I Don't Like Mondays.の「BACK UP」|“4人でしか成し得ない音作り”が広げるバンドの可能性

I Don't Like Mondays.は近年、活動の幅をますます広げている。

自身初のアニメタイアップであるテレビアニメ「ONE PIECE」の主題歌「PAINT」をリリースすると、この曲をきっかけにブラジル・サンパウロで開催された南米最大規模のアニメフェス「Anime Friends 2022」に招かれるなど、これまで“未踏”だった場所への航海も積極的な彼ら。国境を越えて愛されるアイドラのバンドサウンドは、いったいどのような方法で作り上げられているのか。

メンバーに楽曲制作について聞いたインタビューで語られたのは、“この4人”でしか成し得ない、唯一無二な音作りの方法だった。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 藤記美帆撮影協力 / RESTAURANT LUKE with Sky Lounge

4人での作曲は間違った方向へ行くことがまずない

──今日は、皆さんが楽曲を作る際の手順について詳しく聞きたいと思っております。誰かの作ったデモを元に進めるのではなく、4人で話し合いつつ1から作っていくという、バンドとしては比較的珍しいやり方をしているそうですね。

YU(Vo) そうです。曲作りのための時間を設けて、4人で集まって作っています。

──具体的にはどういう作業から始まるんですか?

YU まずは、イメージの共有からですね。前に出した曲がどういうものだったかとか、音楽シーンのトレンドとかも踏まえて「自分たち的に、次にどういう曲を作るべきなのか」を話し合うところから始まります。それが一番大事だし、難しいところでもあって……逆に、それさえ固まってしまえば全体の作業の半分は終わったみたいな感覚になりますね。まだ1音も作ってないのに、完成したような気持ちになってます(笑)。

I Don't Like Mondays.の楽曲制作風景。

I Don't Like Mondays.の楽曲制作風景。

──具体的にはどういう会話が交わされるんでしょう? テンポの速い遅いとか、キーがメジャーなのかマイナーなのかみたいなことを決めていく?

YU そうですね。最初にビートを決めることが多いかも。あとは、毎回ではないけど歌詞の方向性を先に決めてから曲想をそれに合わせていくパターンもありますし、「フェスで映える曲を」みたいにサウンド感のイメージから入ることもあったり。けっこういろいろですね。

──よくある、ギターやベースのちょっとしたフレーズを持ち寄ってそれを元に膨らませていく形ではないわけですね。

YU じゃないですね。

──そうして方針を固めたのち、音にしていく段階になると……?

SHUKI(Dr) まずはドラムの打ち込みからですね。MacでCubase(音楽制作ソフト)を立ち上げて、基本となるリズムパターンを打ち込みで作り……。

KENJI(B) 作曲部屋に楽器も置いてあるので、ベースやギターも簡易的に弾いたものを重ねていきます。その段階で、だいたいリズムとコード進行が決まる。

YU そこでできあがったパターンをひたすらCubase上でループしながら、今度はみんなでメロを考えていきます。そのときに仮で決めたコード進行も、あとからどんどん変わっていったりします。

SHUKI わりとサビを最初に作ることが多いですね。

──なるほど。普通なら1人でやるような作業をそのまま4人でやっている感じなんですね。率直に「よくできるなあ」と思うんですが……。

YU 楽な部分も多いですよ。自分が何も思い付かなくても、誰かが「こういうのどう?」と言ってくれたりするので、それは助かっています。日本ではあまりメジャーなやり方ではないかもしれないけど、海外では意外と多いスタイルなんですよ。コライトと言って、複数人でスタジオに入って同時に作曲作業を進めていくっていう。最近の海外の曲って、クレジットを見ると何人もの名前が並んでいたりしますよね。あれはそういう作り方をしているからなんです。

──皆さんはバンドなので、「せーので音を出しながら作るのが一番手っ取り早いのでは?」とも思ってしまうんですが。

YU そういうやり方をすることもあるんですけど、それだと意外と冷静に聴けないんですよ。やっぱり生音が鳴っていると楽しくてテンションが上がるから、そのときは「最高!」と思っていても、あとで聴き返してみると「ダメじゃん」みたいなこともよくある(笑)。それに、そのやり方だと作ったものをあとから部分的に切ったり貼ったりできないんで、効率が悪いというのもあって。

KENJI スタジオでのセッションはゴールが見えにくいんです。結局、最初にすごく綿密な話し合いをするところから始めているのは、明確なゴールを設定してそれを全員で共有するためなんですよ。それがちゃんとできていないと、だいたい失敗する。

YU その点、今のやり方であれば段階ごとに4人のジャッジがいちいち入るから、間違った方向へ行くことがまずないですね。

YU(Vo)

YU(Vo)

KENJI 例えば4人中3人が「これはいい!」と盛り上がっていたとしても、誰か1人でも「ここ、違わない?」と言い始めたら、ちゃんと何がダメなのかを話し合って潰していく。その作業がずっと続く感じです。

YU 1人がテンション低そうに見えたら、だいたいほかの3人も「これ大丈夫かな?」って言い始めるしね(笑)。

CHOJI(G) そこをうやむやにせず、ちゃんと話し合いながら改善していくことで必ず曲がよくなるということがわかってるんですよ。過去にそういう成功体験が何度もあるから。

──脳みそが4つあることによる、コンピュータで言えば4コアのような体制で作るメリットは計り知れないわけですね。

KENJI 確かに4コアだ(笑)。今となっては、僕らにとってすごくやりやすい形ですね。

僕らにとってマストアイテムに

──そうやって基本のリズムパターンとコード進行、歌メロが固まった状態のラフなデモができあがりますよね。その段階でアレンジも詰めていく感じですか?

KENJI いや、その段階でいったん持ち帰って……。

YU 僕が歌詞を考え始めます。それと並行して、みんなは自分のパートの音色やフレーズを各々詰めていく。

KENJI それプラス、シンセだったりの上物をどう入れるかも考えていったり。で、各自で考えたものはどんどんDropboxにアップして共有します。それを確認した誰かが「もっとこうしたほうがよくない?」と言ってきたら、次に集まったときに改めて話し合う。

YU そういう意味では、すごくテクノロジーを駆使しているバンドではありますね(笑)。クラウドの技術がここまで一般化してなかったら、こんなにスピーディに作業できてないと思います。

KENJI 確かになあ。

KENJI(B)

KENJI(B)

──作品を聴かせていただくと、確かにアイドラの音は現代的なバンドサウンドという印象が強いんですけど、とはいえ作り方自体はもっとアナログなんだろうなと勝手に想像していたんです。思ったよりもデジタル技術を積極的に活用しているバンドなんですね。

YU ですね。でもやっぱり、普段パソコンに向かって作っているばかりだと「たまにはみんなで楽器を鳴らしながら酒でも飲みつつ作ろうよ」みたいな気分になることもあるんですよ。こないだ出した「YOROI」なんかは、まさにそうやって作ったものが元になっていて。

──必ずしもデジタル的な手法で作ることに固執しているわけではないと。作り方のバリエーションは今後も増えていく可能性がある?

YU そうですね。もし新しいやり方があまりうまくいかなかったとしても、そのときはいつものやり方に戻せばいいだけなんで。その担保があるから、たまに環境を変えて脳みそをリフレッシュさせるみたいなことも安心して試せると思います。

──ちょっと話は戻りますが、最初に集まってラフなデモができた段階で、各自そのデータを持ち帰るわけですよね。その際、現状はUSBメモリなどを使っている感じですか?

CHOJI それもDropboxですね。まずその場でアップしちゃって、家に帰ってから各自でダウンロードするみたいな。ただ、デモ作りじゃなくてレコーディングのときは録ったギタートラックのデータを持ち帰るためにUSBメモリを使っています。自分でリアンプしたり、EQをいじったりすることがあるんで。

──そこはどういう基準で使い分けているんでしょう?

CHOJI 単純にデータ量の問題ですね。デモと違って、レコーディング本番のファイルは容量も大きくなるし数も多くなるんで、Dropboxでは追いつかない。

SHUKI 自分でアレンジした最終データをエンジニアさんに渡すときも、同じ理由でUSBメモリを使ってますね。

──なるほど。今回、皆さんにはWestern Digital傘下ブランドであるサンディスクの「サンディスク ポータブルSSD」をお試しいただきました。ちょうどUSBメモリの役割をそのまま置き換えられる製品だと思いますが、試してみていかがでした?

サンディスク ポータブルSSD

サンディスク ポータブルSSD

SHUKI データのコピーがマジでめちゃめちゃ速い。

CHOJI これだけ速いと、もうUSBメモリは使えなくなっちゃうかも。

KENJI ストレスがなくなりますね。正直、データコピーの時間ってただ待ってるだけなんで、ストレスでしかないから。

YU 人生においてまったく必要のないストレス(笑)。

SHUKI 曲作り用のパソコンも、ライブで同期音源を流すパソコンもそうなんですけど、データが重くなってくると動作もどんどん重くなるんですよね。だから定期的にデータの整理をしてるんですけど、そういう用途にもいいなと思いました。容量の小さいUSBメモリとかに待避させると何個にも増えちゃって管理が難しくなるし、容量は多くても転送速度の遅いメディアだとコピーにすごく時間がかかっちゃう。SSD(※1)を使うことでその問題が一気に解決するなと。

「サンディスク ポータブルSSD」のデータ転送スピードを体験するI Don't Like Mondays.。

「サンディスク ポータブルSSD」のデータ転送スピードを体験するI Don't Like Mondays.。

CHOJI しかも軽くて小さいから、持ち歩くのも全然苦じゃないし。

KENJI これからの僕らにとっては、マストアイテムになるでしょうね。

SHUKI あと、普通はだいたいUSBメモリに入っているデータをパソコンにコピーしてから作業するんですけど、たまに面倒くさくてUSBを挿したまま直接データをいじることもあるんですよ。そういう場合は転送速度とかの性能がダイレクトに影響するんで、SSDだとめっちゃ助かりそうだなあと。

KENJI 確かにね。


※1 SSDはソリッド・ステート・ドライブの略で、記憶装置のこと。回転する円盤に磁気でデータを読み書きするHDD(ハード・ディスク・ドライブ)とは違い、SSDはUSBメモリーやSDカードと同じように内蔵しているメモリーチップにデータの読み書きを行う。一般的に、SSDは読み書き速度が速く、壊れにくいが高価。HDDは比較的安価で大容量のデータ記憶に向いているが、衝撃などに弱いとされている。