ナタリー PowerPush - WEAVER
前向きエネルギー全開! 幸せを呼ぶ「笑顔の合図」
WEAVERの新作「笑顔の合図」は、これまでの彼らの楽曲の中で最も前向きで明るいナンバーだ。夢に向かって進む人の背中を押す歌詞と、2ビートの躍動感あるサウンドは、きっと全てのリスナーの心を晴れやかにし、自然と笑顔を呼ぶはずだ。
また今作のカップリングは、彼らが初めてピアノを導入したバンドの原点と言える「66番目の汽車に乗って」や、ハートフルな「泣きたいくらいに幸せになれるよ」など秀作揃い。12月21日に渋谷公会堂でファイナルを迎える全国ツアーの手応えも含めて、3人が抱く現在の思いに迫る。
取材・文 / 川倉由起子
夢を追いかけるときの気持ちは変わらない
──「笑顔の合図」はテレビ番組「Asian Ace」(TBS系)のエンディングテーマとして書き下ろした曲なんですよね。
杉本雄治(Vo, Piano) はい。最初に番組サイドから「夢」や「感動」といったキーワードをいただいて。そこから作り始めていきました。ひとりの人間が夢に向かって進んでいく過程というか、そういうイメージを音にできたらと思いましたね。
──印象的だったのは、やや抑えめのA~Bメロを抜けると、すごく明るく広がりのあるサビにつながるという展開で。
杉本 最終的に前向きな方向に持っていきたいと思っていたんですが、つらいこと、しんどい部分も描いた上で、それを乗り越えた先に広がる世界を表現したいなと思って。だから、サビはとことん突き抜けていくイメージを表現したかったし、今まで以上に強いサビにしようと意識しました。
──その前向きさや強さは、今までの作品と比べて違うもの?
杉本 テーマとしてはこれまでも伝えてきたものだったし、8月にリリースしたアルバム「ジュビレーション」も、近い距離で聴き手にメッセージを届けられた作品だったんですけど……。でも今回は、そこから先のWEAVERというか、みんなの一歩前に立って引っ張っていけるような強さを出したかったんです。
──河邉さんはそのメロディにどうやって歌詞をつけていったんですか?
河邉徹(Dr)正直言うと、最初は番組からのキーワードを元に考えてもあまり出てこなくて。で、メロディを何回も聴いていくうちに、夢を追いかけるときの気持ちっていうのは、きっと番組に出てる人たちも僕たちも変わらないんじゃないかってことに気付いたんです。だから、自分たちが今感じてることや今思ってることを書いたらいいのかなって。例えば1番のAメロに「誰かの憧れになるなんて 簡単じゃないこと わかっているよ」という歌詞がありますけど、自分たちも普段、誰かの憧れの存在になりたいと思ってがんばってるところがあって。でも、自分が一歩進んだと思っても実際はあまり進めてなかったりするし、そういう自分たちの等身大の姿も含めながら書いていこうと思いました。
──タイトルや歌詞にも多く登場する「笑顔」については?
河邉 悩んだり、もがいたりもするけど、前へ進んでいく力も自分たちの中にあって。そのひとつに「笑う」という力があるんじゃないかと思ったんです。例えば買い物に行って、店員さんがちょっと笑ってくれるだけでうれしい気持ちになったりするじゃないですか。事実、いつも笑顔の人は物事がうまく進んでたり、周りにたくさん人が集まっている気もしたので。あと、特にライブで感じることなんですが、お互いが笑顔でいられるだけでハッピーというか、笑顔の力ってすごいなって思うことがよくあって。この曲をライブでやるときは、会場に笑顔が広がって、そのすごさに改めて気付けるといいなと思います。
音楽を通じて自分を外に開いていけるように
──個人的には特に大サビが耳に残ったのですが、その中でも「心はまだ呼吸をしてる」っていう歌詞がいいですよね。
河邉 今まで嘘をついてきたわけじゃないですけど、曲を書き下ろしたり、いろいろ活動する中で、自分たちが一番伝えたいことって何だろう?と考えた時期があって。その大サビのフレーズの前に「借りてきた言葉じゃ夢じゃ 自分は騙せない」っていう歌詞があるんですが、やっぱり自分の意思は大事なんだなってことを、この曲を書いているタイミングで感じることがあったんです。
──そして今回は、効果的なブラスアレンジもあって、夢を追う人のキラキラした姿をイメージさせる仕上がりになってますね。アレンジは、皆さんと亀田誠治さんと一緒に?
杉本 そうですね。今回の曲は、今までも伝えてきたメッセージと同じでも、ちゃんと前に進んでるWEAVERを見せたいなという思いがあったので。そういったところから、サビの突き抜け感やブラスを入れるという新しい試みで、今までの編成では出せなかった感情を表現したいと思ったんです。
奥野翔太(B) 最初にこの曲のデモを聴いたとき、「杉本ってこんな曲も作るんや」って僕らも驚いたほど、今までにはない前向きな感じだったんです。だからこそブラスを入れても違和感がなかったというか、むしろプラスに働いたのかなって気がします。
──杉本さんの楽曲の変化は、何かきっかけがあってのことだったんですか?
奥野 今思うと、「ジュビレーション」からその片鱗は見えてたんですけどね。前より明るい曲を書くようになって、今回でそれが振り切れた感じですね。
杉本 元々僕は割と内にこもる人間なんですが、WEAVERの音楽を通じて、お客さんとつながることで、外に開いていけるようになったなっていう自覚があるんです。そんな中で、輝くものがいろいろと散りばめられたこの世界を、しっかり僕たちの音楽で開いてあげたい、みんなに見せてあげたい、っていう思いが強くなっていったんです。だから曲も自然と明るい方向に歩み寄っていったんだと思います。
CD収録曲
- 笑顔の合図
- 66番目の汽車に乗って
- 泣きたいくらい幸せになれるよ
- 笑顔の合図 杉本雄治独奏曲(Piano Instrumental Ver.)
- 笑顔の合図(Instrumental Ver.)
【初回プレス分特典】
「笑顔の合図」ピアノ独奏曲
杉本雄治手書き楽譜封入
WEAVER(うぃーばー)
杉本雄治(Vo, Piano)、奥野翔太(B)、河邉徹(Dr)の3人からなる神戸出身のスリーピースピアノバンド。2004年に高校の同級生同士で結成され、2007年に現在の編成となる。メンバーの卓越した演奏テクニックと、ピアノの音色が印象的なメロディアスな楽曲が魅力。2009年10月に配信限定シングル「白朝夢」でメジャーデビューを果たし、デビュー翌日にはflumpoolの日本武道館公演でフロントアクトを務める。2010年2月にメジャー1stミニアルバム「Tapestry」を、同年8月に亀田誠治をサウンドプロデューサーに迎え、au LISMO CMソング「僕らの永遠~何度生まれ変わっても手を繋ぎたいだけの愛だから~」などを収録したアルバム「新世界創造記」をリリースする。その後もコンスタントにリリースとライブを重ね、2011年8月に杉本のピアノ独奏を含むアルバム「ジュビレーション」を発表。同年12月にシングル「笑顔の合図」をリリース。