音楽ナタリー PowerPush - ビッケブランカ

音楽だから伝えられる8つの物語

僕、1回死んでるんです

──ビッケさんは音楽への目覚めっていつ頃だったんですか?

あの、実は僕3歳のときに1回死んでるんですよ。

──え……? ちょっとそれ詳しく説明してもらえませんか?

ビッケブランカ

3歳のときに1回心臓が止まったんです。これ今で言うと完全に医療ミスなんですけど、風邪を引いたときに病院で大人用の解熱剤を処方されてそれを飲んだら体温が32℃くらいになっちゃったんです。すぐに病院で処置してもらったんですけど、一度心臓が止まっちゃったみたいで。そのあと蘇生させてもらってなんとか一命を取り留めたという(笑)。まあ今はピンピンしてるんですけど。

──そんなことが……。

で、その事件が起きるまではスポーツ好きのやんちゃな子供だったのに、1回心臓が止まってから音っていうものにすごく敏感になったらしいんですよ。スパゲッティ屋さんに行って親父が僕に「うまいか?」って聞くと「うまい。あ、この曲いいね」って言い出したり、ジェットコースターに乗ったりしても感想が「発車するときに流れてた音がよかった」。降りてからずっとそのメロディを歌ってたみたいで、キャッチーなものが頭から離れなくなっちゃってたんだろうなと思うんですけど。その心臓が止まるっていう事件があるまではそんなことは一切なかったらしくて。だから親父には「急にそこで聴覚がよくなったんじゃないか?」ってずっと言われてます。

──心臓が止まった拍子に、音楽の神が降りてきたと。

かもしれないです(笑)。それが僕の音楽の始まりだと思うんですよね。死んでなかったらスポーツ選手を目指してたかも。

ずっと1人で音楽を作ってました

──せっかくなので、その流れで生い立ちを聞かせてください。突然音楽に目覚めた幼少期を過ごしたビッケさんはその後もずっと音楽に関心を持ちながら成長していくんでしょうか?

小学生の頃はサッカー部に所属してました。ずっと音楽は好きだったので、妹につられて少しだけピアノを習ったりもしましたね。2カ月くらいで辞めちゃったんですけど。でも妹が部屋でピアノを弾いてると「ヘッタクソだな。ちげえよ!」ってそこからどかして自分で弾こうとするんです。だけど楽譜が読めないからもう作るしかないんですよね、作らないと弾くものがないんです。それで自然と曲を作るようになりました。で、最初に作ったのが歌もないピアノだけの曲で「壁」っていう曲。

──それはどんな曲なんですか?

確かそのときベルリンの壁のドキュメンタリーか何かをテレビで観たんです。その中で悲しいストーリーを知って作った曲で、右手はずっと同じフレーズで雪がちらつく寒そうな光景を奏でて、左手が悲しいメロディを弾いてました。

──その頃から情景を音に変換するっていうスキルが備わってたんですね。そのあともピアノの曲を作っていったんですか?

そうですね。いっぱい作ってました。でも歌詞もある曲を作ったのは中学校3年生です。その頃はコピーバンドでボーカルもやってみたりしたんですけど、やっぱり性に合わなくって。同時期に4トラックの機材を手に入れて、CASIOの電子ピアノを弾きながら初めて曲を作ったんです。その頃ちょっとグレてて母ちゃんとケンカしてお詫びにと思って母ちゃんの誕生日に「マザー」っていう歌を作ってプレゼントしたんです。母ちゃんに聴かせたら最初は「いいじゃん」みたいなこと言って普通に聴いてたのに最終的には泣いてしまって。自分で作った音楽で人が泣いたということに、運命的な何か……これが僕の使命なのかなって感じたんです。あ、ぜひ1番だけでもいいので聴いてください。(「マザー」を流す)……と、まあこんな感じの曲で、初めて伝えたいことを歌で伝えたんですよね。

──メロディのキャッチーさは今と通ずるものを感じますね。そのあともずっとその機材で曲作りを?

ビッケブランカ

高校に入ってから10トラックくらいのMTRを手に入れてそれで曲を作るようになって。なぜかこの頃Limp BizkitとかLostprophets、Linkin Parkみたいなロックバンドの曲も聴くようになって。それぞれの曲がどういう音からできてるのか研究しながらどんどん新しい曲を作りました。その流れでエレキギターも手にしたりもするんですけど、ずっと1人でしたね。

──その頃はどんな音楽を?

高校の頃作ってた音楽はロック寄りでした。

──そこから今みたいなポップス路線に戻ってくるタイミングっていつだったんですか?

大学進学で上京したときです。愛知県の犬山市っていうど田舎から漠然と「有名になりたい!」って思いを抱きながら上京してくるんですけど、あっちではギターを持ってるだけでマイノリティな存在だったのに東京ではみんなギターを持って歌ってて。全然目立てないんですよ。それでなんか違うなって思ってすぐにギターをやめて、ボーカル1本になるんですけど、それだとなんだか手持ち無沙汰で……。そのときにふとピアノを弾きながら歌うのはどうかなと思ったんですよね。

ミニアルバム「ツベルクリン」 / 2014年10月15日発売 / 2160円 / No Big Deal Records / NBDL-0024
ミニアルバム「ツベルクリン」
収録曲
  1. 追うBOY
  2. 秋の香り
  3. Bad Boy Love
  4. never ever
  5. ソロー*ソロー
  6. step in control
  7. Alright!
  8. girl

SoundCloudにて未発表曲を限定公開中!

ビッケブランカ「TUBERCULIN tour 2014」
2014年11月8日(土)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE
OPEN 17:00 / START 18:00
2014年11月28日(金)大阪府 knave
OPEN 18:30 / START 19:00
2014年11月29日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 17:00 / START 18:00
ビッケブランカ

ビッケブランカ

愛知県出身の男性シンガーソングライター。高校卒業と同時に上京しピアノを習得した後、本名の山池純矢としてソロ活動を開始する。2012年にビッケブランカに改名。その後はライブ活動を中心とし、美麗なファルセットボイスとピアノが紡ぎだすポップチューンを武器に各地のイベントなどに出場し話題を集めている。2014年7月に先行配信シングル「追うBOY」をリリース。同年10月に満を持して1stミニアルバム「ツベルクリン」を発売したのち、11月に東名阪にてワンマンライブツアー「TUBERCULIN tour 2014」を開催する。