共感できる言葉を紡いでいきたい

──「ゼロサム・ゲーム」の作詞はVALSHEさんが単独で手がけていますね。

VALSHE　でも楽曲自体が1人用の曲ではなかったし、それに合わせて“2人の視点”で作っている時点で、テーマ性は定まっていたんですよね。“2人で見ている、2人で言ってる”ことを一番意識して歌詞を書いているし、作り方はソロのときとは根本的に違うので。

minato　特に掛け合いのパートは、2人で歌うことが前提ですからね。あと、社会風刺を比喩で表現するというのは、3曲全部に一貫していて。

──「ゼロサム・ゲーム」というタイトルもそうだし、歌詞の内容も現在の格差社会だったり、資本主義の行き詰まりみたいなことが下敷きになっていて。普段からこういう話をしてるんですか？

minato　普段からこんなに深い話はしないですね（笑）。

VALSHE　「あのアニメのどこで泣ける？」とか、そんな穏やかな話をしてます（笑）。

minato　ライトな話題が多いですね。ただ“自分たちのあり方”みたいなシリアスな話になったときは、「今はこういう状況だけど、その中で自分たちはどうしたらいいか？」という話もしますけどね。歌詞に関しては「共感できる言葉を紡いでいきたい」という気持ちもあります。

──「ゼロサム・ゲーム」の歌詞は、今の社会の中で生きてる人なら誰でも共感できることですからね。

VALSHE　そこは5年間一緒に作品を作ってきて、minatoとも通じてる部分だと思います。状況、環境、体験を含めて、聴いてくれる人にもどこかで当てはまるだろうし、わかりやすく「あなたはどっち？」って問いかけてる部分もあるんですよね。

minato　そうだね。

VALSHE　ミュージックビデオを先に観たとしたら、また捉え方も変わってくると思うんですよ。「ノン・ゼロサム・ゲーム」を含めて、対になって初めて完成するストーリーを楽しんでほしいなって。

作詞作曲の分担

──両A面シングルのもう1曲「ノン・ゼロサム・ゲーム」は作詞、作曲ともにVALSHEさんとminatoさんの共作。切なさ、美しさが共存するメロディアスなナンバーですね。

VALSHE　1曲目（「ゼロサム・ゲーム」）がminatoの作曲に決まった段階で、もう1曲は2人で共作することにしようと。最初に自分がサビになるメロディをいくつか作って、その中からminatoに選んでもらったんです。そのあとは周りのメロディを加えながらカタチにしていって。minatoがキーボードを弾いてる横でいろいろ話をしながら作ったんですけど、ああいう作り方も初めてでしたね。

minato　うん。「どういうイメージにする？」とか「こういうコードってあり？」みたいな話をしながら。

VALSHE　歌詞は“虫食い”みたいな感じだったんですよ。あれも珍しいやり方だったよね。

minato　そうだね。まずVALSHEが思い浮かんだフレーズを送ってきて、その間を僕が埋めていって、最後に2人で合わせて完成させるっていう。

VALSHE　minatoの作風も知ってるから、「ここはきっとminatoの言葉のほうがバランスがいいだろうな」というのも無意識のうちに考えていたんだと思いますね。

minato　「この曲では何を表現したいか」ということも共有できてましたからね。「ゼロサム・ゲーム」は怒り、「ノン・ゼロサム・ゲーム」は悲しみ、哀愁、儚さっていう。