ユニコーン「クロスロード」特集|ソロインタビュー5本立て!マカロニえんぴつの質問にもお答え (4/5)

EBIインタビュー
EBI

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考えれば考えるほどわからなくなった

──EBIさんは今回、「過去曲のテイストに合わせて新曲を作る」という共通テーマのもと「米米夢」を作られました。もとになっているのは、2021年リリースのアルバム「ツイス島&シャウ島」の収録曲「米米米」ですよね。

そうなんですよ。

──まさかの直近作という(笑)。

ものすごく最近なんで、ちょっと企画意図にはそぐわない感じもあるんですけど(笑)。これはまあ、苦肉の策というか……そもそも僕は「何々みたいな曲の感じで」というふうに作るのがすごく苦手でして、どうしようかなあと悩んでいる時間が今回は多かったんですね。コンセプト自体はまあ面白そうだなとは思ったんですけど、いざやろうとすると意外に難しくて、最初は焦りました。

──ということは、当初は初期の曲を下敷きに作ろうと考えたわけですか?

昔の曲でできたらよかったんですけど、考えれば考えるほどよくわからなくなってしまって(笑)。

──いちファンとして、僕は個人的にEBIさんの曲だと「フーガ」がものすごく好きなんですね。例えばあの曲のセルフオマージュだったらうれしかったな、という気持ちもあったりしたんですが……。

いやあ、もうねえ……苦手なんですよね(笑)。民生が言うには、「ネイビーオレンジ」を作るときに使うコードやキー、テンポなんかを全部「Maybe Blue」と同じにしたということなんですけど、それを聞いて「そうか、そういうアプローチがあるんだ!」と驚いたくらいで。確かに、そういうやり方を試してみるのも1つの手だったなと。そういう発想力が僕にはないんでしょうね。

──今からでもぜひそのやり方で作ってみてほしいです。

じゃあちょっと今後の課題というか、宿題として考えておきますよ。確かにそういう作り方にチャレンジしてみるのも面白いかもしれない。

──それを、例えば次のアルバムに入れていただくとか。EBIさんが1人だけ前作のコンセプトを引き継いでいるというのも面白そうですし(笑)。

はははは。「今やるのかよ!」「遅!」っていうね(笑)。

「このボーカルはよくしゃべるなあ」と思っていただければ

──じゃあ下敷きになる過去曲選びは難航したものの、「米米米」をもとにすると決めて以降はすんなりできた感じですか?

そうですね。というか、よくわからなくなっちゃったときに自然と出てきたものが「米米米」的なものだった、という感じです。

──ただ結果そうなったとはいえ、過去曲と向き合うことでソングライターとしてのご自分を客観視する機会にもなったんじゃないでしょうか。

そうですね。僕は作家の先生でもないし、人に曲を作りたいとも思わないし、なんなら何も作らなくてもいいんですけど(笑)。そのくらいの感じなんですよ。それは改めて自覚しましたね。

──なるほど。そんな中、「米米夢」はどういう意識で作っていったんでしょうか。

これはもうやっぱり、「米米米」にとにかく寄せていくっていう。「米」の読み方をもう1個増やすということですね(笑)。半分遊びながらというか楽しみながら、難しく考えることなくできました。前回は「米」が3つで「マイ・ベイ・ベー」でしたけど、今回は「米米」で「マイ・アメリカン」っていう。

──「米」を「アメリカン」と読ませるのは、なかなかの大技ですよね。

大技(笑)。まあこじつけなんですけどね。字面だけだとわかりにくいんで、曲の冒頭で「米米夢(まいべいゆめ)と書いて、マイ・アメリカン・ドリーム」とわざわざ言っていますし。「このボーカルはよくしゃべるなあ」と思っていただければ(笑)。曲間ずっとしゃべってますからね。

──歌詞としては、すごく無邪気な目線で書かれている印象です。アメリカに対する子供のような憧れの気持ちがそのまま歌われているというか。

そうですね。僕の幼少期からのアメリカのイメージとか、自分にとってのヒーローだったりとか、そういうのを歌っています。アメリカの好きなところを素直に並べているような感じで。

──もう1曲の「バイカーズパラダイス」も、基本的には同じ方向性ですよね。どちらもシンプルなロックンロールで……。

まさしくそうです。いやホント、今回バイクの歌を書けたのがすごくうれしくて(笑)。

──ただただ好きなものの好きなところをロックンロールに乗せて歌いたいという、今はそういうモードなんですか?

うん、それしかないですね。

ここまで来たら自然体でやっていきたい

──その「米米夢」は、アルバムではEBIさんの生声でレコーディングされていますが、先行リリースされたEP「ええ愛のメモリ」では過去のEBIさんの声から生成されたAIボーカルが歌っています。ある意味では「今のEBIさんの曲を昔のEBIさんが歌う」という構図になっていますよね。

そういうことになりますね。

──「昔のような曲を今作る」というコンセプトからは少し外れるかもしれないですけど、これはこれで別の意味合いが生まれているというか。

ああ、なるほど。そうかもしれない。

──まあ、そうは言ってもEBIさんの場合、AIボーカルと新録ボーカルを聴き比べても正直そこまで違和感がなかったんですけど。

違和感がないというのはあれですよね、声があんまり変わっていないという。

──そうですそうです。

ですよね、差があんまりない。本当はもうちょっと変わったほうが企画意図としてはいいんでしょうけど……でもまあ、しょうがないですよね。AIがそう判断したということなので。

──実際、昔の音源を今聴いてもEBIさんの歌声にはあまり変化がないように感じます。いわゆるクリスタルボイス系なので、むしろ変化がわかりやすいタイプの声質なのかなという印象もあるんですが、歌声を維持するために気を付けていることは何かあったりするんでしょうか。

特に何もないんですけどね。たぶん、普段あまり歌わないし、声自体もそんなに出してないかもしれない。

──なるほど、声帯をあまり酷使していないから変わらずにいられるという。

ボーカリストの人だったら声の劣化というのもあるだろうと思いますし、歌い方や声の出し方なんかも時期によって変わるでしょうしね。それで言うと、僕は歌い方もたぶん変わってないんですよ。それも別に意識的に変えてないということではなくて、あまり突き詰めてやってないだけというか(笑)。なんて言ったらいいんですかね、そのままやっている感じ。

──あくまで自然体というか。

そうそう、あんまり考えてやってないんで。ここまで来たら自然体でやっていきたいですしね。無理することなく。

──ほかの方のAIボーカルについては、何か感じたことはありますか?

まあやっぱり民生の声が一番差がわかりやすいなと僕は思いました。彼はずっと歌ってきてますから、自ずと差は出てくるんでしょうね。そういう意味で、民生の曲が一番趣旨に沿ったものになっているんじゃないかなと。

──AIボーカルの完成度についてはいかがですか? 個人的には、人間の歌い手に取って代わるほどではないにしても、思った以上に人間の歌声に近いものができるんだなと驚いたんですが。

あ、そうですか。まあ確かに民生のやつとかを聴くと「ちゃんと昔の声になってるな」という驚きはありましたし、楽しい企画ではあったんじゃないかな。でも例えば、川西さんの歌をAIで再現したときに「ちょっとうますぎる」みたいな話になって、わざわざピッチが甘くなるように調整を加えたりもしてたんですよ。そういう意味ではAIも進化の余地はまだまだあるのかなと思いましたけどね。

暗い曲を書くのはやめた

──近年のユニコーンはそんなふうに、1つのお題に対してみんながそれぞれの解釈をして曲を持ち寄るやり方が多いですよね。

お題があるほうが作りやすいんですよ。基本はね。ただ今回のお題は、僕にとってはちょっと壮大すぎたというか(笑)。今までは「数字を使う」とか「アルファベットで」「ロックンロールで」とかその程度だったんですけど、今回はちょっと壮大な企画のもとで行われたので、僕は苦戦した感じです。もう1個のテーマである「明るい」にしても、これまた大きいじゃないですか。世の中に明るい曲なんていくらでもあるんで、どうすればいいのか悩んだんですけど……まあそっちのほうはなんとか、気付いたらできていて。

──それはもしかして、EBIさんご自身が明るく暮らせているから?

というより、そもそも最近はあんまり暗い曲を書きたくないというのはあるかな。昔は暗い曲を書くことがすごく多かったんですけど、アルバムを出したらツアーが始まるじゃないですか。そのライブを、あんまり楽しめていない自分にふと気付いたんですよ。それでもっと楽しい曲を作ってライブパフォーマンスも楽しめたほうがいいなと思って、暗い曲を書くのはやめたんです。

──そうなると、今回のテーマが「暗い曲」じゃなくてよかったですね。

みんなが暗い曲を書いてきたらちょっとね(笑)。ツアーも暗くなりそう。

──確かに(笑)。

やっぱり、僕にとって音楽活動における一番の楽しみはライブなんですよ。人がライブをする姿を見て「自分もやってみたい」と思ったのが自分の音楽の始まりだし、高校生のときからとにかくライブをすることが大好きで。

──音楽をやる理由がそこにあるわけですね。

そう。やっぱりステージに上がる喜びというものが自分の初期衝動としてあって、それが今もずっと続いている感じですね。

──それがすごいなと思うんですよね。ユニコーンというバンドはキャリアのわりにリリース数も多いですし、稼働も多いじゃないですか。

あ、そうですかね? でもデビューからの6年間はもうずっと忙しかったんで、それに比べたら今はものすごくラクですけどね。かなりゆったりやらせてもらってるなあという印象ですよ。

──皆さんそうおっしゃるんですよね。でもアルバムもほぼ2年に1枚ペースでコンスタントにリリースされますし……もちろんうれしいことではあるんですけど、もっとサボっても誰も文句言わないのになあとも思ったりして。

無理にやっているつもりも全然ないんでね。でも例えばアルバムが3年に1枚とかってなると、相当やってないような気持ちになるかもしれない。自分的には。

──なるほど。でもEBIさんの場合は一番やりたいことがライブということなので、なんなら「アルバムなんて作らないでライブだけやっていたい」と言い出しても不思議はなさそうにも思いますが。

なるほど(笑)。うーん、でもそういう話でもないかもしれないですね。新しい曲を作らずにライブだけやっていたら、それはそれでどこかに歪みが生じてしまいそうな気もするというか、何かが破綻してしまいそうというか。今は本当に自分たちの好きなように、ゆっくり無理せず楽しくやれているんで、この状態が続く限りはいつまででもやっていたい気持ちでいますよ。

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ユニコーンチルドレン・マカロニえんぴつから預かった質問を直接本人にぶつけてみるの巻

EBI編

はっとり(Vo, G)からの質問

EBIさんの声だけ、AIと今の声がほとんど変わらない気がしました。すごいです! 「スライム プリーズ」(1990年リリース4thアルバム「ケダモノの嵐」収録)のダミ声が好きなのでぜひ生で聴きたいのですが、あの歌は今後ライブでやる予定はないですか?

ははは、「スライム プリーズ」ね。あれを歌うことは、もう絶対にないと思います(笑)。あれは声の出し方をちょっと作ってますからね。なんというか……もう恥ずかしい(笑)。彼はあの声が好きだと言ってくれているわけですか? そうですか、あの声がねえ……まあ、「ああいう声も出るんだよ」ってことでいいんじゃないですか?(笑) それこそ、AIにあの声を学習させてほかの曲を歌わせてみたりするのも面白いかもしれないですけどね。僕が新しく「スライム プリーズ」みたいな曲を作ることは、たぶんもうないと思うんで(笑)。

高野賢也(B)からの質問

ベースの音作りで大切にしていることはなんですか?

音はね、作ろうと思わないほうがいいです。それよりも楽器にこだわるほうが大事。楽器本体がもともと持っている、成り立ちの音っていうんですかね。それを吟味していくほうが……まあ自分の場合はですけど、そのほうが好きかな。それはベース本体もそうだし、ベースアンプも同じように楽器としてこだわりますね。そのアンプの音っていうのがありますから。もちろんこだわりは人それぞれでいいんですけど、僕の音作りでのこだわりということで言うなら「あまり音を作ろうとしない」ということになります。だから新しい楽器はまず使わないですね。ビンテージしか使わない。音が気に入りさえすれば別に新しい楽器でもいいんですけど、試してみて気に入ることはまずないですね。

田辺由明(G)からの質問

EBIさんの手がける楽曲の世界観がとても好きなのですが、曲作りやメインボーカルを取ることにおいて大事にされていることはありますでしょうか?

これも音作りと同じで、「こういう曲を作ろう」と思わないところが面白いのかなと思ってますね。出たとこ勝負で、「こんなフレーズを思いついたからそれを広げてみよう」とかね、それくらいのことしかやってないんですよ。出てきたものはしょうがないというか(笑)。だから僕は、ある意味では曲作りがヘタなんじゃないでしょうか。頼まれても絶対に書けないと思うし、作家の先生のようにはいかない。実際に以前「EBIさんのあの曲のようなものを」という依頼をいただいたこともあるんですけど、「勘弁してください」と言うしかないんですよね(笑)。メインボーカルについても同じように、さほどこだわりはないというか。もともと歌をやりたくて音楽を始めたわけじゃないんで、あまり歌うことに対して欲がないんですよ。まあ最近は……それこそ「米米米」くらいから、ようやく歌うことの楽しみ方がちょっとわかってきた感じもあるんですけど。ライブで歌うのは楽しいですね、最近は。

長谷川大喜(Key)からの質問

ライブのときに前に出てパフォーマンスをする姿にテンションが上がり興奮しながら拝見しているのですが、見ているお客さんを奮い立たせるために心がけていることとパワフルなライブをするためにやっていることなどあれば伺いたいです。

盛り上げようとは思ってないですよ。逆かもしれないですね。お客さんに乗せられて奮い立たされている感覚のほうが強い。お客さんの勢いにこちらも被せることで、それに対して向こうもまた被せて……という相乗効果でどんどん会場全体のテンションが上がっていくイメージです。あと質問には「パワフルなライブをするために」とありますけど、別にパワフルではないと思いますよ(笑)。まず自分が楽しむことを第一に、無理のないようにやっているだけなんで……まあ、健康にはほんのちょっとだけ気を使ってるかな。といっても筋トレとかをやっているわけではなくて、「ちょっと歩かなきゃなあ」とかって日々思っているという程度のことですけど(笑)。あとは僕バイクに乗るんで、そこで心と体の健康を保てているところはあるんじゃないかな。気持ちがいいですからね。

2023年11月29日更新