Awesome City ClubのワンマンライブをWOWOW生中継、自身最大キャパの公演で見せる自由な表現 (2/3)

ライブは自分が一番輝ける場所

──そんな中、ワンマンライブ「Awesome Talks - One Man Show 2021 -」が8月に東京・中野サンプラザホールで開催されました。延期を乗り越えて開催が実現した心境はいかがでしたか?

モリシー 去年の12月にコースト(東京・USEN STUDIO COAST)でワンマンをやったときも、ひさびさの有観客ライブだったので「音楽をやっててよかったな」と本気で感動したんですよ。でも人間ってそういう感覚にもすぐに慣れるし、「さすがに今回はそこまで感動しないだろうな」と思ってたんですけど……結局感動しちゃうんですよね(笑)。ひさびさにライブをやったときの感動は、いつまで経っても色あせることはないんだなと思いました。

atagi 月並みな感想ですけど、「目の前にいる人に曲を届けたい」というモチベーションで演奏できるというのがシンプルによかったですね。ようやく自分たちの望む形で音楽を届けることができたというか。ただ、やっぱりお客さんは声を出せないし、自由に体を動かすこともできないので、お互いの熱量を交換しづらい部分もあって。そこに対してモヤモヤがなかったというとウソになるかもしれない。

PORIN 8月は今より感染者数が多かったし、お客さんも不安な気持ちを抱えながら来てくださったと思うんですよね。

モリシー SNSでも「ライブに行ってきました」とはあまり大っぴらに言えない雰囲気があったよね。中には、こっそり悪いことをしに行ってるような感覚の人もいただろうし。そこについては少し思うところがありましたね。

PORIN ある意味覚悟を決めたうえで来てくれたわけだから、その思いに答えなきゃいけないというプレッシャーもありました。あと、今までは「ツアーで全国を回って、最終日に東京公演」というスケジュールが多かったんですけど、今回は中野サンプラザホール公演のみの一発勝負だったので、そこもドキドキでしたね(笑)。ブランクもあったし反省点はたくさんありましたけど、ライブができたことはとにかくうれしかったです。

──MCでPORINさんが客席を見渡しながら「最高の絶景です」と言っているのがとても印象的でした。

PORIN テレビに出させていただけるようになって、スポットライトを浴びる機会は増えたんですけど、やっぱり自分が一番輝ける場所はライブだと思っていて。だからこそ、そういう言葉が自然と出てきたんだと思います。音楽はリスナーのもとに届いて初めて成り立つものだと思うから、その光景を目の前で見れるのは何よりもうれしいことだなって。

PORIN

PORIN

──「Awesome Talks - One Man Show 2021 -」はAwesome City Clubにとって初のホールワンマンでもありましたが、ライブハウスでの公演とは感覚は違いましたか?

PORIN もう全然違いますね。ライブハウスのノリでやったら大失敗します(笑)。今回は座り席のみだったので、それも新たな挑戦でしたし。テレビでパフォーマンスさせていただいた経験も生かして、お客さんを巻き込むのではなく、「見せて感動を与える」ということを意識しました。

atagi そういうパフォーマンスに関することも含めて、会場が広くなれば広くなるほど、いろんなことがかなりシビアになるのは確かだと思います。例えば、中野サンプラザホールで自分たちの前日や翌日に誰がライブをやっているか見てみたら、やっぱり第一線で活躍されている方ばかりで。「この方々と同じ舞台に立たせてもらうんだ」という、アーティストとしての自覚も芽生えました。

もう少し夢を見させてあげたい

──そして12月8日には東京・東京ガーデンシアターで「Awesome Talks One Man Show 2021 - to end the year -」が開催されます。こちらのライブへの意気込みはいかがですか?

atagi どういうライブになるのかは、正直自分たちでもまだあまり見えていないんですけど、今まで培ってきたものを細かいものまで全部かき集めて、最高のショーをお客さんに体験してほしいです。

PORIN 中野公演もそうだったんですけど、コロナ禍以降のライブでは、パーティのような雰囲気や多幸的なムードを押し付けるのは嫌だなと思っていたんです。「無理はしなくていいからね」というメッセージを込めつつ、等身大の私たちを見せるということを意識していて。でも次のライブでは、もう少し夢を見させてあげたいです。私たちが非日常的な空間を作り上げるので、お客さんにはそこに浸ってもらいたい。

──キャパに関して言うと、中野サンプラザが2000強で、東京ガーデンシアターが約8000なので、一気に大きくなりますよね。そこに関しての気負いはないですか?

PORIN 気負いはまったくないです。できることが格段に増えるので、それを全部やってやろうと思ってます。

atagi 僕の場合は気負いも若干ありますけど(笑)、いいものにしたいという気持ちは変わらないので、来た人に「1日をAwesome City Clubのために使ってよかった」と思ってもらえるようにがんばるだけですね。

──前回の中野公演は、最新曲から始まって、冒頭からアンセム的なナンバーが続き、最後はバンド初期の楽曲で締めるというセットリストで、これまでのAwesome City Clubを総括するような公演になっていたと思うんです。そんな集大成のような公演を経て、次がどんなライブになるのかというのはとても気になります。

PORIN 次はもう少しわがままなライブになっていると思います。さっきお話があったように、Awesome City Clubはいろんな曲があって、いろんな姿に形を変えられるのが強みだと思うんです。ガーデンシアターへ下見に行ったときに、これまで私たちがやってきたライブのイメージがハマらなくて。だから今回はやり方をガラッと変えようと思っています。私たちはやりたいことに応じてアプローチを変えていけるはずなので。

atagi 中野公演の温かい雰囲気とはまた違うコンセプトになりそうなので、ライブを観て受ける印象も全然違うと思います。

Awesome City Club

Awesome City Club

表現の根幹にある自己主張

──今回初めてAwesome City Clubのライブに足を運ぶ人も多いでしょうし、WOWOWでの生中継もあるので、いろんな層の方に届くライブになりそうですよね。そのあたりは意識していますか?

PORIN そこはあまり意識しないようにしています。今回のライブでは、やりたいことを素直にやろうと思っているので。もしかしたら初見のお客さんを驚かせちゃうかもしれないけど、今はそれぐらいでいいのかなって。やっぱりワンマンライブでは自分たちが表現したいことをやるべきだと思いますし。

モリシー なぜなら“ワンマン”ですからね。

PORIN そうそう(笑)。もっとわがままになっていきたいなと思ってます。

──それは、逆に言うと今まではわがままになりきれない部分もあったということでしょうか。

PORIN そうだと思います。もちろん今でもお客さんのことを一番に考えてはいるんですけど、もう少し自分たちのことも考えてあげたいと思うようになったというか。やっぱり「勿忘」のヒットが自信と余裕につながったんだと思います。今までは自分に自信を持ちきれない部分があったから、わがままになりきれなかったのかなと。

──なるほど。atagiさんもPORINさん同様、「わがままにやっていきたい」という思いはありますか?

atagi ありますね。やっぱり表現の根幹には「自分たちは今これがやりたいんだ」「こういうことがやりたいから、みんなに付いてきてほしいんだ」という自己主張があるべきだと思っていて。そこに共鳴してくれる人が増えていくのが理想だし、ライブがその再認識の場になればいいなと。もちろん「お客さんに楽しんでもらう」というのがゴールではあるんですけど、そのゴールに向かうためには自分たちのエゴイスティックな部分も必要だと思うんです。

PORIN 個人的に、メディアでの露出が増えれば増えるほどライブで尖ったことをやりたくなるんですよね(笑)。そうすることで心のバランスを保っているというか。ライブだけは好き勝手やってもいい場所だと思うし、自由にやろうと思うので、それを観てAwesome City Clubの沼にハマってほしいです。