Vaundy「ホムンクルス / Gift」特集|劇場版「僕のヒーローアカデミア」主題歌2曲を前後編インタビューで語り尽くす (4/4)

「未来の自分が評価されたい」という願望が出てきた

──「Gift」のサウンドについてはどうでしょうか? この曲のロックバラードな曲調はどういう発想から?

僕はイギリスの音楽が自然と好きだったみたいで。イギリスの歌詞の感覚とかは、日本人の感覚とすごく似ていると思うんです。人柄もそうだし、環境も似てる気がしていて。今回、強い曲でなきゃいけないというのと同時に、主人公たちに優しくエールを送りたいとう思いがあったので、イギリスのロックバラードがぴったりだなと思ったんです。「replica」のときからバラードの編曲を練習してたから、「ここだ!」というところで使いました。Vaundyとしての新しいロックバラードを出せたんじゃないかなという気がしています。これからまた進化していくと思うけど、僕の中での優しいバラードの、一旦の完成形です。

──「replica」はデヴィッド・ボウイからの影響を真正面から歌うような曲だったわけですが、サウンド的にはそれと近いところにあると感じました。

僕の中ではあそこで培ったものをしっかり自分のものにしていく作業がずっとあったので。「replica」の16曲目に「pained」という曲があるんです。CDだけにシークレットトラックとして入っていて。それが「replica」の後継の曲なんですよ。「pained」がまず第一の後継の曲で、その後のその遺伝子を受け継いだのが「Gift」という流れが実はあります。そういうブリティッシュロックバラードを自分なりに噛み砕いて、それを日本語でやるにはどうしたらいいかとか、いろいろ考えて作ったのが「Gift」かなという気がしますね。

「Vaundy one man live 2024 at Makuhari Messe」の様子。

「Vaundy one man live 2024 at Makuhari Messe」の様子。

──主題歌発表のコメントには「僕の音楽人生の目次になるものづくりになったと思っています」ともつづられていましたが、Vaundyというアーティストのキャリアの中では、この2曲はどういう位置付けになると思いますか?

どうなんだろう。僕が死んでみないとわからないですけどね。今はまだまだ僕のキャリアの中で最初のほうですし。でも、僕がいつか音楽人生を語るときに“「ヒロアカ」の曲”としてすぐに出てくるような曲にしたい、と思いながら作ったので、そういう意味でも音楽人生の目次になるようなものかなと捉えています。

──昨年リリースされた「replica」というアルバムは、いろんな意味でデビューからの集大成的な作品だったと思うんです。学生時代も含めてVaundyというアーティストがどういうところを目指していたかということの、1つの答えが形になった。で、その先でより大きなものを背負うようになった。信頼されて大事な作品を任されて、その期待に誠実に、かつ自分だけのやり方で打ち返すようになったタームの曲という感じがします。

そうですね。これからずっとそれをやっていかなきゃいけないのかなと思ってるんですけど。結局、アーティストという職業は最終的にはエゴの押し付けなので。でも、押し付ける責任というか、数字を持つ責任って絶対あると思うんですよ。他人に言われることではないんだけど、自分ではやっぱりそう思うんですよね。僕はアーティストとして生きる以上、一挙手一投足が死ぬときの目次になると思ってるので。それは最初から感じてたんですけど、改めて「replica」を経て僕の中で言語化された。もちろん衝動も必要だけど、衝動を超えた客観性も必要だから、その二面性を絶対に持ってなきゃいけないなと思って、最近は曲を作ってる気がします。まあ曲を作ってるときは頭に血が上った状態だから、そんなに考えてないかもしれないけど。やっぱりのちのち自分で聴いたときにそういう意味付けができるようなものを世の中に出していきたいな、と思ってますね。

──ずっと好きだった作品に携わり、映画の主題歌というオファーに応えた作品として、成し遂げたことの手応えもあるんじゃないかと思います。

「replica」までは僕はやっぱり自分のために作っていたし、もちろん今でもそうなんだけど、そこにもう1つ、「未来の自分が評価されたい」という願望が出てきました。子供たちが大人になった15年後、20年後に「あいつすごかったよな」と言ってもらえるようなモノ作りをしなきゃいけないなって。

──時間軸が長くなったわけですね。

そうですね。曲が持つ賞味期限って別にないし、僕も大切にこの曲たちを扱わなきゃいけないと思うようになった気がします。

「Vaundy one man live 2024 at Makuhari Messe」の様子。

「Vaundy one man live 2024 at Makuhari Messe」の様子。

僕が本気で歌ってるところを見せる場所

──ここからはあえて軽い話も聞かせてください。「ヒロアカ」の中で、特に好きなキャラクターは?

これはね、難しいんですよ。自分の性格とか癖に関わる話だったりするので。やっぱり主人公たちに目がいくし、ヒーロー側の人たちはみんな好きなんだけど、今回の映画の劇中だと、オープニングをずっと作ってたからか、オープニングの前に出てくる3人組がけっこう好きなんですよ。

──映画のストーリーには全然関係しない3人組ですよね?

そう。作中でボコボコにされる3人組。彼らは意外と好きです。

──原作だとどうでしょう?

原作だとトガちゃんが好きです。あとレディ・ナガンが大好き。ああいうお姉さんに萌えます。あとは、これもマニアックな話になるけど、アーマードオールマイトも大好き。それと士傑高校の夜嵐イナサのキャラデザインが好きです。いっぱいいるんですよ。「ヒロアカ」のキャラクターって、全員違うジャンルで1位なので。そこがマンガとかアニメのいいところですよね。好きになれるところが全員違っていて、ちゃんと選択肢がある。僕みたいにVaundyとして1人でやってると、自分しかいないから、推す部分も選択肢が限られてるんですよ。こういうコンテンツはうらやましいなと思います。

──ライブについても聞かせてください。11月にアリーナツアーが始まりますが、この先のライブのあり方についてはどんなふうに考えていますか?

僕としては、ライブについてはずっと同じ感覚です。僕が本気で歌っているところを見せる場所。それはずっと変わらないです。面白いギミックは毎回入れていこうと思ってるんですけど、最終的に帰着するテーマというのは、結局決まってるんですよね。だから、あんまり小細工の部分には力を入れすぎないようにはしてます。

──前にライブは戦いの場だということを言ってましたよね。自分自身も全身全霊でステージに立つし、お客さんもそれに向き合って1対1でぶつかり合う場所なんだっていう。それも変わらない根幹の部分という感じでしょうか。

そうですね。それもテーマです。Vaundyが一生懸命やってるコンテンツに対して、みんなが一生懸命応えてくれる場所みたいな。せっかく会うんだし、みんな一緒にそういうふうになってくれればいいなと思うし。お客さんとアーティストが直接対峙したうえで高め合えるような場になればいいなと思います。

「Vaundy one man live 2024 at Makuhari Messe」の様子。

「Vaundy one man live 2024 at Makuhari Messe」の様子。

ツアー情報

Vaundy one man live ARENA tour 2024-2025

  • 2024年11月9日(土)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2024年11月10日(日)神奈川県 横浜アリーナ
  • 2024年11月23日(土・祝)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2024年11月24日(日)北海道 真駒内セキスイハイムアイスアリーナ
  • 2024年11月30日(土)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
  • 2024年12月1日(日)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
  • 2024年12月7日(土)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
  • 2024年12月8日(日)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
  • 2024年12月14日(土)大阪府 大阪城ホール
  • 2024年12月15日(日)大阪府 大阪城ホール
  • 2025年1月11日(土)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館
  • 2025年1月12日(日)愛知県 ポートメッセなごや 第1展示館
  • 2025年1月18日(土)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2025年1月19日(日)埼玉県 さいたまスーパーアリーナ
  • 2025年2月14日(金)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
  • 2025年2月15日(土)兵庫県 神戸ワールド記念ホール
  • 2025年2月22日(土)徳島県 アスティ徳島
  • 2025年2月23日(日)徳島県 アスティ徳島
  • 2025年3月1日(土)福岡県 マリンメッセ福岡 A館
  • 2025年3月2日(日)福岡県 マリンメッセ福岡 A館

プロフィール

Vaundy(バウンディ)

作詞作曲、楽曲のアレンジ、アートワークデザイン、映像制作のセルフプロデュースなども自身で担当するマルチアーティスト。2019年6月にYouTubeに楽曲を投稿し始める。2019年11月に1stシングル「東京フラッシュ」を配信リリース。2020年5月に1stアルバム「strobo」を発表した。その後も「怪獣の花唄」「踊り子」「花占い」などヒット曲を連発。2022年の大晦日には「NHK紅白歌合戦」に初出場した。2023年11月に2ndアルバム「replica」をリリース。同月よりアリーナツアー「Vaundy one man live ARENA tour “replica ZERO”」を開催した。2024年2月に「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」の主題歌「タイムパラドックス」をリリース。8月に映画「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」のオープニング主題歌とエンディング主題歌を表題曲とした両A面シングル「ホムンクルス / Gift」を発表し、11月よりアリーナツアー「Vaundy one man live ARENA tour 2024-2025」を行う。現在までに計14曲がサブスクリプションサービスでの累計再生回数1億回を突破。日本ソロアーティスト1位の記録を打ち出し、令和の音楽シーンをけん引する存在として支持されている。

2024年8月13日更新