ユニコーン「クロスロード」特集|ソロインタビュー5本立て!マカロニえんぴつの質問にもお答え (3/5)

手島いさむインタビュー
手島いさむ

手島いさむ

俺といえば「デーゲーム」なんだろ?

──「ええ愛のメモリ」に収録されているAI曲では唯一、手島さんの「オラ後半戦いくだ」だけが曲名から元ネタを類推できないものになっているんですよね。

吉幾三さんかと思いました?

──タイトルだけで言えば(笑)。

それはね、興味を持ってもらうための狙いです。もともとは「後半戦」ってタイトルで作ってたんですよ。ただ、漢字3文字で字面も重いし、しかも「後」って字が入ってるでしょ? ちょっと後ろ向きなイメージもあるじゃないですか。そのへん、特にEBIさんが気にされるんで「そのタイトルどうなん?」って話になったんですよね。

──確かに、終わりに向かう言葉ではありますからね。

うん。だけど僕としてはそういうつもりじゃなくて、例えば野球でいうところの6イニング目あたりのイメージだったんですよ。「今からがんばるとこ!」っていう(笑)。「こっからがんばりどころよ!」みたいな意味の「後半戦」なんですけど。

──それをわかりやすくするために、底抜けに明るいイメージになるよう言葉を足したわけですね。

最終的にこのタイトルになって、民生がゲラッゲラ笑って喜んでましたね(笑)。マネージャーは「え、それでいいんですか? 本当に?」って最初は信じてなかったけど。

──なるほど(笑)。で、これは元ネタとしては「デーゲーム」(1989年リリース2ndシングル表題曲)だと思っていいんですよね?

そうですね。休みの日にちょろちょろっと30分くらいで書いたんです。なんか今ね、曲を書くのにちょっと盛り上がってる感があって。「こういう曲」ってお題が出ると、パパッと書けちゃうんですよ。しかも、わりと出来のいいものができる。

──ゾーンに入っているみたいな。

そうです。それで、「ノスタルジックな、あの頃みたいな曲を」と言われたんで「俺といえば『デーゲーム』なんだろ?」みたいなことで。

──あははは。

まあ「自転車泥棒」という説もあるし、「オールウェイズ」という説もあるんだけど……その2つは俺の中では同じ路線ですけどね。で、まずは「デーゲーム」のサイケな路線をベースにしたんですが、そこに「自転車泥棒」や「オールウェイズ」のようなさわやかさも若干混ぜたかったんですよ。だからあえて素直なコードと、ちょっとひねくれたコードを混在させることで、ねじれたポップスにしました。

──いわば“テッシー曲いいとこ取り”になっているわけですね。

そういう形にしなきゃなと思って。偉いもんで、民生はその意図をわかってくれました。さすが同じギター弾き(笑)。ギターで作らないとなかなか出てこないようなコードを随所に使ってるんですよ。

──だからなのか、けっこうビートルズ色も強めですよね。

シタールっぽいギターが入ってたりするしね。それも僕ではなくあえて民生に弾いてもらって、僕はひたすらカジノをかき鳴らしているという。ちょっとジョージ・ハリスン的なポジションに行かせてもらいました。

ポジティブな言葉で憂いを感じさせる

──先ほど「ソングライターとしてゾーンに入っている」というようなお話も出ましたけど、もう1曲の「オカゲサマ」を聴いてもそれはすごく感じます。こねくり回した結果の産物ではなく、無理なく作られている感じがすると言いますか。

ええ、ええ。だからホント、曲に関してはなんとでもなるんだけど、僕の中では問題は歌詞だったりするんですよ。歌詞のテーマがどうなるかで歌い方が変わってくるというのもあるし。

──その歌詞ですけども、2曲とも共通して老後というものに対する希望に満ちた歌だなと感じました。

うん、まあ「オカゲサマ」に関しては完全に達観した大人の視点というかね。なんだけど、それに対して「後半戦」のほうでは実はちょっとした仕掛けを施してるんですよ。「ポジティブな言葉しか使ってないんだけど、なぜか憂いがある」という世界観をですね、ちょっと目指してみました。

──おお、なるほど……!

そういう手法があるんですよ。わかりやすく言っちゃえば、ユニコーンの旧譜に「家」という曲(1991年リリース7thアルバム「ヒゲとボイン」収録)がありまして、僕はすごくお気に入りなんですけど……。

──僕も大好きな1曲です。民生さんが書かれたものですよね。

ええ。「僕らの家が新しくなる」と繰り返し歌われるんだけど、なぜか若干悲しいという。あの世界観が非常に好きなので、若干パクらせていただいて(笑)。

──まあ、パクるといっても同じバンドですし(笑)。

ははは。まあそういう手法がパターンの1つとしてあるので、今回はそれを使ってみたということですね。

──確かにそう言われてみると、例えば「うまくいく事なんて 誰にも見えない」という一節なんかは「先のことなんか気にしたってしょうがない」的なポジティブな意味に捉えていましたけど、ネガティブにも読めますもんね。メロ感とも相まってメランコリックに響くというか。

そうなんですよ。ポジティブさとネガティブさが混在してるんです。やっぱりその、年を取ったらだいたいのことはわかるようになるイメージがありますよね? でも、「年取ったってわかんねえもんはわかんねえんだよ」ということが実際あるんですよ(笑)。そういうものを表現したかったんですよね。

──なるほど。僕は個人的にこの2曲を聴いて「手島さんは今、年を取ることが楽しみで仕方ないんだろうな」と勝手に思っていたんですけど……。

いや、やっぱり60歳になった途端にね、なんか老いを感じましたね(笑)。けっこう皆さん「60になっても何も変わらないよ」って言うじゃないですか。もちろん急には変わらないけど、60を迎えてから「あれ?」と思うことが確実に増えました。膝に違和感が生じたりとかね(笑)。やっぱ60なんだなあと、老いとは避けては通れないものなのだなあと日々感じてます。

ライブのために曲を作っている

──今作もそうですけど、近年のユニコーンはアルバムごとに共通のお題を設定して曲を持ち寄るスタイルが定番化していますよね。

いつの頃からか「お題があったほうが書きやすいだろう」ということになってね。まあ民生が言い始めたんですけど、「そらそうだ」ということになり(笑)、今回で言えば「とにかく明るいのを作ろうよ」となったわけです。やっぱり世の中が沈みがちですから、せめて僕らの音楽を聴いてくれるファンの方々だけでもちょっと明るい気分になってもらいたいという、そういう切なる願いの表れですよ。真面目に言ってしまえば。

──お題が共通していると、「ほかのみんなはどんなものを出してくるんだろう」という楽しみもありますよね。

まあ、そうですね。つってもだいぶ長いことやってますから、だいたいお互いのことはわかってるんで(笑)。逆に「俺はこうすりゃいいんでしょ?」的なところもあったりするしね。

──なるほど(笑)。

それに今回に関して言えば、コンセプトが3つくらい混在してるんですよ。ノスタルジックで明るい曲を書き、AIに歌わせるのもあって、そこに若干映画のタイアップの話も絡んできたりしていて……コンセプトがいくつも入り乱れてるんで、「それはアルバムのコンセプトと言えるのか?」という(笑)。

──ただ、アルバムにコンセプトを設定するのはあくまでメンバーの皆さん自身が楽しんで作るためのきっかけにすぎないんじゃないかと思うので……。

うん、まあそれはそうですよ。まさにその通りです。

──だからそこが多少矛盾していても特に問題ないんじゃないでしょうか。結果いい曲さえできればいいというか。

願わくば「一筋縄ではいかない」とかね、そういうふうに前向きに捉えていただけるとありがたいです。ご容赦をいただければ。

──(笑)。個人的には全然そんなことは気にならないですけどね。特に「オラ後半戦いくだ」に関して言えば、先ほどのお話で少し見方が変わったとはいえ、未来への希望しか感じない曲だという印象はまったく変わらないですし。

ああ、そう思っていただけるのはありがたいです。僕が目指すところはそこなので。暗くなるような歌とか失恋の歌とかもいいでしょうけど、そんなんさんざんやってきたやん!っていうね。依頼される仕事としてはもちろんそういった曲を書くこともありますけど、少なくともユニコーンや電大で作るものに関してはね、完全にライブを想定しているので。ライブのために曲を作るんだったら、やっぱり楽しいもののほうがいいじゃないですか。

5人いるときは最強だから

──再始動以降のユニコーンがほぼ2年に1枚ペースでアルバムを出し続けているのも、相当すごいことだなと個人的には思っているんです。

そうなんですかね? それは洋楽の聴きすぎじゃないですか?

──確かに向こうの人たちは普通に5年とか空きますが(笑)。

「7年ぶり新作!」とかもありますからね。日本の音楽業界では、年に1回アルバムを出すというのがずっと当たり前だったじゃないですか。そのしんどさを僕らは若い頃に経験しているので、そのスパンをもう少し空けていこうっちゅうことではあるんですよね。ただ、このコロナ禍ですべての歯車が狂いましたから。1回リセットして歯車を噛み合わせ直すという意味では、まだこれからかなと思いますけど。

──世の中的には、だいぶ戻ってきている感じはありますよね。

徐々にね。コロナの中でいろんな人がもがき苦しんできたことで、動画配信の文化が急速に発達したりもしながらね。もちろん僕もユニコーン以外のところではいろいろ、例えばリモートで曲を作る試みとかもやりましたし。ユニコーンに関しては、まあレコーディングは別にできる話なんでいいんですけど、ツアーも制限はありつつ徐々に元通りの感じでやれるようになってきましたから。この12月から始まるツアーに向けて、今は期待しかないですね。こっからだなと。

──お話を伺っているとつくづく思いますけど、今のユニコーンは本当に状態がよさそうですよね。とにかく楽しそうというか。

レコーディングは楽しいですよ、とっても。なんかね、5人集まると楽しいのよ。これがバラバラになると「どうなるんだろうなあ」という考えのほうが大きくなっちゃうんで、寂しいです。

──寂しいですか(笑)。

5人いるときは最強だから。だって、誰が前に出てもいいんだもん。それで成立するバンドなんて、ほかにないでしょ?

──それは本当におっしゃる通りですね。全員が前に出るバンドは普通、破綻するので(笑)。

だから僕はなるべく前に出ないようにしてるんです。俺が前に出たら売れないから(笑)。そのほうが自分もラクだし、人にはそれぞれその人なりの適正ポジションというものがあると思うんですよ。民生のようなポジションを担える人間というのは限られると思うんで、僕は僕で別のところで才能を発揮しますから。今後ともユニコーンと奥田民生をよろしくお願いします……あ、電大もよろしくお願いします!

手島いさむ

手島いさむ

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ユニコーンチルドレン・マカロニえんぴつから預かった質問を直接本人にぶつけてみるの巻

手島いさむ編

はっとり(Vo, G)からの質問

テッシーが挙げる「3大ギタリスト」を教えてください!(やはりリッチー・ブラックモアやエディ・ヴァン・ヘイレンが入りますか?)

えーと……今の僕が選ぶなら、まずはゲイリー・ムーア。彼の弾くギターにはすごいパワーもあるし、すごい繊細さもあって、その全部がいいというね。音に人間そのものが詰まってるっちゅうか。あとはやっぱり、エディは外せないでしょう。この人はもうトーンね。もちろんフレーズもすごいんだけど、「何これ?」っていうトーンを奏でる人。それに加えて、天性のリズム感がもう常軌を逸してますよね。で、もう1人は……純粋なギタリストとは言えないかもしれないけどフランク・ザッパ。音楽を知り尽くしていて、常に攻める姿勢ね。トーンもフレージングも異常なほどに個性的で、あれはちょっとマネできない。僕はギタリストとしてすごいなと思います。全員亡くなっちゃってるけど、今でも追っかけてる3人です。で、次点がスティーヴ・ヴァイかな。

高野賢也(B)からの質問

レコーディングでフレーズを考えるときに大切にしていることはなんですか?

デモテープの雰囲気に近くなるように、ということだけですね。どの現場でもほぼほぼ同じで、コード進行を考慮しつつ歌メロに即したものを弾こうと。ちなみにギターソロに関しては、ユニコーンにおいて決めてきたフレーズを弾いたものは2曲しかございません。「Maybe Blue」と「I'M A LOSER」だけ。あとはもう、全部その場のアドリブでございやす。基本姿勢としては、ユニコーンのときは飛び道具らしく振る舞うことを意識してますね。ベーシックの雰囲気を作るのは民生のギターの役目で、僕は飛び道具なんで。「WAO!」や「OAW!」のサビのタッピングなんかはその最たるもので、まさに飛び道具じゃないですか。ユニコーン以外の場であんなことやったら普通は「うるさいよ」って言われますよ(笑)。

田辺由明(G)からの質問

80年代、数多くの凄腕ギタリストがいたと思いますが、手島さんがその中で独自のスタイルを獲得するために意識したことはありますでしょうか? また、それは今も変わらないでしょうか?

当時の日本の音楽シーンのことだけで言うと、なんにも意識してなかったね(笑)。あの頃はバンドブームで、横並びにたくさんのバンドがいましたけど、基本的に僕はそこに興味がなかったので。だから周りと比較して「自分は違うことをやってやろう」なんてことは一切考えてなくて、我が道をずっと突き進んできた。具体的には、リッチー・ブラックモアやゲイリー・ムーア、ブラッド・ギルス、マイケル・シェンカー……そういう人たちをコピーしていくことで、自分のプレイに彼らのエキスが混ざってくるわけですよ。ただ、そこで僕の場合は完全コピーにはならないという性質があって、完コピしたつもりでも全然違うものになってしまう(笑)。それが個性ということなのかなと思ってますね。

長谷川大喜(Key)からの質問

僕もパーマヘアーなのですが帽子が似合わず悩んでいます。何かカッコよく被る秘訣を教えてほしいです。

あのね、大事なのは頭の形です。自分の頭の形に合うブランドやメーカーを見つけることですよ。僕の場合はYOSHINORI KOTAKEというブランドのベースボールキャップを10年くらい愛用しているんですけど、これと同じ形のものってほかでは売ってないんです。俺はたまたまそういうブランドが見つかったからよかったけど、逆に言うと50歳くらいまで見つからなかったってことだから、どんだけ時間がかかっとんのかって話ですよ。あとね、パーマの人が気を付けたほうがいいのは、風呂上がりですぐに帽子をかぶると大変なことになるということです。襟足だけがふわっとして、浪速のモーツァルトみたいになるので注意してください。

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EBIインタビュー

2023年11月29日更新