WEAVERが3月6日にベストアルバム「ID 2」、ニューアルバム「流星コーリング」を同時リリースした。
彼らにとって2作目のベストとなる「ID 2」には、ロンドン留学から帰国した2014年夏以降に発表された楽曲の中から収録。音楽的な試行錯誤を繰り返しながら、自らのアイデンティティをつかもうとしたこの5年間の軌跡を確かめることができる。一方の「流星コーリング」は、河邉徹(Dr)の同名小説のストーリーをもとにしたコンセプチュアルな作品。小説と音楽を軸にしたこのプロジェクトは、WEAVERにとっても大きな転機となったようだ。今回はメンバー3人にインタビューし、この5年間の活動を振り返りつつ、「流星コーリング」の制作、現在のバンドのモードなどについて語ってもらった。
さらに音楽ナタリーでは、河邉が手がけた小説「流星コーリング」の発売を記念して、彼と伊東歌詞太郎の対談企画も公開している(参照:河邉徹「流星コーリング」刊行記念特集)。こちらも併せてチェックしてみてほしい。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 後藤壮太郎
らしさってなんだろう?
──先日、ベストアルバム「ID 2」とニューアルバム「流星コーリング」が同時にリリースされました。「ID 2」は2014年夏以降の楽曲をまとめた作品ですね。
杉本雄治(Vo, Piano) はい。最初のベストアルバム「ID」はデビューからの5年間の曲をまとめていて。「ID 2」はロンドン留学以降の5年間の曲をリリース順に収録しているので、この5年間の自分たちの歴史を追ってもらえると思います。
──デビューからの5年と、その後の5年間の活動は大きく違いますよね。
杉本 そうですね。この5年は、さらに波に揉まれたというか……最初の5年は自分たちを取り巻く環境に必死で食らい付いて、なんとか付いていこうとしていた時期で。そのあとの5年は、そんな状況を打破しようとしていたんです。半年間ロンドンで暮らしたことで新しい価値観を得て、殻を破れた部分もあったと思うし。でも、まだまだ自分たちを見つけられなくて、「これでいいのか?」と葛藤しながら曲を作っていた印象もありました。
奥野翔太(B, Cho) 激動の5年間でしたね。ロンドン留学で得たこと、新たに経験したことを生かしながら、「WEAVERらしさってなんだろう?」ということを追求して。やれることの幅が広がって、選択肢が増えた分、迷う部分もあったと思うんですよ。その中でバンドとしてよりよい作品を目指していた時期だったというか。そういう道を通ってきたことが、今につながっている実感もあります。
河邉徹(Dr, Cho) バンドって、デビューすること以上に、続けることのほうが大変だと思うんですよ。「ID 2」には「続けるためにはどうしていけばいいか?」と模索してきたことが表れていると思うし、音楽を好きになってほしいのはもちろん、どういう道を歩んできたのかを知ってもらって、僕ら自身に興味を持ってもらえればなと。
コンプレックスからの解放
──今振り返ってみてロンドン留学で得られたものはなんだったと思いますか?
杉本 余計なものが削ぎ落とされた感覚はありましたね。それまでは周りからの見られ方だったり、自分たちの音楽がどう受け取られているかをすごく気にしていて。向こうのミュージシャンは自分の考えを明確に持っているし、「自分はこうなんだ」という主張がはっきりしているんですよ。音楽だけじゃなくて、語学学校でディベートしたときに、政治的なことをきちんと話したり、僕ら以上に日本の政治状況についても詳しくて。ロンドンで生活する中で、「もっと自分の意見を持たないとダメだな」という危機感が強まったし、バンドとしても個性を打ち出していきたいなと思ったんです。
奥野 日本の音楽のよさに気付けたことも大きかったです。ロンドンに行く前は、J-POPっぽい曲を嫌がるというか、ちょっと避けているところがあって。でも向こうに行って、現地の音楽に触れているうちに、日本人が作る音楽のよさ、面白さがわかってきたんですよね。日本語を生かすためのメロディだったり、アレンジの緻密さだったり。向こうのミュージシャンに「J-POPは面白い。自分たちには作れない」と言われたこともあったし、日本を離れたからこそ、よくわからないコンプレックスから解放されたところはあったと思います。
──河邉さんはどうですか? 歌詞を書く立場として、ロンドンに行ったことで何か変化はありました?
河邉 向こうにいるときは、できるだけ英語でモノを考えようとしていたんですよ。でも、歌詞は日本語で書いているわけで、その中で葛藤することもあって。それよりも現地のミュージシャンとスタジオに入ったり、レコーディングする機会があったのは大きかったし、刺激的だったなと。ドラムに対する感覚も全然違っていたし、価値観を覆されたというか。向こうでは破壊しちゃうくらいの力でドラムを叩けって言われてたんです。「Harder! Harder!」って言われ続けて(笑)。
杉本 そうだね(笑)。
河邉 日本では「とにかく力を抜け」と言われてたから真逆ですよね。帰国後の「IDツアー」のDVDを観ると、かなりハードヒットしていて。そのプレイを自分でも「カッコいいな」と感じたし、「もう1回、この感じでやってみようかな」と思ってます。
杉本 音楽的にも演奏的にも、今まで知らなかったものにたくさん触れて。帰国してからは、それをいかに自分たちのモノにしていくか?ということを考えてましたね。音の鳴らし方、サウンドメイクなどを含めて、好奇心を持ってチャレンジしていこうと。迷うことも多かったけど、そういう経験はすべて糧になっていると思います。
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“世界観先”で発揮された器用貧乏さ
- WEAVER「流星コーリング」
- 2019年3月6日発売 / A-Sketch
- 収録曲
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- Overture ~I'm Calling You~
- 流れ星の声
- 最後の夜と流星
- Interlude I
- 栞 feat.仲宗根泉(HY)
- Interlude II
- Loop the night
- Nighty Night
- 透明少女
- I would die for you
- 流星コーリング ~Prologue~ feat. 花澤香菜
- WEAVER「ID 2」
- 2019年3月6日発売 / A-Sketch
-
初回限定盤 [CD+DVD]
3996円 / AZZS-82
- CD収録曲
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- くちづけDiamond
- Beloved
- Boys & Girls
- KOKO
- S.O.S.
- Shake! Shake!
- 海のある街
- Another World
- だから僕は僕を手放す
- Photographs
- 僕のすべて
- Hello Future
- Tonight
- カーテンコール
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- くちづけDiamond
- KOKO
- Beloved
- Boys & Girls
- S.O.S.
- Shake! Shake!
- Another World
- カーテンコール
- 河邉徹「流星コーリング」
- 2019年3月6日発売 / KADOKAWA
- WEAVER(ウィーバー)
- 杉本雄治(Vo, Piano)、奥野翔太(B, Cho)、河邉徹(Dr, Cho)の3人からなる兵庫・神戸出身のスリーピースバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成に。2009年10月に配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビュー。2010年2月にメジャー1stミニアルバム「Tapestry」を発売したのち、同年8月と9月には亀田誠治をプロデューサーに迎えたアルバム「新世界創造記」を前編と後編に分けて発表した。2014年1月末からは半年間のロンドン留学を経験。メジャー10年目に突入する2019年3月6日にはベストアルバム「ID 2」、ニューアルバム「流星コーリング」、河邉の書き下ろし小説「流星コーリング」が発表された。3月から東名阪ツアー「WEAVER 14th TOUR 2019『I'm Calling You~流星前夜~』」を実施する。