楽のことになると意外と大丈夫なんですよ。それは自分のためでもあるんですけど、結果的にバンドの可能性を開くことにつながっているというか。