ナタリー PowerPush - WEAVER

過去最長&原点回帰ツアーを総ざらい

5月17日の渋谷CLUB QUATTROをもって、全国31カ所33公演のライブハウスツアー「WEAVER Live House TOUR 2012『Piano Trio Philosophy~do YOU ride on No.66~』」を終了させたWEAVER。ツアーファイナル翌日に行われた今回のインタビューでは、メンバー3人が約2カ月間の濃厚な日々をじっくりと振り返ってくれた。「ツアー総括」「WEAVERが選ぶツアー5大ニュース」「自身初の試みとなるライブ音源『iTunes LIVE』の配信」という3つのテーマを軸に、ツアーを終えたばかりの彼らの思いを訊いた。

取材・文 / 川倉由起子

バンドの原点を再確認したツアー

──ライブハウスツアーの完走から一夜明けて、どんな気持ちですか?

インタビュー写真

杉本雄治(Vo, Piano) 正直、終わったという実感が全然ないんです。だから寂しいという感覚にもまだなれなくて。

奥野翔太(B) また次のライブがある気がして、なんだかソワソワしちゃいます(笑)。振り返ると長いツアーやったと思いますけど、途中で「まだこんなにあるんか」とか一切思わなかったし、終わってみるともっともっとやりたかったなって。

──そのくらい充実の日々だったということでしょうね。では早速、約2カ月のツアーを振り返っていきましょうか。初日は3月10日の宇都宮公演で。

奥野 出発のとき、確か雪が降ってましたね(笑)。

河邉徹(Dr) 3月なのに、真冬みたいな天気やったもんな。

──その模様はYouTube公式チャンネルで公開されているドキュメンタリー映像にも映っていましたね。あのときは、どんな気持ちで出発したんですか?

杉本 今回は“3人で鳴らす音楽”を意識して、前回のツアーが終わってから3カ月間ずっと準備をしてきたんです。そこで得た大きな自信はこれまでのツアーにはないものだったし、出発の際は、それを皆さんにやっと届けられるっていう興奮とうれしさが混じった気持ちでした。不安やプレッシャーもなくはなかったですが、めちゃくちゃワクワクしてましたね。

奥野 準備期間は3人だけでいろいろな機材や音を試したり、とにかく万全な準備ができたっていう手応えがあって。不安な気持ちは全くなく、それこそ旅行に出かけるような気分でした。今から楽しいことをしに全国を回るんやっていう。

──河邉さんはいかがでしたか?

河邉 僕は2人とは違って、結構不安がありました。今回のセットリストは今までライブで行ったことがある場所とそうでない場所で少し違ったものにしていたんです。前者はもっと成長したWEAVERを見せられるもの、後者は初めての人が聴きたいやろうなっていう曲も盛り込んだもの。だから、それぞれどんな空気になるんやろう?っていう感じはありました。あと今回は機材も全部自分たちでセッティングすることにしてたんで、そこもうまくいくかな?って考えてましたね。

──なるほど。で、その気持ちは終わってみてどうですか?

河邉 機材を搬入して組み立てて、音をチェックして、いろんなスタッフさんと相談したりして。そうやって1つひとつを自分たちの手でできたのは、すごく意味のあることやったなと思います。

杉本 そもそも今回3人だけのツアーをやったのは、バンドの原点を再確認したかったからなんですよね。自分たちで搬入、セッティング……っていうのは、いわばバンドの基本じゃないですか。インディーズのときは普通にそういうことをやってたし。デビューしてからはスタッフさんにやってもらえる部分も多かったんですけど、もう一度、改めてそれを自分たちでやることで得るものがあるんじゃないかと。

──そうだったんですね。でも3人だけとなると、物理的に困難なことも出てきたのではないでしょうか?

インタビュー写真

杉本 はい。だから、今までサポートの方の楽器がないとやれなかった曲……例えば「僕らの永遠~何度生まれ変わっても、手を繋ぎたいだけの愛だから~」なんかは、3人でできるアレンジに工夫したり。3人でもこういう音が鳴らせるんだっていうものを見せたかったんです。だから、前半のほうはライブが終わるたびに修正を重ねて。とにかく同じライブがひとつもない、どこの会場に来ても違った楽しみができるライブにしたいと思ってましたね。

河邉 33回全てを密にやっていく中で、1本1本のライブが終わったあとに「もっとこうできたな」っていうのがあって。それをメンバーで話し合ったりして、これだけ本数があったからこそ、毎回次につなげて、成長できたのかなと思います。

3人だけでどう聴かせるか意識した

──ところで、今回のライブハウスツアーの前はホールツアーをやってましたよね。数千人収容の会場から一気に数百人というキャパになったわけですが、そのギャップは感じませんでしたか?

インタビュー写真

河邉 一発目の宇都宮は結構戸惑いましたね。お客さんがすごくギュッとしてて、後ろもすごく近くて。こんな感じやったっけ?ってみたいな(笑)。でも、小さい規模の会場だからもっとできることがあるんじゃないかってことを、初日のあとにまず強く思いました。

奥野 ホールツアーを経験した自分たちだからこそ、ライブハウスでできることがもっとあるはずだって思ったんです。

杉本 今までは歌を一番前に出してみんなに届けたいって意識が強かったんですけど、近い距離でつながることで、そういう場所でしか見せられないパフォーマンス……CDだけではわからない、「ライブではこんなことをしてるのか!」って思ってもらえるようなものを見せていけたのかなと。さっきも言ったように今回はいろいろアレンジをして披露した曲もあって、お客さんにとってもライブハウスでないと感じられないものがたくさんあったと思います。

──アレンジの話が出ましたが、具体的には楽器や機材面でどういう工夫をしたんですか?

インタビュー写真

杉本 簡単に言うと、3人の楽器だけでどう聴かせるかっていうことですね。ドラムやったらタムやシンバルの種類をちょっと変えるだけで印象が違ったり、ギターがいない分、ベースでもっと表現できるんじゃないか?とか。奥野は足元にたくさんエフェクターを置いていろいろ試したし。僕も今まではストレートにピアノを鳴らしてたけど、もう1台キーボードを置いて、そこからMIDIで音を一緒に出すといったアイデアも採り入れてました。

──そういう経験を通して、今後に活かせそうなことは?

杉本  歌を丁寧に聴かせることも大切ですけど、僕らは音楽をやってる人に聴かせても文句なしにカッコいいと思ってもらえるバンドらしい音も鳴らしたくて。今回のツアーでそれを強く感じたので、今後の楽曲にも影響が出てくると思います。今まではわかりやすい、伝わりやすい部分を意識してやってきたけど、音楽ってそれだけじゃないと思うので。例えばスリル感とかヒリヒリした感じの音もライブでは大事だなってセッション中に思ったし、そういう要素も新たな音源に活かせたらいいなと思います。

ライブ音源「iTunes Live」/ iTunesStoreへ

配信曲
  1. トキドキセカイ(Live)
  2. つよがりバンビ(Live)
  3. ネバーランド(Live)
  4. ひとつの人生(Live)
  5. 管制塔(Live)
  6. 66番目の汽車に乗って(Live)

WEAVERの過去曲もiTunes Storeにて配信中!/ iTunesStoreへ

WEAVER(うぃーばー)

杉本雄治(Vo, Piano)、奥野翔太(B)、河邉徹(Dr)の3人からなる神戸出身のスリーピースピアノバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成に。メンバーの卓越した演奏テクニックと、ピアノの音色が印象的なメロディアスな楽曲を特徴とする。2009年10月に配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビューを果たし、デビュー翌日にはflumpoolの日本武道館公演でフロントアクトを務める。2010年2月にメジャー1stミニアルバム「Tapestry」を、同年8月に亀田誠治をサウンドプロデューサーに迎え、au LISMO CMソング「僕らの永遠~何度生まれ変わっても手を繋ぎたいだけの愛だから~」などを収録したアルバム「新世界創造記」をリリースする。その後もコンスタントにリリースとライブを重ね、2011年8月に杉本のピアノ独奏を含むアルバム「ジュビレーション」を発表する。2012年3月~5月にメンバー3人だけで全国各地を回るライブハウスツアー「WEAVER Live House TOUR 2012『Piano Trio Philosophy~do YOU ride on No.66~』」を敢行し成功に収めた。