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初音ミク10周年特集|wowaka(ヒトリエ)×DECO*27|ボカロシーンの牽引者たちが語る「あの頃、何が起こったのか」

初音ミクの10年 ~彼女が見せた新しい景色~

半年くらい社会と接点を持たずに酒を飲んでるだけ

──Vocaloidのシーンは、日本のポップミュージック全体に影響を与えたわけですが、当時そのことをどう感じてました?

DECO*27 どうだったかな……。僕はニコニコ動画だったり、Vocaloidシーン以外のことはほとんど目に入ってなかったんですよ。そのフィールドで最高にいい曲を発表することしか考えてなかったです。ほかのシーンに対する影響みたいなことを考えるようになったのは、ここ数年ですね。振り返ってみて「そういうすごい場所にいられたんだな」って、ようやく思えるようになったというか。

wowaka 僕も視野は全然広くなかったですね。ただ、ある時期から自分の中に変化が生まれて。Vocaloidシーンで自分の曲を聴いてもらえるようになったわけですけど、壁を隔てたところで盛り上がっているような気がしてきたんです。曲はどんどん一人歩きしているけど、ここで普通に暮らしている俺ってなんだろうな?って。そのうちに「生身の体の自分が歌うことでしか、ここで暮らしている俺は救えないんじゃないか?」と思って。それがヒトリエというバンドを始める動機になったところもありますね。Vocaloidのシーンを客観的に見ているのではなくて、もっと盲目的に「俺、俺、俺。俺はどうなんだ?」という感じでした。

──すごく切実な状態ですね。

wowaka いや、マジでヤバかったですよ。そう思い始めてからというもの、半年くらい社会と接点を持たず、食事は出前を取って、あとは酒を飲んでるだけみたいな。「このままじゃホントにヤバイ」と思って、今のバンドのメンバーに声をかけ始めたんですよね。そのちょっと前に「アンハッピーリフレイン」というVocaloidのアルバムを作ったんですよ。あのアルバムを出したことで、「ボカロ曲を発表して、それが自分の手から離れていく」という経験はやり尽くしたという感じもあって。

左からwowaka、DECO*27。

──「アンハッピーリフレイン」は2011年5月のリリース。その翌年にはDECOさんもボカロ曲の制作を一旦やめていますね。

DECO*27 そうですね。2012年で新しい曲を上げるのを止めているので。それまでボカロしかやってこなかったんですけど、ようやくほかのことにもチャレンジしようと思うようになって、楽曲提供やコラボをやるようになったんです。その時点でDECO*27として活動して6年くらい経ってたんですけど、発表した曲の数もかなり多くなってたし、やりきった感じもあったんですよね。「もうDECO*27として曲を書かなくていいかな」って。それが2013年くらいだったんですけど、なんなら音楽自体も「もういいかな」って思っていたので。

wowaka DECOさんが「音楽をやめるかもしれない」と発言してるインタビュー、読んだことありますよ。「マジかよ」ってびっくりしましたけど。

DECO*27 それまで曲を書くことでDECO*27としての自分を保ってきたんですけど、そうじゃなくなってきたというか。それからしばらくは「新しいことをやるとしたら、何があるだろうか?」と考えていて。その後、2013年にミクのコンサートで自分の楽曲が演奏されているのを見て、「もう1回、ミクをやろうかな」と思ったんですよね。そのときはミクで曲を作るということが自分の中で新しいものになっていたので。

wowaka なるほど。

DECO*27 そこから何曲か作って、2014年に「Conti New」というアルバムを作って。そこからまた2年半くらい新しい曲を上げなかったんですけどね。ずっと「DECO*27とミクで新しい表現をするためにはどうしたらいいだろう?」って模索していて。

シーンから距離を置いたのは、自分を守るためでもあった

──wowakaさん、DECO*27さんが新しいボカロ曲をアップしなくなった時期は、ボカロシーン全体も低調だった印象があります。

wowaka これも個人的な話になっちゃうんですけど、俺はちょっとトラウマみたいな状態になってたんです。Vocaloid、初音ミクという共通項があって、ただただ自分を表現したいと思っていろんな人が集まって、シーンが盛り上がって……2010年から2011年くらいまでは「すごくカッコいいシーンの中にいる」という実感があったんだけど、少しずつ「そうじゃないんだよね」というところも見え始めてきたんです。ちょっと安直と言うのかな。「こうすればいいんでしょ?」「こういう曲が好きなんでしょ?」みたいなものが増えてしまって。曲自体もそうだし、表現の仕方もそうだし。嫌われるのを覚悟で言いますけど……。

DECO*27 どうぞ。

wowaka 「wowakaみたいな曲を書けばいいんだろ?」みたいな(笑)。

DECO*27 わかる。「BPMが速ければいいんだろ?」とかね(笑)。

wowaka そうそう。俺はもちろん、そんなモチベーションでは作ってなかったから。

──「こういう条件を満たせば、たくさんの人に聞かれる」というテンプレートができてしまったというか。

DECO*27 そうですね。ボカロシーンが一番盛り上がっていた時期を見ていた人たちが、「再生数を伸ばしたい」「有名になりたい」という意志を持って入ってきたので。それはいいんですけど、根本に「ミクが好き」「この文化が好き」という気持ちが感じられない作品が増えていたのは確かだと思います、僕から見ても。

wowaka そうなんですよね。大事な自分の一部を奪われた感覚もあったし、いわゆるそのwowakaっぽいニュアンス、みたいなものをポジティブに消化されてるとも当時の俺には思えなくて。wowakaとして、自分が本気で好きでやってきた場所から、そういうものが返ってきたのが悲しくて悲しくて、すごくしんどかったんですよね。それもあって「アンハッピーリフレイン」を出したあと、精神的にひどい状態になってしまったんだと思うんですけど。

DECO*27 うん。

wowaka 自分がボカロのシーンからある意味距離を置いたのは、自分を守るためでもあったんですよね。「ずっとここにいたら、もっと悲しいものを見なくちゃいけなくなる」っていう。ただの予感で、誰が悪いってことではないんだけど。

DECO*27 wowakaさんと僕だけじゃなくて、同じくらいの時期にハチくんも新しいボカロ曲を上げなくなったわけですけど、僕としては「自分たちがいなくなったとしたら、このシーンはどう変化していくんだろう?」とちょっと楽しみにしていたんです。で、その間にシーンを見ていて「うーん、これはどうなのかな?」と感じることもありましたね。ビジネス的には健全だったと思うんですよ。うまくレールに乗っかって、モノを売って、名前を広めて。そのおかげで初音ミクやVocaloidの知名度もガッと上がりましたから。

下の世代にボカロ文化を知ってもらうために、時間を巻き戻さなくちゃいけない

──DECO*27さんは2016年に約2年半ぶりとなるボカロ曲「ゴーストルール」を発表しました。「DECO*27がボカロシーンに戻ってきた」と話題になりましたが、ご自身の意識としてはどうだったんですか?

DECO*27 僕的にはずっとボカロシーンにいたつもりだったんですよ。でも、確かに新しい曲を上げていない時期もありましたからね。

wowaka 俺から見てもDECOさんは、ずっとこのシーンにいてくれた存在ですね。そのイメージはどのボカロPよりも強いし、そこに対しては感謝しかないですね。たぶん、さっき言った「悲しいものを見なくちゃいけなくなるんじゃないか」というイヤなニュアンスを俺と同じように感じながらも、ずっと愛と信念を持ってその場所にい続けてくれた人はたくさんいて。俺が愛していたと言うか、すごく惹かれていたシーンを守ってくれたのは、そういう人たちなんですよね。自分で新しい曲を上げなくなったあとも、ボカロ曲はけっこう聴いてたんです。そこでもいろんなものを見ましたけど、常にシーンの先頭に立って引っ張っていたDECOさんは本当にカッコいいなって。

左からwowaka、DECO*27。

DECO*27 うれしい。やってきてよかったです。ユーザーとして聴いてくれた人もそうだけど、戦友と言うか、一緒にやってきた人にそう言われるとすごくうれしいですね。僕がシーンの中にずっといた理由は、やっぱりミクが好きだし、ミクで作る自分の曲が一番好きだからなんですよね。DECO*27のよさを一番生かせるのはミクだなと思っているので。あと、ボカロ曲を作る新しい人たちに入ってきてほしいという気持ちもありました。下の世代の人たちにボカロの文化を知ってもらって、どんどん作品を作ってほしいなと。そのためには「時間を巻き戻さなくちゃいけない」と思ったんですよね。だから「ゴーストルール」は動画を付けないで、1枚絵にしたんですよ。

wowaka なるほど。

DECO*27 2013年頃は「MVがすごい!」ということで注目される曲が多かったんですよ。そのぶん「いい曲は書けるんだけど、動画クリエーターに知り合いがいなくて、いいMVが作れない」という人には不利だったかもしれないなと。僕らが始めた頃はそうじゃなかったんですよね。wowakaさんもずっと1枚絵だったし。

wowaka そうですね。自分のボカロ曲に自分でMVを付けたことは1回もないので。「うらやましいな。俺もカッコいいMV作りたいな」と思ってましたけどね(笑)。

DECO*27 僕も思ってた(笑)。でも、wowakaさんのイラストはカッコよかったよね。シンプルだし、見た瞬間に「wowakaさんだ」ってわかるっていう。あの頃は、今よりも投稿するハードルが低かったと思うんですよね。自分で言うのもアレですけど、ずっとボカロのシーンにいて、ある程度人気がある人がもう一度チャレンジ精神に満ちたことをやれば、「これでもいいんだ」と思って新しい人が入ってくるんじゃないかなって。作る側が盛り上がっていないとコンテンツも少なくなっていくし、見ている人もつまらないと思うんですよ。それはもちろん(wowakaを凝視しながら)僕だけの力ではダメなんですけど。

wowaka 今DECOさんの意志を感じました(笑)。

──実際、新しいクリエイターが増えている手応えもあるんですか?

DECO*27 そこは自分からあまり積極的にチェックしないようにしているんです。すごい人に出てきてほしいという気持ちはずっとあるんですが、自分から探さなくても情報が入ってきたり、「すごい人が出てきて、盛り上がってるよ」って人づてに聞くようになるのが最高だろうなって。

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2017年8月30日発売 / U&R records
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DISC 1
  1. アンノウン・マザーグース / wowaka feat. 初音ミク
  2. ヒバナ / DECO*27 feat. 初音ミク
  3. ボロボロだ / n-buna feat. 初音ミク
  4. Initial song / 40mP feat. 初音ミク
  5. 大江戸ジュリアナイト / Mitchie M feat. 初音ミク with KAITO
  6. リバースユニバース / ナユタン星人 feat. 初音ミク
  7. 快晴 / Orangestar feat. 初音ミク
  8. それでも僕は歌わなくちゃ / Neru feat. 初音ミク
  9. ひとごろしのバケモノ / 和田たけあき(くらげP) feat. 初音ミク
  10. 君が生きてなくてよかった / ピノキオピー feat. 初音ミク
  11. 神様からのアンケート / れるりり feat. 初音ミク
  12. Steppër / halyosy feat. 初音ミク、鏡音リン、鏡音レン、巡音ルカ、KAITO、MEIKO
DISC 2
  1. みんなみくみくにしてあげる♪ / MOSAIC.WAV×鶴田加茂 feat. 初音ミク
  2. Tell Your World / livetune feat. 初音ミク
  3. 千本桜 / 黒うさP feat. 初音ミク
  4. 初音ミクの消失 / cosMo@暴走P feat. 初音ミク
  5. ロミオとシンデレラ / doriko feat. 初音ミク
  6. 独りんぼエンヴィー / koyori(電ポルP) feat. 初音ミク
  7. カゲロウデイズ / じん
  8. from Y to Y / ジミーサムP feat. 初音ミク
  9. *ハロー、プラネット。 / sasakure.UK feat. 初音ミク
  10. BadBye / koma'n feat. 初音ミク
  11. オレンジ / トーマ feat. 初音ミク
  12. ハジメテノオト / malo feat. 初音ミク