輪入道|高校の文化祭をジャックして「ラッパーになりてえ」と叫んだ少年は今

基準は「1曲しかないステージに華を添えてもらうときに誰がいいか」

──それではここからアルバム「HAPPY BIRTHDAY」の話をさせてください。2月発売の客演ベストアルバム「助太刀」に反響が集まっている中で、いいタイミングでアルバムがリリースされましたね。

いい形で届けられてよかったです。3rdアルバムに入ってる「ALIVE feat. GADORO」はもともと「助太刀」に収録される予定だったんですが、ぜひ自分のアルバムに入れたいと思って、トラックを作ってくれたDJ SOULJAHさんとGADOROくんに相談して了承してもらった曲なんです。その代わりに「助太刀」に目玉になる曲が欲しいってことになって、鬼くんと10年前に録った「チンピラ」という未発表曲を入れました。この曲はここ(取材場所であるウルトラ・ヴァイヴ)のスタジオで録ったので感慨深いですね。「チンピラ」は当時、赤落プロダクションから出す予定だった1stアルバムの収録曲で、ほぼ完成していたんですけど、いろいろあってお蔵入りになったんです。今回入らなかったら一生日の目を見ることはなかったと思うので、よかったなと。ほかにも「板橋(2018.9.8地域活性化)」は去年の秋、板橋の駅前地域を盛り上げようというストリートイベントのクラウドファンディングの特典用に作った曲だったんですけど、もっとたくさんの人にイベントのことを知ってもらいたくて、主催者の協力のもと入れさせてもらいました。なので、助太刀とか言ってますけど、むしろいろんな人に助けてもらってできたアルバムなんですよね。

輪入道

──「助太刀」にはGADOROさんの「真っ黒い太陽 feat. 輪入道」も収録されていますが、お互いの作品に客演した感想は?

GADOROくんとは、これからもいろんなものを作っていくことができれば僕はすごくうれしいです。今回の「ALIVE feat. GADORO」の「奇跡が起きることを願ってるその時点で奇跡なんて起きない」という言い回しもそうですけど、一緒に地方を回ったりしているとGADOROくんのリリックで癒される人ってものすごくたくさんいると思うんです。“やってやる!”じゃなく“こんなんでもいいんだ”って。でも、誇りを持てば明日もがんばれる。その活力につなげたかったですね。

──「HAPPY BIRTHDAY」は3rdアルバムにして初めて客演を迎えているんですよね。

1st、2ndとはまったく違う新しいことをやってみたかったんですよね。FRESH LIVEで「わにゅう道場」、bayfmで「暴走ぱんちらいん」という番組を毎週やらせていただいてるんですけど、番組だけでなく、そろそろ自分の曲にも人を呼んでみようかなと思って。

──今回はZeebraさんを筆頭に多彩なアーティストをフィーチャーしていますが、この人選については?

1st、2ndはアルバム全曲を通して聴いてもらうとよりわかるような統一感のある作り方をしていたんですけど、今回はこの13曲の1曲1曲がメインなんです。バラして聴いてもらっても大丈夫という。なので、1曲しかないステージに華を添えてもらうときに誰がいいかっていう基準で選びました。

──「UNDERGROUND ROOTS feat. Zeebra」は、輪入道さんのルーツであるアンダーグラウンドでの原体験が反映された作品です。

アンダーグラウンドは自分が最初に出てきた場所だし、これからも結局変わらない部分です。トラックを聴いたときにZeebraさんの顔が最初に浮かんだので、すぐに連絡しました。

──Zeebraさんの反応はいかがでした?

「人生相談だね」って言ってました。俺が先に書いたヴァースが苦悩してるみたいに見えたから、親から子に対するメッセージのつもりで書いたぜって。アンダーグラウンドでもオーバーグラウンドでも今までZeebraさんが支持されてなかったことはないし、レコーディングや撮影で一緒にいると「これがプロだ」「ラップで飯を食うってこういうことなんだ」ということをすごく感じますね。

初めての完全なフリースタイルの曲ができた

──輪入道さん主宰のGARAGE MUSIC JAPANレーベルより1stアルバム「悪戯」をリリースしたばかりのN0uTYさんを迎えた「RISK feat. N0uTY」には緊張感が漂っています。

これはもともと「GARAGE」というタイトルの、レーベルの社歌的な曲を作りたかったんです。でも、いざ作り始めたらお互い全然違う方向に行ってしまって(笑)。「リスクがない状態でずっと続けられる世界じゃないよね」という結論に達したので、このタイトルになりました。

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──「時代を超えて feat. 北斗」はウエノレイさんのギターにのせてラップするスタイルの曲です。シンガーとのコラボレーションは新鮮でした。

北斗は仙台に住んでる同い年のシンガーで、以前から一緒に曲を作ろうよと話してたんですよ。それでレイくんのスタジオに3人で入って軽く合わせたら、いきなり「これよくない?」って言えるものができたんです。そのとき俺はフリースタイルで乗せていたんですけど、レイくんがレコーダーで録ってくれたのを聴いて、リリックも一字一句このままでいこうってことになりました。1stアルバムもほぼフリースタイルで作ったんですけど、レコーディングのときに少し書き直したり手を加えているんです。でも「時代を超えて feat. 北斗」は一発録りしたものをそのまま文字起こしして歌った、初めての完全なフリースタイルの曲なので、自分の中ですごく新鮮ですね。

──ギターとのセッションというのも面白いですね。

これまでもライブなどではけっこうやっていたんですけど、それを形にしたことは1回もなかったんです。今回この2人が協力してくれて、初めて作ることができた感じですね。この曲はいろんなところでやってみたいんですよ。例えば、中央線沿いのライブハウスとか芝居小屋とか。全然ラップを知らない人がいるところでやっても絶対に「これはいい曲だね」って言ってもらえると思います。