緑黄色社会ツアーWOWOW生中継記念特集|5つの公演をもとに掘り下げる、リョクシャカライブの歴史 (2/2)

未来を感じた初武道館公演

──4つ目に挙げてもらったのは、2022年9月16日・17日に行われた初の日本武道館公演です(参照:緑黄色社会が結成10周年で初の武道館公演、満員の会場で鳴らした未来への希望)。

小林 結成10周年のタイミングですね。

長屋 この公演にはいろんな思いがありますね。まだ声出しはできなかったけど、ファンの皆さんと対面できるのがすごくうれしくて。ずっと「武道館でライブをやりたい」と口にしてきたし、10周年のメモリアルなタイミングで2DAYSもやれたのは本当によかったです。まだ時期的に中止になることもあり得たので。

「緑黄色社会×日本武道館 “20122022”」の様子。

「緑黄色社会×日本武道館 “20122022”」の様子。

穴見 ライブ前に長屋がコロナに罹っちゃたんですけど、ギリギリで復活して。

長屋 ライブの2週間前くらいに罹ってしまったんですよ。回復はしたんですけど、声が本調子ではなくて。当日のリハもあまりよくなかったんですけど……。

穴見 本番はいつも以上の長屋だったんです。

長屋 アドレナリンが出たのかも。私もびっくりした(笑)。

小林 すごかったよね。リハーサルも2回ぐらいしか参加できなかったのに。

peppe ボーカルなしのリハをテレビ電話でつないで、見てもらってたんですよ。

長屋 結局、通しリハだけしかできなくて。逆にそこで吹っ切れました。「もうやるしかない」って。

長屋晴子(Vo, G)

長屋晴子(Vo, G)

──そんな状況だったんですね。初めて立った武道館のステージからの景色はどうでしたか?

小林 リハのときは「意外と客席が近いな」と思ったんですよ。しかも、本番が始まって、お客さんがぎっしり入ると圧がすごくて。

長屋 わかる(笑)。

小林 演奏していくにつれて体が順応したんだけど、「やっぱり武道館には刻まれてきた歴史があるんだな」と実感しました。

peppe 私は逆で、ライブが始まる前はかなり緊張していたんですけど、本番はリラックスしてできました。ちょっと不思議な感覚なんですけど、武道館公演の先にある未来が感じられたんですよね。しかもほかのメンバーも同じように感じていたという。

peppe(Key)

peppe(Key)

長屋 「閃光ライオット」も最初のワンマンもそうなんですけど、自分たちにとって大きいライブのときって、目の前のことで精いっぱいだったんです。でも、武道館のときは違っていて。奥のほうまでしっかりみんなの顔が見えたり、ライブをじっくり味わえた感じがあった。今peppeが言ったように未来が見えたんですよね。ライブが終わってすぐに「もっと大きいところでやりたいね」という話もしたよね?

穴見 うん。「これをどう次につなげるか」って。でも、それはやっぱり長屋の力が大きかったと思う。全員の調子がよかったんだけど、長屋は神がかっていたし、将軍みたいに「みんなを連れていく」感がヤバかった。

長屋 将軍(笑)。戦ってたからね。武道館のことを「一番大きいライブハウス」って言う人もいるじゃないですか。ライブハウスは私たちにとっても安心感がある場所ですけど、武道館も同じような感じでやれたんですよ。メンバーのことも近くに感じたし、すごくいい思い出として残っていますね。

「pink blue」ツアーで試した“引き算”

──そして最後は、アルバム「pink blue」を携えた全国ツアーの初日。今年5月20日に行われた、愛知・愛知県芸術劇場大ホール公演です。

長屋 2022年は私たちにとってすごく重要な年で。初めて武道館でライブをしたり、「紅白」(「NHK紅白歌合戦」)に出場させてもらったり、結成10周年の思い出深い1年だったんですよ。それを経て2023年はちょっと肩の力を抜いて、新しい緑黄色社会を作るくらいの気持ちでやっていいんじゃないかと思って。そういうモードで作ったのが「pink blue」というアルバムだったんですね。実際、バンドを組んだ頃のことを思い出しつつ、自分たちが楽しむことを大事にしながら制作して。そういうアルバムを携えて臨んだツアーだったからこそ、演奏自体も楽しめたんですよね。何より一番大きいのは、準備がしっかりできたこと。武道館を成功させた自信というか、何かをつかんだ感じもあったし、かなり前もって準備を始めたことでツアーの初日からすごくいいライブができたんですよ。今までのツアー初日は終わってすぐに反省会をしていたんですけど、「pink blue」ツアーは1日目からみんな笑顔で終われて。

小林 気分的には7本目くらいでした(笑)。

「pink blue tour 2023」の様子。

「pink blue tour 2023」の様子。

長屋 それ以降も「こうしたらどうかな?」とプラスの方向の話し合いができて。本当にいいツアーだったんですよ。

穴見 声出しが解禁になったのも大きいですね。3年越しで「Mela!」の「ラララ」を聞けたんですけど、お客さんの声が大きすぎてビックリしちゃって(笑)。

peppe すごかったよね。

長屋 シンガロングできる曲を作り始めたのは2019年くらいからだから、そもそもライブでお客さんの声を聞くこと自体が初めてで。キャパも大きかったし、お客さんも“待ってました感”があったんじゃないかな。「アゴが外れちゃうんじゃない?」と思うくらい(笑)、声を出してくれて。すごくうれしかったですね。

穴見 「ライブってこれだよ!」という感覚がめっちゃありました。

長屋 そうだね。若いお客さんの中には、「声出ししないライブが当たり前」という人たちもいたと思うんですよ。そういう人たちにライブ本来の楽しさ、私たちが感じてきたライブというものを伝えられたらいいなって。「pink blue」の楽曲を届ける、「Mela!」をはじめとしたシンガロングできる楽曲を届ける、お客さんに本来のライブの楽しさを知ってもらう。今年のツアーはいろんなテーマがありましたね。

peppe あと、初めての試みとして“引き算”というテーマもあって。

穴見 緑黄色社会は4人とも曲を作るし、いい意味で欲があるので、「もっとこうしようよ」という感じで音が増えていく傾向があったんですよ。ライブもそうで、だんだん尺が伸びていってしまう。

長屋 2時間半くらいになってたよね。

穴見 武道館は2時間40分くらいあったんですけど、「pink bule」のツアーはアンコールを含めて……。

peppe 2時間切ってたね。

小林 単に短くするんじゃなくて、お客さんが楽しめるレベルの時間で、いかに満足してもらえるか、納得させられるかをテーマにしてたんですよ。

長屋 ほかのアーティストの規模の大きいライブを観させてもらったのも大きいですね。

小林 うん。「これくらいの長さで、こんなに満足できるんだ」って。

長屋 長すぎるとどうしても集中が途切れてしまうし、「足痛いな」「ライブのあと、何食べようかな」みたいなことを考えちゃうじゃないですか(笑)。ライブの時間はちゃんと音楽に集中してほしいからこそ、なるべく無駄を削ぎ落したいなって。

小林 楽曲のアレンジに関しては2、3年前から引き算を意識していたんですけど、ツアーでそれをやれたのは今回が初めてでしたね。

小林壱誓(G)

小林壱誓(G)

穴見 2時間以内に収めると、そのあとにごはんも行きやすいだろうし。そこでライブの感想を話すのも楽しいじゃないですか。

小林 うん。1日を振り返ることで記憶に定着するしね(笑)。

長屋 大事だね(笑)。あと「なるべく同じセトリはやめよう」という話もしました。ツアーの本数も増えたし、何回か来てくれる人もいるだろうから。基本的にはどの会場も違うセトリだったよね。

穴見 日替わりの曲を5、6曲準備してました。

長屋 しかもツアーの途中から新曲も入ってきたからね。そうすることで自分たちにも刺激を与えられたと思います。

小林 毎回、新鮮さがあって。

長屋 そうそう。公演ごとにセトリを変えるのは、今後もやっていこうと思っています。

アリーナツアーで実現させる夢

──12月から来年1月にかけてアリーナツアー「リョクシャ化計画2023-2024」が開催されます(※取材は11月中旬に実施)。デビュー当時から「『リョクシャ化計画』でアリーナツアーをやりたい」と言ってましたよね。

長屋 叶いました!

peppe まだ何があるかわからないよ(笑)。

長屋 そうだね。みんな、体調に気をつけよう。アリーナツアーはずっと前から「いつかやりたい」と言ってて。実際にやることになって「タイトルどうする?」と話したときに、真っ先に出てきたのが「リョクシャ化計画」だったんです。満場一致で「これしかないよね」って。「いろんな場所をリョクシャ化する」というもともとの意味に立ち返りたかったし、いいツアーにしたいですね。

長屋晴子(Vo, G)

長屋晴子(Vo, G)

穴見 リハ、いい感じですよ。

小林 構成もほぼできあがってるよね。

長屋 うん。今回もかなり前倒しで準備してるので。

──アルバムを引っさげたツアーではないので、セットリストは幅広い楽曲で構成されるんですよね?

穴見 そうですね。「このアルバムから重点的に」という感じではないです。

長屋 ここまで自由度の高いセットリストを組んだのはひさしぶりですね。

小林 「リョクシャ化計画」って本来、そういうライブをやるために始めたからね。なので「なんでこの曲が!?」というものも入ってくると思います(笑)。

長屋 私たちのエゴもあるしね。

穴見 笑いもあるかも。

長屋 そうなのかな?(笑)

──(笑)。アリーナなので、演出的にも新しいことができそうですよね。

長屋 そうですね。演出についても早い段階から打ち合わせさせてもらって。自分たちもお客さんとして何度もアリーナ規模のライブを観てきたし、その中で印象に残っている演出や「こういうことをやってみたいです」という希望を伝えて、夢を実現させたいなと。

小林 いつもライブに来てくれる方々には「いつも通り、最高なんだろうな」くらいの気持ちで来てほしいです。必ず「最高の上があるんだ」と感じてもらえるはずなので。

peppe 私は愛知出身なので、日本ガイシホールは特別な場所なんですよ。今回のアリーナツアーは3カ所で、横浜アリーナ、大阪城ホールはイベントなどでステージに立った経験があるけど、日本ガイシホールだけはまだなくて。「自分たちのワンマンライブのときに初めてステージに立ちたい」という気持ちもあったんですよね。

──日本ガイシホール、観客としてはどのアーティストのライブが印象に残ってますか?

小林 BUMP OF CHICKENさんですね!

長屋 私はいきものがかりさんが印象に残ってます。

穴見 宇多田ヒカルさんのライブも観ましたね。

小林 メンバー全員で観させてもらったんですよ。

peppe 私は西野カナさん、ナオト・インティライミさんかな。

穴見 子供のとき、恐竜の展示も観ました(笑)。等身大のブラキオサウルスがあって、「デカい!」って。

小林 僕は中学時代、器械体操部だったんですけど、愛知県大会の会場が日本ガイシホールだったんですよ。

長屋 私たちより先にガイシホールに立ってるんだ(笑)。

──(笑)。ガイシホール公演の1日目はWOWOWでの生中継もあります。

長屋 すごくありがたいですね。1月7日って、お正月休みが終わって、年明け1発目の日曜日じゃないですか。2024年のスタートを切る日を、たくさんの人と共有できるのはうれしいですね。

穴見 幸先のいいスタートにしたいですね。ぜひ観てほしいです。

peppe アリーナの規模感をうまく使ったステージになると思うので、そこも楽しんでもらえたらなって。あとはやっぱり、「どんな曲をやるんだろう?」というところにワクワクしてもらいです。

小林 その先の話をすると、ドームでもやりたいし、アジアツアーもやりたいと思っていて。そのためにもアリーナツアーは外せないし、絶対に観てほしいですね。

緑黄色社会

緑黄色社会

ライブ情報

リョクシャ化計画2023-2024

  • 2023年12月15日(金)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2023年12月16日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2024年1月7日(日)愛知県 日本ガイシホール
  • 2024年1月8日(月・祝)愛知県 日本ガイシホール
  • 2024年1月13日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年1月14日(日)大阪府 大阪城ホール

プロフィール

緑黄色社会(リョクオウショクシャカイ)

高校の同級生だった長屋晴子(Vo, G)、小林壱誓(G)、peppe(Key)と、小林の幼馴染・穴見真吾(B)によって2012年に結成された愛知県出身の4人組バンド。2013年に10代限定のロックフェス「閃光ライオット」で準優勝したのを皮切りに活動を本格化させる。2018年に1stアルバム「緑黄色社会」をリリースし、それ以降、映画・ドラマ・アニメの主題歌を多数手がけるなど躍進。2020年発表のアルバム「SINGALONG」は各ランキングで1位を獲得し、リード曲「Mela!」はストリーミング再生数が3億回を突破するバンドの代表曲に。2022年9月には初の東京・日本武道館公演を2日間にわたり開催し、同年12月に「NHK紅白歌合戦」への初出場を果たした。翌2023年5月にアルバム「pink blue」を発表。9月にフジテレビ系月9ドラマ「真夏のシンデレラ」の主題歌を表題曲としたシングル「サマータイムシンデレラ」、12月に8thシングル「花になって」をリリースする。また12月から2024年1月にかけて3都市6公演のアリーナツアー「リョクシャ化計画2023-2024」を開催している。