ビッケブランカはツインボーカル？

──そこでまたピアノを弾くことになるんですね。

そうです。21歳の頃にピアノをちゃんと始めてもう5年。

──今となってはビッケさんの音楽を構成する大きな要素としてピアノがありますが、ビッケさんにとってピアノってどんな存在ですか？

ピアノねえ……ピアノは僕の音楽のいろんな部分を占めてます。関係で言ったら“ダチ”ですかね。恋人でもなくて、“友よ！”って感じでもなくて“ダチ”。僕1人じゃなくて“ダチ”と一緒に作ってるっていう感覚があります。

──ビッケさんの曲ってピアノも一緒に“歌って”ますよね。

僕もそう思うんですよ。僕のブレスの隙間でこの“ダチ”は歌ってくれます。言うならツインボーカルというか。

──手持ち無沙汰っていう理由でなんとなく“仲良く”なって、今やツインボーカル。引き合わされる運命だったのかもしれないですね。変化に変化を重ねて今みたいなスタイルを確立して、ビッケさんはこれからこの“ダチ”と一緒にどんなことをしていきたいですか？

僕はスタジアムでライブをやりたいとかそういうのは考えたことがなくって。さっき言ったように昔は有名になりたいと思ってたんですけど、どうせ作るなら伝わらないものを生み出しても意味ないし、人に伝わることが一番大事。そうじゃないとなんなら俺が生まれた意味さえないぐらいの考え方になってきたんですよ。僕は自分の作る曲たちが聴いた人の心に響くと信じているので、楽しみに待っててくれる人のもとにこのアルバムが届いて、その人たちの日常に組み込んでもらえたらなって思ってます。

──その先の未来はまだ想像してないと。でももっともっと広い場所に自分の音楽を届けたいという気持ちはありますか？

広まるなら広まるで、広まったときにまた考えようと思います。少しずつ聴いてくれる人が増えて、僕の音楽をいいなって思ってくれる人がいるなら、僕の曲が役に立ったなって思います。そういうことをずっと積み重ねていけたらすごく幸せですね。

「ツベルクリン」に込めた願い

──最後に野暮な質問かもしれないんですけど、この8曲を収録したアルバムになぜ「ツベルクリン」というタイトルを？

「ツベルクリン」って小さい頃にみんなやるじゃないですか。注射して、反応があるかないかのチェック。名付けた理由はみんなが経験してることで誰しもが聞いたことがあって、でもけっこうみんな忘れてて。そういう意味で昔の感覚を取り戻してほしい、この8曲を聴いてどこか懐かしいなって思ってほしいっていう気持ちがあります。

──なるほど。私も最初「『ツベルクリン』って聞いたことあるような……」と思って調べました。

聞いたことあるし、知ってる言葉だと思うんです。あと人によってそれぞれ反応の出方が違うんですよ、ツベルクリンって。だからいろんな曲が入ったこのアルバムでみんながそれぞれ違う曲に反応して、生活の中に取り入れてくれたらなっていう願いも込めてます。「ツベルクリン」を聴いた人からどんな反応が出るのか楽しみです。