「V系って知ってる?」開催に向けてD'ERLANGER、MUCC、DEZERT、アルルカン、キズの司令塔たちが大放談 (2/3)

ヴィジュアル系は文化

──このイベントタイトルじゃないですけど、今もシーンはしっかり存在しているのに、一部の人にとっては「V系って知ってる?」と過去のものとなってしまっている。そのいびつな構造は、時代を追うごとにどんどん強まっている印象があります。

ミヤ この「V系」っていうくくりはいいものなのかどうかわからないですけど、だからこそこの幅広い世代がつながれているという一面もあると思うんです。だって、kyoさんみたいな世代の方が今も現役バリバリでライブハウスに立って、俺達と対バンしているわけですから。

kyo 僕らの場合は1回解散したけど、そのあと誰も音楽を辞めていなかったから、戻ってきたときのエネルギーが大きかったと思うんです。それこそ再結成前よりもライブハウスの数は増えたし、YouTubeみたいな新しい媒体も増えた。音楽活動は続けていたけど状況がまるで違う中にD'ERLANGERとして再び入っていって、しかも再結成してからは自分達主導でやっているわけだし、そういった中でまだまだやりたいことがたくさんある。それがやりたくてもできない人たちもいるだろうから、この奇跡を大事にしてやっているだけなんだと思うんです。それに、ヴィジュアル系という言葉は僕達が解散する前にはなくて、そういう言葉が出始めた頃もどこか悪口というか、あまり気持ちのいいものではなくて。でも、時間が経つにつれて自らそういう言葉を付けることがおかしくなくなり、1つの文化になった。だから、今は「ヴィジュアル系でいいんですか?」と聞かれたら僕も「ヴィジュアル系でしょ?」と言えるし、変なこだわりもなくなった。ミヤくんが言うつながりというのは、そういう中でのなんとなくのカッコいいラインや匂いに共通するものがあるからなんでしょうね。

ミヤ そうだと思います。俺らの頃は、ヴィジュアル系って言われたら逆にラッキーと思っていたんですよ。ちょっとハブられているというか。

kyo ああ、なるほどね。

ミヤ その中でも浮いているという感覚があったので。

kyo たぶん、みんなは取材を受けるようになって「なんでお化粧しているんですか?」って質問を絶対にされたことがないと思うんです。俺らの頃はまずそこからでしたもん。

ミヤ 「カッコいいから」とか「好きだから」「したいから」という答えになっちゃいますよね。

kyo そう。自分にとって「ロックはこれ」と思ったからでしかない。きっとこのジャンルのルーツって、誰もやったことがないものをやりたいというところから始まっているはずで。特に僕らの頃は「イカ天」(※1989~90年にTBS系で放送された「平成名物TV 三宅裕司のいかすバンド天国」)もあったから、より抵抗を感じていたのかもしれない。ロック=反骨心みたいに、何かに抗っていたいという。きっとみんなその気持ちはあると思うし、単純にお茶の間に出たいだけでやっていたら、こんな格好はしていないだろうし。アルルカンとキズとは夏にイベントを一緒にやらせてもらったけど、モニタ越しに観ていてもすごいエネルギーが伝わってきて、そういうところに刺激されますよね。こういうルックスをしながらあんなエネルギーを放つことは、何かに対して抗っているし、自分達の作ったもので世の中に出ていきたいという思いなのかな、とおじさんは感じました(笑)。

全員 (笑)。

奈緒 僕は「何かに抗ってバンドをやっているのか?」とか普段考えたことなかったんですけど、よくよく考えると自分がカッコいいと思ったヴィジュアル系バンドに刺激されて、今こういう活動をしているわけで。自分がカッコいいと思ったものがどんどん世間から外れていっているのかもしれないけど、僕自身は「もっとカッコいいバンド、いっぱいいますけど?」という思いがずっとあるから、今も誇りを持ってやれているんだろうなと、今のお話の中で改めて気付かされました。だから、ヴィジュアル系であることに対して誰かに何を言われようが「別に自分がカッコいいと思うんだから、それでよくない?」くらいの、むしろ「こんなにカッコいいバンド、知らないんだ。へえ」と、そっち側の目線になってしまいますね。僕はこれが一番カッコいいと思ってやっていて、それを信じているから続けていますけど、たぶんそれはずっと変わらないと思います。

奈緒(アルルカン)

奈緒(アルルカン)

来夢 僕は中学生のときにライブハウスデビューしたんですけど、抗うというか自分をちゃんと見てもらえる場所がそこしかなかったんですね。学校では誰も僕に近付こうとしないけど、ライブハウスだけは僕を助けてくれて、その中でもVisual Rockというジャンルに一番助けてもらった。自分の今のモチベーションはhideさんだったりXだったり、もちろんMUCCさんもそうなんですけど、先輩達が僕らにくれたもの以上のものをちゃんと返すこと。それが感動をもらった者としての使命かなと思っています。

もっと夢見ようぜ!

Sacchan ジャンル観の話になると世代ごとに差がある中で、昔と今とでけっこうイメージが変わっているんだなということを、いろんな方からお話を聞かせていただくたびに感じていて。それこそ今は僕らよりもさらに下の世代もいるわけで、その中にはヴィジュアル系自体に「ほどよく食えるジャンル」みたいな感覚の子もいるんです。一発当ててすごく高い車に乗って、めっちゃいいところで暮らしてという感覚ではなくて、「音楽でごはんを食べていくんだったら、このぐらいのジャンルをやっておいたほうが食べれるよ」という公務員みたいに安定した生活のイメージ。

来夢 嫌な話だなあ(笑)。

Sacchan ビジネスモデルができあがっているジャンルだったりするので、そこを目指すという感覚の人たちも僕らの下にはいるんです。

kyo なるほどね。

Sacchan 現実的な数字を求めたいから、このジャンルをやる。音楽で食べたいから、学校の音楽の先生になる感覚でヴィジュアル系をやるという。

ミヤ 確かに、クラシックをやるより食えるかもしれないけど。バンドマンって会社員とは真逆の、不安定な仕事だったはずなのにね。

来夢 でも、そのビジネスモデルもコロナ禍で一度壊れて、生き残っていけるバンドも少なくなっている気がします。

来夢(キズ)

来夢(キズ)

kyo 食えるからと思ってやっていた子たちは離れちゃうだろうし。それを聞くとさ、まったくギラギラしていないじゃん。ギラギラしているのがこのジャンルだったのにね。

Sacchan 僕らの世代は際どいラインでごはんは食べられていて、「もっと夢見ようぜ!」という意志を抱えている。だから「V系って知ってる?」は「もっと夢見ようよ! 音楽ってもっと派手で楽しいものでしょ?」ということを具現化していくためのイベントだと思っています。